著者
鈴木 堅弘 Kenkou SUZUKI スズキ ケンコウ
出版者
総合研究大学院大学文化科学研究科
雑誌
総研大文化科学研究 = Sokendai review of cultural and social studies (ISSN:1883096X)
巻号頁・発行日
no.7, pp.19-54, 2011-03-31

これまで春画といえば、性表現を扱った絵画として研究対象から除外されてきた。ところが近年、こうした傾向はしだいに改善され、春画に関する研究書が数多く出版されるようになり、春画の公開データベースが大学や研究所で作成されている。 こうした春画研究の進展を受けて、今回、国際日本文化研究センターに所蔵されている春画・艶本コレクションの三五〇〇画図を分析対象とし、江戸春画に描かれた図像表現を数量として把握することを目的とした。その方法として、一枚の春画から「性描写の有無」、「性交者の性別」、「性交者の立場(男性)」、「性交者の年齢(男性)」、「性交者の立場(女性)」、「性交者の年齢(女性)」、「第三者の有無」、「第三者の立場」、「第三者の年齢」、「第三者の行為」、「場所」、「場所の種類」、「場所の開放性の有無」の図像情報をカテゴリー別に抜き出し、その数量を数えることで、春画に描かれた人物(立場)、性別、場所などの割合を算出する。そのことで、江戸春画に描かれた図像表現の全貌を明らかにする。 また春画は性表現を多分に含んでいるがゆえに誤解も多く、ポルノグラフィと同意義に扱われたり、男色画や手淫画などが多く描かれていると考えられてきた。そこで本考察では、江戸春画の特色を正確に把握することで、こうした誤解をひとつひとつ解いていき、これまでの春画認識に新たな見解を示す。 なお本論では、春画の図像を分析する際に、同時代の風俗画や随筆類を積極的に参照した。江戸春画には当時の生活風景がありのままに描かれており、春画表現を通じて江戸時代の色恋の風俗を読み解くことも試みている。Heretofore, Shunga has been marginalized and excluded from academic research in favor of nature paintings. Recently, however, numerous book of research on Shunga have been published, and databases of Shunga have been established in universities and research institutes.This paper analyzes 3500 picture figures of the Shunga collections that are kept by the International Research Center for Japanese Studies and utilizes quantity analysis to examine the picture figures expressed in Shunga.Shunga is an often misunderstood form of artistic expression. For instance, there is a common misunderstanding that Shunga is the same as pornography and often depicts homosexual acts. This paper attempts to correct such misunderstandings by illuminating the characteristics of Edo Shunga.As the daily lives of ordinary people were often depicted in the Shunga of the Edo period, this paper also discusses the culture and customs in the Edo period by analyzing the Shunga of the era.
著者
鈴木 翔 須藤 康介 荒川 智美
出版者
東京大学大学院教育学研究科
雑誌
東京大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13421050)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.103-116, 2011

The purpose of our study is to make clear the significance of a boyfriend or girlfriend for junior high school students. For this purpose, we firstly investigated the determining factors of having a boyfriend/girlfriend, and then clarified the effects of the fact that one has a boyfriend/girlfriend on their self-consciousness. As a result of our analyses, we got following two findings. First, there are various factors which determine whether junior high school students have a boyfriend/girlfriend or not, and the factors differ according to each student's gender. Furthermore, the levels of academic accomplishment of the school also make a difference. Second, when we analyze the effects of that fact on their self-consciousness, it is necessary to consider not only the very thing that one has a boyfriend/girlfriend or not, but also if she or he is likely to have a boyfriend/girlfriend. Our analysis suggests that a success in love for girls in junior high has a more complex meaning compared with that for boys.
著者
平峰 玲緒奈 青木 かおり 鈴木 毅彦
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2020年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.238, 2020 (Released:2020-03-30)

1.はじめに火山砕屑物の一つである軽石は,多孔質であるために水に浮くこ とが多い.そのため,海域での漂流を開始した軽石は,海岸に打ち上げられるか,海底に沈むまで,漂流し続けると考えられている(加藤,2009).このような軽石は,「漂着軽石」や「漂流軽石」と呼ばれ, 海岸や地層中から発見・認定されてきた.地層中に認定される漂着軽石は,年代指標,古環境指標として利用できると期待される.しかし,漂着軽石に関する基礎的な研究は少なく,それらの漂流・漂着に関わるプロセスは明らかになっていない.日本列島とその周辺海域では,1986 年の福徳岡ノ場噴火以降, 大量の軽石を海域に供給する噴火は発生していないにもかかわらず,現在の日本列島の海岸には軽石が漂着している.これは,噴火活動以外に海域へ軽石を供給する仕組みがあること示唆する. しかし,日本の複数地点で,ほぼ同時期に漂着軽石を調査した例 は存在しない.また,軽石を海域へ供給する噴火が発生していない「平穏時」における漂着軽石の給源やそれらの地理的分布は不 明である.そこで,本研究では,記載岩石学的特徴に基づき日本列島の現世海岸における漂着軽石の給源とその地理的分布を明らかにし,海域への軽石供給の仕組みや,漂着軽石の漂流・漂着に関するプロセスを解明することを目的とした.2.研究手法沖縄県西表島から青森県下北半島にかけての,日本列島の海岸25 地点から採取した漂着軽石120 試料について,肉眼的特徴による分類を行い,個別に粉砕した試料を洗浄,ふるい分けし,63-120 μm サイズの火山ガラスを用いて主成分化学組成分析を実施した. 分析には高知大学海洋コア総合研究センターの共同利用機器であるEPMA(日本電子株式会社製 JXA-8200)を使用した.3.結果・考察漂着軽石は,幅の狭い浜など漂着物が保存されにくい海岸を除くと全ての海岸で確認された.浮遊しやすい発泡スチロールやクルミなどが多く漂着する海岸では,漂着軽石も多く見出された.EPMA 分析の結果,漂着軽石は13グループに分けられた.13グループの中で,給源が推定可能なものは4グループあり,その給源となるテフラは,姶良カルデラの約3万年前(Smith et al., 2013)の 噴出物である姶良Tnテフラ(AT:町田・新井,2003),十和田火山 の約1万5千年前の噴出物である十和田八戸テフラ(To-H:町田・ 新井,2003)と AD915 年の十和田aテフラ(To-a:町田・新井,2003),1924 年の西表島北北東海底火山噴出物,1986 年の福徳岡ノ場噴出物である.AT起源の漂着軽石は日本各地の海岸から見出され,青森県の下北半島を最北端,沖縄県の西表島を最南端として確認された.特に,西表島で見出されたAT 起源の漂着軽石は,周辺の海流系を考慮すると,黒潮,黒潮続流,北赤道海流等 での漂流を経て,再度,黒潮本流に合流し,当該地域に漂着した可能性がある.また,鹿児島県奄美大島の海岸から,十和田火山起源の漂着軽石も見出されており,AT起源の軽石同様に,漂着軽石は海流により太平洋上を循環している可能性が示唆される.現世の海岸に分布する漂着軽石は,噴火により直接海域に流入した可能性と、陸域に一次堆積した火砕物が,二次的な移動により海域に流入した可能性がある.約3万年前(Smith et al., 2013)の噴出物である AT起源の漂着軽石は,日本列島各地の海岸で見出さ れた.また,AT噴火の火砕流堆積物は,入戸火砕流堆積物 (A-Ito:町田・新井,2003)として給源近くに厚く分布し,火砕流台地であるシラス台地を形成しており,海岸沿いや開析谷沿いに広く露出している.以上を考慮すると,火砕流堆積物が海岸侵食や崩壊,土石流により二次的に移動し海域へ流入したものが,漂着軽石として現世海岸に分布すると考えられる.つまり,陸域に分布する軽石主体の堆積物の二次的な海域への運搬が,平穏時における軽石供給の主要なメカニズムであると考えられる.4.まとめ本研究結果から,軽石を海域に供給する噴火が発生していない平穏時であっても,現世海岸には漂着軽石が多く分布していることがわかった.給源テフラの推定結果から,最近100年間に発生した海底噴火に伴うものと1万年以上前の大規模噴火に伴うものが見出された.特に1万年以上前の大規模噴火に伴うものは,現在火砕流台地を広く形成しており,それらの二次的な移動が平穏時における継続的な軽石供給の重要なメカニズムであると考えられる.
著者
鈴木 優作
出版者
成蹊大学
巻号頁・発行日
2020

identifier:http://repository.seikei.ac.jp/dspace/handle/10928/1233
著者
鈴木 莉子 吉川 将司 谷中 瞳 峯島 宏次 戸次 大介
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第33回全国大会(2019)
巻号頁・発行日
pp.2L1J903, 2019 (Released:2019-06-01)

近年、モダリティの異なるデータ間での推論によって新たな知識を獲得するマルチモーダル推論に関する研究が盛んになっている。画像情報を自然言語の意味表現と接続可能な形式で表すことができれば、自然言語テキスト間の推論と同様の高度な推論を、テキストデータと画像情報の間で行うことができる。本論文では、画像情報とキャプションを一階述語論理 (FOL)のモデルと論理式を用いて表現することで、画像から数量表現や否定を含む複雑な文を推論するシステムを提案する。画像情報とキャプションにより拡張されたFOLモデルを用いることで、意味的に複雑な文に加え、物体の状態を表す関係を含む文も推論できるようになった。
著者
中下 留美子 鈴木 彌生子 林 秀剛 泉山 茂之 中川 恒祐 八代田 千鶴 淺野 玄 鈴木 正嗣
出版者
The Mammal Society of Japan
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.43-48, 2010-06-30
参考文献数
20

2009年9月19日,乗鞍岳の畳平(岐阜県高山市)で発生したツキノワグマ(<i>Ursus thibetanus</i>)による人身事故について,加害個体の炭素および窒素安定同位体比による食性解析を行った.体毛の炭素・窒素安定同位体比は,他の北アルプスの自然個体と同様の値を示した.さらに,体毛の成長過程に沿って切り分けて分析を行った結果についても,過去2年間の食性履歴において残飯に依存した形跡は見られなかった.当該個体は,観光客や食堂から出る残飯等に餌付いた可能性が疑われていたが,そのような経歴の無い,高山帯を生息圏の一部として利用する個体である可能性が高いことが明らかとなった.<br>
著者
荻本 真美 鈴木 公美 樺島 順一郎 中里 光男 植松 洋子
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.57-62, 2012
被引用文献数
7

ベーキングパウダーを使用した菓子・パン類,ミョウバンを使用した食品として野菜加工食品,海産物などを中心とした105試料について,食品中のアルミニウム(Al)含有量調査を行った.菓子・パン類は57試料中26試料で0.01~0.37 mg/g,小麦粉調製品は6試料中3試料で0.22~0.57 mg/g,野菜加工食品は3試料すべてで0.01~0.05 mg/g,海産物は6試料中4試料で0.03~0.90 mg/g,即席めんは11試料中3試料で0.01~0.03 mg/g,春雨は4試料中3試料で0.04~0.14 mg/g,大豆は不検出,大豆加工食品は16試料中1試料で0.01 mg/gのAlが検出された(定量限界0.01 mg/g).週一度摂取すると体重16 kgの幼児のPTWIに相当するものが,菓子類2試料,小麦粉調製品2試料,くらげ1試料の5試料あった.以上の結果から,子供,特に幼児では製品や喫食量により,PTWIを超過する可能性があることが示唆された.
著者
伊藤 正次 嶋田 暁文 荒見 玲子 手塚 洋輔 松井 望 鈴木 潔 関 智弘
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究は、多元的に分立している国・自治体の行政機関相互の連携・協働の実態を把握し、効果的な連携手法を探究することを目的としている。研究の第3年度目となる平成29年度においては、前年度に引き続き研究会を開催してメンバーの視座の共有を図ったほか、学会の公募企画に応募し、研究成果の発信とピア・レビューの機会を得た。同時に、自治体に対する合同のヒアリング調査を実施した。具体的には第1に、平成29年5月28日に開催された日本行政学会に公募企画「多機関連携の行政学」を応募し、学界への研究成果の発信を行った。同企画では、研究代表者の伊藤正次、研究分担者の松井望、鈴木潔がそれぞれ報告を行い、青木栄一・東北大学大学院准教授を討論者に迎え、討論を行った。第2に、研究会を開催した。まず、日本公共政策学会の開催に合わせ、平成29年6月18日に富山市で通算第6回の研究会を開催した。そこでは、各自の研究分担の内容に関する中間報告を行い、研究全体のとりまとめに向けたスケジュール等を確認した。また、日本政治学会の開催に合わせ、9月24日に九州大学東京オフィスで通算第7回の研究会を開催し、研究分担内容の中間報告とそれに基づく討論を行った。さらに、後述の大牟田調査に合わせ、通算第8回研究会を平成30年3月6日に福岡市で開催し、次年度の研究方針に関する調整を行った。第3に、研究メンバー全員による調査を実施した。平成30年3月5日に大牟田市役所を訪問し、動物園行政、高齢者福祉行政等に関する多機関連携の現状と課題について聞き取りを行った。
著者
鈴木 貴之
出版者
The Philosophy of Science Society, Japan
雑誌
科学哲学 (ISSN:02893428)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.2_13-2_28, 2009 (Released:2010-02-15)
参考文献数
26
被引用文献数
1

Brain sciences can show that our acts are caused by deterministic processes in our brain and that our acts are often influenced by unconscious brain processes, but these facts alone cannot deny free will. Brain sciences are important rather because they, along with other biological and behavioral sciences, offer the data that seem troublesome for compatibilists. The problem of free will cannot be solved either by conceptual analysis alone or by empirical research alone. Whether we endorse reductionism or non-reductionism, it is necessary to revise our commonsense concept of free will to establish compatibilism.
著者
池田 めぐみ 池尻 良平 鈴木 智之 城戸 楓 土屋 裕介 今井 良 山内 祐平
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.203-212, 2020-10-10 (Released:2020-10-15)
参考文献数
28
被引用文献数
1

本研究の目的は,上司による業務プロセスへのフィードバックとジョブ・クラフティング,若年労働者の職場における能力向上の関連を明らかにすることである.そのために,インターネット調査を行い取得したデータをもとに,構造方程式モデリングを用い,仮説の検証を行った.分析の結果,第1に,上司による業務プロセスへのフィードバックがジョブ・クラフティングの全ての因子及び職場における能力向上の全ての因子に正の影響を与えること,第2に,ジョブ・クラフティングの次元によって,影響を与える能力に違いがあることが確認された.以上より,若年労働者の職場における能力向上および,ジョブ・クラフティングを促す上で,上司による業務プロセスへのフィードバックが有効である可能性が示唆された.
著者
鈴木 文子 池上 知子
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.183-190, 2015-03-20 (Released:2015-06-07)
参考文献数
15
被引用文献数
3

From the perspective of social identity theory, some social psychologists have suggested that heterosexual men espouse negative attitudes toward gay men as a defensive mechanism against threats to their gender self-esteem. The purpose of the present study is to examine whether this gender self-esteem defense theory of sexual prejudice applies among heterosexual men and women in Japan. Our results in principle supported the gender self-esteem defense theory for heterosexual men. For heterosexual women, however, the results tended to be contradictory to the theory. The more positive heterosexual women’s gender self-esteem was, the less negative was their attitude toward lesbians. But this link tended to disappear when they were informed that no biological differences exist between heterosexuals and homosexuals. Our findings suggest that heterosexual men and women maintain their gender self-esteem in different manners: Heterosexual men maintain positive gender self-esteem by embracing negative attitudes toward gay men, but heterosexual women do not. Heterosexual women’s gender self-esteem may be related to expressing tolerance for sexual minorities.
著者
牛島 大志 田中 周平 鈴木 裕識 雪岡 聖 王 夢澤 鍋谷 佳希 藤井 滋穂 高田 秀重
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.107-113, 2018 (Released:2018-07-10)
参考文献数
14
被引用文献数
1 9

近年, マイクロプラスチック汚染が世界中で注目を集め, 生態系への悪影響が懸念されている。マイクロプラスチックとは粒径5 mm以下のプラスチック粒子である。本研究では日本内湾5ヶ所および琵琶湖における魚7種を対象とし, その消化管中の粒径100 μm以上のマイクロプラスチックの存在実態の把握を目的とした。魚197匹中74匹から140個のマイクロプラスチックが検出され, すべての地点でその存在が確認された。魚1匹あたりから検出されたマイクロプラスチック数は平均1.89個であり, その大半がポリプロピレン (40.7%) とポリエチレン (35.0%) であった。平均粒径の中央値は543 μmであった。摂食方法別にろ過摂食魚類とろ過摂食以外の魚類に分類すると, 前者97匹中54.6%, 後者100匹中21.0%からマイクロプラスチックが検出された。摂食方法によるマイクロプラスチックの誤飲量への影響が示唆された。
著者
鈴木 菜生 岡山 亜貴恵 大日向 純子 佐々木 彰 松本 直也 黒田 真実 荒木 章子 高橋 悟 東 寛
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.255-259, 2017 (Released:2017-07-12)
参考文献数
18
被引用文献数
3

【目的】不登校児の発達特性と転帰に影響する因子を検討した. 【方法】2007年から2009年に当センターを受診した不登校児80名の発達障害や精神疾患の有無, 在籍学級, 転帰等を調査した. 【結果】不登校児の57%が広汎性発達障害や注意欠陥/多動性障害などの発達障害を, また24%が不安障害などの精神疾患を有していた. 87%が不登校になって初めて発達障害と診断された. 91%に睡眠障害や頭痛などの身体愁訴を認めた. 不登校となった誘因は複数混在し, 対人関係の問題を契機とする例が最も多かった. 1年後の転帰は完全登校48%, 部分登校26%, 不登校26%だった. 小学生は60%が完全登校に至ったが, 中学・高校生は41%に留まった. 1年後不登校の割合は, 発達障害をもたない児で42%であったのに対し発達障害を有する児では17%で, 特別支援学級へ転籍した児では1例もなかった. 【結論】不登校児は発達障害や精神疾患を背景に持つことが多く, 登校転帰の改善には発達特性の把握と教育的・心理的な支援が有用である可能性が示唆された.
著者
瀬尾 明彦 砂川 久弥 土井 幸輝 鈴木 哲
出版者
ITヘルスケア学会
雑誌
ITヘルスケア誌 (ISSN:18814808)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.96-105, 2008 (Released:2008-12-09)
参考文献数
18
被引用文献数
1

本研究では,睡眠時間が翌日全体の認知・運動機能に及ぼす影響を評価することを目的とした.具体的には,睡眠時間の長い条件(6時間)と短い条件(3時間)の2条件で,起床後の身体の「知覚」,「思考」,「記憶」,「運動」の一連の認知から運動に至るまでの機能に対応した作業を被験者に行わせ,脳波計測による各作業時の覚醒度,自覚症調査による各作業後の主観的負担感,各作業の結果により総合的に評価した.また,本研究では実験中の被験者の生体リズムの変化についても体温・心拍数計測により確認した.その結果,体温,心拍数の変化から,睡眠時間の長短による生体リズムの顕著な差は見られなかったが,短睡眠では主観的負担感が高くなることがわかった.脳波についても短睡眠時には翌日に覚醒度の低下が確認された.また,翌日の作業結果にも大きく影響することがわかった.具体的に,知覚機能,思考機能,記憶機能においていずれも低下が大きいことがわかった.一方,動作機能の顕著な変化は見られなかった.
著者
稻垣 長止郎 鈴木 彌太郎
出版者
The Japan Society of Naval Architects and Ocean Engineers
雑誌
造船協會會報 (ISSN:18842054)
巻号頁・発行日
vol.1930, no.46, pp.55-80, 1930

The completion of the M. S. Tatsuta Maru, the sister ship of the Asama Maru and the biggest motor liner of almost wholly a Japanese production, is an important event for Japanese Shipping and Shipbuilding. On this remarkable occasion, it does not appear to be wholly nonsense to make some reference about these ships.<br>In this paper, a short review is made about the vast designs and long efforts to arrive at the final elaborate design of the Pacific Liners.<br>Some results are also picked up from those of the exhaustive trials, and finally, an attempt is made to lay out 2, 000 B. H. P. geared Diesel installation for a high speed Trans Pacific Liner which might come into question in future.