著者
金森 晃 土信田 文隆 町田 充 高田 哲秀 中嶋 真一 神 康之 守屋 達美 的場 清和 藤田 芳邦 矢島 義忠
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.147-150, 2000-02-28 (Released:2011-03-02)
参考文献数
10

49歳, 男. 罹病歴17年の重症の糖尿病性トリオパシーを合併した2型糖尿病. 足のしびれ感を癒す目的で両足趾および足蹠部に市販温湿布薬を貼付して車の運転を長時間行った. その後, 貼付部に水疱を形成し, 感染を併発して両足壊疽をきたした. 高血糖是正, 抗生物質投与, 免荷, デブリードマンなどの保存的治療により右足壊疽は治癒したが, 左V趾は中足骨切断術を余儀なくされた. 用いられた温湿布薬にはカプサイシンと同様の作用をもつノニル酸ワニリルアミドが比較的高濃度に含有されている. 本症例では温湿布薬が的確に使用されなかったために, ノニル酸ワニリルアミドによる接触皮膚炎が惹起され, さらに糖尿病性神経障害が存在するために皮膚刺激症状の認知が遅れ水疱形成をきたしたと考えられた, カプサイシンは糖尿病性表在性疼痛に対する治療効果が認められているが, 使用法を誤まると足皮膚潰瘍などの糖尿病性足病変の誘因になる可能性があり注意を要する.
著者
大下 誠一 川越 義則 安永 円理子 高田 大輔 中西 友子 田野井 慶太朗 牧野 義雄 佐々木 治人
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
Radioisotopes (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.60, no.8, pp.329-333, 2011-08-15
参考文献数
11
被引用文献数
4 6

福島原子力発電所から約230km離れた,東京都西東京市における研究圃場において原発事故後に栽培された野菜及び土壌の,<SUP>134</SUP>Csと<SUP>137</SUP>Csの放射能を測定した。試料は植え付け47日後のジャガイモの葉,並びに,苗の定植40日後のキャベツの外葉を用いた。両者共,<SUP>134</SUP>Csと<SUP>137</SUP>Csの総量は9Bq/kg以下となり,摂取制限に関する指標値500Bq/kgより低い値であった。土壌は約130Bq/kgであり,天然の<SUP>40</SUP>Kの約290Bq/kgと比較しても低い値であった。キャベツの外葉を水で洗浄する前後の放射能像をイメージングプレートにより得たが変化は見られなかった。
著者
藤井 澄三 高田 泰孝 小川 和男 板谷 泰助 松原 聰
出版者
The Pharmaceutical Society of Japan
雑誌
Chemical and Pharmaceutical Bulletin (ISSN:00092363)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.325-327, 1995-02-15 (Released:2008-03-31)
参考文献数
20
被引用文献数
2

Treatment of N6-benzyladenine (2) with 15% aqueous H2O2 in trifluoroacetic acid at 65-70°C for 1 h was found to give the N(3)-oxide (3) and the N(7)-oxide (4) in 4% and 4% yields, respectively. The structure of 3 was established by its identity with a sample prepared from 6-chloropurine 3-oxide (6) and benzylamine, and the structure of 4 by its identity with a sample obtained from 1-benzyladenine 7-oxide (8) by Dimroth rearrangement. The N-oxides 3 and 4, together with previously reported N6-benzyladenine 1-oxide (1), were tested for cytokinin activity in the tobacco callus bioassay. Each of the three N-oxides was active at 4 μM concentration, being less active than the parent base 2 by a factor of 40.
著者
村上 亮 古屋 正人 高田 陽一郎 青木 陽介 小澤 拓 島田 政信
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

はじめに 合成開口レーダ(SAR)は,全天候性,広域性,非接触性,計算機親和性など,地殻変動観測に適した多くの長所を有している.一般に,植生が広く分布するわが国においては,Lバンド帯が地殻変動の検出に適している.Lバンドで運用する,我が国の衛星であるJERS,ALOS,およびALOS2に搭載されたLバンドSARによる観測は,火山観測に多くの成果を上げており,すでに火山性地殻変動モニタリングの標準的手法となっている.一方,航空機搭載SARは,ある程度自由に照射方向を設定でき,即時対応にも適応性が高いことから,衛星型にない多くの長所を有しているものの,リピートパス干渉法(DInSAR)に関しては,飛行軌跡の制御や位置追跡の精度がボトルネックとなっており,広く用いられる段階には至っていない.我々は,Lバンド航空機SAR干渉技術の高度化を目ざす研究を実施中であるが,その一環として,九州に点在する活火山(桜島火山,霧島火山,雲仙火山)を対象とした観測を宇宙航空技術研究開発機構(JAXA)が運用する航空機SARシステム(Pi-SAR-L2)を用いて実施した.特に,桜島火山と霧島火山に対しては,リピートパス干渉を目的とした観測をJAXAが2013年以降実施中であり,2017年に新たに観測したデータは,これらの既存データとの干渉処理が可能である.本報告では,衛星観測や水準測量の結果から,最近の数年間における膨張性の変動の存在が明らかになっている,霧島火山硫黄山をターゲットとした,航空機SAR干渉解析結果を紹介する.2.Pi-SAR-L2データの干渉処理についてPi-SAR-L2には,高精度なINS-GPSハイブリッド型の航路追跡装置が搭載されている.これにより,高い軌道再現性が実現されているが,予測不可能な気流の変化等の影響によって,完全な同一航路の実現は困難である.その結果,航空機干渉SARの飛翔航路偏差起源の位相差の分布は,衛星のそれに比べてより複雑な形状を呈し,地殻変動情報の有効な抽出には,航跡の複雑性に起因する位相分布の適切な除去が必要である.これまでの予備的な解析から,ペアを構成する主画像(Master)および従画像(Slave)の位置合わせの達成度が干渉性をほぼ支配することが分かっているので,そのプロセスの確実性を高めることに,解析の主眼をおいた.位置合わせは,主従の元画像どうしのピクセルのズレの検出と,同一地点のピクセルどうしが同じ位置に来るように従画像の位置ズレを補正するリサンプルのプロセスで構成される.解析に使用する干渉SAR解析パッケージであるRINCでは,基本的に二次関数によるズレ予測に基づき,成功領域を徐々に拡大するアルゴリズムに基づいており,今回は,その特徴を生かしつつ確実なズレ検出を全画面領域において成立させるため,手動による確認プロセスを挟みながら,繰り返し処理を行い,徐々に成功領域を広げる処理を定式化した.この方法により,解析した6ペア全ての全画面において,ズレの高精度検出に成功した.一方,従画像(Slave)のリサンプリングは,現状では,二次関数による多項式近似を依然として採用しており,より複雑な変化をする飛行(Azimuth)方向において,数ピクセルにおよぶ残差が残留しており,これが,帯状の干渉不良領域を発生させている原因であることも分かった.二次関数では近似できない高周波成分に対しても対応する,より高精度なリサンプリングを実施すれば,干渉度がさらに改善される期待がある.いずれにせよ,位置合わせ手法を改善した結果,斑状の干渉不良領域は残存するものの2014,2016,2017の三時期に実施された三方向から観測から構成した,全6ペアの全てについて,全領域の干渉が達成された.3. 霧島火山の干渉解析結果リサンプリング手法に改良の余地があり,全画像での均一な干渉は実現できなかったが,現時点でも,かなりの領域で良好な干渉が達成されており,衛星SARや水準測量など他観測から地殻変動の存在が確認されている硫黄山において,航空機SARでも火山活動に対応すると考えられるフリンジが確認できた. 全て膨張性の変動が示唆される結果となっており,視線方向の距離変化の大きさは数cm程度であった.航空機干渉SARでは,上空の風速の変化などの影響で,飛行軌跡が小刻みに変動するため,航空機搭載のGPSによる航跡情報では補正しきれない,軌道縞や地形縞が残存する.今回の解析では,空間的長波長のフリンジは,全て軌跡起源と解釈して,一律に取り除く処理をしたため,空間的に長波長の地殻変動も取り除かれる恐れがある.しかし,硫黄山の地殻変動は力源が浅く,局所に偏在する変動と考えられるため,今回の手法でも確実に捉えることができたと考えられる.なお,長波長成分除去後のノイズレベルの見積もりは,概ね+-2cm程度であるなお,航空機SARの特性を生かし,多方向からの観測が行われており,地殻変動の三次元化を実施し,講演時にはその結果についても報告する.謝辞:干渉SAR解析には小澤拓博士が開発したRINC(Ver.0.36)および国土地理院の標高データを使用した.ここに記して感謝する.
著者
黒田 顕慈 野田 英児 高田 晃次 南原 幹男 木下 春人 原 順一 河内屋 友宏
出版者
日本大腸肛門病学会
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.41-46, 2017 (Released:2016-12-26)
参考文献数
16

症例は44歳の男性.潰瘍性大腸炎に対して大腸全摘術(1期目:腹腔鏡下結腸全摘術・回腸瘻造設術,2期目:残存直腸切除術,J型回腸嚢肛門管吻合,3期目:回腸瘻閉鎖術)を施行した.術後12日目に腸閉塞症状が出現,その後下血がみられ,下部消化管内視鏡検査にて回腸嚢内に湧出性出血を伴う多発性潰瘍を認めた.回腸嚢炎と考え,抗生剤の投与にて経過をみたが,再度下血が出現し,ショックバイタルとなった.回腸嚢より口側からの出血が疑われ,緊急試験開腹術を施行した.術中内視鏡検査にて空腸内に散在性の潰瘍を認めたが明らかな出血源は指摘しえなかった.病状経過よりUC関連の小腸炎が疑われ,プレドニゾロンおよびメサラジンの内服加療を行ったところ,下血は消失し,6ヵ月経過する現在も再燃を認めていない.潰瘍性大腸炎に関連した大腸全摘術後の小腸炎にて治療に難渋した1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.
著者
高田 修治
出版者
独立行政法人国立成育医療研究センター
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2011

申請者は本提案によりIG-DMRの解析を中心としたPlk1-Pio3インプリンティング領域の遺伝子発現制御、DNAメチル化の確立、DNAメチル化維持の分子メカニズムを解明することにより生殖細胞の正常な分化に必須の領域であるIG-DMRの機能を同定し、将来の再生医学、再生医療への応用のための分子基盤を築いていきたいと考えている。今年度は昨年度までに同定したIG-DMR内の進化上保存された配列とIG-DMR内の特異的リピート配列に対する結合タンパク質の精製とその同定を行った。DNA配列をビーズに結合し、胎生13.5日の核タンパク質をプルダウンすることにより結合タンパク質を精製、その後DSD-PAGEと銀染色によりタンパク質を可視化、質量分析によりタンパク質を同定する手法を用いた。その結果、IG-DMR内の特異的リピート配列に結合する因子の一つとして、ピストンのメチルトランスフェラーゼの一種であるSmyd2が同定された。まだ質量分析による同定までには至っていないが、進化上保存された配列に特異的に結合するタンパク質も銀染色により確認できている。また、今までにこのリピートに結合する因子の候補として酵母One hybrid法でZbtb22を同定している。Zbtb22ノックアウトマウスの作製と掛け合わせを行ったが、Zbtb22ノックアウトマウスは妊性のある正常な個体であった。Zbtb22ノックアウトマウスでのDlk1とGt12の発現解析をreal-time RT-PCRにより行ったが、Zbtb22がインプリンティングの確立や維持には影響がないという結果を得た。現在メチル化解析を行っているところである。
著者
桑田 耕太郎 松嶋 登 石川 哲也 高田 昌樹 原 拓志 高尾 義明 松尾 隆 井上 福子 高橋 勅徳 西村 孝史 水越 康介 宮尾 学
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究の目的は、所与の科学技術を産業利用する既存のイノベーション研究ではなく、科学技術の変化や産業構造の変化を伴った根源的なイノベーションのプロセスを理解するための分析枠組みと理論を構築し、先端科学技術と産業の国際競争力の向上をダイナミックに結びつける理論と方法を確立することにある。ビッグサイエンスのリサーチサイトとして、理化学研究所の協力の下、大型放射光施設(SACLAやSPring-8)を取り上げる。本研究では、「科学は社会化され、社会は科学化される」という視角を採用し、世界最先端の大型放射光施設を生み出す産業の実践、その施設を利用する科学技術者の実践、その研究成果を利用する産業の実践のダイナミクスを研究し、科学・技術と産業社会の分業構造が根幹から再編成されるプロセスを分析する。研究3年目となった本年は、これまでの研究蓄積を踏まえつつ、大きく4つの論点についてそれぞれ研究を進めた。第一に、科学と産業の相互影響の歴史に取り組み、これまでに引き続き研究蓄積の整理分析を行うとともに、各分野でのヒアリング調査を中心として、放射光科学の歴史を確認した。第二に、ビッグサイエンスを支えるビジネス・エコシステムの社会的形成、および、第三にビッグサイエンスを媒介にした社会的実践の変化を捉えるため、大型放射光施設に関わる企業のイノベーションを確認した。さらに第4として、地球レベルでのイノベーション・システムの探求に取り組むべく、研究会や学会報告を行い、研究枠組みの精緻化を進めた。
著者
高田 宗一朗 井上 裕文 篠田 茂樹
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 (ISSN:21879761)
巻号頁・発行日
vol.84, no.861, pp.17-00522-17-00522, 2018 (Released:2018-05-25)
参考文献数
20
被引用文献数
2

In this paper, deterioration diagnosis for distribution main pipe was studied using the uniform cylindrical shell approximation and in-plane bending mode. The in-plane bending mode is expected to have high accuracy in detection of deterioration, because the eigen frecuency of the mode is proportional to pipe thickness. First, using the finite element method, the characteristics of in-plane bending mode are investigated. It is confirmed that in-plane bending mode has little small dependence on the pipe length and the boundary conditions at the pipe ends, it appears in the audio frequency bands, and it has linear dependence on the pipe thickness. In addition, formula with two dimensional ring approximation is derived. Moreover, the average thickness and the uniform-cylindrical shell approximation are introduced for deal with the deteriorated pipe. Using the thinning pipe thickness of previous study, validity of the average thickness and the uniform-cylindrical shell approximation were confirmed. On the other hand, actual pipeline has the sub-structure, for example, valve, hydrant, and so on. In order to deal with the coupled vibration between the cylindrical shell and the sub-structure, eigenvalue analysis are conducted using the Semi-Analytical Receptance Method (SARM). The experimental consideration were conducted in case of that the sub-structure non-attached case. The in-plane bending mode is observed experimentally on the actual pipe system and its resonant frequency shows good match with the theoretical values.
著者
中本 幸一 高田 広章 八谷 祥一 朝倉 義晴 樫宿昌房
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌コンピューティングシステム(ACS) (ISSN:18827829)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.64-78, 2004-03-15
参考文献数
25

Java言語は組込みシステムで必須なリアルタイム処理には適さないといわれている.本論文では,リアルタイム処理を行う組込みシステムでJava言語を利用するためにリアルタイムOSとJavaプログラムの実行環境を共存させたハイブリッドアーキテクチャJTRON2.1の仕様策定を行い,これに基づいた試作の評価結果と実システムでの応用事例を述べている.JTRON2.1仕様では,Javaスレッドとリアルタイムタスクは通信機能により協調動作を行う.この通信機能には,リアルタイムOSの資源をJavaスレッドから利用するアタッチクラス,Javaオブジェクトをリアルタイムタスクから利用する共有オブジェクト,Java言語のストリーム機能を利用したストリーム通信の3種類がある.この通信機能はリアルタイムOS,Java実行環境上にライブラリとして実現される.このライブラリを利用して,リアルタイム処理はリアルタイムOS上のリアルタイムタスクで処理し,非リアルタイム処理はJava実行環境上のJava スレッドで実行させるような環境が実現される.There exist some problems in real-time processing essential in embedded systems when the Java language is applied to the embedded systems. This paper presents specification, evaluation results and applications of a hybrid architecture JTRON2.1, in which the Java runtime environment and a real-time OS coexist in order to utilize the Java language in the embedded systems requiring real-time processing. In JTRON2.1 specification, Java threads and realtime tasks cooperate through communication mechanisms. The communication mechanisms consist of attach classes, shared objects and stream communication. The first one provides methods by which Java threads can access to real-time resources. By the second one, realtime tasks can access to Java objects. The third one utilizes the Java stream to communicate with real-time tasks. The communication mechanisms are implemented by libraries on the real-time OS and the Java runtime environment. Using the libraries, the hybrid architecture is realized, where real-time processing is executed by real-time tasks on the real-time OS and non real-time processing is done by Java threads on the Java runtime environment.
著者
高田 直也 杉浦 健介 Irham Irham 岩本 純明 大賀 圭治
出版者
日本熱帯農業学会
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.162-168, 2003-09-01
参考文献数
36
被引用文献数
2

インドネシアは1980年代後半にFAO,世界銀行などの援助を受けて総合的病害虫防除(IPM)を本格的に開始した.一方,IPM本格化以前の1980年から日本はインドネシアに対し技術協力援助として病害虫発生予察制度を主体とした作物保護強化計画を行っていた.この日本の援助に対しては,農薬の使用が前提であったという批判がある.本研究は,インドネシアの作物保護における発生予察制度とIPM導入に至るまでの過程を歴史的事実に基づき検証することを目的とした.1980年から実施された病害虫発生予察制度を主体とした技術協力援助は,1974年〜1977年にかけてのインドネシアにおけるトビイロウンカ大発生に対応するために,インドネシア政府の強い要請によって開始された純然たる技術協力援助であり,農薬の供与とは直接的な関係を有しない.1984年にインドネシアはコメの自給を達成したものの,この直後にトビイロウンカが大発生した.農薬の過剰な投入がトビイロウンカの大量発生の一因であるとされ.1986年11月,大統領令により有機リン系を中心とした57品目の殺虫剤が水田で使用禁止となるとともに,インドネシア政府は農薬への補助金を削減しはじめた.その後1989年から国家開発企画庁の主導で普及活動を中心としたIPMプロジェクトを世界銀行の融資を得て開始し,1994年以降は業務を農業省に引き継ぎ現在に至っている.現在インドネシアの作物保護行政は,国の専門組織とこれを補助する地方自治体の担当部門,さらに農民の連携により進められている.この中で発生予察制度は否定されているわけではなく,作物保護政策の重要な一環として位置づけられている.しかし,発生予察制度整備のための技術協力と同時期に有機リン系殺虫剤の水田使用禁止を補うための食糧増産援助(2KR)が日本から行われており,インドネシア政府はこの2KRを利用して天敵等に影響のない農薬等を準備した.発生予察は病害虫発生の初期段階に適期防除を目指す技術協力であり,2KRで援助された農薬等は資材援助であったという違いを見なければならないが,これらは日本からの作物保護に関する援助であったゆえに同一視されてしまった.このことは,日本の援助における要請主義の再検討など今後の援助のあり方に対して教訓を与えている.
著者
高田 肇
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.71-76, 1991-02-25 (Released:2009-02-12)
参考文献数
6
被引用文献数
2 3

ヌルデシロアブラムシの虫えいの発育と有翅虫の虫えいからの脱出について,京都の山地および圃場のヌルデで調査し,次の結果を得た。1) 虫えいは5月中旬から6月上旬に形成され,10月中旬から11月初めに裂開した。3個の虫えいについて,最大長・幅・高を定期的に測定した。その値から求めた「表面積指数」は,虫えい形成後9月初めまで指数的に上昇し,その後増加率はやや低下したが,9月末まで上昇をつづけた。10月にはいると発育は停止した。幹母(虫えい内第一世代)は6月下旬に,第二世代無翅胎生雌は7月末にそれぞれ産子を開始し,最終世代の有翅胎生雌は9月中旬に3齢幼虫になった。8月中に少なくとも1世代は経過すると思われるので,虫えい内では4世代を経ると考えられる。2) 10月に調査した15個の虫えいは,最少1,343匹,最多8,438匹の有翅虫を包含していた。観察した2個の虫えいから,有翅虫はそれぞれ11日,13日間にわたって脱出した。脱出は9∼17時に見られた。時間別脱出虫数は調査した6日のうち5日については,12∼13時をピークとする一山型の消長を示した。
著者
林 真一 高田 有時 畑崎 恵介
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌C(電子・情報・システム部門誌) (ISSN:03854221)
巻号頁・発行日
vol.136, no.12, pp.1746-1752, 2016-12-01 (Released:2016-12-01)
参考文献数
17

For the system providing server SSD (Solid State Drive) cache and volume tiering functions, it is difficult to determine which data to be placed into SSD tier on the basis of the number of I/O (Input/Output). In this paper, we propose a volume tiering method cooperating with the server SSD cache, which counts the number of I/O on the server and allocates storage SSD to read-intensive areas. We conduct an I/O simulation experiment using I/O log traced on the real environment to validate the proposed method. We show that the proposed method reduces I/O average response time by up to 10% compared to the existing method through the I/O simulation experiment.
著者
高田屋 陽子 小山 高志 清水 潤
出版者
秋田大学教育文化学部
雑誌
秋田大学教育文化学部研究紀要 教育科学 = Memoirs of Faculty of Education and Human Studies, Akita University. Educational sciences (ISSN:24334952)
巻号頁・発行日
vol.73, pp.41-46, 2018-02-23

秋田県内の特別支援学校においては,教員の「各教科等を合わせた指導」の授業力向上を目指し,基礎研修, 授業実践,授業研究会等を効果的に関連させることで,担当教員の授業力を向上させるとともに,その成果 を各特別支援学校において共有し,学校全体において実践的な授業力の向上を図る「授業改善プロジェクト」 に取り組んできている。平成28年度は「遊びの指導」に取り組み,指導の要点について共通実践することで 指導の充実を図った。本研究では,この取組について報告するとともに,プロジェクト型研修の有効性と課 題について検討した。
著者
塚田 悟之 高田 邦道
出版者
経済地理学会
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.157-175, 2000
被引用文献数
1

航空機の高速化, 大型化は, 滑走路延長による空港規模の拡大とともに, 騒音や振動による公害問題を生じさせた.その結果, 空港は都心から離れて立地するようになった.そして今日, 都市と空港間のアクセス整備が重要な課題となってきている.本稿は, 時間距離を用いた等時線図を評価尺度に, 空港の有するアクセシビリティを, 時間的・空間的に評価することを目的としている.本稿では, 空港を起点とし, 軌道系交通機関と道路交通を利用した等時線図を作図し, この図から読みとったデータをもとに定量分析を行っている.前半部では, まず, 羽田, 成田, 新千歳, 福岡, 関西の拠点空港におけるアクセシビリティの比較分析をとおして, 各空港のアクセシビリティを評価した.また, 地方空港として初めて空港内に鉄道(空港連絡線)が乗り入れした宮崎空港に着目し, 空港連絡線の乗り入れ効果と自家用車によるアクセシビリティの把握を行った.その結果, 空港アクセスを整備していく際の課題を整理することができた.後半部では, 特に, 羽田空港に焦点を絞り, 等時線図の分析結果と, 旅客へのアンケート調査ならびに空港周辺高速道路の旅行速度調査の両分析結果を併用して, アクセシビリティのあり方について考察することができた.
著者
川原 一郎 金 秀樹 浜田 智弘 馬庭 暁人 河西 敬子 菅野 勝也 高田 訓 大野 敬
雑誌
奥羽大学歯学誌 (ISSN:09162313)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.139-142, 2011-09

診療タイムカードの有用性について検討した。患者のべ6860例を対象とした。診療タイムカードおよびタイムレコーダーを用い、患者が口腔外科外来を受診したら、まず受付担当者が受付時間を診療タイムカードに記録した。次に担当医が診療開始時に診療開始時間、診療終了時に診療終了時間を記録した。待ち時間15分以上の割合はタイムカード導入初期の2003年9月から11月に比べ、12月以降は減少傾向であった。しかし、2004年4月以降は増加傾向であった。平均診療時間は28分から44分であった。診療時間2時間以上の割合は平均約6%であった。待ち時間に対する意識や待ち時間の短縮については、「思う」と回答した医局員は、意識では64%、短縮では36%であった。診療時間に対する意識や診療時間の短縮については、「思う」と回答した医局員は、意識では36%、短縮では9%であった。