著者
六反田 豊 森平 雅彦 長森 美信 石川 亮太
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

朝鮮半島における主要河川の一つである漢江を主たる対象として、高麗および朝鮮時代において、人々が河川という水環境といかなる関係を築き、またそれがどのように変化してきたかを検証するために、関連資料の収集をおこなうと同時に、5回にわたり漢江流域での現地踏査を実施した。そして、その結果を、関連する文献情報とともに資料集にまとめて刊行した。また、日本国内の研究者と勉強会や意見交換の場をもち、水環境史研究の課題や方法についての認識を深め、朝鮮史研究における水環境史の構築のための研究基盤を形成した。
著者
佐和橋 衛
出版者
東京都市大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本課題では,InternationalMobileTelecommunications(IMT)-Advancedの次の世代の移動通信方式への適用を目指したギガビット超のブロードバンド無線パケットアクセスのキーの基盤技術の提案および評価を行った.具体的には,直交周波数分割多重アクセス(OFDMA:OrthogonalFrequencyDivisionMultipleAccess)およびシングルキャリアFDMAを用いる高効率マルチアクセス,無線リソース割り当て制御,制御情報の高効率多重法,高精度チャネル推定,Multiple-InputMultiple-Output(MIMO)チャネル技術の要素技術を提案し,効果を計算機シミュレーションにより明らかにした.
著者
中島 務 曾根 三千彦 三澤 逸人 服部 琢 鈴木 亨
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

内耳への60mWソフトレーザー照射が耳鳴の抑制に効果があるかどうか二重盲検にて検討した。耳鳴の大きさ、持続時間、音色、苦痛度の変化にレーザー照射群とプラセボ照射群の間に有意差は認られなかった。メニエール病におけるゲンタマイシン鼓室内注入療法は、広く世界的に行われるようになってきている。我々は、、モルモットにおいてゲンタマイシンを蝸牛窓または鼓室内に投与し、基底回転の外リンパにおけるゲンタマイシン濃度を経時的に測定した。外リンパゲンタマイシン濃度は投与後1〜2時間後にピークとなり半減期が2〜数時間と非常に早いものであった。ゲンタマイシン鼓室内注入療法後、麻痺性眼振が出ても、その後前庭代償がおこって日常生活で問題となることは極めで少ない。高齢者では前庭代償がおこりにくいが、若い人でも直線加速刺激を行うと正常者とは異なる垂直方向の眼球の動きを前庭代償が完成されたと思われた時期においても観察された。モルモットにおいてシスプラチン内耳毒性に対するαトコフェロールの抑制効果を確認した。また、プロスタグランディンE1を蝸牛窓に置くと蝸牛血流が上昇した。内耳機能の評価に内耳血流状態の把握は重要である。レーザードップラープローブの先端を蝸牛骨壁にあてると、ラットではレーザードップラー出力の30〜40%が骨の血流成分で蝸牛血流とは別に考えなければならないことがわかった。人工内耳手術では、蝸牛骨壁に穴をあけるので、この穴にプローブをさしこんで血流測定をおこなえば可能な限り純粋に蝸牛血流の測定ができる。現在までのところ人工内耳手術を受けた20人にこのような方法にて蝸牛血流の測定を行ったが6人(特発性感音難聴2人、原因不明の先天聾2人、内耳道狭窄1人、髄膜炎後難聴1人)において顕著な蝸牛血流信号の低下を認めた。
著者
鈴木 慶子 千々岩 弘一 田中 智生 小野瀬 雅人 吉村 宰 平瀬 正賢
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

学習活動を推進する「書字力」とは、単純な「視写」や「聴写」ではなく、手書きによる「メモ力」であると再定義した。つまり、見たり聞いたりしたことや頭に浮かんだことを手書きでメモすることのできる力である。そのメモに基づいて、文章を産出しながら、自分自身の考えを整理したり深めたりする。この行為は、ICTが今以上に浸透しても、人間にとって必須の能力である。「メモ力」を育成するプログラムは、次の3点に留意して開発する必要がある。①書き写しミスに自分自身で気がつくことができるのは、小3以降である。②小1の多読書群では、無自覚なミスが少ない。③小1~小4では、「見て書く」力と「聞いて書く」力との関連がある。
著者
所澤 潤 中田 敏夫 入澤 充 小川 早百合 古屋 健 江原 裕美 澤野 由紀子 志賀 幹郎 山口 陽弘 田中 麻里 YOFFE LEONID G 服部 美奈 山崎 瑞紀 日暮 トモ子 猪股 剛 小池 亜子 小室 広佐子 近藤 孝弘 三輪 千明 市川 誠 音山 若穂 前田 亜紀子 徳江 基行 モラレス松原 礼子 佐藤 久恵 林 恵 清水 真紀 福田 えり (石司 えり) 白石 淳子
出版者
東京未来大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-11-18

ドイツ、イタリア、チェコ、ブラジルは、学齢児の就学義務を設定している。ドイツとイタリアでは子供は社会の責任で国籍に拠らずに最低限の教育を受けさせねばならないという考えがあり、また、4国には、居住する子供を国籍で判別することが技術的に困難であるという共通の事情がある。それに対して、中国、韓国、台湾、タイでは、日本と同様、国家は自国民の子供に対してだけ就学/教育義務を課すという考えが主流である。いずれの国でも教授言語を習得させる特別な教育が設定されているが、並行して母語保持教育を実施する点についてはいずれの国もほとんど制度化が進行していない。
著者
吉見 彰洋 旭 耕一郎 内田 誠 内田 誠
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

素粒子の崩壊において発見され、宇宙の物質・反物質非対称性の原因と考えられているCP対称性非保存の起源は現代物理学の未解明の謎である。このCP対称性を破る永久電気双極子モーメント(EDM)の探索に向け、希ガス元素129Xeの核スピン歳差周波数を超精密に測定する開発研究を行った。様々な変動要因の研究及び高感度磁力計の開発を行い、低周波核スピンメーザーの周波数安定度を向上させ、5×10-28ecmのEDM感度(45,000秒測定、電場強度E=10kV/cmを仮定)を達成した。
著者
木下 靭彦 川瀬 俊夫 小園 知 田畑 泰彦 横矢 重俊 根岸 秀幸
出版者
神奈川歯科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

1.生吸収性scaffoldの作成.Collagen溶液にPGA繊維を加え、凍結乾燥と熱脱水架橋により、collagen spongeよりも強度と細胞侵入性に優れたPGA/collagen spongeを開発した.さらに、これにUV処理を加えることにより強度の高いPGA/collagen(UV)sponge)を得た.2.骨髄間葉系幹細胞(BMSC)の増殖、分化におけるDexamethasone(Dex)、bFGFの効果.ラットBMSCの単層培養で検討したころ、DexとbFGFはそれぞれALPase活性と細胞増殖を促進し、同時併用はALPase活性に相乗効果とbone noduleの活発な形成を示した.3.生体吸収性scaffoldsにおけるBMSCの増殖、分化能.ラットBMSCをPGA/collagen sponge, PGA/collagen(UV)spongeで三次元培養したところ、(1)両spongeとも培養後の収縮が軽度で、pore構造が良好に保たれ、sponge内部への細胞の侵入が認められた。(2)PGA/Collagen(UV)Spongeではcollagenがより多く残り、ポア内での細胞の接着,細胞外マトリックスの形成が良好であった。(3)細胞増殖とALPase活性はPGA/collagen(UV)sponge群で最も高生く、scaffoldとしての有用性が示唆された.4.BMSCの三次元培養骨の骨形成能.1)各種培地で培養したラットBMSCとβ-TCPの複合体を、同系ラットの背部皮下に移植したところ、Dex+βグリセロリン酸+bFGF添加培養液群で良好な骨形成がみられた。2)上記BMSC/β-TCPの複合体を成犬下顎骨区域切除部に自家移植したが、欠損部の骨連続性を回復できなかった。BMSCの培養期間及び骨形成を促進する生理活性因子の適切な局所導入法の確立が検討課題とされた。
著者
矢作 敏行 外川 洋子 岸本 徹也 浦上 拓也
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

日本型流通システムの特徴を、具体的な企業の実践行為レベルで分析するという研究目的に即して、長期財務分析、聞取り調査、企業アンケート調査を実施し、それに基づき、優秀小売企業を選び出し、小売業務、商品調達、商品供給の3つの下位システムで構成される小売経営において、持続的な競争優位性の基盤となっている組織能力は何かを導出した。中核的な組織能力は、事業分野の特性と歴史的な初期条件の2つの要因から大きな影響を受けているとの分析結果を得た。
著者
大河内 信弘 湯澤 賢治 佐藤 英明 安江 博
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

移植医療の問題点の一つである移植臓器不足の解決法のひとつとして、豚、牛などの異種動物からヒトへ臓器を移植する異種移植が挙げられる。このドナー動物として豚が最も有望とされているが、細胞、臓器を問わずブタからヒトへの異種移植において、ヒトが生まれつき持っている抗異種反応性自然抗体、および補体によって引き起こされる超急性拒絶反応が大きな障壁となっている。これらの抗体や補体により引き起こされる超急性拒絶反応は不可逆的であり、移植された細胞や臓器は細胞死、または臓器不全となる。この超急性拒絶反応を抑制するためにはドナー側の異種抗原(galactose α-1,3-galactose)を消去または減少させることが必要不可欠である。そこで本研究では、昨年度は異種抗原をknock outするgene vectorの作成を試みたが、いずれのvectorも抗原の発現抑制には無効であった。今年度はこの細胞表面に存在する異種抗原を合成する転換酵素(α-1,3-galactosyltransferase)のアンチセンスRNAベクターを作成し、ブタ細胞への遺伝子導入を試みた。その結果、一過性発現ではあるが、ブタ細胞の異種抗原を減弱させられることが明らかになった。以上の結果より、遺伝子導入によりアンチセンスRNAを発現させα-1,3-galactosyltransferaseタンパクの翻訳を阻害する方法は、超急性拒絶反応を抑制する手段の一つとなることが示唆された。
著者
佐藤 英明 佐々田 比呂志 柏崎 直巳 梅津 元昭 星 宏良 舘 鄰 松本 浩道
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

1)トランスジェニックブタ作出の基礎技術、すなわち卵成熟・体外受精・受精卵の体外発生、核移植、胚凍結、胚移植などの技術を確立した。特に体外で作出した脱出胚盤胞がフィーダー細胞に接着して増殖し、胚由来細胞のコロニーを形成することを明らかにした。作製した胚由来細胞は凍結保存している。また、ブタ体外成熟卵子から核を除く顕微操作法を確立した。2)ブタ卵母細胞において減数分裂の再開始においてmitogen-activated protein kinase(MAPK)が減数分裂再開始誘起シグナルを細胞質から核に移行させる仲介作用をもつことを明らかにした。3)ヒアルロン酸の体外生産ブタ胚の発生への影響は卵の成熟・受精における条件によりその影響が異なることを明らかにした。4)脱出胚盤胞から作成したブタ胚由来細胞は長期間体外で維持することが可能で、除核未受精卵への核移植により脱出胚盤胞期胚まで発生した。5)緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードする遺伝子を含むベクターを作成し、報告者が開発した胚由来細胞に導入し、導入細胞を選別する方法を開発した。GFP導入細胞は現在、凍結保存している。6)GFP発現胚由来細胞を除核成熟卵子に導入し、融合させ、活性化させる条件を明らかにした。現在、脱出胚盤胞期胚まで発生させることに成功している。
著者
杉原 厚吉 今堀 慎治
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

背景空間の計量的性質が時間とともに変わる環境の三つの事例に対してロバストな幾何計算アルゴリズムを構成した.第一に,時間変化する流れのもとでの船の最小到達時間として定義される距離の計算法を構成し,海難救助船経路計画などへ応用した.第二に,動画を見たときの主観的奥行き錯視量の推定法を構成し,不可能モーション錯視の創作へ応用した.第三に,材料から部品を切り取る際に材料の形状変化に起因する振動を避けるカッターパス計算法を構成した.
著者
能年 義輝
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

抵抗性誘導剤(プラントアクチベーター)は植物の免疫力を活性化することで病害防除効果を発揮する薬剤である。植物免疫を司るホルモンであるサリチル酸(SA)に糖を付加して不活性化するサリチル酸配糖化酵素(SAGT)を阻害すると免疫応答を増強できる。そこで本研究ではシロイヌナズナのSAGTを用いたSAGT阻害剤の標的ベース探索を行った。東京大学創薬機構が保有する約21万個の化合物から、SAGT阻害剤12個の同定に成功した。それらはシロイヌナズナ培養細胞の免疫応答を活性化した。現在、植物体への抵抗性誘導能と阻害定数の同定を進めている。植物における機能が証明されたものを特許化し、実用化の可能性を検証する。
著者
小牧 元 岡 晃 安藤 哲也 猪子 英俊
出版者
国際医療福祉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

摂食障害、特に神経性食欲不振症(AN)は遺伝性が強いにもかかわらず、いまだにその原因遺伝子が同定されていない。そこで、ANの家族症例を対象に全エクソンをシークエンシングするエクソーム解析を実施し、その原因遺伝子の同定を試みた。その結果、家族内の罹患者に共有するアミノ酸置換を伴う複数の変異が見出され、その中でも特に神経伝達物質のレセプターをコードするこの遺伝子上に、神経性食欲不振症の原因変異が蓄積されている可能性が示唆された。さらにこの変異はこのタンパクの相互作用に影響を及ぼすことが推定された。今後はこの遺伝子ファミリーに限定した、さらなる変異の追及と、機能的な解析が必要であると考えられる。
著者
安藤 寿男 長谷川 卓 太田 亨 山本 正伸 長谷部 徳子 高橋 正道 長谷川 精
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

モンゴル南東部の白亜紀中期(シネフダグ層)とジュラ紀中期(エーデムト層)の湖成層を対象に,(1)炭素同位体比,カイエビ化石,凝灰岩のF-T年代などに基づく年代層序の構築と,(2)岩相変化(頁岩・ドロマイト互層)から復元した湖水位変動の周期解析,鉱物・主要元素組成による化学風化度変動,有機化学指標(TEX_<86>)による湖水温復元などに基づく古環境変動復元を行い,モンゴル湖成層には,白亜紀中期温室期に頻発した海洋無酸素事変期(OAE1a~1b)の,地球軌道要素を反映した降水量および古気温変動が記録されている.
著者
杉田 弘子 重藤 実 踊 共二 新田 春夫 川中子 義勝 GRAEB?KONNEKER Sebastian
出版者
武蔵大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

本研究は社会史的視点からドイツ語の歴史的発展を近世から現代にいたるドイツ社会の変遷との関わりにおいて捉え直そうとするものである。15〜16世紀ドイツの言語と社会に関して踊は、宗教改革運動における大衆向け活版印刷物を分析し、宣伝ビラや「新聞」が大衆メディアとして一般信徒の日常生活に浸透し、相互のコミュニケーションに重要な役割を果たしていたことを明らかにした。16、17世紀について新田は、この時代、遠隔地とのコミュニケーションが増えたことから文書の社会的重要性が高まった結果、書き言葉が言語的規範となり、ドイツ語も書き言葉的性格を強めたことをルターのドイツ語の分析によって示した。また、重藤は、近世ドイツ語を中心に現代語に至るまでの分詞によるさまざまな構文を分析し、ドイツ語における分詞用法の歴史的衰退を代替表現との関連において考察し、他の言語との比較によってその類型的位置付けを試みた。18世紀ドイツの言語思想の流れの中で川中子は、ハーマンの言語論を中心的な分析対象とし、彼の言語思想における詩学・文芸学、とくに、比喩形象・修辞の役割を明らかにした。また、ハーマンの生涯について調査し、その全体像を描いて、著書にまとめた。19世紀について杉田は、ニーチェの言語思想を同時代の社会的思想状況の背景において分析し、彼の言語不信はその優れた言語芸術上の才能と知見のゆえのアンヴィアヴァレントな現れであることをを明らかにした。20世紀のドイツの言語と社会に関してSebastian Graeb-Konnekerは、ナチズム運動における文学と言語の問題を分析し、そのさまざまな言語的な現象の具体例をDokumentationという形で公刊した。
著者
山崎 要一 岩崎 智憲 早崎 治明 齊藤 一誠 稲田 絵美 武元 嘉彦 嘉ノ海 龍三
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

流体シミュレーション技法は、3次元管腔気道の通気機能を詳細に評価できた。具体的には、上気道の通気障害部位の検出に効果的であることが示された。さらに、本方法は上気道の部分的な通気状態の評価も可能で、上顎骨急速拡大による鼻腔通気状態の改善状況も確認できた。また、本方法でClass IIのdolichofacial typeとbrachyfaicial typeの通気状態を評価し、上気道通気障害が顎顔面の垂直的成長と関連が深いことを示すことができた。
著者
橋本 龍樹 大谷 浩 八田 稔久 宇田川 潤
出版者
島根大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

異所性に水晶体を誘導させるため、表皮外胚葉へ水晶体形成に関与する転写調節因子を表皮外胚葉へ導入した。導入時期を決定するため、レポーター遺伝子であるLacZを組み込んだアデノウイルスを、妊娠8日目から13日目の羊水中に注入し、妊娠13日及び14日目に胎児を取り出し、X-gal染色およびβgalactosidase抗体によって感染細胞を検出した。その結果、妊娠9日目に注入した胎児では水晶体と網膜の間にある間葉細胞が感染していたが、水晶体線維細胞には感染していなかった。妊娠11日目に注入した胎児では、水晶体線維細胞の一部が感染していた。分裂期にある細胞にのみ感染し、持続的に感染するLacZを組み込んだレトロウイルスを用いて妊娠10.0日と10.5日目に注入して感染させ、妊娠14日目に胎児を取り出した。その結果、妊娠10.0日に注入した胎児の眼球において、多数の水晶体線維細胞と一部の水晶体上皮細胞、および一部の網膜色素上皮細胞が感染しており、10.5日目に注入した胎児の眼球においては、水晶体全体に感染しており、わずかな網膜色素上皮細胞が感染していた。これらの実験より、注入時期を妊娠9.5〜11.0日とした。水晶体形成に関与している転写調節因子の一つであるFoxE3と、この遺伝子の転写調節領域及びSV40 poly Aを連結させたコンストラクトを作成した。FoxE3の突然変異マウス(dyl/dyl)にこれを導入したトランスジェニックマウスでは、小眼球症が改善することが確かめられている。アデノウイルスによってこの遺伝子を表皮外胚葉へ一過性に導入することにより、水晶体・眼球の組織形成におけるFoxE3の働きを解析できると予測された。ウイルス作成・濃縮過程を経て1.06×10^<10> pfu/mlの濃縮ウイルス液を得た。濃縮ウイルス液を妊娠10.5日目のdyl/dyl胎児の羊水中に注入し、15.5日目胎児における眼球を観察した。その結果、注入した胎児の眼球では、角膜と水晶体上皮の癒着は起こっていなかったが、水晶体線維細胞の走行の乱れや水晶体内に空胞を認め、このウイルスによって水晶体の異常を改善させる得ることが推測された。
著者
佐竹 健治 藤井 雄士郎
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

環太平洋で過去に発生した巨大地震による津波を系統的に調査した.1960,2010年チリ地震,2006,2007年千島列島の地震,2009,2010年インドネシアの地震について,すべり量分布の特徴を明らかにした.2004年スマトラ島沖地震より古い地震を地質学的痕跡から調べた.2011年東北地方太平沖地震は869年の貞観地震型と1896年明治三陸津波地震型のほぼ同時発生であった.M9の巨大地震について,M8の海溝型地震の相似則が適用できる.
著者
安田 孝志 吉野 純 村上 智一 村上 智一
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

IPCCの温暖化シナリオA1Bの下での伊勢湾台風級の台風の強大化とそれによる伊勢湾での高潮・高波の計算を,大気-海洋-波浪結合モデルと軸対称渦位モデルの組み合わせによって大気・海洋力学的に行い,その結果を基に,高潮災害の減災戦略・対策に必要な外力を科学的に予測するシステムを開発した.
著者
田原 聡子
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

アレルギー性喘息に対する治療法を確立するにはその病態の理解が重要となる。我々は、抑制性免疫受容体、Allergin-1遺伝子欠損マウスを用いて、House Dust Mite (HDM)抽出物による喘息モデルを検討し、Allergin-1が、気道抵抗、肺胞浸潤好酸球数および血清IgE抗体価を抑制することを見出した。さらに、これらの喘息症状のうち、気道抵抗は肥満細胞上のAllergin-1が担っており、一方、肺胞浸潤好酸球数と血清IgE抗体価は樹状細胞上のAllergin-1が制御することを明らかにし、Allergin-1が喘息治療における標的分子となることを示した。