著者
中田 行重 村山 正治 下川 昭夫 平野 直己
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は個人心理臨床では十分に埋め合わせられない今日の社会病理への対応として、地域への心理的援助の枠組みを探った。研究の方法論として、地域のフリースペースやグループアプローチ、スクールカウンセリングなどにおける地域臨床実践およびインタビュー調査、地域文化・風土のローカルな視点に関する文献研究が行われた。研究により明確になったのは大きく次の4点である。第1点は西欧で始まった"コミュニティアプローチ"は日本においては、日本人の心理的風土に合わせる必要があるということである。例えば日本では子育て支援とは、コミュニケーション支援であることが明らかになったのはその1例である。第2点は、臨床心理学は西欧社会から生まれているが、自己と関係性、心理療法論において日本では西欧とは深い面で異なっていることが明らかになった。第3点はコミュニティアプローチのリーダーや心理臨床家は、個人療法家と異なり、水平アプローチという対象間の関係性を活性化する触媒として非構造化された環境における実践を行う資質が必要であることが明らかになった。第4点は日本は対人支援のためのネットワーキングとして西欧と異なるものが必要であり、それはスクールカウンセリング事業などで現れていることが明らかになった。このようにして明らかになったことは、それぞれ本課題の研究者達の日々の臨床実践で活かされており、更なる実践・研究の継続を予定している。
著者
松里 公孝 長縄 宣博 赤尾 光春 藤原 潤子 井上 まどか 荒井 幸康 高橋 沙奈美
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

ロシアの諸宗教を網羅的・多面的に研究した結果、宗教というプリズムを通じてロシア社会を観察することが可能であることが明らかになった。宗教の視点からは、ロシアはより広い地理的なまとまりの一部であり、キリスト教の「教会法上の領域」の観念、巡礼やディアスポラを含めて広域的な観点から分析する必要性が明らかになった。「脱世俗化」の傾向はロシアにも共通するが、その特殊な形態を明らかにする作業が行われた。
著者
大野 秀樹 木崎 節子 櫻井 拓也 小笠原 準悦
出版者
杏林大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

運動トレーニングは脂肪組織への炎症性マクロファージの誘導に対する抑制作用があり、肥満における慢性炎症状態を改善する効果が認められた。一方、高脂肪食により腹腔マクロファージ・Toll様受容体2の発現が上昇し、炎症反応が増強することが示された。加えて、マクロファージにおいて抗炎症作用を示すghrelinが肥満によって減少するが、運動トレーニングにはghrelinを増加し炎症反応を抑制する効果があることが示唆された。
著者
田中 哮義 西野 智研 樋本 圭佑 大宮 善文
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

機構の物理的延焼モデルの計算手法を時間微分方程式をオイラー法で解く方法から、準定常状態に対する代数方程式を解く方法に変更することにより、延焼予測計算の高速化を実現した。被災地域を市街地火災から発生する火災気流による危険度と、避難者が安全な避難場所を志向する心理的志向から構成される非難危険度ポテンシャル場と考える地震火災時住民避難行動モデルを開発した。両者を統合して都市地震火災時の住民避難性状予測モデルを構築した。実務者が、地震火災に備えた住民避難リスクを評価し、また安全対策を講じる上での避難予測を容易に行えるようにするための住民避難危険度評価支援システムを構築した。
著者
馬場 良二 和田 礼子 木部 暢子 甲斐 朋子 木部 暢子 島本 智美 甲斐 朋子 吉里 さち子 田川 恭識 嵐 洋子 平田 真理子 木下 泰臣 (きのした) 船本 日佳里 田中 翔太郎
出版者
熊本県立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

外国人留学生が日本で勉学や研究にいそしむには、日常的な生活を円滑に行うことが大切です。そのためには、クラスメートや研究室の日本人、そして、アルバイト先の同僚や上司と日本語で円滑にコミュニケーションをとる必要があります。地方中核都市、ここでは熊本市内に住む外国人留学生を対象に、生活の基盤となる熊本市内方言を学習するためのテキストとそのテキストの会話や練習の音声を作成しました。
著者
片岡 孝夫
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

細胞傷害性T細胞(CTL)はパーフォリン依存性経路およびFasリガンド依存性経路によってウイルス感染細胞や腫瘍細胞を殺傷する。エポキシシクロヘキセノン誘導体ECHやRKTS-33は、カスパーゼ8の活性化を阻害し、Fas依存性のアポトーシスを特異的に阻害する。ECHやRKTS-33は、CTLによるFasリガンドの発現誘導に対する抑制作用が弱かったが、パーフォリンを発現していないCD4^+CTLやコンカナマイシンAで処理したCD8^+CTLによるFasリガンド依存性の細胞傷害経路を強く抑制した。しかしながら、ECHやRKTS-33はCD8^+CTLによるパーフォリン依存性の細胞傷害経路を抑制しなかった。これらの結果から、ECHやRKTS-33は、CTLの細胞傷害機構において、Fasリガンド依存性経路の特異的な阻害剤であることが明らかとなった。タンパク質合成阻害剤アセトキシシクロヘキシミド(E-73)は、IL-1による転写因子NF-κBの活性化を抑制せず、TNF-αによるNF-κBの活性化を選択的に抑制する。ヒト肺がん腫A549細胞をE-73で処理すると、TNFレセプター1のA549細胞における発現量が減少し、低分子量化したTNFレセプター1が培地中に増加することが観察された。メタロプロテアーゼ阻害剤GM6001やTACE(TNF-α converting enzyme)阻害剤TAPI-2で前処理すると、E-73によるTNFレセプター1の培地中への蓄積が抑制された。以上の結果から、E-73はTACEによるTNFレセプター1のシエディングを誘導することによって細胞表面のTNFレセプター1の発現量を減少させ、TNF-αに対するA549細胞の反応性を低下させることが明らかとなった。
著者
中里 洋一 平戸 純子 佐々木 惇 横尾 英明 石内 勝吾
出版者
群馬大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

脳腫瘍の組織・細胞形態、形質発現、遺伝子異常の観点から、脳腫瘍の特性を解析した。この中でdiffuse astrocytoma,oligoastrocytoma, oligodendroglioma,pilocytic astrocytoma,glioneuronal tumorなどの腫瘍に小型円形細胞が存在し、これが共通して核内転写因子Olig2を発現することを示し、これらの脳腫瘍の発生母細胞であることを指摘した。蛋白発現ではGFAP,Olig2,nestin,NFPなど、遺伝子異常ではIDH1,p53,EGFR,1p/19q,INI-1が重要であり、これらの蛋白発現および遺伝子異常の組み合わせと従来の病理組織学的分類を融合させることにより、脳腫瘍の形態・遺伝子分類の基礎を確立することができた。
著者
時松 孝次 田村 修次 木村 祥裕 鈴木 比呂子 内田 明彦
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

近年の地震では、近接した同一条件地盤にある建物間で、杭が損傷し上屋は無事であった事例、逆に、杭は無事で上屋が損傷した事例が認められた。このことは、地盤と構造物の相互作用を理解して構造物設計に反映することで、上屋の応答を低減するとともに基礎被害を防止する可能性を示している。そこで、本研究では、地盤と構造物との非線形動的相互作用の理解を深め、その効果を積極的に利用して、上屋応答と基礎応力の低減を図る基礎構造の可能性を検討し、併せて基礎の合理的設計法、限界状態設計法確立に資する試料を整備するために、遠心載荷振動実験、大型振動台実験、数値解析に基づく検討より、次のことを示している。1)土圧、側面摩擦、構造物慣性力の作用の組み合わせは地盤変位と基礎変位の関係、地盤固有周期と構造物固有周期の関係、液状化層厚により整理できること、(2)群杭の地盤反力は非液状化地盤では前面杭で大きくなるが、液状化地盤では隅杭で大きくなり、その結果、杭頭の水平荷重分担は非液状化地盤では前面杭、液状化地盤では隅杭で大きくなる傾向があること、(3)局部座屈と全体座屈の連成挙動の可能性は杭の細長比、地盤の剛性、固定度などにより整理でき、鋼管杭の座屈荷重は、提案する一般化細長比を用いることで鋼構造設計規準の座屈曲線に対応し、現行の圧縮材の規定を準用できること、(4)地盤・杭-構造物系の応答は、入力動の卓越周期、地盤の固有周期、構造物の固有周期の関係、液状化発生の有無、基礎根入れの有無によって変化し、その結果、杭応力の増大に影響を及ぼす基礎根入れ部の土圧、構造物慣性力、地盤変位の作用の組み合わせも異なることを示している。
著者
剣持 久木 西山 暁義 川喜田 敦子 中本 真生子
出版者
静岡県立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

2006年秋からフランスとドイツの教育現場に導入された、共通歴史教科書を、教科書成立に至る過程、歴史的背景から教科書の内容の分析、仏独両国での教科書の評価、現場での使用状況、さらには東アジアなど他地域への応用可能性を研究した。その結果、実際の使用状況は、二言語学級での使用など限定的であるという実情が明らかになったものの、ドイツ・ポーランド間でも同様の計画が具体化するなど、仏独の事例は限界をもちつつも国際歴史教科書対話のなかで一つのひな形の役割を果たしていることが確認された。
著者
渡邊 法美 小澤 一雅
出版者
高知工科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

日本の公共発注者に必要な「発注力」を明らかにし、今後の技術調達モデルの方向性を検討した。今後も維持すべき発注力とは「信任」の精神であり、具体的には技術者の良心、Win-Win、規準作成、自己管理、努力者評価である。向上すべき発注力は、透明性の向上である。そのためには、リスクとコストの関係明確化、プロセスマネジメントシステムの構築・運用、利用者・納税者への説明、発注者に不足する機能を補完する新しい職能の創設・導入、各リスクを最も適切に取ることが出来る主体を選抜する仕組みの構築が必要である。
著者
新田 孝彦 坂井 昭宏 千葉 恵 石原 孝二 中川 大 中澤 務 柏葉 武秀 山田 友幸
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究プロジェクトは、認知と行為の総合理論の基礎を据えることを目的として発足し、行為の合理性の分析を軸として、隣接諸学との関連をも視野に入れた研究を行ってきた。認知と行為の関連は、古くは「知と徳」の問題として、あるいはカントにおいて「理論理性と実践理性」の問題として問われ続けてきたように、哲学の中心的な問いの一つである。本研究プロジェクトでは、研究成果報告書第I部に見られるように、プラトンの対話篇を素材としたシンポジウム及びその背景となった研究において、生全体の認知と、そのもとに営まれる行為との関連のありさまを、哲学的思索の根源的な形態において理解しようとした。また、「プラグマティズムと人間学的哲学」シンポジウムにおいては、外国人研究者の協力も得て、日本及び東アジアの思想とヨーロッパにおける合理性概念の検討を行った。ともすれば、近代ヨーロッパに起源をもつ合理性概念にのみ着目してきた従来の哲学研究を、このような形でいったん相対化することは、合理性概念そのものの深化にとって不可欠である。さらに、シャーバー氏のセミナー及びシンポジウムでは、道徳的実在論に焦点を当て、より直接的に行為の合理性理解の可能性を問題にした。また、研究成果報告書第II部では、行為の合理性の分析と並んで、本研究プロジェクトのもう一つの柱である、哲学的な合理性概念と隣接諸学との関連にかかわる諸問題が論じられている。それらは社会生物学やフレーゲの論理思想、キリスト教信仰、認知科学、メレオトポロジー、技術者倫理と、一見バラバラな素材を取り扱っているように見えるが、それらはいずれも価値と人間の行為の合理性を軸とした認知と行為の問題の解明に他ならない。認知と行為の関連の問題は、さまざまなヴァリエーションをもって問われ続けてきた哲学の根本的な問題群であり、さらにその根底には人間とは何か、あるいは何であるべきかという問いが潜んでいる。これについてはさらに別のプロジェクトによって研究の継続を期することにしたい。
著者
堤 康央 角田 慎一
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、有効かつ安全な粘膜ワクチンシステムの開発を目的に、サイトカインアジュバントの最適化および、ナノキャリアによる抗原送達システムの構築を図った。その結果、粘膜ワクチンに最適なサイトカインアジュバントを探索し得る方法・基盤技術を確立すると共に、優れた粘膜ワクチン効果を発揮可能であること、ナノキャリアとの併用により、さらに効果が期待できることを先駆けて見出した。
著者
重本 隆一 篠原 良章
出版者
生理学研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

(1)方法の確立本研究ではまず、同側の神経線維の作るシナプスのみを調べるために、腹側海馬交連(VHC)をあらかじめ切断したマウスを作製した。このような動物から用意されたCA1領野のスライスから電気生理学的記録を行うとともに、シナプス蛋白質を精製しNMDA受容体の反応やサブユニットの定量を行った。また同様の動物から電子顕微鏡用の超薄切片を作成し定量的金標識法により個々のシナプスでのNMDA受容体の定量を行った。(2)グルタミン酸受容体の左右非対称性我々は既にNMDA受容体サブユニットNR2Bの左右のシナプスにおける局在の違いについて、postembedding法で解析し、錐体細胞のシナプス特異的に非対称性が存在し、介在神経細胞のシナプスは対称的であることを明らかにしていた(Wu et al., J Neurosci., 2005)。本研究ではシナプス全体としての左右差を明らかにするために、まずはシナプスに局在する蛋白質のうち量的な非対称性があるものを検索した結果、AMPA型グルタミン酸受容体GluR1サブユニットにNR2Bとは反対方向の左右非対称性がある事を定量的なWestern blotで明らかにした(Shinohara et al., PNAS, 2008)。その他のグルタミン酸受容体サブユニットには左右非対称性は認められなかった。(3)個々のシナプスにおけるNR2BとGluR1密度の逆相関当部門では、定量的な免疫電子顕微鏡法として凍結割断レプリカ免疫標識法の開発を進めている。すでにAMPA受容体については1チャネルを1つの金粒子で検出できる事を示しており(Tanaka et al., J Neurosci., 2005; Masugi-Tokita et al., J Neurosci., 2007)、NMDA受容体についても定量的な解析を進めた結果、NR2BとGluR1ではシナプスにおける密度に明確な逆相関が存在する事を明らかにした(Shinohara et al., PNAS, 2008)。(4)シナプス形態の左右非対称性また、我々は錐体細胞がシナプスを形成するスパインの構造自体に対応するシナプス間で大きな左右差が存在することを発見した(Shinohara et al., PNAS, 2008)。右側より入力を受けるシナプスの方が左側より入力を受けるシナプスよりも大きなスパインとシナプス面積を持っており、perforated synapseやmushroom型スパインの頻度が有意に高い。(5)その他のシナプス蛋白質の総量の左右非対称性NR2BとGluR1以外で、CA1によく発現しているイオノトロピック型グルタミン酸受容体、すなわちNR1, NR2A, GluR2, GluR3については、シナプス密度に左右非対称性は存在しないものの、これらの量はシナプス面積に比例していることが明らかになり、右側より入力を受けるシナプスの方が面積が大きい事を反映して、総量としてはこれらのシナプスでより多く発現していることが明らかになった。これはほとんどのPSD蛋白質にシナプスに含まれる総量としての非対称性が存在する事を示唆している。同様の理由により、NR2Bに関しては総量としての左右非対称性は打ち消されていることが明らかになった。逆にGluR1の非対称性は強調されており総量で2倍以上の差があった。(6)シナプス左右非対称性の生理的意義上記のようなグルタミン酸受容体やシナプス形態の左右非対称性の生理的意義を調べるためにマウス脳を左右で分断し、右の海馬を主に使うマウスと左の海馬を主に使うマウスの間で空間学習能を調べたところ、右は正常と差がなかったが左では障害が認められた。この結果はマウスでもヒトと同じように空間学習機能は右脳優位であることを示している。これは、右海馬シナプスに長期増強現象の結果増大するGluR1が密度が高いことと一致する結果である。
著者
江原 宏 三島 隆 内山 智裕 内藤 整 豊田 由貴夫
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

パプアニューギニア北部の東セピック州では,サゴヤシ民俗変種を,「大きい」(背が高い;樹高が大きい),「樹中の実(髄)が多い」といった樹体サイズなどを表す語,葉柄が白い,あるいは緑色といった特性,あるいは葉柄の基部の葉鞘に当たる部分の蝋状物質の蓄積程度の差を基準として仕分けているものと考えられた。同国ニューアイルランド島ケビエン地域においても,「木のように背が高い」との意味を示す語を名称とする民俗変種が分布するなど,樹体サイズの特徴が民俗分類で重要なことが明らかになった。また,胸高直径が特に大きな,多収性と考えられる民俗変種も認められた。ニューギニア島インドネシア領の西パプア州では,乾物率や澱粉収率の低い個体は,地下水位の高い地区に生育していたことから,生育環境が澱粉生産性に及ぼす影響の大きさが窺われた。一方,葉痕間隔が長いことは,生長速度が大きいことを意味するが,その値がニューアイルランド島の調査で幹胸高直径と負の関係にあることが窺われ,生長の早いタイプ,あるいは地域では,幹が細いということと考えられ,極めて興味深い結果を得ることができた。また,葉痕間隔とデンプン含量にも負の関係が認められ,生長の早いタイプでは低収傾向があることが窺われた。
著者
内田 裕之
出版者
山梨大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

純水素を高効率に大量製造可能な高温水蒸気電解(SOEC)、これを逆作動したSOFC発電用の高性能・高耐久性電極を研究開発し、以下の主な成果を得た。1)噴霧プラズマ合成法により、電子ーイオン混合導電性サマリアドープセリア(SDC)またはガドリニアドープセリア(GDC)粒子にNiやNi-Co合金ナノ粒子触媒を高分散することに成功した。2)固体電解質のイオン導電率が高いほどNi-Co/SDC水素極の性能が向上することを見出した。3)(Sr_<1-x> Ce_x) MnO_<3±δ>を合成し、SOFC酸素極として良好に作動することを見出した
著者
森迫 昭光 武井 重人 松本 光功
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

本研究は、磁気異方性の大きな材料であり、化学的に安定な酸化物である六方晶フェライト薄膜を高密度垂直磁気記録媒体として、低雑音化・高記録分解能化のために磁性粒子の微細化を主な目的として行ったものである。具体的にはバリウムフェライトやストロンチウムフェライト薄膜に注目して、添加元素や下地層に関する検討を行ったものである。その結果、バリウムフェライト薄膜にビスマスを添加することにより、結晶化温度の低減化可能であり、しかも粒子の微細化が可能であることが明らかになった。保磁力は3.7kOe程度と比較的大きな値ではあるが、今後の高密度記録媒体としては不十分な値であった。従来は、バリウムフェライト薄膜の下地層としては基板界面における拡散層の影響をさけるため、非晶質層を用いていた。ここでは磁化容易軸である六方晶系のc軸配向を促進する目的で、ヘテロエピタキシ効果を期待できるc軸配向した窒化アルミ層を下地層として用いた。その結果、c軸配向性に優れ、粒子サイズも40〜60nmまで抑制された、バリウムフェラィト/窒化アルミ2層膜を形成できた。そして保磁力も4.5kOeと高保磁力化が可能となった。しかしながら下地層の窒素の拡散に問題点が見いだされた。そこで、下地層として非晶質の酸化アルミ薄膜を用いた場合、観察される粒子の大きさは20〜40nmにまで微細化が可能であった。これを磁気力顕微鏡で観察した結果40nm程度のクラスターとして観察された。粒子間の磁気的な結合は主に静磁結合であった。ビスマス添加のバリウムフェライト薄膜ハードディスクについては、記録分解能をD5Oで評価すると、210〜230frpiと高密度記録の可能性をが明らかになった。
著者
斎藤 拓
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

高分子フィルムの超臨界流体下における応力測定を可能にさせ、二酸化炭素圧力が高くなりフィルムへの含浸量が増加するのに伴い応力や弾性率が低下して延伸しやすくなることを定量的に明らかにした。ポリプロピレンを二酸化炭素雰囲気下の低温で熱延伸するとサイズが数十nmの微細なナノ空孔が形成され、超臨界二酸化炭素雰囲気下の高温で熱延伸すると結晶化度を著しく増大することを見出し、それらの高次構造形成メカニズムに関して小角X線散乱測定の解析結果などに基づいて明らかにした。このような結晶高次構造制御により多様な物性を有する材料が得られた。
著者
唐木 清志 山田 秀和 森田 真樹 川崎 誠司 桑原 敏典 橋本 康弘 吉村 功太郎 渡部 竜也 桐谷 正信 溝口 和宏 草原 和博 桐谷 正信 溝口 和宏 草原 和博 磯山 恭子 藤本 将人
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

アメリカ社会科で展開されるシティズンシップ教育の動向を, 理論レベルと実践レベルから多面的・多角的に考察し, その現代的意義及び日本社会科への示唆を明らかにした。具体的な研究成果としては, 2009年3月に刊行された最終報告書に載せられた13名の論文と, 2009年1月13日にミニシンポジウムを開催したことを挙げることができる。研究を通して析出された「多様性と統一性」や「争点」といった分析枠組み(本研究では「視点」という言葉を用いている)は, 今後日本の社会科においてシティズンシップ教育を推進するにあたっても, 重要なキーワードとなるであろう。
著者
野村 雅一 樫永 真佐夫 川島 昭夫 藤本 憲一 甲斐 健人 玉置 育子 川島 昭夫 藤本 憲一 甲斐 健人 玉置 育子 小森 宏美
出版者
京都外国語大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

老後と呼び慣わされる人生の段階に至っても、青年・壮年期に形成された個々人のアイデンティティの連続性は保持される。それが若い世代のライフスタイルを受容する文化伝達の逆流現象が生じるゆえんである。認知症の患者には、錯誤により、女性は若い「娘」時代に、男性は職業的経歴の頂点だった壮年期の現実に回帰して生きることがよくある。人生の行程は直線ではなく、ループ状であることを病者が典型的に示唆している。
著者
井上 健 菅原 克也 杉田 英明 今橋 映子 モートン リース 劉 岸偉
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

近代東アジアにおいて異文化はいかに受容され、各文化圏の相互影響のもといかなる近代的諸概念や訳語を生み出していったのか。こうした問題意識に立脚して、まずは、近代日本における訳語の成立、近代的諸概念の成立に焦点をあて、調査、考察を試みた。近代日本の翻訳文学を戦前と戦後の連続と非連続の相においてとらえることによって、あるいは、日中、日韓の文化交流の諸相を具体的に辿ることによって、こうした視座の有効性が確認できた。