著者
小野里 雅彦
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

災害に見舞われた被災地の情報疎外を防ぎ地域防災力を強化することを目的に,現代版の火の見櫓と成りうる係留型情報気球システムInfoBalloonの研究開発を行った.扁平球形とピボット係留により風に対して安定な係留法を可能とし,InfoBalloonに搭載された監視カメラによる鳥轍映像システムを開発し,周辺の被災状況確認機能を実現した.さらにInfoBalloonを被災地での利用を目的に運用シナリオと安全ガイドラインを提示した.
著者
水野 恒史 片桐 秀明 深沢 秦司 釜江 常好
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

銀河宇宙線のエネルギー分布と空間分布を明らかにするべく,最新のフェルミ衛星を用いたガンマ線データの解析を2009年度から3年間に渡り精力的に進めた.その結果[ 1]太陽系近傍の宇宙線スペクトルが,地球上で測られた物に近いことを観測的に明らかにした一方で[ 2]太陽系付近の数100pc以内で宇宙線強度が20%程度ばらつくことと[ 3]銀河系の外側の領域で,宇宙線強度が従来の予想に反してあまり弱くならないことを見出した.これらの成果のうち,[ 1][ 3]は執筆責任者として論文を出版し,[ 2]も投稿済みである.関連する研究も加えると計17編の論文をフェルミチームメンバとして出版した.また多数の国内外の学会で継続的に成果発表を行った.
著者
佐藤 忠弘 新谷 昌人 今西 祐一 大橋 正健 福田 洋一 田村 良明
出版者
国立天文台
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本年度は科研費の最後の年度であり、神岡超電導重力計(SG)の性能の向上、特に冷凍機関係の性能向上を図るため、筑波大学研究基盤総合センター低温部門の池田博講師に、また、従来も共同研究をしてきたJSPSの外国人特別研究員(水沢勤務)Severine Rosat博士の2名に研究協力者として参加してもらった。スマトラ・アンダマン地震(Mw=9.0-9.3)の信号は世界の多くのSGで明瞭に捉えられた。神岡、松代を含む世界13ケ所のSG記録を使い、地球自由振動_0S_0モード(地球の半径が変化するモード)の解析結果を出版した。従来の研究で、このモードの地球の扁平度、回転の影響(緯度依存性)は知られていたが、緯度のみのならず、経度方向にも変化すること、また、その変化が3D-地震波トモグラフィーを使ったモデル計算から予測される分布と矛盾がないものであることが分かった。これは、世界初である。神岡と松代の解析結果は観測誤差の範囲で一致しており、解析の信頼度を測る目安になった。本科研費で実施した一連の観測・研究の大きな成果と言える。観測された_0S_0の振幅変化幅は全地球で2%程度の小さなものである。しかし、本研究の結果も示すように、振幅変化は地球の横方向の構造変化に敏感で、地球内部構造の研究にとって重要と言える。SGは絶対重力計を使い0.1%以上の精度で検定されている。これが、このような微小な現象が議論できる基礎になっている。しかし、SG観測点の数は、国際観測網で使われている地震計の数に比べ圧倒的に少ない。一方、地震計の振幅精度は数%程度で、これを0.1%台に向上できれば、地球内部構造の研究に大いに寄与すると言える。地震計検定の精度向上を目指し、本研究のレーザ歪計グループが開発したレーザ地震計とSGとの比較観測を、本年度、神岡で開始した。重力観測への大気圧変動、海洋変動の影響についての研究でも、大きな進展がみられた。なお、絶対重力計FG5によるSGの検定を3回(江刺1回、神岡2回)実施した。
著者
佐藤 夏雄 山岸 久雄 門倉 昭 小川 泰信 行松 彰 小野 高幸 細川 敬祐 田口 真 岡野 章一
出版者
国立極地研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009-04-01

南極昭和基地と北極域アイスランドは1本の磁力線で結ばれた共役点ペアの位置関係にある。この利点を最大限に活用し、オーロラの形状や動きを同時観測し、南北半球間の対称性・非対称性の特性を研究した。オーロラは南北両半球でその形が似ている場合や全く異なる場合など様々であった。特に、オーロラ爆発の直前に出現するビーズ状オーロラ、オーロラ爆発、点滅する脈動オーロラ、渦状オーロラ、などに注目して南北半球の比較研究を行った。そして、それらオーロラの発生源と発生機構に関する貴重な手がかりを得ることができた。また、観測から得られた実際の共役点位置の時間・空間変動と惑星間空間磁場との関係を明らかにすることもできた。
著者
守屋 正彦 井川 義次 山澤 学 柴田 良貴 藤田 志朗 木村 浩 菅野 智明 程塚 敏明
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009-04-01

儒教は、日本では古代より受容され、中国を中心とした東アジアでの一大文化圏を形成してきた。儒教は地域特有の文化と融合もし、礼拝のあり方、また聖像やそれを荘厳する絵画・彫刻は、東アジアの、また日本の各地域に展開し、礼拝の「かたち」は、儀式のあり方、礼拝の諸像の形式や配置、また唱道する詩文や作法などに見られた。その表象について、本研究では東アジアのいくつかの孔子廟を調査し、地域間の文化の同一性と民族的な表現の相違について確認し、5年に及ぶ研究期間中に国際シンポジウムを開催するとともに、年次報告書を作成して研究成果を発信した。
著者
冨田 太平 杉山 茂 妹尾 真紀子
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

1.水溶性キレートポリマーの調製と金属イオン結合特性水溶性キレートポリマーのポリ-α-アセチルアミノアクリル酸(P4A)およびポリ-N-メタクリロイル-L-アラニン(PMLA)を調製した。:GPC測定による重量平均分子量はP4Aは110万、PMLAは220万であった。P4AおよびPMLAについて重金属イオ'ン(Co, Ni, Cu, Zn, Pb)との結合平衡関係を求め、先に提案した錯形成モデルによって、それぞれの金属イオンに対して逐次錯安定度定数および平衡定数を求めた。これらの定数を用いて、錯形成モデルから任意のpHにおける結合平衡関係もよく表すことができた。水溶性キレートポリマーと多孔質膜との組み合わせによって、金属イオンの回収・濃縮できることが分かった。2.キレート剤含有マイクロカプセルの調製と金属イオン結合特性抽出剤の2-ethylhexyl 2-ethylhexylを内包するマイクロカプセルを調製し、径200〜300ミクロンのカプセルを得た(SEM観察)。また、FT-IR測定によってマイクロカプセルが抽出剤を内包していることを確認した。マイクロカプセルと希土類金属イオン(La, Ce, Pr, Sm,)との結合平衡を求めた。マイクロカプセルはpH2-3の酸性域においてもこれらの金属イオンを選択的に吸着し、水溶液中に溶存する金属イオンの回収・分離に有用であると考えられる。3.リン酸カルシウムなどによる重金属イオンの回収・固定化リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム等によるCo, Cu, Cd, Pbなどの重金属イオンの固定化による回収を行い、溶解度やpHの影響を検討し、イオン交換による固定化が溶解-沈殿機構によって説明できることを示した。
著者
諌早 勇一 MELNIKOVA Irina 服部 文昭 三谷 惠子 石川 達夫 楯岡 求美 松本 賢一
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

1)ロシアと汎スラヴ主義a)スラヴ民族は、しばしば互いの協力と連帯を求める「スラヴ主義」を唱えてきた。b)「スラヴ主義」には親ロシア的な汎スラヴ主義と反ロシア的な複スラヴ主義がある。c)汎スラヴ主義は正教徒の擁護を唱え、ロシアを中心とする拡張主義的傾向が強い。ドストエフスキイはその代表的論客である。d)複スラヴ主義は多くの場合、反ロシア的か反カトリック的だった。チェコスロヴァキアとユーゴスラヴィアはこの思想を体現した国家だが、複スラヴ主義の破綻とともに、国家としても消滅した。e)ソヴィエト映画では「スラヴの兄弟」という概念がしばしば謳われているが、この概念はロシアの拡張主義と深く結びついている。2)亡命と文化の越境a)第一次ロシア亡命者はスラヴ諸国に多く移住したが、受入国の亡命者への態度はさまざまだった。b)受入国が亡命者に好意的だった国では亡命文化が開花したが、非好意的な国では開花できなかった。c)亡命したロシア人演劇関係者は、西欧世界にスタニスラフスキー、メイエルホリドらの最新の演出方法を知らせるのに貢献した。d)チェコスロヴァキア・アヴァンギャルドのブックデザインは、ロシア構成主義の影響を色濃く受けているが、やがてその影響を克服し、独自のスタイルを生み出した。3)ナショナリズムとスラヴ語a)スラヴ諸国においては、近代文章語の成立はナショナリズムの高揚と密接につながっている。b)国家として独立できなかった民族の言語(たとえば上下ソルブ語)は絶滅の危機に瀕しているが、同時に少数言語として保存させるためのさまざまな方策が今日採られている。4)以上の成果は成果報告書「スラヴ世界における文化の越境と交錯」(2007)に掲載されているが、同時にホームページhttp:///www.kinet-tv.ne.jp/~yisahaya/Kaken-2.pdf上にも公開されている。
著者
熊谷 忠和 橘高 通泰 中島 裕 井上 信次 大野 まどか 立花 直樹 河野 清志 CLEMINSON Timothy
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、わが国の社会福祉教育養成校における、医療ソーシャルワーカーの教育養成について、国際比較(英国、米国、日本)を通してその在り方を検討するものであった。結果、(1)英国、米国では専門特化した領域ごとの教育養成制度はなく、ジェネリックの力量を引き上げることに向けられていた(2)養成カリキュラムの構成では大きい差異は認められなかった(3)ただし、実習教育の在り方が量的・質的ともに英国、米国と日本では大きい差異があった(4)その中で、英国、米国の実習教育では、その教育法としてリフレクティブ・ラーニングの取り組みが標準化していることなどが明らかとなった。
著者
樋口 京一 森 政之 澤下 仁子 亀谷 富由樹 内木 宏延 前田 秀一郎
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

アミロイドーシスとは蛋白質がアミロイド線維に異常凝集し、生体に傷害を与える疾患群である。アミロイド線維による伝播現象に注目して、合成ペプチドを用いた新たな線維形成解析システムと新規のアミロイドーシスモデルマウスの開発を行い、アミロイドーシスの発症機構や治療方法に関して体系的な解析を行った。その結果、1)糞や骨格筋を介した新たな伝播経路の発見、2)線維形成阻害ペプチド、熱ショック転写因子(HSF1)、アポリポプロテインA-I(apoA-I)等の治療ターゲットの発見、3)今後アミロイドーシス研究者が利用可能なモデルマウスの開発、などの成果を得た。
著者
豊島 裕子 遠藤 陽一 木村 直史 小幡 徹 衛藤 謙
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

(1) ヒトは、大きく分けてストレスが身体反応を起こしやすいタイプと、そうでないタイプに分けられる。前者では、ストレス負荷に対して脳血流が急激に増加する、脳波の伝達が速くなる、心電図所見で交感神経優位になっているなど、過剰な反応が確認された。(2) また、ヒトにストレスが加わると、血小板が活性化され、血栓を作りやすくなることがわかった。つまり、ストレス耐性の低いヒトでは、ストレス負荷で、血栓性疾患を起こしやすいことがわかった。
著者
日鷹 一雅 嶺田 拓也 渡邊 修 本林 隆 東 淳樹 大澤 啓志
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

まずはカメ類、両生類、畔畔の高等植物、昆虫等について現状の生息状況を在地の多様な研究者と検討した。その結果から、トノサマガエル、イシガメ、チガヤ、ススキ、ヒメゲンゴロウなどの水生昆虫などの水田普通種が地域的に減少傾向であった。これらの普通種減少について、激減仮説(新農薬・侵入生物・栽培環境・圃場整備など)のそれぞれが減少要因に関与していた。減少傾向の種のうち、とくに減少傾向の顕著な種群に悪影響を及ぼす要因について影響評価実験を行った。メソコズムとマイクロコズムを考案し、半致死濃度を求め、ある殺虫剤の悪影響をつきとめた。昆虫種の中には地域個体群の激減に一部の普及農薬の化学成分が影響していた。減少種とその要因の関係性は多様であり、在地の研究者の役割は大きい。
著者
多田 邦尚 一見 和彦 山口 一岩 石塚 正秀 本城 凡夫 樽谷 賢治
出版者
香川大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

瀬戸内海東部海域における近年の栄養塩低下とその原因について研究した。瀬戸内海では高度経済成長期に富栄養化が著しく赤潮も多発していた。その後、水質は改善されたが、逆に近年では養殖ノリの色落ち等の被害が出ている。栄養塩の減少原因には、陸域からの窒素負荷量の減少だけでなく、堆積物からの栄養塩溶出量の低下も大きく影響していると考えられた。栄養塩濃度と赤潮発生件数等との関係についても検討した。
著者
ヤマンラール水野 美奈子 黄 暁芬 杉村 棟 小柴 はるみ 桝屋 友子 阿部 克彦
出版者
東亜大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

1)海外調査を通じて得た主な研究業績(1)研究対象である2冊の詩画帳(通称サライ・アルバム)(トプカプ宮殿美術館所蔵登録番号H.2153,H.2160)の合計289フォリオ、2152作品のデーターの入力を完了した。2冊の詩画帳の画像とデーターの総合的入力は本研究グループが初めて成し遂げた成果である。(2)2冊の詩画帳の書の索引の作成が完了した。これも本研究グループがはじめて成し遂げた成果である。絵画作品に関しては、索引を作成中である。(3)平成16年にはベルリンの国立図書館が所蔵するディーツ・アルバムを調査し、トプカプ宮殿美術館の上記2冊の詩画帳との関連性を考証した。この件に関しては更に詳細な研究調査が必要である。2)研究発表における主な業績:11.研究発表の中でも以下の論文発表は新説であり、本研究グループが成し遂げた成果である;(1)ヤマンラール水野美奈子「サライ・アルバムH.2153における半円形のデザイン文様に関する考察」:従来半円形デザイン文様は根拠なしに襟の型紙とされていたが、住吉神社、手向山神社や中国の例証などからそれらが馬具の障泥のパターンであることを証明した。(2)関喜房「サライ・アルバム(H.2153,H.2160)の装丁の考察(原文ペルシア語)」:研究対象の詩画帳は数回装丁を改められているが、そのオリジナルな装丁の考察に示唆を与える画期的研究である。3)海外における講演・発表(1)上記2)(1)は平成14年の国際トルコ美術史学会で発表された。(ヤマンラール水野美奈子)(2)平成16年10月に中国、煙台大学でサライ・アルバムに見られる中国美術の影響を発表し、中国で始めてサライ・アルバムを紹介した。(ヤマンラール水野美奈子、黄暁芬)(3)平成17年3月には、イラン国立アカデミーでサライ・アルバムを紹介。(ヤマンラール水野美奈子・杉村棟)
著者
梅室 博行 徃住 彰文 福田 亮子
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、「ユーザに感情反応を引き起こす技術製品・サービス」をアフェクティブ・テクノロジーと定義し、その概念および方法論を確立することを目的とした。まず概念を定義した後、製品・サービス側の要因(原因系)とユーザの感情反応(結果系)それぞれについて要因を分類・体系化するとともに測定方法を確立した。さらに原因系・結果系の両要因の関連を明らかにし、実際にアフェクティブ・テクノロジーを造り出すための方法論を提案した。また造り出す組織に求められる資質やその評価方法について明らかにした。
著者
奥津 文子 星野 明子 江川 隆子 荒川 千登世 横井 和美 本田 可奈子 山田 豊子 赤澤 千春 山本 多香子
出版者
滋賀県立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

リンパ浮腫セルフケア支援における携帯電話使用群・通常支援群共、6か月間に蜂窩織炎等の合併症を発症した者はいなかった。周囲径については、有意差は見られなかったが、インピーダンスによる水分量については、携帯電話使用群が有意に減少しており、浮腫が改善していることが分かった。セルフケア実施状況については、携帯電話使用群が有意に実施状況が高かった。抑うつ状態については、携帯電話使用群が有意に低かった。以上より、リンパ浮腫患者に対する携帯電話による支援は、セルフケア実施や継続、水分量の減少、および抑うつ症状の改善に有効であることが分かった。
著者
カートハウス オラフ
出版者
千歳科学技術大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

大面積のディウェッティング装置の製作に成功した。すなわち、ディウェッティング現象を用いて、30×40センチの基板に均一の高分子や低分子のマイクロ構造を作ることができるようになり、マイクロレンズのアレーや有機トランジスタのナノファイバアレーの作成に成功した。
著者
伊藤 繁 三野 広幸 宇津卷 竜也 石浦 正寛
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

クロロフィルdをもつ新発見の光合成生物Acaryochloris marina の光合成系の反応中心複合体及び光捕集系タンパク質の機能と構造その遺伝子をを検討した。クロロフィルd 合成系の原因遺伝子は未特定におわったが、クロロフィルdを使う光合成系の特性を明らかにした。多様な生物の光合成系の比較研究を行い、光合成光反応系の構築原理を検討した。新規の光センサータンパク質についても研究した。
著者
赤木 泰文 小笠原 悟司 竹本 真紹 藤田 英明 佐藤 之彦 市川 修 深尾 正 数乗 有
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

現在,高エネルギー加速器研究機構が中心になって計画を進めている大型ハドロン計画(JHL : Japan Hadron Facility)の50GeV陽子加速器には55MWの高性能・大容量の電磁石電源が必要となる。この電磁石電源は,電磁石電流が0〜5kA,有効電力が+55MW〜-55MW,周期約4秒で激しく変動する。しかも陽子加速器はひとたび実験に入ると,昼夜を問わず2,3週間の連続運転が行われる。このような連続した激しい電力変動は,周囲の配電系統だけでなく上位の電力系統に種々の障害を引き起こす恐れがあるため,電力変動の抑制を目的とした電力補償装置の設置が必要不可欠となる。本研究では,加速器電磁石電源の電力変動を抑制する交流励磁フライホイール発電機システムの開発を目的としている。具体的には理論解析とコンピュータシミュレーションをベースに,7.5kW実験システムを設計・製作し,交流励磁フライホイール発電機システムの有効性を実証しようとするものである。本研究の成果は,以下のように要約することができる。1.立型フライホイール発電機を設計した。次に,交流励磁用PWMコンバータ・インバータを設計・製作し,7.5kW実験システムの基礎特性を評価した。2.交流励磁フライホイール発電システムの新しい制御法として,交流電動機ベクトル制御と非干渉制御を融合した制御法を開発し,その有効性を実験によって確認した。3.交流励磁フライホイール発電機の直流偏磁現象を実験的に検討し,直流偏磁を抑制する新しい制御法を開発した。さらに,その有効性を実験によって確認した。
著者
大久保 恒夫 宮田 剣
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究では自然界の散逸構造形成を伴う自己組織化の中でも最も単純な系と考えられるコロイド分散液の自然乾燥の過程で発現する、対流、沈降、乾燥散逸パターンの徹底した調査を行った。特に、沈降パターンについて世界で初めて調査した。次の研究成果を得た。(1)コロイダルシリカ分散液等を用いたカバーガラスや時計皿、シャーレ中での実験によって、沈降パターンは基本的には「ブロードリング」であることを明らかにした。このパターンは対流による粒子のせり上がりと重力沈降との拮抗で形成されること、更には、粒子は容器底面から電気二重層で浮いた状態で拮抗し、パターンは温度や湿度などの外場およびそれらの因子の時間勾配に応答していることを明らかにした。(2)ほとんどあらゆる溶質(コロイド粒子、高分子、染料分子、低分子イオン、界面活性剤など)の乾燥パターンはブロードリングとスポークラインに代表されるマクロパターンとともに多彩なミクロパターンが階層的に構成されていることを明らかにした。また、基板の傾斜効果なども調査した。(3)加熱した墨汁液の対流パターンを詳細に調査した。更に、ポリメチルメタクリレート粒子分散液(コロイド結晶)の室温での対流パターンを直視観察することに成功した。スポークライン構造(寺田セル)の特性を明らかにした。また、種々の濃度の味噌汁の対流パターンを観察し、ブロードリング構造とともに変形したバナールセルを発見した。(4)流動場下でのパターン形成や理論的検討(特に、コンピュータシミュレーション)については残念ながら本研究期間内に実施出来なかった。今後も精力的な研究を続けたい。
著者
前澤 裕之 山本 智 鵜澤 佳徳 長濱 智生 入交 芳久 山本 智 鵜澤 佳徳 長濱 智生 入交 芳久
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

大気中の酸素原子(OI)やOHラジカルは、オゾン層回復・破壊や地球温暖化、揮発性有機物質の消失過程について理解を深める上で鍵を握る成分である。我々はこれらのガス種の1.8-4THz帯スペクトル線のリモートセンシグを実現すべく、NbTiN超伝導細線を集積したホットエレクトロンボロメータミクサと呼ばれる次世代のヘテロダイン検出素子の改良・開発を行った。さらに、低振動のパルス管冷凍機を用いた冷却性能評価システムを開発し、これを実際に用いて、1.5THz帯でのHEBM素子の雑音性能、動作安定性を評価した。その結果、1600K以下の雑音温度(RF/LO結合効率とレンズ表面での反射を校正)を実現した。さらに、この最小雑音温度域には、中間周波(IF)出力(0.8-1.5GHz)の極大値が存在し、この場所において実用的な10秒以上の安定時間(アラン分散)を得られることが分かった。これは、電流電圧(局部発振波パワー)の揺らぎの影響がIF極大域では緩和されることを示唆する。我々のHEBM素子は特異な特徴をもつことが分かったが、これらは、本申請において安定・高信頼の冷却系・バイアス回路系などの評価システムをあわせて開発したことで、初めて得ることができた成果である。今後HEBMの1.8-4THz帯での高感度化・安定化を図り、測器搭載による実観測を目指す。