著者
野村 理朗 Rappleye Jeremy 池埜 聡 高橋 英之
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

もとより複合的な高次感情である「畏敬」は,喜び・怒り・悲しみといった基本感情とは異なり,それを生じさせる規定条件に不明な点が多い。この正負の方向へと分岐しうる畏敬の発生機序の解明が重要課題であるとともに,AI等の開発,自然災害等に関わる心理支援への応用などの可能性も秘めている。本研究は,心理学,比較文化,ロボット工学等の領域を横断して連携し,複合感情としての「畏敬」の効用,およびその個人差の基盤となる心理・生物学的機構を明らかにするとともに,フィールド調査やロボットを用いた構成論的アプローチを取り入れた方法論により,「畏敬」の応用までを視野にいれた革新的知見を得ることを目指す。
著者
吉田 栄人
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

ハマダラカ唾液腺特異的プロモーターを用いて、唾液腺にワクチン抗原を発現させることに成功した。作製した遺伝子組換え蚊(TG)の口吻から組換えタンパクが放出される様子観察することに成功した。また、抗マラリア抗体を唾液成分として発現するTGを作製し、この蚊はマラリア原虫の伝播能が著しく阻害されることを証明した。
著者
山崎 準二 高谷 哲也 三品 陽平 濱田 博文 田中 里佳 高野 和子 高野 貴大 朝倉 雅史 山内 絵美理 村井 大介 長谷川 哲也 栗原 崚
出版者
学習院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

「省察」それ自体が問い直されぬまま教師の専門性の中核を成す絶対的理念と化す傾向にある今日、大学における教員養成の「省察」言説を相対化し、不可視化された問題状況を明らかにするために、現代日本の大学における教員養成を方向づけてきた「省察」言説とはいかなるものか、またこの「省察」言説が隆盛する中で展開される学びの実態と問題はいかなるものか、という本研究の核心をなす2つの学術的「問い」に応えるため、教師教育における言説の特徴の解明、「省察」が重視される学術的・実践的原理の解明、「省察」による学びの実態把握、そして教員養成における「省察」のあり方の検討、という4つの研究課題に取り組むものである。
著者
大田 えりか 本田 由佳 須藤 茉衣子 新野 由子
出版者
聖路加国際大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2022-04-01

本研究では、主に妊娠前の働く女性に焦点を当て、健康行動の実態やニーズを把握し、ウィズ/ポストコロナ時代に利用できる携帯のアプリケーションソフト(以下アプリ)を利用した栄養と運動を中心とした健康に対する介入プログラムを開発、検証する。主な目的は以下の通りである。1)妊娠前の働く女性を対象とした、モバイルアプリとFitbitなどを使ったInternet of Things(以下IoT)の科学的根拠に基づく健康支援プログラムを開発する2)ランダム化比較試験によって、健康支援プログラムの有効性を検証する
著者
高田 純 森 祐二 遠藤 暁 星 正治
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

本研究では、ポータブルスペクトロメータを用いて体内放射能Cs-137および内部被曝線量を迅速にその場評価する方法を開発することを目的とする。このポータブルホールボディーカウンターの開発により、世界のいかなる地域の緊急時対応や、装置の無い地域でも人体放射能汚染の迅速な調査が可能になる。この試みはこれまでになされていない方法であり、土壌、食品そして人体放射能汚染の食物連鎖の調査をこのひとつの検出器で行える特徴がある。直径76.2mm長さ76.2mmのNaI(T1)シンチレーター検出器を製作し、小型マルチチャンネルアナライザー、ノート型コンピューターからなるポータブルホールボディーカウンターの開発に取り組んだ。この検出器を、放射線医学総合研究所のCs-137人体ファントムおよびI-131模擬甲状腺ファントムを利用して、校正した。国内機関におけるCs-137全身量測定の相互比較の結果、バイアスは10%以内と良好であった。ビキニ水爆により汚染したロンゲラップ島の再建工事に従事する労働者、チェルノブイリ原発事故で汚染したベラルーシ・ホイニキライオンの甲状腺ガンになった住民、ロシア・チェリャビンスクの原爆プルトニウム製造施設マヤーク周辺核汚染地に暮らす住民等の体内放射能測定を実施し、本測定システムの試験を行なった。これらにより汚染地のバックグラウンドスペクトルの差し引きなど重要な方法を確立できた。地表、食品などの環境核汚染密度も、本器で測定でき迅速にその場解析ができることを実証した。これらにより、汚染地に暮らす住民へ結果を効果的に知らせることも可能となり、当初の目的を達成できた。
著者
山崎 仲道 中塚 勝人 小田 幸人 後藤 芳彦 橋田 俊之 土屋 範芳
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

水および二酸化炭素を金属鉄あるいはニッケルとともに水熱条件にさらすと水と二酸化炭素の両者から酸素が金属に引き抜かれ、結果として水から活性に富んだ水素が発生すると同時に二酸化炭素も活性化する。この両者が反応して有機化合物が生成する。この原理を確認し、平成14年度では反応条件と生成物の解析から中性条件では、一酸化炭素を経由するフィッシャートロプシュ反応を主反応とし、メタンからヘキサンまでのアルカン類の生成を確認した。また酸性条件では酢酸を中心としたカルボン酸の生成を、また金属のかわりにマグネタイトを還元剤として使えば、エタノールの生成をそれぞれ確認した。工業化を考えた場合、メタンおよびカルボン酸を高収量で得られることを見出した。工業化では焼却炉あるいは発電所からの廃ガスを直接利用することになる。14年度では反応のプロセスを探求すると同時に工業化のための大量処理を仮定した流通系の連続処理プロセスの小型テストプラントを作成し、非平衡下での反応を調べた。バッチ式オートクレーブを使った平衡系の反応、いいかえれば理想系での実験に比べて流通型オートクレーブは、自然界での現実の反応に近く、また大量処理のための工業化プロセスの主体をなすものであるが、科学的には未踏領域ともいわれる複雑反応系である。ここでは加熱パイプの内部に旋盤による屑状態の鉄を置き、これに塩酸と二酸化炭素を200℃加熱下で流通させ、生成有機物の気体・液体を相互に分離し、それぞれを分析する方法をとった。マイルドな水熱条件下で水起源の活性水素をつくり、二酸化炭素を同時に活性化せしめ、炭化水素を合成、反応条件による反応選択性の可能性を見出し、ついで収量・収率から流通式の非平衡反応で工業化の可能性を提示するという一連の計画を遂行し、流通式非平衡装置の設計・製作および装置の特性試験を行い、それを使って流通系による工業化の可能性を得ることができた。
著者
上野 千鶴子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

本研究は、高齢社会の地域福祉の担い手として注目をあつめている市民事業体が経営体として継続可能な条件をさぐることを目的としたものである。対象は九州地域の生協グリーンコープ連合が設立した、グリーンコープ福祉連帯基金傘下の福祉ワーカーズ・コレクテイブ(2001年12月現在で63団体)である。介護保険施行後、指定事業者として居宅家事・介護支援事業、ミニデイサービス事業等に参入した。第1次調査ではワーカーズ・コレクティブの団体および個人を対象に、定量および定性調査を実施した。その分析からあきらかになったことは、(1)経営コストは時間費用で200%と出て、企業体とくらべても競争力がある。(2)生協による創業期支援が果たした役割が大きい。(3)ワーカーの分極化(やりがい型とボランティア型)を射程に入れた労働編成が課題である。(4)経営研修を含む代表とワーカーの研修プログラムが必要である、などである。第2次調査では利用者とその家族を対象に、定量調査と定性調査の両方を実施した。ワーカーズ・コレクティプおよび代表の追跡調査およびケアマネージャー、地域の関連書団体のインタビュー調査もあわせて実施した。介護保険に対する評価は利用者・家族ともに満足度いが、利用率は約60%(全国平均49%)と抑制されており、その理由に需要と供給のミスマッチ(サービスのメニュー、時間帯、保険外利用等)が挙げられた。ワーカーズ・コレクティブの団体および個人にとっては、利用者数、ケア件数、ケア時間数共に急成長をみせ、ワーカー報酬、役員手当ともに増大し、経営的にも安定した。定性調査からは身体介護と家事支援の区別がつきにくい実態に対し、報酬格差が大きすぎる問題が指摘され、家事介護1本化への制度の手直しが求められる。周辺調査からは、ケアマネージャーの地位と報酬、権限と能力の低さが問題として浮かび上がってきた。以上の調査から、地域福祉の需要と供給の安定したサイクルを構築するために、市民事業体が果たす役割が大きく、かつその条件を介護保険が提供したことを確認することができた。865字
著者
妹尾 春樹 佐藤 岳哉 今井 克幸 佐藤 充
出版者
秋田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

北緯80度に位置するスバルバール群島(ノルウエー領)にて、知事の許可を得て、以下の哺乳類および鳥類を捕獲して肝臓を、高速液クロによるビタミンAの分析、および形態学的手法(塩化金法、ビタミンAの自家蛍光観察のための蛍光顕微鏡、透過型電顕、石井-石井鍍銀法、アザン染色、HE染色、Sudan III脂肪染色)によって解析した。捕獲した哺乳類は北極グマ(3頭)、北極キツネ(8匹)、ヒゲアザラシ(6匹)、ワモンアザラシ(6頭)、スバルバールトナカイ(7頭)であり、鳥類はシロカモメ(22羽)、ウミガラス(4羽)、ニシツノメドリ(6羽)である。高速液クロによる分析では、北極グマ肝臓が最も高濃度にレチニルエステル(23,300nmole/g wet weight)を貯蔵しており、ついで北極キツネ(18,439±2,314)、ヒゲアザラシ(5,956±5,857)、ワモンアザラシ(1,551±2,486)、スバルバールトナカイ(921±264)であり、鳥類ではシロカモメ(4,710±3,164)、ウミガラス(1,589±225)、ニシツノメドリ(1,183±589)であった。塩化金法では肝臓星細胞が特異的に黒染し、蛍光顕微鏡下にこれらの細胞の脂質滴から強いビタミンAの自家蛍光が発していた。北極グマおよび北極キツネ、ヒゲアザラシの肝臓ではHE染色、Sudan III脂肪染色でも容易に星細胞の脂質滴が認められた。また、これらの動物は自然のなしたビタミンA過剰症といえるが、肝臓には線維化などの病理学的所見は見られなかった。透過型電顕を用いたモルフォメトリーでは、星細胞の数はヒトやラットを含む他の動物と差は無かった。しかし、透過型電顕で星細胞に含まれる脂質滴の占める面積は北極グマおよび北極キツネ、ヒゲアザラシでは有意に大きかった。北極グマおよび北極キツネ、シロカモメ、ヒゲアザラシなど北極圏における食物網(food web)の上位に位置する動物は大量のレチニルエステルを肝臓星細胞に貯蔵している。モルフォメトリーでは、これら動物においては星細胞の数は他の動物と差は無かった。しかし、各細胞に含まれる脂質滴の占める面積が有意に大きかった。すなわち、各々の星細胞のビタミンA貯蔵能が高いことが示唆された。北極圏の食物網の上位に属する哺乳類と鳥類は星細胞にヒトやラットなどの動物の20-100倍高濃度のレチニルエステルを貯蔵していた。さらに興味深いことに北極キツネでは肝臓からビタミンAが溢れ出し、腎臓に貯蔵されていた。このことは内分泌かく乱物質による汚染を示唆している。
著者
中谷 友樹 矢野 桂司 井上 茂 花岡 和聖 伊藤 ゆり 田淵 貴大 埴淵 知哉
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究の目的は(1)日本社会を対象としたADI指標(地理的剥奪指標)の提案と、(2)小地域(近隣地区レベル≒町丁字スケール)におけるADIと健康指標との関連性を近隣環境要因の媒介に着目した評価、の2点である。ADIについては、貧困・剥奪に関連した国勢調査の小地域統計資料を利用して算出し、各種の健康指標との関連性を分析した。結果として、主観的健康感やがんの生存率など、各種の健康指標の悪化と地理的剥奪の高さとの関連性を報告し、その背景となる近隣環境との関係を考察した。これらを通して、健康の地理学における学際的研究の推進とともに、日本における小地域統計を利用した統計の高度利用について検討した。
著者
川平 敏文 合山 林太郎 高山 大毅 山本 嘉孝 天野 聡一 岩崎 義則 吉田 宰
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2022-04-01

「近世随筆」とは、17~19世紀の日本において、学者や文筆家が、事物の由来・人物の評判・市井の噂話など、種々雑多な内容を書き留めた書物群を指す。従来の「近世随筆」研究は、文学・思想史・歴史の研究者が、それぞれの分野的関心や研究ディシプリンに沿うかたちで行ってきた。しかし、本ジャンルのもつ内容的な広がりに着目するならば、それら三つの研究領域を横断的に貫く視点も重要ではなかろうか。このような考えのもと、本研究では、文学・思想史・歴史の研究者が一堂に会して、「近世随筆」の成立・展開・終焉などの諸問題について領域横断的に議論する。そして最終的には、その成果を資料翻刻と研究論集という形で、世に公表する。
著者
多田 剛
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

クモ膜下出血患者の髄液TGF-β1濃度を、正常圧水頭症を併発した患者と、しなかった患者の間で比較すると有意差が存在する。(1994)今回の研究でクモ膜下出血後くも膜下腔に遊離された白血球よりIL-6,TGF-β1などの炎症性サイトカインが多量に放出され、引き続いてCRPが上昇してくることがわかった。また出血後2週後の髄液中には活性型のTGF-β1が明らかに増加しており、これがクモ膜下出血後のくも膜下腔の繊維化に重要な役割を果たしている可能性があることがわかった。(2001)実験的にもマウスの髄膜腔内にhuman recombinant TGF-β1を注入すると3週以降に容量依存性に脳室拡大が出現し交通性水頭症ができる。(1994)また、同種血清をマウス髄腔内に注入しても、同様の交通性水頭症が誘導され、これは抗ヒトTGF-β1ウサギ抗体で阻止できた。(1997)マウスの髄膜を電子顕微鏡で観察すると髄注後約2週間でくも膜下腔に繊維芽細胞が遊走してきてくも膜下腔の繊維化がおこる。(1998)TGF-β1注入により水頭症が発生したマウスのくも膜下腔にインクを注入すると、シャム群では10分以内に髄液が頚部リンパ節に流出が確認されるのに対し、水頭症群では有意の流出遅滞が見られ、くも膜下腔の繊維化が髄液の流れを阻害していることが明らかとなった(1999)また、ラットの側脳室にhrTGF-β1を注入すると、同様にクモ膜下腔の繊維化がみられ、Morris水迷路で空間認識能が低下していた。さらにラットの側脳室にNa^+,K^+-ATPaseの阻害剤であるouabainを注入すると空間認識能が可逆的かつ容量依存性に抑制されることを見い出した。またラットの脳室内にTGF-β1を投与すると、脳室拡大がないにもかかわらずくも膜細胞のNa^+,K^+-ATPase活性が低下し、空間認識能が抑制されることも見い出した。これらの実験やこれまでの研究から我々は正常圧水頭症の病態は脳脊髄液の灌流障害による脳室拡大というよりも余剰のneurotransmitterやneuronやgliaの代謝産物を含む脳の細胞外液の排泄不全がこの病態の本質であると考えられる。
著者
塚田 晃三 藤田 道郎 山本 一郎 田村 恭一 宮前 二朗
出版者
日本獣医生命科学大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

がん罹患犬におけるDLA-88型別に提示されるがん関連抗原の一つSurvivinを標的としたがん特異的免疫療法(ペプチドワクチン)を実施することを目的に、これまでDLA-88型別に特異的に反応する抗原ペプチドの同定を行ってきた。本研究では、1)有効なワクチン用adjuvant成分を、がん拒絶に特化したスクリーニングで選別し、2)現行のDLA-88型タイピングに代わる簡便な適合型検査を確立させ、3)臨床研究の開始後、1-2年間の予後観察(CT/MRI検査)により、その効果を腫瘤の退縮期間、寛解率、及び生存期間で判定する。
著者
久塚 純一 岡沢 憲芙 篠田 徹 畑 恵子 坪郷 實 早田 宰 藤井 浩司
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

各国のNPOの概念規定について検証しつつ、3年間の調査・研究をまとめた。久塚は、主に、日本とフランスにっいて研究した。(1)日本については、事実上存在している法人格を有しない市民団体から、法人格を有するNP0にまでについてヒアリングを行い、さらに、NPOを管轄している行政にもヒアリングを行った。結果として、日本においては、NPOが政策形成に及ぼす影響は、法人の制度や税制がネックとなり、まだ大きなものとなっていないものの、キーパーソンやネットワーク機能を有するプラザなどが存在している場合は、NPOの機能が発揮され、行政とのパートナーシップが形成されつつあることがわかった。(2)フランスについては、Associationが活動しやすい土壌・制度が整っており、国民の意識調査からも、消費者保護の問題や老親の問題などはAssociationへの期待が高く、公的セクターとの役割の住み分けが形成されていること、Associationが政策形成に大きな役割を果たしていることがわかった。岡沢は、スウェーデンのNPOの概念が、国家の役割との関係で明確なものではないことを前提としつつ、実態として存在している人々の連帯を対象として、EU加盟との関係で進行する市場化に苦慮している現実を歴史的経緯を踏まえて研究した。篠田は、アメリカにおける地域障害者ガバナンスにおけるNP0について、従来、個別研究にとどまっていた分野についての類型化と機能分析を試みた。畑は、メキシコのNPO・NGOについて、市民組織が政治的変容とどのようにかかわっているのかを念頭に置きつつ、福祉レジームと貧困削減政策との関係について研究した。坪郷は、ドイツにおける市民団体が環境問題などざ果たしている役割について研究した。早田は、イギリスにおける都市再生についての議論を整理した。藤井は、第三の道の方向性とNPOとの関係について研究した。3年間の調査・研究によって、(1)各国においてすでに存在していた各種の民間団体とNPOのような新しい民間団体との間の緊張関係が異なっていること、(2)そのような緊張関係は、福祉や環境というような個別の政策分野で大きく異なっていること、(3)政策分野ごとの差異は、国が果たすべきと考えられている役割との関係で、歴史的に異なっていること、(4)しかしながら、各国共通に、NPOについては期待が高まっており、それらの今後は、主に、法人にっいての制度と税の制度が鍵を握っているであろう、ということがわかった。
著者
山井 弥生 岡澤 憲芙 久塚 純一 田辺 欧 石黒 暢 吉岡 洋子
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究の目的はスウェーデン、デンマーク、ノルウェー、フィンランドの北欧 4 カ国を研究調査対象とし、北欧諸国の中でも介護に多様性に富んでいることを明らかにすることであった。同時に、各国の文化と歴史、政治動向の視点から、その要因を比較分析することを試みた。5年間にわたり、各地でフィールド調査を行い、現地の研究者との議論をする中で、市場化の度合い、サービス供給者の特徴などに違いが見られ、その要因は政治に影響される部分が多いことが明らかとなった。介護は介護を必要とする人の生活を支えるものであり、当然のことながら地域特性や歴史文化の影響もあることが明らかとなった。
著者
村上 和雄 堀 美代 坂本 成子 大西 淳之
出版者
公益財団法人国際科学振興財団
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究は、瞑想や祈りなど人類が社会生活の営みに取り入れてきた宗教性が健康にもたらす効果を、アロスタティックな心身変容と捉えて実証した。仏教の護摩行を実践した僧侶は炎症関連,脂肪酸代謝関連,NK細胞調節関連の遺伝子が発現増加し、呼吸やアミノ酸代謝、脂質代謝などの代謝産物の変動が見られた。一方、ヨーガ瞑想の実験では、熟練度で遺伝子発現プロファイルが異なっていた。しかし、ヨーガの経験の有無に関係なく、ネガティブな感情が低下し、がん抑制関連の遺伝子発現やケトン体の生合成や分解に関わる代謝産物などが変動した。また、護摩行とヨーガ瞑想ともに未経験の被験者において即時的な効果が引き出されることも分かった。
著者
宮本 英昭 石上 玄也 田中 宏幸 尾崎 正伸 日野 英逸
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

数値計算とデータ解析により火星表面は水平方向に飛来するミュオンが地球上より多く存在し,ミュオグラフィが適用しやすいことを確かめた.ピンゴ状地形の内部氷コアをモデル観測シナリオとして,30日程度で観測可能となる超小型ミュオグラフィ装置を設計し,この原理実証モデルを開発した.地上の3地点で5週間に渡り実証試験を実施し,開発した装置が十分な精度で密度構造を計測可能なことを確かめた.3年と短い研究期間であったが,世界発の宇宙版ミュオグラフィ装置の原理実証機の作成と運用,さらに火星で運用するための移動手段の開発・運用に成功し,予定以上の大きな成果を得ることができた.
著者
小豆川 勝見 堀 まゆみ
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2022-04-01

「なぜ放射性セシウムを高濃度・基準越えの魚が発生するのか」を淡水魚・海水魚の両面で解明するために,1.線量率が空白地帯になっている山間部における常時観測可能な線量計の設置,2.淡水魚・海水魚およびその環境(餌・堆積物)の年間を通じた連続採取・測定の実施,3.チェルノブイリ原発周辺の魚類との比較,という3点の観点から研究を遂行する.
著者
中原 貴 望月 真衣 小林 朋子 相良 洋 中島 慎太郎
出版者
日本歯科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2021-04-01

本研究は、現代の歯科インプラント治療で使用されるチタン製人工歯根に代わり、歯周組織を備えたバイオ再生歯根の創製を目的とする。すなわち、我々が開発した“歯根・歯周組織ユニット”の体外再生を可能とする新規培養システム「器官再生法」を駆使し、同ユニットの再生能を有する歯性細胞群「Regenerative(Reg)細胞群」の同定、および同定したReg細胞群が担う再生誘導因子の特定をめざす。本研究は、普遍的な器官再生法の確立と再生誘導医薬の創出により、真に臨床応用できる歯の再生である『再生歯インプラント』の実現を最終目標とした基盤研究である。
著者
平川 新 寺山 恭輔 畠山 禎
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究では、幕末開国以前の日露関係を研究するために、主としてロシア側史料の収集を行った。日本における日露関係史の研究は、言語の壁もあって日本側の記録でおこなわれることが多かったからである。まだ日本の学界に紹介されていないロシア側史料を収集し、それを翻訳刊行して日露関係史の研究条件を改善しようというのがプロジェクトのねらいであった。2004年に出版した『ロシア史料にみる18〜19世紀の日露関係』第1集に引き続き、本研究期間に次の2冊の続編を刊行した。*『ロシア史料にみる18〜19世紀の日露関係』第2集(2007年3月刊行)1760年代から1790年代までの49点を収録した。内容は、ロシアが千島列島を南下して日本に接近してくる過程の史料が中心。帝国ロシアや毛皮商人によるアリュート人やアイヌ支配の進展なども具体的に把握可能であり、日本人漂流民大黒屋光太夫を根室に送還した遣日使節ラクスマン関係の史料も収録した。*『ロシア史料にみる18〜19世紀の日露関係』第3集(2008年3月刊行)1701年1762年までの史料54点を収録した。ロシアがカムチャツカ半島を征服し、北太平洋地域へと雄飛していく時期である。これまでに発見された日本人漂流民のもっとも古い記録をはじめ、コサック隊がカムチャツカを足場に千島列島を南下してくる過程の報告書、ロシアの版図を一挙に拡大させたべーリング探検隊の準備過程からの記録、その分隊として組織されたシパンベルグの日本探検隊の記録など、日本の北方世界で展開した特徴的な動きを知ることができる。
著者
畠 俊郎 川崎 了 菊池 喜昭 森川 嘉之 水谷 崇亮 金田 一広
出版者
富山県立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

沿岸域における社会基盤施設を対象とし,微生物機能の活用により強度増進・遮水性向上および自己修復効果を得る新しい維持管理・機能更新技術について検討を行った。国内外でのビーチロックを対象とした現地調査と,人工ビーチロック形成試験から以下の結果が得られた。1)ビーチロックのセメント物質としてカルシウム,マグネシウム,シリカおよび鉄が期待できる。2)海域由来のSporosarcina aquimarinaを用いることで,砂地盤の強度増進効果と液状化被害抑制が期待できる.