著者
吉野 浩司 梅村 麦生 吉田 耕平 磯 直樹
出版者
長崎ウエスレヤン大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

〈善く生きる〉のための社会学とは、人間が生きる上で必要な生きがい、愛、喜びといった人間のポジティブな側面を対象とし、その発生メカニズムの解明と社会への実装とを目的とする科学である。この社会学を、亡命知識人論というグローバルな社会学史の観点から、その源流にまでさかのぼって捉え直そうとするものである。わけても〈善く生きる〉ための思索の片鱗は、20世紀初頭のロシア社会学にも組み込まれており、後に欧米の社会学にまで浸透していった。世界各地のアーカイブに残された亡命知識人の資料を掘り起こし、かつてのロシアや中東欧の思想から現代の欧米の社会学にいたる様々な試みを総合的に把握する。
著者
浅井 武 洪 性賛 小池 関也
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究では,回転,及び無回転(低回転)で自由飛翔するスポーツボール(サッカー,バレー,ラグビー)の飛翔軌跡,非定常流体力,及び非定常渦構造を,3次元モーションキャプチャシステム,ボールインパクトロボット,表面流れ計測用特製ボール(タフトボール),高速カメラ,ステレオ流体可視化システム(Particle Image Velocimetry)を用いて高精度に同時計測し,ボール飛翔軌跡と,流体力,渦構造の関係を検討すると共に,ボールリリース時(インパクトを含む)の初期条件(直線運動と回転運動)やボール変形,打突形状が,ボール飛翔軌跡や非定常流体力に与える影響を明らかにする.
著者
沖 明典 石川 博 丸島 愛樹 松丸 祐司 松村 明 豊村 順子 大山 晃弘
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

申請者らは、幹細胞が多いとされるヒト歯髄にも全能細胞(Muse細胞)[間葉系マーカー(CD20, CD105, CD90 陽性とES細胞マーカー (SSEA-3) 陽性)が存在することを発見した。そこで、歯髄由来のMuse細胞を天蓋培養して胚様体を形成させ、これを還流培養して3胚葉性の胚子様構造物を育てる。ここから中枢神経の原基を採取し初代培養する。このなかには中枢神経を構成する細胞がone set存在しているはずである。本研究は、胚子様構造体から中枢神経原基を採取し、脳梗塞やパーキンソン病の患者に自家移植できれば、感染、免疫、倫理の問題もなく極めて安全性の高い治療を開発できると考えた。
著者
久和 茂 谷口 怜 水谷 哲也 吉川 泰弘 明石 博臣 宇根 有美 前田 健
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

翼手目(コウモリ類)は生物学的多様性とその分布・移動域の広さ、巨大なコロニー形成などの特徴をもつ特異な生物である。また、エボラウイルスなどの高病原性病原体の自然宿主と疑われており、病原体レゼルボアとして高いリスクをもつ。本研究はフィリピンにおいて翼手目の保有病原体の疫学調査を実施し、翼手目の人獣共通感染症のレゼルボアとしての評価を行うことを目的とした。ミンダナオ島、ルソン島中央部、ルソン島北西部においてそれぞれ捕獲調査を行い、合計266匹の翼手目を採取した。これらのサンプルより新規のレオウイルス、ハンタウイルスを見出し、さらに病原性細菌や原虫を保有していることも明らかにした。
著者
及川 亘 小宮 木代良 石津 裕之 金子 拓 黒嶋 敏 森下 徹 佐藤 孝之
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本年度は公儀普請関連の史料収集と整理・分析・研究のために、以下のような研究活動を行った。①史料調査:まず、靖國神社遊就館所蔵の「名古屋御城石垣絵図」の調査・撮影を行った。これは慶長十五年名古屋城普請にかかる丁場割を示した絵図である。同種のものとして宮内庁書陵部所蔵の絵図などが知られているが、本絵図はこれまで学界未紹介のものである。併せて名古屋市蓬左文庫において関連史料の調査も行った。また熊本大学所蔵「松井家文書」および、柳川古文書館寄託の立花家重臣十時家関連の文書から、公儀普請関係の史料の調査・撮影を行った。②公儀普請関係史料目録:研究協力者の協力を得て、柳川立花家関係として『柳川市史 史料編Ⅴ』(前年度より継続)・『福岡県史 近世史料編 柳川藩初期』、福岡黒田家関係として『黒田家文書』・『福岡県史 近世史料編 福岡藩初期』、萩毛利家関係として『大日本古文書 毛利家文書』より(それぞれ刊本)、公儀普請関連の史料の抽出・目録化を行った。③『大日本古記録 梅津政景日記』のフルテキストデータベース化:『大日本古記録 梅津政景日記』の第二巻・第三巻テキストデータを加工、前年度に加工の完了していた第一巻とともに東京大学史料編纂所の古記録フルテキストデータベースに搭載し、一般公開した。④研究会の開催:研究代表者・研究協力者を中心に二回の研究会を開催した。それぞれの報告者・題目は以下の通りである。第一回(2018年9月3日 於東京大学史料編纂所)、黒嶋敏「天下普請としての秀吉の造船」、及川亘「靖国神社遊就館所蔵『名古屋御城石垣絵図』について」、第二回(2019年3月19日 於かんぽの宿柳川)、金子拓「天正四年における織田信長の洛中普請について」、黒嶋敏「『今井宗久書札留』にみる織田信長と銀山」、立石了(研究協力者)「立花家重臣十時家の公儀普請関係史料の概要」、以上。
著者
大野 旭
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

イスラーム研究は、現代社会のもっとも緊急性を有する課題の一つである。それは「絶対的なムスリム社会」ではなく、多様性に富んだイスラーム社会を意味する。その多様な一環として、モンゴル系諸集団とイスラームとの関係を解明することが必要不可欠である。というのは、ユーラシアにおけるイスラームの世界化はモンゴル帝国支配の結果でもあるからである。本科研では、まずモンゴルという民族の内部における多様性と、モンゴル語系の言葉を話すさまざまな「民族集団」の多様性を実地調査によって明らかにすることができた。中国には10のイスラームを信仰する民族がある。そのうち、東郷(Dongxiang)族と保安(Bao'an)族はモンゴル語系の言葉を母語としている。また、現在ではモンゴル族とされている民族の中にも、ホトン(Qotung)人やトゥマト(Tumad)人のようなムスリムたちがいる。本研究で得られた成果はすべてフィールドワークに基づいている。調査の際には、特に東郷族と保安族内部のスーフィー教団「門宦」(Menhuan)と聖者墓「ゴンバイ」(Gungbei)の存在に注目した。というのは、彼らの近現代の歴史は主としてスーフィー教団を中心に展開され、聖者墓によって表象されているからである。聖者墓には中国史と関わってきたムスリムたちが眠り、信者らに祭られている。かつて、東郷族と保安族は「イスラームに改宗したモンゴル人」という見方が一般的であった。しかし、現在、彼らはこのような見解に異議を唱え始めている。このように民族の歴史に関する見解に変化が生じたのは、イスラームが復興したのではなく、モンゴルが嫌われているからでもない。中国が最近国内の諸民族にナショナルよりも低いエスニック・グループの地位を与え、そのうえで均一的な「中華民族」(zhonghua minzu)という国民国家を創ろうとしている政治的な潮流と連動している。現地調査と情報収集により、まったく別のイスラーム、別の「イスラーム対モンゴル」、そして「イスラーム的中国」の存在が現れてきた。今後は、報告書をベースに、学術書として公開する作業に入る予定である。
著者
林 良博 木村 順平 押田 龍夫 遠藤 秀紀 佐々木 基樹 西海 功
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

ベトナム南部、タイ南部、タイ中央平野部、タイ北部において調査地点を実施し、トラップを用いてリス類の捕獲を行い、また収蔵標本資料からの遺伝学的・形態学的検索を行った。検討対象集団は、クリハラリス、タイワンリス、タイワンホオジロシマリス、カンボジアホオジロシマリス、インドシナシマリス、ホオアカカオナガリス、シロミミクサビオモモンガである。捕獲動物から骨髄細胞を抽出し、染色体標本を作成した後、これらを各種分染法によって解析した。同時に捕獲動物から肝および筋組織を採取し、ミトコンドリアDNAの塩基配列の解析に入った。一方、頭骨標本を作製し、計測形態学的な解析を進めた。標本は現地で入手されたもののほか、合衆国スミソニアン自然史博物館、パリ国立自然史博物館収蔵標本をはじめとする世界の標本収蔵機関の標本を検討し、データとして蓄積を開始している。これらのデータに基づき、各分類群(種間および亜種間)毎に系統解析および地理的変異の解析を行った。また、遺体からは四肢骨格、四肢骨格筋を採材し、骨計測値と筋肉重量データを収集、筋構築の運動力学的解析を行った。さらに、頭蓋計測値から多変量解析を実施し、各種間および各地域間の頭蓋形態が、それぞれのロコモーション様式、採食パターン、食性、視覚・感覚器への要求に対してどのように機能形態学的変異を遂げているかを明らかにした。加えて現在、インドネシア島嶼部における各種の季節繁殖パターンを明らかにするため、生殖腺の組織学的・細胞生物学的分析を進め、同地域のリス科の繁殖様式を解明しつつある。最終的に、インドシナ半島、台湾、インドネシア島嶼部におけるリス科動物の分子系統学的解析、頭蓋・四肢の適応的進化、そして季節繁殖性に関して、各種各地域個体群の特質を解明してきたといえる。
著者
宮本 一夫 宇田津 徹朗 田中 克典 三阪 一徳 小畑 弘己 上條 信彦 米田 稔 欒 豊実 靳 桂雲
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

研究代表者が提起する東北アジア初期農耕化4段階説の内、第2段階の山東半島から遼東半島へのイネの伝播仮説を、土器圧痕調査で実証した。同段階の偏堡文化の朝鮮半島無文土器文化の成立への影響を、山東半島・遼東半島の土器製作技術の調査によって明らかにした。また、この段階の山東半島の水田の存在について楊家圏遺跡のボーリング調査によって示した。さらに第4段階の北部九州の弥生文化の成立年代を炭化米の年代によって明らかにした。
著者
神山 伸弘 石川 伊織 板橋 勇仁 栗原 裕次 柴田 隆行 田中 智彦 東長 靖 橋本 敬司 早瀬 明 久間 泰賢 権左 武志
出版者
跡見学園女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

ヘーゲルの世界史哲学講義(1822/23)については、本邦では、その世界像を結ぶための文化接触資料が必ずしも明確でなく、そのオリエント論に対する評価も低い。この事情を批判しながら、本邦ではじめてその資料源泉を探求しつつ本講義を翻訳し訳註を付するなかで、ヘーゲルのオリエント世界像は、ヨーロッパに映った近代オリエント世界像として反歴史的な空間的併存を示すとともに、ヨーロッパ的普遍史を脱却する歴史的理解も示しており、これらを通じて-ロマン派批判も込められたかたちでの-オリエントとヨーロッパの相互承認関係を展望していることが明らかになった。
著者
渡邉 浩崇 養老 真一 外山 勝彦 小塚 荘一郎 佐藤 靖
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2021-04-01

本研究は、「冷戦終結が日本宇宙政策にどのような影響を与えたか」を明らかにするために、政治外交史を主としながらも、国際法、科学技術史、法情報学などの学際融合的アプローチによって、冷戦期、冷戦終結前後、冷戦後の日本宇宙政策を再検証するものである。日米両国の一次資料(政府内部文書等)を徹底して収集・分析・整理することで、日本宇宙政策の歴史と資料の一つの総括を行う。その成果を発表・共有し発展させる場として、国際研究会を開催するとともに、収集資料の内容・属性や資料間の関係を分析・整理した「宇宙政策法文書データベース(リンクド・オープン・データ、LOD)」の構築と公開を試みる。
著者
小泉 真理子 濱野 保樹 萩野 正昭 佐伯 知紀 櫻井 英里子
出版者
京都精華大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

戦後、連合国総司令部(GHQ)は日本を統治する手段として文化を用いた。映画演劇を通じて日本人の民主主義の意識形成に関わった人物に、民間情報教育局の映画班長であったデヴィッド・コンデがいるが、その人生については明らかになっていないことが多かった。本研究では、彼がカナダのブリティッシュ・コロンビア大学図書館に自己の大量の記録を寄贈していることを発見したため、本資料を入手、整理し、デジタル化して公開した。本研究は、米国による対日文化政策の全貌解明に寄与することが期待される。
著者
中村 孝司
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

リンパ節へ優れた移行性を示す微小サイズの脂質ナノ粒子、リンパ節内のT細胞へ効率的に取り込まれる微小サイズ負電荷脂質ナノ粒子、抑制性樹状細胞の抑制性遺伝子IDO1をノックダウン可能なsiRNA搭載脂質ナノ粒子、免疫細胞への毒性を軽減する戦略に関する知見を得ることができた。特に、マイクロ流路デバイスを用いて調製した脂質ナノ粒子によるリンパ節デリバリーに関する成果は世界初である。これらの成果は、リンパ節を標的とした脂質ナノ粒子によるがん免疫療法の開発に有用な知見を与える。
著者
石岡 恒憲 峯 恒憲 宮澤 芳光 橋本 貴充
出版者
独立行政法人大学入試センター
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

短答式記述採点支援システムを実装した。採点エンジンの性能を評価するために、国立情報学研究所が主催するタスク競争型の国際研究集会NTCIR-13の質問応答のサブタスクに参加し、国内外11の研究機関が参加する中、横浜国立大学と並んでトップの成績を収めた。タスク課題は東大2次試験の世界史における500字論述試験の自動採点(過去5年分)である。研究成果は国際的なトップカンファレンスの一つであるWI 2007に採択された。その後も九州大学と連携しシステム性能の向上を目指した。技術的には、LSTMというストリーム型の言語モデルに学習の精度を上げるための工夫を創案し、JAWS 2019にその成果を発表した。
著者
前川 和也 川瀬 豊子 寺村 裕史 森 若葉 春田 晴郎
出版者
国士舘大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究ではバビロニア楔形文字資料、イラン国立博物館蔵文書を主資料とし、考古発掘成果も参照しつつ、古代イラン―バビロニア世界の関係が分析された。本研究での諸発見(前3千年紀末バビロニアの南西イラン制圧、2千年紀前半アンシャンでのバビロニア起源書記文書の存在、前13世紀スサと他都市間の緊張など)はイラン国立博物館刊行の前川編研究書で報告される。博物館蔵レンガ碑文解析を実施し、成果を公刊した。また表面摩耗が激しいアンシャン出土文書を3Dモデル化して、文字サインを読解した。粘土板を「掘込む」楔形文字解析に3Dモデルの有用性を証明できた。本研究によるイラン各地の遺跡調査の成果も上記研究書で公刊される。
著者
田中 千尋 大澤 直哉 吹春 俊光 都野 展子 都野 展子 吹春 俊光 BUCHANAN Peter JOHNSTON Peter TOFT Richard DICKIE Ian 門脇 浩明
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究では,ニュージーランドにおいて同地固有種であるナンキョクブナ林において, 外来菌根菌ベニテングタケの侵入・発生状況を調査するとともに, 侵入の原因ならびに他森林生物に与える影響を明らかにしようとした.調査の結果, 同地には複数の系統のベニテングタケが移入し,雑種化が進んでいること, 人為的かく乱が著しいあるいは人工植栽地などを中心に分布拡大が進んでいること, 古くから発生が認められるサイトでは,同地固有のキノコバエ種がベニテングタケを利用するようになっていることが明らかになった.
著者
本道 栄一 前田 健 水野 拓也 竹松 葉子
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

近年、ヒトに致死的な病原性を示すコウモリ由来新興・再興ウイルス感染症が世界を震撼させている。本研究では、東南アジア・オセアニア地区で潜在的な同感染症キャリアとしてのオオコウモリに着目し、そのベールに包まれた生態調査を行った。本研究により、世界的な大都市近郊のオオコウモリも、ヒトに致死的なウイルスに対する感染履歴が確認されるとともに、Argos 衛星を利用した追跡調査によって、その驚異的な飛行能力が明らかとなった。本研究で明らかにした飛行データは、タイ王国、フィリピン共和国のものであるが、調査を行ったオーストラリアシドニー王立植物園のデータと照らし合わせると、東南アジア・オセアニア地区のオオコウモリは長距離飛行によって互いに交通している可能性がある。また、新興感染症の出現予測として環境インデックスとオオコウモリの飛行の関係についても解析を行った。結果、オオコウモリの長距離飛行開始には、季節性の風向の変化が大きく関与しているものと思われた。
著者
本道 栄一 井上 直子
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究では、マウスの子宮内膜間質細胞の分化、脱分化の機構を解析した。マウスの生殖周期中にはエストロジェン(E2)とプロジェステロン(P4)が複雑にからみあって間質細胞の分化制御を行っているが、特にE2がこの制御に強く関わっていることが明らかになった。不完全生殖周期中ではLIF、Oct3/4およびNanogタンパク質が発情後期から前期にかけて発現する一方で、E2は単独で、Oct3/4を制御するKlf4 mRNAの発現誘導を起こすことが明らかとなった。
著者
坂田 聡 馬部 隆弘 薗部 寿樹 岡野 友彦 吉岡 拓 冨善 一敏
出版者
中央大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2021-04-01

本研究では中世~近代の古文書が個々の民家に連続して残存する京都市右京区京北の山国荘地域をフィールドにとり、作成時期の異なる由緒関係文書(何らかの由緒にもとづき身分的優越性や権益を主張する文書)において繰り返し語られることによって、後世の地域社会の歴史意識を規定することになる伝承が由緒として語られはじめる時期と、その伝承を文章化した主体(百姓自身かプロの文書作成代行業者か)、さらには、かかる伝承が地域の歴史として定着する過程について考察する。また、以上の考察の前提条件として、そもそも近世前期の百姓はどの程度の文章力を有していたのかという問題についても、実証的な検討を加える。
著者
村松 正道 喜多村 晃一 若江 亨祥 小浦 美樹 島津 美幸 Que Lusheng Li Yingfang Mohiuddin Md Liu Guangyan Monjurul Ahasan Wang Zhe
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、免疫系の効果分子APOBECとヒト腫瘍ウイルスの代表であるパピローマウイルス(HPV)やB型肝炎ウイルス(HBV)との関係性を調べた。その結果、APOBECはHPVの粒子形成プロセスに干渉し、感染性を低下させ、あるいはウイルスDNAに変異を作る事が明らかになった。またAPOBECがHBVのウイルスRNAを破壊する活性を持つ事がわかった。これらの研究により、免疫系の持つHBVやHPVに対する感染防御力の一つにAPOBECという宿主酵素群が関与する可能性が浮上し、その機構の一旦が明らかになった。