著者
寺尾 純二 向井 理恵 中村 俊之
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

フラボノイドに対するプレニル基の導入がその機能性に与える影響を構造活性相関の観点から解明することを目的とした。用いたフラボノイドはケルセチン(Q)とそのプレニル化誘導体である6-プレニルケルセチン(6-PQ)、5'-PQ、8-PQである。プレニル基の位置により疎水性は異なること、疎水性が最も高い6-PQが最も効果的にヒト血管内皮細胞へ取り込まれるとともにヘムオキシゲナーゼ-1の誘導を最も強く促進することを明らかにした。Qはフラボノイドの細胞内標的分子と予想されるカベオリン-1の機能調節作用を有することを証明した。プレニル化フラボノイドの標的分子としてのカベオリン-1の重要性が推定された。
著者
山本 真行 柿並 義宏 齊藤 大晶 中島 健介 甲斐 芳郎
出版者
高知工科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

津波防災において重要となる津波規模の予測について、地震規模のエネルギー的指標であるマグニチュードと同様の値を陸上からの遠隔観測のみから準リアルタイムに与えることは既存の手法では困難であった。本研究では、インフラサウンド(超低周波音、微気圧波)の観測網をモデル地域とした高知県内に構築し、観測波形データの特性周期および最大振幅から、共鳴波長となる特性長および特性高を得ることで、津波の要因となる地震直後の海面上昇の領域およびその際の位置エネルギーの変化に相当する情報を陸上のセンサー群によって遠隔把握し、インフラサウンド津波マグニチュードを算出できることを示した。
著者
青木 秀男 大倉 祐二 山口 恵子 結城 翼 渡辺 拓也
出版者
特定非営利活動法人社会理論・動態研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2021-04-01

山谷・釜ヶ崎の日雇労働者・雑業就業者・福祉受給者・路上生活者の労働・居住・生活が、ネオリベ経済による労働市場の変容、ジェントリフィケーションによる空間構造の変容の中でどのように変容しているか、またそれらの変容がコロナ禍の中でどのように加速しているかについて見る。さらにそれらが山谷と釜ヶ崎でどのように異なるかについて比較を行う。これらにより、日本の都市底辺層の階層構造と変容の動向を探り、そのうえで都市底辺層研究の理論的更新めざす。この研究は、研究代表者・分担者が別のプロジェクトで行っているグローバル都市の底辺層の国際比較研究に連続するものである。
著者
細川 雅史 安井 由美子
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

フコキサンチンは、ケモカインによる脂肪細胞と免疫細胞の相互作用を制御し、肥満脂肪組織での慢性炎症を抑制した。更に、脂肪組織由来の炎症性因子の産生抑制とともに、骨格筋組織における糖代謝を改善した。一方、ヘマトコッカス藻由来のアスタキサンチンが、潰瘍性大腸炎や大腸発癌のモデル系において予防効果を発揮した。その予防機構として、組織細胞に対する直接的な抗炎症作用に加え、マクロファージによる大腸細胞の炎症誘導に対する抑制効果を見出した。以上のように、海洋性カロテノイドは細胞・組織への直接的な作用に加え、それらの相互作用を制御し、効果的に慢性炎症や炎症性疾患の予防に貢献するものと推察する。
著者
細川 雅史 安井 由美子
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

アスタキサンチンが、潰瘍性大腸炎や大腸発癌に対して予防効果を示すことを見出した。その作用機構として、アスタキサンチンが大腸組織においてNF-κBの活性化抑制を介して炎症性サイトカインの遺伝子発現を制御することが推察された。一方、褐藻に含まれるフコキサンチンは、内臓脂肪の増加抑制と血糖値改善効果を示す。フコキサンチンは脂肪組織における炎症性アディポサイトカインの遺伝子発現を抑制するとともに、炎症に関わるマクロファージの浸潤を抑制し脂肪細胞とマクロファージの相互作用を調節することを見出した。
著者
野入 直美 飯島 真里子 佐藤 量 蘭 信三 西崎 純代 菅野 敦志 中村 春菜 八尾 祥平
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究は、(1)引揚者が戦後の沖縄社会でどのように包摂され、いかなる階層に位置したか、(2)引揚者はどのような社会的役割を果たしたか、(3)「専門職引揚者」の社会移動は、他県でも見出せるパターンが沖縄で集約的に表れているのではないかということを、沖縄の台湾・満洲「引揚げエリート」を事例に解明し、(4)戦後沖縄社会を<引揚げ>という新しい視点からとらえなおす。「引揚げエリート」とは、日本帝国圏の在住期から戦後にかけて、水平・上昇の社会移動を遂げ、沖縄の戦後再建を担った人びとを指す。その中心は、外地において教員、公官吏などの専門職に就き、その経験を資源として戦後を生きた「専門職引揚者」であった。
著者
岡戸 晴生 平井 志伸 田中 智子 新保 裕子 三輪 秀樹
出版者
公益財団法人東京都医学総合研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2018-04-01

成熟後にRP58の発現を減弱させたところ、やはり認知機能の低下を見出し、RP58の発現を興奮性ニューロンで増加させたところ、生理的な加齢に伴う認知機能低下を抑制できることを見出した。さらに興味深いことに、ヒト型変異APPホモマウス(アルツハイマー病モデル)にRP58発現アデノ随伴ウイルスを用いてRP58を過剰発現させると、低下した認知機能が改善した。すなわち、ウイルス投与前(3ヶ月齢)では、物体位置認識および新規物体認識試験テストにより、APPホモマウスは認知機能が低下していたが、RP58発現ウイルス投与後1ヶ月後には、認知機能が正常レベルに回復していた。一方、GFP発現ウイルス投与1ヶ月後(コントロール群)では認知機能は低いままであった。組織解析において、RP58補充群では、アミロイド斑はサイズがコントロールと比較して小さい傾向が見られ、RP58を補充したことによりアミロイド蓄積が抑制された可能性を示している。以上のことから、RP58は不可逆的と考えられていた、老化やアルツハイマー病に伴う認知機能低下を可逆的に制御している可能性が示された(岡戸、新保:国際特許出願,2020)。
著者
石原 康宏 冨永 貴志 大黒 亜美 大島 隆幸
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

医療や産業に使われている化学物質の中には、バルプロ酸やポリ塩化ビフェニルなど、胎児期や乳幼児期の曝露により、成長後の行動異常を引き起こすものが幾らかある。一方、脳内には免疫を担当するミクログリアと呼ばれる細胞が存在し、常に脳内を監視して異物を排除している。本研究では、化学物質の発達期の脳への作用メカニズムについて、ミクログリアに着目して検討する。ミクログリアが過剰に活性化すると、障害作用を有する炎症性分子を放出することから、まずは化学物質と炎症との関連を解析する。
著者
榎木 亮介 江川 潔
出版者
大学共同利用機関法人自然科学研究機構(新分野創成センター、アストロバイオロジーセンター、生命創成探究
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

私たち哺乳類の概日リズムの中枢は、脳深部にある小さな神経核(視交叉上核)に局在し、他の脳領域や全身にリズム情報を発振して、睡眠覚醒サイクルやホルモン分泌などの約24時間の生理機能を制御している。視交叉上核は約2万個のGABA作動性の神経細胞により構成されるが、「なぜ概日リズム中枢はGABA作動性神経細胞から構成されるのか?」という根源的な問いに対して私達は明確な回答を持ち合わせていない。本研究では、これまで申請者が開発してきた長期/多機能の光イメージング計測を用い、GABA作動性神経細胞が「いつ・どこで・どのように」働くのかを明らかし、概日リズム中枢の神経回路の作動原理を理解することを目指す。
著者
高松 哲郎 原田 義規 南川 丈夫
出版者
京都府立医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

手術において末梢神経を温存することは,器官機能の温存だけでなく,患者のQOLにおいて重要な役割を担う.本研究では,研究代表者らがこれまで行なってきたラマン散乱光を用いた組織観察法を基盤に,末梢神経を非侵襲かつin vivo検出可能なラマン顕微鏡システムの開発を行った.特に,深部組織診断可能な近赤外光に対応したラマン顕微鏡の開発,末梢神経および周辺組織に特徴的なラマンスペクトルの探索と散乱分子骨格の同定,および末梢神経を選択的に検出する解析アルゴリズムの開発を行い,ラマン散乱分光法に基づく末梢神経の分子構造解析および選択的検出が実現可能であることを示した.
著者
葉柳 和則 市川 明 増本 浩子 中村 靖子
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は、「ナチスが政権を握っていた時代(1933-1945)、スイスのチューリヒ劇場において、なぜ亡命芸術家たちがナチスによって禁じられた作品の上演を続けることができたのか」という問いに答える。鍵となるのは「精神的国土防衛」というスイス固有の文化運動である。この運動は初期の段階においては、排外的な性格を持っていたが、1939年頃に「多様性の中の統一」こそが「スイス的なもの」であるという認識を前面に出した。この多様性の中に文化的諸潮流を包摂するという論理が亡命芸術の受容と上演を可能にした。
著者
萱間 真美 木下 康仁 小松 浩子 グレッグ 美鈴 麻原 きよみ 青木 裕見 高妻 美樹 福島 鏡 青本 さとみ 根本 友見 石井 歩 松井 芽衣子 瀬戸屋 希 野中 幸子 海老原 樹恵 早坂 弘子 前田 紗奈 三河 聡子 木戸 芳史 佐々木 美麗 山田 蕗子 古賀 郁衣 奥 裕美 三浦 友理子 松谷 美和子
出版者
聖路加国際大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

質的研究方法は、医療を受ける人や携わる人の経験を当事者の言葉を生かして説明することができる可能性を持つ。統計を用いた量的な研究と比べると経験者が少なく、論文を出版する際に査読ができる査読者や、この方法を理解している編集委員も少ない。よい論文を出版することができるためには、論文の出版に携わる人たちへのガイドラインの提供が必要である。本研究は海外での調査、研修や国内でのセミナー開催を通じてこの課題に取り組んだ。多くの査読委員、編集委員が研修に参加し、知識を共有することができた。
著者
上神 貴佳 陳 柏宇 堤 英敬 竹中 治堅 浅羽 祐樹 朴 志善 成廣 孝
出版者
國學院大學
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

2019・2020年度は全体会合を3回、台湾チームとの会合を1回実施し、そのほかにも複数回の個別ミーティングを実施した。まず、2019年6月に全体会合を開催し、データベース構築のためのフォーマット作成、作業チームの編成について議論した。同年10月の全体会合では、北東アジアを中心に、各国の政治制度、政党政治の基本的な配置を確認した。これらを受けて、同年11月にフォーマットの素案を提示し、研究チームの了承を得た。しかし、試行的な文献調査などの結果から、北東アジアと東南アジアでは、政党の成り立ちや組織の有り様が異なることが判明した。そこで、組織構造だけではなく、オンライン上の選挙戦略の有無や類型を捉えるべく、新たに項目を追加した。また、2020年1月の台湾チームとの会合においては、現地インフォーマントの協力を得るべく、その来日に合わせて実施した。その後、新型コロナウィルス感染症に起因する渡航制限のため、海外出張の中止など、作業に大きな制約が生じた。困難な状況ではあったが、北東アジアを先行させてデータ収集を進め、同年10月には、全体の進捗状況を確認するためのオンライン会議を実施した。前後して、東南アジア政治の専門家を招聘し、改めてフォーマットの妥当性について確認した。なお、アジアの政党発展を理論的に説明する枠組み論文の執筆については、2019年度に合計9回、個別の会合を実施した。本科研の関連業績のうち顕著なものとして、日韓台の比較政党政治に関する論考、日本政治に関する論考がそれぞれ海外の有名学術出版社から出版された(分担執筆)。
著者
坂田 利家 吉松 博信 桶田 俊光 渡辺 建彦
出版者
大分医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1995

糖尿病および肥満糖尿病における代謝異常が脳機能にどのように影響するかを神経ヒスタミン系を指標として解析し、以下の結果が判明した。1)糖尿病モデル動物であるSTZ糖尿病ラットおよびZucker obese ratでは神経ヒスタミンが低下していた。2)レプチンは視床下部神経ヒスタミンの代謝回転を増加させた。3)レプチンの摂食抑制作用は神経ヒスタミンの枯渇化によって減弱した。レプチンの摂食抑制作用の約50%は神経ヒスタミンによって調節されていることが判明した。4)レプチン受容体に異常のあるdb/dbマウス、それにob遺伝子異常によりレプチンが欠如しているob/obマウスでは視床下部ヒスタミンおよびtMH含量が低下していた。Zucker obese ratと同様にレプチンによる神経ヒスタミンの賦活化作用が脱落した結果と考えられた。5)食事誘導性ラットでは体重増加が少ない早期から内臓脂肪蓄積が認められ、血漿中性脂肪値が増加していた。血糖値、インスリン値は後期に上昇し、インスリン抵抗性の出現が脂肪代謝異常に遅れて出現することを示唆している。血中レプチンは肥満早期に増加し、肥満発症後期にも増加していた。6)摂食抑制性の神経ペプチドであるCRHはヒスタミン神経系を賦活化した。摂食促進性のNPYは神経ヒスタミンには影響しなかった。インスリン抵抗性発症因子であるTNF-αも神経ヒスタミンには影響しなかった。7)神経ヒスタミンは脳のGLUT1 mRNA発現を促進した。飢餓状態での脳のGLUT1の発現亢進には神経ヒスタミンが関与していた。8)神経ヒスタミンは中枢性にインスリン分泌を制御していた。9)神経ヒスタミンは中枢性に脂肪組織の脂肪代謝を制御する作用を示した。その作用様式は脂肪分解の亢進と脂肪合成系のACS mRNAとGLUT4 mRNAの発現制御によっていた。神経ヒスタミンの脂肪分解作用は脂肪組織に分枝している交感神経活動促進作用によっていた。10)ヒスタミンの基質であるヒスチジンの投与で神経ヒスタミンの代謝回転とHDC活性が亢進した。ヒスチジンの末梢および脳室内投与で摂食抑制が観察された。ヒスチジンの末梢投与で交感神経系を介した脂肪分解反応が促進された。11)遊離脂肪酸のオレイン酸はヒスタミン系を促進することが示唆された。12)神経ヒスタミンは学習機能に促進的に作用した。糖尿病状態でのヒスタミン機能低下が学習機能低下につながる可能性が示された。以上、糖尿病でみられる脳機能異常の可能性について神経ヒスタミンを指標に解析し、神経ヒスタミンの動態には血糖値、インスリン値だけでなく、レプチンやアミノ酸、脂肪酸など種々の代謝成分が関与していることが判明した。またそれらの情報を受けたヒスタミン神経系は食行動を調節するだけでなく、脳内の糖代謝や自律神経系を介する末梢の脂肪代謝調節に積極的に関与していることも明らかになった。
著者
今西 規 木村 亮介 瀧 靖之 竹内 光
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

ヒトの顔形状はかなり強く遺伝的に規定されているため、原理的にはゲノム情報から顔形状を予測できるはずである。そこで本研究では、ゲノム情報に基づいてヒトの顔形状を予測するためのソフトウエア「ゲノム・モンタージュ」の作成をめざす。まず、合計3000人以上のデータを使ったゲノムワイド関連解析(GWAS)を実施する。次に機械学習による解析を実施し、その有効性を評価する。さらに、GWASと機械学習の長所を融合させた解析を試み、従来の表現型予測の精度を超える新手法の開発をめざす。
著者
辻本 元 長谷川 篤彦 宮沢 孝幸 亘 敏広
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

日本全国各地における猫免疫不全ウイルス(FIV)env遺伝子の塩基配列を解析した結果、東日本ではサブタイプBが、西日本ではサブタイプDが主要なサブタイプであり、散発的にサブタイプAおよびCが存在することが明らかとなった。ヒトのHIVにおいて、ウイルスのco-receptorとして同定されているケモカインレセプターのリガンドであるCC-ケモカインおよびCXC-ケモカインについて、猫の遺伝子クローニングを行った。これらケモカインのうち、SDF-1βは、猫のTリンパ球におけるFIVの増殖を濃度依存的に抑制することが明らかとなった。さらに、CXC-ケモカインリプターと結合する物質として同定されたT22についてもFIV増殖抑制効果が確認された。一方、FIVによって誘導されるアポトーシスは免疫不全症の発症に重要な役割を果たしていることが明らかとなっている。そこで、抗酸化剤であるN-アセチルシステインおよびアスコルビン酸をFIVによるアポトーシス誘導系に添加して培養したところ、それらによるアポトーシス抑制効果が認められた。さらに、同様のFIVによるアポトーシス誘導系にIL-12およびIL-10を加えて培養したところ、IL-12はアポトーシスおよびFIV増殖を抑制する効果が確認され、その効果はIFN-γの発現を介していることが明らかとなった。IL-10にはそれら抑制効果は認められなかった。さらに、これらFIV増殖抑制剤およびアポトーシス抑制剤の生体内投与における効果を判定するため、FIV感染猫における血漿中ウイルスRNA量をQC-PCR法によって定量した。その結果、非症候性キャリアー期の猫では10^5コピー/ml以下の低いウイルス量を有する個体が多かったが、エイズ期の猫では10^7コピー/ml以上の高いウイルス量を有する個体が多かった。現在、このFIV感染猫におけるウイルスRNA定量系を用いて、ウイルス動態の解析および抗ウイルス薬の治療効果の判定を行っている。
著者
星野 洪郎 清水 宣明 大上 厚志 藤木 博太 田中 淳
出版者
群馬大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

アジア地域でのHIV-1感染症の特殊性をタイのチェンマイ大学を共同研究の拠点として解析を行なった。タイには既に60万人の感染者がおり、その内2万人は子供である。HIV感染児では、大人より病気の進行が早く、治療効果の判定や薬剤の副作用の判定が早くできることがある。チェンマイ近郊には、HIVに感染した孤児を世話している国営の施設があり、経過観察や治療は、もっぱら国立病院やチェンマイ大学で行っている。文橡者の定期的な検査とその病態の関連をウイルス学的に解析してきた。このようにHIV感染小児の病態を解析しやすい体制を整えることができた。抗酸化物質にヒトのがんの発症を抑制する働きがあることが、多くの疫学的論文で報告されている。一方酸化ストレスやTNFαが、HIV-1感染症などの慢性感染症でウイルスを活性化させ、病気の進行を促進すると考えられている。抗酸化作用を持ち、TNFαを阻害する緑茶抽出物やアスタキサンチンなどの抗酸化剤は、HIV-1感染症の進行を抑える可能性が考えられる。これらについて介入的疫学研究を行う準備をしている。我々は、HIV-1感染の新しいコレセプターとして新しいコレセプターを同定し解析した。日本人感染者、タイの感染児の抹消血を用い、経時的に解析し、新しいコレセプターの臨床的、疫学的の意義を明らかにした。すなわち、HIV-1感染の新しいコレセプターとして、D6,CCR9b, XCR1およびFML1を同定し、解析を始めた。D6は、日本人血友病患者由来のsubtypeBのdual-tropic HIV-1、FML1はタイ、ベトナム由来のsubtypeAEおよびCのウイルスで利用した。これまでの研究期間の間に、タイの規則が厳しくなり、タイ人の試料は,許可なしには持ち出せず、国外持ち出しの手続きに長時間かかるようになった。緑茶抽出物をHIV感染者に投与するには、チェンマイ大学の倫理委員会に書類を提出しなければならないが、審査を受けるのに非常に時間がかかることが明らかとなった。現在手続きを進めている。
著者
岡部 卓 室田 信一 久保 美紀 西村 貴直 新保 美香 安藤 藍 三宅 雄大 杉野 昭博 金子 充 堅田 香緒里 圷 洋一 布川 日佐史 和気 純子 小林 理 乾 彰夫 長沼 葉月
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究の目的は、貧困・低所得者対策である生活保護・生活困窮者自立支援・関連施策による方策(制度・政策およびソーシャルワーク)が「包摂型社会」構築にどのように寄与しているかを理論的・実証的研究を通じて検証し、今後とりうる方策を検討することである。以上の研究目的設定のもと、本年度は、フィリピン・マニラでの海外調査の実施である。欧米モデルとは異なるフィリピンでの貧困対策・社会的包摂の取組みの実際を検討するべく、St. Mary’s College Quezon CityのImelda Macaraig教授にインタビューした。また、海外での学会参加及び報告を行った。具体的には、福祉レジームと若者の移行に関する研究報告(Welfare Regime and Young people’s Transition to Adulthood: A Frame-work for Five Countties’ Comparasion)をJournal of Youth Studies Conference(オーストラリア、ニューカッスル)で実施した。その他、支援者へのインタビュー調査を次年度以降の本調査に向けてのプレ調査として、貧困、障がい、女性関連の施設職員(支援者)へのインタビュー調査を実施した。フィリピン調査、学会報告は、研究成果として報告書にまとめた。
著者
赤木 泰文 数乗 有 藤田 英明 小笠原 悟司
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

平成6年3月,名古屋市科学館と近くの高層ビルの地下電気室で相次いで発生したリアクトルの爆発事故は,「6.6kV配電系統から流入した高調波電流が原因」との調査結果が報告されている。このような高調波障害は,電力用半導体素子を使用したパワーエレクトロニクス機器の増加に伴って発生件数も年々増加し,現代社会の新たな"公害"として早期対応が迫られている。資源エネルギー庁は,平成6年9月30日付けで「高調波抑制ガイドライン」を電力・家電業界に通達し,高調波障害の解決に向けて大きく前進した。欧米においてもIEC555-1000(欧州)やIEEE519-1992(米国)などの高調波規制が施行されている。交流モータの可変速ドライブシステムや無停電電源(UPS)は,AC/DC電力変換器を必要とする。しかし,電源高調波規制に対応した従来の大容量AC/DC電力変換システムでは,1)スイッチング損失が増加する,2)高調波対策機器の価格が高い,3)良好な高調波抑制効果が得られない,などの問題点がある。本研究は,電源高調波規制に対応した大容量・高効率AC/DC電力変換システムの開発を目的とし,三相ダイオード整流回路と直列形アクティブフィルタを一体化した主回路構成と制御法に特長がある。本研究の成果は,以下のように要約することができる。1.直列形アクティブフィルタの制御法を開発し,その有効性をディジタルシミュレーションにより確認した。特に,制御系の遅延がアクティブフィルタの安定性に及ぼす影響について検討し,遅延の影響の少ない新しい制御法を提案した。2.直列形アクティブフィルタ(2kVA)を設計・製作し,ダイオード整流回路(20kVA)と一体化して,新しい制御法の有効性と高調波抑制効果を実験により確認した。3.スイッチングリプルを抑制するフィルタを設計・製作し,その有効性を実験によって確認した。2000年6月に,これらの研究成果をまとめた論文をIEEE/PESCで発表する予定である。
著者
関根 俊一
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

巨大なタンパク質複合体であるRNAポリメラーゼは、そのコンフォメーションを多様に変化させながら転写を遂行する。その実体を明らかにするために、CPX法を開発してRNAポリメラーゼの構造状態の解析を行うことにより、主な転写機能とRNAPの構造状態との相関関係を確立した。また、転写開始・伸長中にRNAP が形成するいくつかの複合体の結晶構造解析を行い、転写エラーの校正や外来因子による転写制御のメカニズムを明らかにした。