著者
西村 直道 井上 亮
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

腸内細菌による大腸発酵で生成した水素は疾病発症に関わる酸化ストレスを軽減する。本研究では、大腸で高水素生成を可能にする難消化性糖質の化学特性および腸内細菌叢を解明し、高水素生成が生体内レドックスバランスに与える影響を調べた。その結果、グルコース以外の構成糖からなる重合度の低い難消化性糖質で水素生成が高まることが判明した。また、水素を高める腸内細菌叢が存在し、これを移植すると水素生成が一層亢進することがわかった。また、水素生成を高めれば、α-トコフェロールの再生を促進することで生体の酸化ストレスを軽減することがわかった。
著者
遠藤 勝義 井上 晴行 押鐘 寧 片岡 俊彦
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本研究の目的は、絶縁体表面の原子構造と電子状態を原子レベルの空間分解能で観察できる高周波パルスSTM/STS装置を開発するとともに、超精密加工された絶縁体材料表面を計測評価し、加工条件の最適化を図ることである。絶縁体表面をSTM観察するためには、帯電と原子の移動を防ぐ必要性から、交流で伝導体に電子を注入するのに充分なバイアス電圧をmsec以下の短パルスで印加するとともに、探針-試料間の浮遊容量の影響を避けてトンネル電流の信号によってのみフィードバック制御する検出回路を開発しなければならない。さらに、絶縁体表面の欠陥準位を求めるために、トンネル電流のバイアス電圧依存性いわゆるトンネル分光を可能にしなければならない。そこで、矩形パルス電圧を印加した場合に浮遊容量によって生じる電流に妨げられることなくトンネル電流成分のみを検出できるRC回路を考案した。10kHz以上、±10Vまでの高周波矩形波パルスバイアス電圧を印加して、トンネル電流検出回路の出力をダイオードにより整流した信号をフィードバック制御する独自の高周波パルスSTM装置を設計・製作した。そして、導電性のあるHOPGの原子像を本パルスSTM装置によって観察することに成功した。しかし、真性半導体Siや酸化膜付きSi表面の原子像を観察するまでには至っていない。これらの原子像を観察するためには、100kHz以上の高周波領域における電流アンプのS/Nを改善するとともに、フィードバック制御系の追従周波数の向上が不可欠である。そこで、目的の高周波領域まで動作する電流アンプと印加する矩形パルス周波数のみを増幅するロックインアンプからなるトンネル電流検出系を提案し、新たな高周波パルスのトンネル電流制御系を設計・製作した。この検出系によれば、ダイオードによる整流回路の必要がなくなり、ノイズが低減されてフィードバック制御系の追従周波数が1kHzとなり、絶縁体表面の観察を可能にする。
著者
小川 博司 石田 佐恵子 長谷 正人 川崎 賢一 河原 和枝 遠藤 知巳 岡田 朋之
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

近年、現代メディアを取り巻く文化は、世界的な広がりを見せ、急速に変化している。だが、日本においては、その文化の具体的なありようや展開、日常生活に及ぼす影響などは十分に明らかになってはいない。本研究は、「クイズ形式の文化とその歴史的な変化から見る現代生活の諸相」に焦点を当て、メディア社会における文化のありようを明らかにしようとしたものである。本研究の目的は大きく分けて3つある。第1に、歴史社会学的観点からクイズ形式の文化が社会の中にどのように出現し、広がっていったかを明らかにすることである。第2に、歴史的な観点から描き出されたクイズ番組の変遷、クイズ文化の浸透に並行して、人々の日常生活における知識や情報のあり方の変化を明らかにすることである。第3に、アメリカ文化の強い影響を受けて導入されたクイズ形式の文化が、当初の輸入物の文化のありようを越えて、日本文化の一部として定着する際に、どのような形で加工され、「日本文化」化されたのか、明らかにすることである。具体的な作業としては、ラジオ時代のクイズ番組、テレビ時代のクイズ番組のデータを収集しデータベース化するとともに、クイズ番組関係者からのヒヤリングを行った。それらと並行して、アメリカ合衆国における「クイズショー・スキャンダル」についての検討、日本のクイズ文化について専門家からのヒヤリングなど、クイズ文化の歴史をどのように見るかの検討を積み重ねた。ここから、「高度情報社会」と呼ばれる現代の日常生活における知識や情報のおかれた意味について明らかにする、さまざまな知見が得られた。
著者
植村 玄輝 吉川 孝 八重樫 徹 竹島 あゆみ 鈴木 崇志
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究は、現象学の創始者エトムント・フッサール(Edmund Husserl)が1922年から1923年にかけて日本の雑誌『改造』に寄稿した5編の論文(うち2編は当時未刊)、通称「『改造』論文」について、フッサールの思想の発展・同時代の現象学的な社会哲学の系譜・より広範な社会哲学史の系譜という三つの文脈に位置づけ、現象学的な社会哲学の可能性についてひとつの見通しを与えることを目指すものである。
著者
花村 克悟
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究において、数百ナノメートルの真空隙間を隔て向い合せたナノサイズピラーアレイ構造表面間のふく射エネルギー輸送がピラー高さにより波長選択的に黒体表面間ふく射輸送をおよそ100倍程度上回ることが明らかにされた。さらにナノサイズのフィッシュネット状電極と薄膜半導体を組合わせた波長選択光電池を製作し、これにピラー構造放射体を向い合せた波長選択近接場光発電システムの足掛かりを構築した。
著者
花村 克悟
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究は、薄膜状の光起電力半導体を裏面側の基板電極と光入射側のナノグリッド電極により挟み込み、ナノピラーアレイ構造を有する加熱面と数百nmの真空隙間を隔てて向い合せ、ピラー側面とグリッド電極側面に生ずる表面プラズモンとそれらの高さとのファブリペロー干渉により、発電に寄与する波長範囲のみを選択的に増強および吸収することによって高効率かつ高密度な近接場光起電力発電を構築することを目的とし、数値計算により期待される選択波長近接場ふく射輸送の増強機構を明らかにするとともに、ナノグリッド電極・薄膜半導体・基板電極の3層構造光起電力電池を製作し、そのシャープな波長選択性や発電密度の高度化を試みる。
著者
鈴木 勉
出版者
星薬科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究では、methylphenidate(MPD)の中枢興奮作用をmethamphetamine(METH)と比較検討した。METHおよびMPD処置により側坐核におけるdopamine濃度の上昇が認められ、この作用はphosphoinositide 3-kinase(PI3-K)阻害薬の前処置により抑制された。しかしながら、METHは5-HT濃度を上昇させたのに対し、MPDは5-HT濃度に影響を及ぼさなかった。また、METH処置により自発運動促進作用に対する逆耐性が形成されたが、MPDは逆耐性を形成しなかった。さらに、両薬物による報酬効果が消失後、再燃されるか否かを検討した結果、METH誘発報酬効果は再燃されたのに対し、MPD誘発報酬効果は再燃されなかった。次に、両薬物がastrocyteおよび神経細胞に与える影響を検討した。その結果、前脳部由来初代培養神経/glia共培養細胞にMETHまたはMPDを処置することによりastrocyteの活性化が惹起され、この作用はPI3-K阻害薬の共処置により抑制された。さらに、高濃度のMETHは神経のマーカーであるMAP-2alb陽性細胞数の減少およびapoptosis関連タンパクcleaved caspase-3の誘導を引き起こしたが、MPDはこのような作用を示さなかった。以上、本研究の結果から、METHおよびMPD誘発dopamine遊離作用ならびにastrocyte活性化作用にPI3Kが関与することが明らかとなった。さらに、両薬物の作用には相違点が存在し、METHによる強力な薬理作用発現や神経細胞死誘発には5-HT神経系とdopamine神経系の相互作用が一部関与している可能性が示唆された。
著者
坂元 章 渋谷 明子 笠原 章子 松尾 由美 田島 祥 佐々木 輝美 渋谷 明子 笠原 章子 (七海陽) 田島 祥 佐々木 輝美 堀内 由樹子 松尾 由美 寺本 水羽 鄭 姝 倉津 美紗子 Anderson Craig A. Gentile Douglas A.
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

3歳児クラスから高校生までの子どものゲーム利用による攻撃性、社会的適応の影響を検討した。ゲーム利用時間やゲーム上の交流経験が攻撃的傾向や社会的適応に影響することが示された。また、保護者の介入行動は子どもの学齢が低い場合には介入の効果は高いこと、子どもの学齢や介入する問題の種類で介入行動の効果が異なることが示され、子どもの発達段階や問題にあわせて介入方法を調整する必要性が示唆された。レーティングについては、家庭での認知度が低いこと、レーティング区分毎の攻撃的傾向に対する影響について一貫した結果が見られなかったことから、効果的な介入の手段とするために工夫や検討が必要であることが示された。
著者
橋本 隆夫 内田 正博 小紫 重徳 光末 紀子 石川 達夫 三木原 浩 平野 雅史 石光 輝子
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

冷戦構造の解体後の新たなナショナリズムのうねりの中で、ユーロ通貨統合に象徴される統合体としてのアイデンティティを模索するヨーロッパの文化の交錯をめぐるわれわれの研究は、これまでの成果を深めさらに一層の広がりと深みの地平を獲得し、ここでひとまず4年の区切りをつける。今年度は各自が4年の研究活動の集大成として、研究会の発表を基に、また、ある者は海外より持ち帰った最新の文献資料を駆使し、それぞれの研究を論文に結実させた。個々の活動としては、1 研究会としては11月30日に橋本隆夫氏が「新石器革命と大地母神信仰」と題して、ヨーロッパの基層にある大地母神信仰について考古学的知見とホメロスやヘロドトスの文献的研究をクロスさせた学際的発表を行った。2 7月12日に立命館大学教授西成彦氏を迎え、「小説の一言語使用」の題目で講演会および討論会を行い、ポーランド生まれのイギリス作家ジョセフ・コンラッドの言語的アイデンティティのゆらぎを中心に活発な意見が交わされた。3 12月7日には静岡文化芸術大学専任講師小林真理氏による講演会「ヨーロッパの文化権と文化法について」が行われた。文化芸術振興基本法についての議論が進められる中、文化の中心地として長く君臨したヨーロッパの現在の文化支援や文化政策について多くの知見が得られた。研究会、講演会、海外調査研究を通じて、わたしたちはヨーロッパにおける文化の交錯とアイデンティティの複雑さ、強靭さの一端を垣間見ることができた。地域研究=個別文化研究の枠組みにおさまりがちだったヨーロッパ研究の守備範囲を少しでも広げられたのではないかと小さな自負を感じるしだいである。
著者
西村 圭一 山口 武志 久保 良宏 長尾 篤志 長崎 栄三 清野 辰彦 青山 和裕 松嵜 昭雄 清水 宏幸
出版者
東京学芸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究は,わが国の子どもに,「数学的論拠に基づいて,事象を分析,解釈し,意志決定する能力」である「数学的判断力」の育成することを目的としたものである。数学的判断プロセスを規定し,数学的判断力に関する実態調査を実施するとともに,数学的判断におけるプロセス能力の水準化や,そのプロセス能力と数学の内容・選択支援・社会的価値観・他者との相互作用の五つの軸によって構成される授業の枠組みを作成した。そして,小・中・高校で実験授業を実施し,その有効性について実証的に検討した。
著者
野村 周平 田淵 貴大 橋爪 真弘 大田 えりか 渋谷 健司 坂元 晴香 鈴木 基 齋藤 英子 米岡 大輔 井上 真奈美 宮田 裕章 西浦 博
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2021-04-01

本研究は、with/postコロナ時代の保健医療政策の課題に対する実証的分析に疾病負荷を活用する我が国で初めての試みである。具体的には、新型コロナウイルス感染症の疾病負荷および関連するリスク要因の寄与割合の推定(将来予測含む)、新型コロナ含む傷病別の疾病負荷の将来シナリオ分析、新型コロナウイルス感染拡大による保健医療ニーズ・保健システムへの影響(健康格差・医療費)の推定を行う。
著者
長井 嗣信 藤本 正樹 町田 忍 篠原 育
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

1.人工衛星Geotailによる観測をもとに、34の磁気リコネクションのイベントと174の南向き磁場をもつ反地球向きの高速プラズマ流について解析を行った。イベントの起きる数時間前からの太陽風の状態を調べることにより、太陽風の何が磁気リコネクションに関係しているかが明らかになった。もっとも重要な因子は、太陽風の電場(速度x南向き磁場)であり、磁気リコネクションは、この積分値が大きいほど、より地球に近い所(地球半径の20倍以内)で起こり、小さい時には、より遠方(地球半径の20倍以上)で起きることがわかった。太陽風の電場が強い時は、磁気圏対流が地球の近くで磁気圏赤道面方向に流れ、磁気リコネクションを引き起こすと考えられる。さらに、近い所で起きる場合は、遠方で起きる場合に比べて、電場の積分量、すなわち太陽風のエネルギーの流入量の積分値が大きくなることを示した。2.磁気リコネクションのトリガーについて、電流層の厚さがイオン慣性長程度の電流層の安定性について,電流層の厚さ,ガイド磁場の効果,初期温度異方性の効果を研究した。素早い磁気リコネクションのトリガーはほとんどの場合において電流層の厚さがイオン慣性長よりも薄い場合のみにしか発生しないことを示した。3.磁気リコネクションの標準モデルは、ジェットを駆動するエンジン部分(Xライン)をひとつだけ想定する。電子慣性を考慮した二流体方程式系を用いて「自然に」磁気リコネクションを駆動する状況を数値実験し、複数のXラインが共存する可能性が高いことを示した。4.磁気リコネクションが大規模に発展する時、背景にある低温電子と加速されたビーム電子との間で励起される電子二流体不安定性に伴う電子加熱・混合が、その領域で頻繁に観測されるフラットトップ型の電子の分布関数を形成し、さらに、電子二流体不安定性が非線形的に発達することによって静電孤立波(ESW)が生じることを見出した。
著者
道端 齊 植木 龍也 宇山 太郎 金森 寛 広津 孝弘 大井 健太
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

海水中にはバナジウムやコバルト等わが国ではほとんど産出しない希少金属(レアメタル)が溶解している。これまでに化学的に合成された吸着剤を用いて、これらのレアメタルを海水から捕集する試みは数多くなされてきた。しかし、海水には多くの金属イオンが溶解しているため、目的のレアメタルだけを選択的に分取するのは必ずしも容易ではない。研究代表者のグループはホヤが海水のバナジウム濃度の1,000万倍(10^7)ものバナジウムを高選択的に濃縮することに着目し、その濃縮機構の解明で得られた成果をレアメタルの分取に展開することを計画した。本研究では、ホヤのバナジウム濃縮細胞(バナドサイト)の細胞質から抽出した濃縮のカギを握る12.5kDa、15kDaと16kDaの3種類のバナジウム結合タンパク質(Vanabin)の解析を進めた。その結果、それらをコードするcDNAの全長のクローニングとその解析によってVanabinは{C}-{x(2-4)}-{C}という特徴的なモチーフの繰り返し配列を持ち、金属イオンと結合し易いシステインを約20%も含むタンパク質であること、NMRによって主にαヘリックスから成る新規のタンパク質であること、Vanabin 1モルに約20原子のバナジウムが結合し、その結合定数は10^7Mであることを見出した。さらに本年度の研究により、12.5kDaのVanabinは約10原子の四価バナジウムと結合することが判明した他、15kDaのVanabinは鉄イオンや銅イオンとは選択的に結合しないこと、銅イオンは競争的にバナジウムの結合を阻害することが判明した。一方、この研究期間内では特異的金属結合部位の特定には至らなかったが、現在理化学研究所と共同でVanabinの立体構造の解明を進めつつあり、その結果によっては早晩特異なホヤのバナジウム濃縮機構の解明と応用が期待される。
著者
今井 公太郎 本間 健太郎 伊東 優 国枝 歓 佐藤 淳 福島 佳浩
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究は、実用化が進む金属の3Dプリント技術を用いて住宅の仕口(ジョイント)を製作し、大部分の工程をセルフビルド可能な住宅のプロトタイプを建設する。学術的には、プロトタイプの建設を通して、3Dプリンタの建材(特に構造材)への応用の可能性を明らかにし、「複雑」な造形がデジタルに施されたジョイントによって、どこまで人間の手による建設を「単純」化できるかを明らかにする。そして、建設した住宅に対してプラニングの自由度・構造的合理性・建設可能性・環境的性能・移動可能性(再建築・運搬)などの観点で性能を評価し、最終的に移動可能で自由なライフスタイルを可能にする安価な住宅サービスへの適用方法を研究する。
著者
伊藤 貴雄 大橋 容一郎 福谷 茂 加藤 泰史 松井 慎一郎 芝崎 厚士 川口 雄一
出版者
創価大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

19世紀後半から20世紀初頭にかけて世界的に影響力のあった新カント派の哲学は、日本において大正から昭和初期にかけて大きく受容され、その影響は狭義の哲学にとどまらず、広く文化評論から経済学・政治学・法律学・教育学など社会科学分野の思想家にも及んだ。新カント派哲学への理解なしに近代日本思想史を正確に理解することはおよそ不可能と言える。にもかかわらず今日、日本の学界では同学派への関心は極めて希薄なものにとどまっている。本研究は、近代日本思想史において新カント派哲学が社会科学と接点をもった意義を学際的に明らかにし、新カント派の継受をめぐる国際比較研究を可能とする研究基盤を構築するものである。
著者
村上 哲明 山本 薫 常木 静河 海老原 淳 堀 清鷹 篠原 渉
出版者
東京都立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

シダ植物は、胞子体と配偶体という二つの世代をもち、普通にシダ植物と見られているのは胞子体である。ところが、配偶体が無性芽等によって栄養繁殖し、配偶体のみで生育している例(「独立配偶体」と呼ばれる)が北米や欧州で知られていた。しかし、日本国内では、そもそも小型で単純な形態をもつシダの配偶体については、その分布がまだほとんどわかっていなかった。そこで本研究では、シダの配偶体を日本国内から広く採集し、それぞれのrbcL遺伝子(光合成に関わる遺伝子)の塩基配列を調べて、どの種の配偶体かを明らかにする。日本国内からは、まだ報告されたことがないシダの種の独立配偶体が次々に見つかることが期待される。
著者
中井 孝章 松島 恭子 篠田 美紀 長濱 輝代 三船 直子 小伊藤 亜希子 清水 由香
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、幼老統合ケア及びそれに基づく世代間交流の効果を、3年間にわたって大阪市内の特定地域での多世代交流会、高齢者と子どもの複合施設(宅幼老所)、地域住民の居場所、認知症高齢者施設において総合的に調査研究した結果、子どもは生活習慣や他者(特に、高齢者)への共感能力が身につき、高齢者は生き甲斐と自尊心が生まれるとともに、母親の子育て支援に対しても社会的祖父母力を発揮できることが実証された。
著者
吉田 真吾 上嶋 誠 中谷 正生 加藤 愛太郎 小河 勉
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

最近,種々の構造探査により,縦波速度(Vp),横波速度(Vs),電気比抵抗などが同一断面上にマッピングされるようになってきた.それら観測可能なVp, Vs,電気伝導度,Qなどから,どのような物質がどのような状態にあり,どのような破壊・摩擦特性をもっているのか推定できるようになることを目指し,室内実験によりVp, Vs,電気伝導度などと,破壊・摩擦特性を様々な条件下で同時測定できる装置を開発した.同時測定が必要なのは,間隙の形状や連結性に依存する物性パラメターは,(特に高温で間隙水が存在する場合,化学反応が活発なので,)温度・圧力を与えても一意に定まるとは限らないからである.高温高圧下で岩石の電気伝導度を測定する場合,金属ジャケットで岩石試料を覆うことになる.そのような状態で岩石試料の伝導度を求めるのに,金属ジャケットを主に流れてきた電流と試料中心部を流れてきた電流を分離し,それぞれガードリングとセンター電極で測定するガードリング法を用いる.ガードリングに流れ込む電流とセンター電極に流れ込む電流を計算し,適切な配置を検討し,昨年度,ガードリングモジュールを設計・製作した.さらにその測定システムを用い,日高変成帯主帯の泥質変成岩類などの測定を行った.ガードリングを用いても金属ジャケットを用いる影響を完全には取り除けないので,見かけ抵抗から試料の真の電気伝導度を算出する補正係数を数値解から求めた.温度は室温から25℃ごと250℃まで,圧力は10MPaから250MPaまで,周波数は周波数1Hz~1MHzまで変化させて測定した.日高変成帯泥質ホルンフェルスの電気伝導度は黒雲母片岩などに比べ非常に高い.一定圧力のもとで,このホルンフェルスの比抵抗は温度上昇とともに増加し,75℃近傍で最大値をとり,その後減少することがわかった.
著者
溝上 雅史 杉山 真也 村田 一素 鈴木 善幸 伊藤 清顕
出版者
独立行政法人国立国際医療研究センター
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

IL28B遺伝子の転写蛋白インターフェロンλ3 (IFN-λ3)の測定法を新規開発し、患者末梢血単核球をex vivo刺激で得られた上清や血清のIFN-λ3が良好なPeg-IFN/RBV併用療法効果予測が可能で本法の臨床的有用性を証明した。また、BDCA3陽性樹状細胞はC型肝炎ウイルスを認識し、toll-like receptor 3を介してIFN-λ3を産生することを示した。
著者
清水 新二 金 東洙 川野 健治 関井 友子 服部 範子 廣田 真理
出版者
奈良女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

1.アルコール関連問題の一つとして位置づけられたドメスティック・バイオレンス(DV)に関する研究は、わが国で初めての試みである。それに加え、全国データが収集されたことは今後の研究のベースラインを設定するものであり、研究成果の集合的蓄積上大きな貢献と考えられる。2.実践的な実態調査が中心であったこれまでのDV研究に対して、今回の調査研究は学術的、研究的視点から実施された。その結果、(1)特にDVと過剰飲酒の相関性が明らかになったこと、ならびに(2)全国一般住民のDVの経験率はこれまでの行政を中心にしたどの全国調査よりも低い事実が判明したこと、などは大いに論争的なものであり、今後さらに展開するDV研究の第二段階開始を刺激するインパクトをもつ。3.上記の研究上のみならず、現実の問題解決に向けた対策上の示唆が明らかな形で導き出されたことも、確実な成果といえる。具体的には、(1)DVの世代連鎖に関する分析からは、16歳前の家族暴力の目撃経験、被害経験は本人のDV被害とは無関連だが、DV加害に最も強く関与していることが判明した。DVの世代的再生産を抑止する上で、現在のDV予防、介入の重要性が示唆された。また(2)臨床調査の結果からは、アルコール依存症の場合断酒が成功するとDV行為も劇的に減少する事が確認され、DVと過剰な飲酒の関連性が浮き彫りにされたのみならず、今後アルコール臨床がDVの防止、介入に有効であることが示唆された。4.国際比較の点では、日本は米国、英国などとともに行動的というよりも言葉による暴力が比較的に多く観察された。身体的暴力の自己申告ではアフリカ諸国が目立つが、アメリカは相当に高い経験率が観察されている。日本は英国、チェコ、などとともに中位の上位国に位置づけられる。アフリカ諸国では性的虐待を含めて、多くの被害体験が報告されている。また国際共同調査の観点からは20数カ国もの多国間の共同性の確保の難しさと問題点も整理された。