著者
谷岡 哲也 浦西 由美 山崎 里恵 松本 正子 倉橋 佳英 多田 敏子 眞野 元四郎 山崎 正雄 友竹 正人 松下 恭子 上野 修一 大森 美津子 大浦 智華
出版者
香川大学
雑誌
香川大学看護学雑誌 (ISSN:13498673)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.65-74, 2007-03
被引用文献数
1

スティグマと疎外が精神疾患の治療と精神障害者の社会復帰を妨げていることが,精神保健上の問題として明らかにされている.地域住民の精神障害者との出会いの経験と精神障害者に対するイメージについて明らかにする目的で,郵送法による質問紙調査を行った.その結果,20代と30代の回答者の約50%が,精神障害者を意識した時期が小学校から高校であったと回答した.その当時の精神障害者のイメージは,否定的イメージが多かった.またその内容は,「変わっている」「こわい」が上位にあり,「普通の人と変わらない」は1割以下であった.回答者らが,実際に会ったことのある精神障害者は認知症のみであった.精神保健福祉施策は入院医療から地域ケアへと移行している.したがって,精神障害者やその障害について地域住民が理解する機会を我々は増やしていかなければならない.今後は,さらに若い年代から病院や施設等で精神障害者と日常的に交流を持てるような,ふれあいの場を作ることが重要である.また若い年代に対する精神障害者や精神障害に対する固定観念やスティグマを緩和ないし減少させるためのさらなる啓発活動が求められることが示唆された.
著者
内藤 暁子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
文化人類学 (ISSN:13490648)
巻号頁・発行日
vol.73, no.3, pp.380-399, 2008-12-31

本論文の目的は、ニュージーランドにおける先住民族マオリと非先住民による国民創成を、ワイタンギ条約をめぐる社会的・政治的動向を軸に再考することにある。ワイタンギ条約はマオリに先住民族性をもたらし、かつ、ニュージーランドという国家の出発点ともなっているからである。まず、多様な解釈が可能なワイタンギ条約の概要とその位置づけの変遷を述べ、現代において再評価されたワイタンギ条約とその結果としてのワイタンギ審判所の活動に焦点をあてた。それはマオリ復権運動の現れでもある。また、現代のマオリ社会において特徴的な、都市マオリにみられるエスニック・アイデンティティのような汎マオリ的先住民族性、戦略的ネオトライバリズム、文化的ナショナリズムをとりあげ、マオリタンガ(マオリらしさ)の状況に応じた表徴の多様性を明らかにした。一方、主流社会における、前浜・海底問題を契機とする「一律の市民権」という主張は、「タンガタ・フェヌア(土地に属する者、すなわち先住民族)」という特別な位置づけを求めるマオリ側と鋭く対立した。以上の要件をふまえて、マオリとヨーロッパ系住民という二文化主義、および多文化的現実が進むなかでのナショナル・アイデンティティを考えるとき、「移民」「市民権」「二文化主義と多文化主義」という三つの要素が重要となってくる。また、ワイタンギ条約を現代に生かす道を選んだニュージーランドにおける二文化主義は、文化の尊重というレベルにとどまらず、条約のパートナーシップに則ったパワーシェアリングがめざされる。そして、「土地に属する人(タンガタ・フェヌア)であるマオリと、条約によって土地に住む人(タンガタ・トゥリティ)であるパケハとの共生」という考え方はニュージーランド国民創成の新たな指針となる可能性をもち、マオリとパケハのバイナショナリズムのコンテクストのうえに多様な移民たちを受け入れる素地となるだろう。
著者
寺町 ひとみ 齊藤 康介 江﨑 宏樹 加藤 未紗 臼井 一将 野口 義紘 舘 知也 勝野 眞吾
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.12, pp.870-879, 2015-12-10 (Released:2016-12-10)
参考文献数
20
被引用文献数
1 5

“Education for Medicines” was initiated in 2012, as part of health and physical education (HPE) classes in junior high schools, through the revision of school curriculum guidelines. We conducted a survey that aimed to clarify the status of the implementation of medical education in schools. A questionnaire survey that targeted junior high school teachers in Japan was conducted via mail.The response rate was 48.0% (524/1,091). HPE teachers, school nurses, and school pharmacists were in charge of Education of Medicines in 91.8%, 6.3%, and 8.4% of schools, respectively. The average duration of classes was 49.6 minutes, and 1.2 times (84.2%). On average, 1.1% of schools did not offer Education of Medicines classes, 1.7% held the “odd hour” of classes, and 1.3% held only “drug abuse” classes. The most commonly used educational material was the school textbook (84.9% of schools).With respect to the delivery of Education of Medicines classes, 84.0% of schools responded “yes” to the item, “lectures are delivered by outside lecturers,” and 72.1% responded “yes” to the item, “we hope to introduce workshop participation.”The results of the survey indicate that HPE teachers provided Education of Medicines classes in accordance with the revision of school curriculum guidelines at many junior high schools. However, some schools did not offer the classes. In Japan, it is necessary to enhance Education of Medicines activities in the pharmaceutical field by involving specialists from different areas.
著者
Makoto Amaki Nao Konagai Masashi Fujino Shouji Kawakami Kazuhiro Nakao Takuya Hasegawa Yasuo Sugano Yoshio Tahara Satoshi Yasuda
出版者
日本循環器学会
雑誌
Circulation Journal (ISSN:13469843)
巻号頁・発行日
pp.CJ-16-1222, (Released:2016-12-10)
参考文献数
10
被引用文献数
2

The American Heart Association (AHA) Scientific Sessions 2016 were held on November 12–16 at the Ernest N. Morial Convention Center, New Orleans, LA. This 5-day event featured cardiovascular clinical practice covering all aspects of basic, clinical, population, and translational content. One of the hot topics at AHA 2016 was precision medicine. The key presentations and highlights from the AHA Scientific Sessions 2016, including “precision medicine” as one of the hot topics, are herein reported.
著者
鎌田 素之 角田 光淳
出版者
関東学院大学工学総合研究所
雑誌
関東学院大学工学総合研究所報 (ISSN:03872556)
巻号頁・発行日
no.44, pp.21-26, 2016-03

Radioactive cesium, released from the Fukushima I nuclear power plant that destroyed by Great East Japan Earthquake, has been detected from various agricultural products. Especially, wild mushrooms are known to assimilate radioactive cesium and other heavy metals. In this study, we focused on the concentration of radioactive cesium in wild mushrooms in Japan, calculated the ratio of 134Cs/137Cs and discussed on their origin whether they were released from the Fukushima I nuclear power plant or from other nuclear incidents.
著者
松浦 雄一郎 田村 陸奥夫 山科 秀機 肥後 正徳 藤井 隆典
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.14, no.10, pp.1258-1261, 1982

心ペースメーカー植え込みは年々増加し,これに伴い初期には予想もしなかったような合併症がみられるようになった.その中の一つに皮下ポケット内で本体が長軸上に回転し,電極離脱あるいはリードの断裂をきたすという"The Pacemaker Twiddler's Syndrome"がある.これまで私どもは充電型ペースメーカーを19例に植え込んでいるが, そのうちの1 例に本症候群が生じた. すなわち,心筋梗塞後房室ブロックのために充電型ペースメーカーが植え込まれた57歳女性に,本合併症が発生,充電ができなくなるという事態が発生した.非観血的に用手整復は容易であったが,再発を繰り返し,大胸筋膜下に本体を植え換え,再手術後5年の現在,再発なく経過している.これまで充電不能を呈したというPacemaker Twiddier's Syndromeの報告はみあたらないので,ここに報告した.
著者
石田 賢治 小沢 千絵
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. CS, 通信方式
巻号頁・発行日
vol.97, no.15, pp.39-46, 1997-04-21

インターネット上で公開された電子的な著作物は操作が容易なため,大量の著作権侵害の可能性が大きな問題となっている.また,従来インターネット利用者の権利意識の低さもいくつか指摘されている.しかしながら,インターネット上の著作物に関する権利意識を定量的に調査した報告は未だ行われていない.本稿では,1996年10月25日現在JPNIC(日本ネットワークインフォメーションセンター)に登録されている8736個のドメインに対応するWWWのホームページ上の著作権に関する注意書きを収集し,著作権者の権利意識を定量的に調査した.その結果,(1)著作権に関する注意書きのあったページは全体では36.6%である,(2)個別の権利に触れたページはわずか5.4%である,(3)自らのホームページ上の著作物をどう扱わせたいかを指示しているホームページはさらに少なく1.9%である,ことが分かった.
著者
山根 正博 国分 牧衛
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.85, no.2, pp.198-203, 2016
被引用文献数
1

東北地方における1993年から2008年までの16年間のダイズ収量の年次変動と地域変動の特徴,ならびにこれらの変動と気象要因との関係を県単位および市町村単位で解析した.気象要因は降水量,日平均気温,日最高気温,日最低気温および日照時間とし,生育期間(6~10月)における月平均値を解析に用いた.解析の対象地域としてダイズ作付面積が100 haを超える市町村41点を選んだ.県平均収量の年次変動を解析した結果,収量水準は日本海側が太平洋側を上回り,日本海側では南部ほど,太平洋側では北部ほど高い傾向を示した.県平均収量は青森,岩手,秋田および山形の4つの県間にはすべて相関が認められたのに対し,宮城と福島は南北に位置する隣県とのみ相関が認められた.16年間における県平均収量とその年次間変動係数との間には正の相関が認められた.41市町村における16年間の収量変動と気象要因との関係を解析した結果,いずれの気象要因も7月の数値が収量と有意な相関を示す市町村が多く認められた.さらに市町村単位に収量と気象要因との関係を重回帰分析したところ,降水量,気温および日照時間の3つの説明変数で市町村の収量変動を説明できる場合が多く認められたが,これらの気象要因の相対的な寄与度と影響を与える時期は市町村により異なった.
出版者
日経BP社
雑誌
日経コンストラクション (ISSN:09153470)
巻号頁・発行日
no.220, pp.100-104, 1998-11-27

この駅は,周辺の将来像をイメージしながら見たほうがいいかもしれない。今はまだ常総の田園にぽつりと置かれた感じで,風景になじみきっていない。というのも,オフィスビルなどの都市機能が建ち並ぶ将来の街の姿をイメージして設計してあるからだ。 「ひたち野うしく駅」は茨城県牛久市に,JR常磐線の新駅として今年3月に開業した。
著者
田中 孝之 本多 幸太郎 山藤 和男
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
ロボティクス・メカトロニクス講演会講演概要集
巻号頁・発行日
vol.2000, 2000

犬は訓練により, 空中に投げられたフリスビーや物体の落下する近くまで駆けて行って口で受けとめることができる。本研究はそのような犬の動作をロボットで実現するため, 多関節の二足をもつロボットを開発した。空中に放り投げられたこのロボットが空中でオイラー角を検出し, 足を常に地面に向けて軟着陸するようにゴム人工筋を制御することにより, ロボット犬の足からの軟着地実験に成功した。
著者
林 良夫
出版者
社団法人 日本口腔外科学会
雑誌
日本口腔外科学会雑誌 (ISSN:00215163)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.234-237, 2011-05-20 (Released:2014-05-22)
参考文献数
8

Primary Sjören’s syndrome (SS) is an autoimmune disorder characterized by lymphocytic infiltrates and destruction of the salivary and lacrimal glands, leading to clinical symptoms of dryness of the mouth and eyes. Autoreactive T cells bearing CD4 molecule may recognize unknown self antigen, triggering autoimmunity in the salivary and lacrimal glands. Recent evidences suggest that the apoptotic pathway plays a central role in tolerazing T cells to tissue-specific self antigen including 120KD α-fodrin, and may drive the autoimmune phenomenon. Cleavage of certain autoantigens during apoptosis may reveal immunocryptic epitopes that could potentially induce autoimmune response. It is now evident that the interaction of Fas with FasL regulates a large number of pathophysiological process of apoptosis including autoimmune diseases. Our data imply that tissue-specific apoptosis and caspase-mediated α-fodrin proteolysis are involved in the progression of autoimmune lesions in SS. We found that retinoblastoma-associated protein RbAp48 overexpression induces apoptosis in the salivary glands caused by estrogen deficiency. The studies reviewed the pathology and molecular mechanisms on the development of SS.
著者
末永 敦 梅津 倫 安藤 格士 山登 一郎 村田 武士 泰地 真弘人
出版者
日本コンピュータ化学会
雑誌
Journal of Computer Chemistry, Japan (ISSN:13471767)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.103-116, 2008-09-15 (Released:2008-09-18)
参考文献数
36
被引用文献数
1 2

ATP 合成酵素であるF 型ATPase は, ほとんどの生物に存在する膜貫通型タンパク質であり, ATPの加水分解反応に共役した分子の回転が観察されている. ATPase活性を持つ最小単位はα3β3γ複合体であり, 触媒部位である3つのβサブユニットはATP結合型(βTP), ADP結合型(βDP),空の構造(βE)の3つの異なる構造が解明されている. それらβサブユニットの3つの構造は異なる基質親和性を持つとされ,実験的に基質親和性の測定がされてきた. しかし, ADPの親和性に関しては未知であり, γサブユニットの回転をもたらすβサブユニットの構造変化も解明されていない. そこで, 分子動力学法/自由エネルギー計算により触媒部位の基質ATPとADPを相互変換したときの自由エネルギー差を見積もり,さらにその基質変化に伴うβ サブユニットの構造変化を観察した. その結果, βDP の構造が最もADP との結合親和性が高いことが解った. この算出値は一分子観察の結果から推測された加水分解反応モデルを熱力学的知見から裏付けるものであった. さらに, βサブユニットの構造変化とγサブユニットの回転を共役する役目を持つと考えられているDELSEED配列(Asp394∼Asp400)付近の構造を観察したところ, 基質変換に伴い構造変化が確認された. すなわち, DELSEED配列近傍のPhe418∼Gly426 は, 触媒反応と構造変化, 回転を共役するのに重要な残基であることが示唆された. 以上の結果から, ATP加水分解・Piの放出に伴い, DELSEED 配列付近の構造が変化し, それがγサブユニットの回転をもたらすという分子機構の様子が明らかになった.