著者
中村 義一 志村 令郎 横山 茂之 箱嶋 敏雄 嶋本 伸雄 饗場 弘二
出版者
東京大学
雑誌
総合研究(B)
巻号頁・発行日
1991

本総合研究(B)は、「RNAの動的機能発現」に関する重点領域研究の設定をその主要な目的として企画されたものである。しかしながら、平成4年度から新重点領域研究「RNA機能発現の新視点」が発足することに決定し、その研究内容がほとんど重複するため、当初の趣旨での本総合研究(B)班からの重点領域申請はやむなくとりやめた。その上で、本研究班の活用を計るため他の関連研究組織との連携を検討することとし、平成4年1月17ー18日に研究集会「RNA合成における分子間コミュニケ-ション」を東京において開催した。本総合研究(B)班からの5名を含めた12名が参加し、多角的に当該分野の研究を協議した結果、石浜明国立遺伝学研究所教授を代表者として、「転写装置における分子間コミュニケ-ション」を重点領域研究として申請することで合意し、申請を行なった。本総合研究課題に関する国内研究の活性化を計るために、平成3年12月に行なわれた日本分子生物学会において、シンポジウム「RNAシグナルによる翻訳制御」を開催した。国内から4人の演者に加えて、ミュンヘン大学からセレノシステイン研究で有名なA.Bo^^¨ck教授を招聘して活発なシンポジウムを行なうことができた。
著者
中村 義一 饗場 弘二 HERSHEY John BOCK August COURT Donald ISAKSSON Lei SPRINGER Mat
出版者
東京大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1992

遺伝子発現の転写後調節をつかさどるRNAシグナルの構造・機能・制御タンパク質との相互作用を明かにする目的で行なった研究成果を以下に整理する。1.ペプチド鎖解離因子の研究:大腸菌では、終止コドンUGAにおける翻訳終結はペプチド鎖解離因子RF2を必要とする。我々はin vivoでRF2と相互作用している因子に関する知見を得ることを目的として高温感受性RF2変異株から6種類の復帰変異株を分離した。その内、4株が遺伝子外サプレッサー変異であった。それらは、90分(srbB)と99分(srbA)の2つのグループに分けられた。この解析に並行して、新たにトランスポゾン挿入(遺伝子破壊)によりUGAサプレッサーとなるような突然変異を分離し、tosと命名した。遺伝学的分析とDNAクローニング解析の結果、tos変異はsrbA変異と同一の遺伝子上に起きた突然変異であることが明かとなった。この結果から、tos(srbA)遺伝子は、その存在が1969年に予言されていながら何の確証も得られず放置されていたRF3蛋白質の構造遺伝子である可能性が示唆された。そこでTos蛋白質を過剰生産、精製し、in vitroペプチド鎖解離反応系で活性測定を行なった結果、RF3蛋白質の活性を完全に保持することが明かとなった。この解析により、四半世紀の謎に包まれていたRF3因子の存在、機能、構造を遺伝学的、生化学的に実証することが出来た。この成果は今後、終止コドン認識の解明にとって飛躍的な原動力となるものと自負する。2.リジルtRNA合成酵素遺伝子の研究:大腸菌は例外的に、2種類のリジルtRNA合成酵素を持ち、構成型(lysS)と誘導型(lysU)の遺伝子から合成される。その生理的な意味は依然不明であるが、我々は本研究によってlysU遺伝子の発現誘導に関してその分子機構を明かにすることができた。その結果、lysU遺伝子の発現はLrp蛋白質(Leucine-Responsive Regulatory Protein)によって転写レベルで抑制されており、ロイシンを含めた各種の誘導物質によるLrp蛋白質の不活化を介して転写誘導されることを明かにした(Mol.Microbiol.6巻[1992]表紙に採用)。さらに、lacZとの遺伝子融合法により翻訳レベルの発現制御を解析した結果、翻訳開始コドン直下に“downstream
著者
中村 義一 石浜 明 口野 嘉幸 饗場 弘二 横山 茂之 野本 明男
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

本基盤研究は、mRNAの誕生から終焉に至る動態と多元的な制御プログラムについて、国際的な調査及び研究討論を実施し、総合的な討論に基づいて重点領域研究の設定を検討する目的で企画採択されたものである。その研究実績を要約する。1.研究領域の調査結果:転写後の動的な制御プログラムは、広範囲の生物系で重要不可欠な役割を担うことが明らかになりつつあり、mRNAを骨格とする基本的な諸問題を体系的に正攻法で研究すべき時期にある。本研究の成果は、発生・分化・応答等の高次な細胞機能の解明や、RNAダイナミズムの創成、あるいは蛋白質工学やmRNA臨床工学等の次世代バイオテクノロジーの基盤となりうる。mRNA研究に関連する重点領域の推進が必要かつ急務である。2.国際研究集会における学術調査と討議:平成8年11月10〜14日、本基盤研究代表者が中心となってmRNA研究に関する国際研究集会「RNA構造の遺伝子調節機能(“Regulatory Role of RNA Structure in Gene Expression")」を開催した(日本学術振興会王子セミナー/於箱根)。本研究集会には、申請領域の第一戦で活躍する欧米の研究者約40人が参加し最新の研究成果の発表、討論、交流を行った。その機会を利用して、国際的な視点からmRNA研究の展望と研究振興の方策を議論した。3.出版企画:上記国際研究集会に関連した学術刊行物を、学術誌Biochimieの特集号としてElsevier社(仏パリ)から出版することとなり、本基盤研究代表者が監修し平成9年3月に出版の予定である。4.重点領域の設定:本基盤研究の目的をふまえて、重点領域研究「RNA動的機能の分子基盤」(領域代表・渡辺公綱、平成9〜12年)の実施が決定された。
著者
渡辺 公綱 横川 隆志 河合 剛太 上田 卓也 西川 一八 SPREMULLI Li SPREMULLI Linda lucy LINDA Lucy S SPREMULL Lin
出版者
東京大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1991

本国際学術共同研究は、動物ミトコンドリアにおける暗号変化(UGA;普遍暗号では終止暗号がトリプトファンに、AUA;イソロイシンがメチオニンの暗号に、AGA/AGG;アルギニンが殆どの無脊椎動物ではセリン、原索動物ではグリシン、脊椎動物では終止暗号に変化、など)の分子機構をin vitro翻訳系を構築して、解明する目的で始められた。このような研究は、ミトコンドリア(mt)からその細胞内量から見ても、生化学的な研究に十分な試料を調製することが大変困難なこと、翻訳に関わるタンパク性諸因子がかなり不安定で単離が困難なことなどが主な障害となって世界的にも殆ど手がつけられていなかった。我々は特異構造を持つmt・tRNA(殆どのmt・tRNAではL型立体構造形成に関わっているDループとTループ間の塩基対を欠いていたり、DループやTループが欠落したものも見つかっている)と変則暗号解読の因果関係を探る目的で、mt・tRNAの大量調製法を確立し、その構造と性質を調べていたが、翻訳系の構築に必要な活性のある因子の調製ができなかった。国外共同研究者であるSpremulliのグループは、活性あるmtリボソームと翻訳系諸因子の調製に成功していたが、mt・tRNAの単離ができなかった。このような状況においてお互いのグループで開発したシステムと技術を合体させることにより、mtのinvitro翻訳系を構築し、暗号変化の分子機構を解明するという目的で平成3年度から本研究がスタートした。研究はかなり順調に進んできたが、本格的な展開はこれからであり、やっとその基礎が固まったという現状である。以下に年度を追ってその成果を述べる。[平成3年度]1)tRNAの特定配列に相補的な合成DNAプローブを用いたハイブリダイゼーション法を開発し、mt・tRNAの0.2-0.5mgオーダーの調製が可能になった。2)UCN(N=A,U,G,C)のコドンに対応するウシmt・セリンtRNAを単離、精製し、それが従来の遺伝子から推定されていた配列から、実際の構造がずれていること、アンチコドン・ステムは一塩基対長く、アミノ酸ステムとDステムの間が一塩基しかない、異常な2次構造をとること、この構造は哺乳動物mtに共通であることを明らかにした。3)ウシ肝臓から活性のあるリボソーム、開始因子(IF-2)、伸長因子(EF-Tu/Ts、EF-G)、アミノアシル-tRNA合成酵素(ARS)の調製方法を確立し、それらの性質を検討した。[平成4年度]1)AGY(Y=U,C)のコドンに対応する、Dアームを欠くセリンtRNAのセリルtRNA合成酵素(SerRS)による認識部位を決定する目的で、このtRNA遺伝子からT7RNAポリメラーゼによる転写物を調製し、種々の塩基置換を導入したtRNA変異体のSerRSによるセリン受容能を測定した結果、アンチコドンは認識に無関係だが、Tループが重要であり、中でもよく保存されたループ中央のA44の置換が決定的であることが分かった。2)ウシ・mtでポリ(U)依存ポリ(フェニルアラニン)合成系を初めて構築し、大腸菌の系との構成成分の互換性を検討したところ、mtのPhe-tRNA^<Phe>は大腸菌のEF-TuとGTPとで3者複合体を形成するが、そこからリボソームA部位への転移過程が働かないことを明らかにした。3)ウシ・mtのメチオニンtRNAの塩基配列を再検討し、アンチコドンの一字目に、5-ホルミルシチジンという新規修飾塩基が存在することを明らかにした。4)ウシ・mtフェニルアラニンtRNAの修飾塩基を含む塩基配列を決定し、RNaseや化学試薬への感受性からその立体構造を推定したところ、Dループ、Tループ相互作用はないが、Dアームとバリアブルループ間の3次元的な塩基対形成によってL型に近い構造をとっていることを見出した。[平成5年度]1)ポリ(U)依存ポリ(Phe)合成系の効率化の条件を検討し、1mMスペルミン存在下で大腸菌の系の約1/2のレベルまで合成効率を上昇させることに成功した。2)AUAがメチオニンの暗号であることを証明するために、AUAを含む人工mRNAを用いて、AUAに依存したメチオニル-tRNAのリボソームへの結合、ポリペプチドへのメチオニンの取り込みを調べたが、現在までのところまだ肯定的な結果は得られていない。3)ウシmtからホルミルトランスフェラーゼを精製し、fMet-tRNAを作成し、EF-TuとIF-2の結合をMet-tRNAと比較したところ、fMet-tRNAはIF-2と、Met-tRNAはEF-Tuとそれぞれより高い親和性を示した。これは単一tRNAがホルミル化によって開始と伸長の両反応に使い分けられる可能性を支持するものである。
著者
横山 茂之 河合 剛太 岡田 典弘 武藤 あきら 渡辺 公綱 志村 令郎 大澤 省三
出版者
東京大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1992

本年度は,これまでの4年間の研究成果をとりまとめ,9月24日の第6回公開シンポジウムにおいて広く公表した.また,4年間の班員の成果をまとめた最終報告書を作成した.また,本重点領域研究と関係の深いシンポジウムが8月27日の日本分子生物学会大会中に行われ,これにおいても研究成果が公表された.第6回公開シンポジウムでは,第1項目「RNA機能の発現機構」の研究成果として,オルタナティブ・スプライシングの制御に関与するRNA結合タンパク質,精密なtRNA分子識別を行うクラスIアミノアシルtRNA合成酵素,および特異な二次構造を持つ動物ミトコンドリアtRNAについての立体構造解析の結果が示された.また,グループIイントロンRNAの活性化,リボソームRNAの機能あるいはタンパク質によるtRNAの分子擬態についての研究成果も報告された.第2項目「RNA新機能の検索」については,新規に発見された低分子量RNAによるTrans-translationの機構,リボソームRNAにおける2つのドメイン間のcommunication機構,あるいはミトコンドリアtRNAによるショウジョウバエの生殖細胞形成機構についての研究成果が発表された.また,第3項目「RNAの起源と進化」については,アミノアシルtRNA合成酵素の起源と進化のメカニズム,およびウイルス由来のリボザイムやミトコンドリアtRNA遺伝子変異によるミトコンドリア病についての研究成果が発表された.
著者
太田 成男 小林 悟 武藤 あきら 渡辺 公綱 渡辺 嘉典 岡田 典弘
出版者
日本医科大学
雑誌
特定領域研究(A)
巻号頁・発行日
1997

ミトコンドリアtRNA病の発症機序の分子機構解明とそれを基礎とした治療法の開発が行われた。太田と渡辺公綱は共同で、ミトコンドリア病の原因である変異ミトコンドリアtRNAを精製し、修飾塩基を含む構造解析をし、ミトコンドリア病のふたつの病型(MELASとMERRF)の原因の3種類の変異ミトコンドリアtRNA(tRNA-LysとtRNA-Leu(UUR))では共通にアンチコドンの塩基修飾が欠損していることを明らかにした。さらに、渡辺はこの塩基の修飾にはタウリンが結合していることを明らかにした。すなわち、3つの変異tRNAには共通にアンチコドンにタウリンが結合していない。この塩基修飾の欠損によって、mRNAのコドンへの親和性が低下してミトコンドリア内の蛋白合成が停止することによって発症することを明らかにした。変異tRNAの構造解析、機能解析を基礎として疾患の治療法の基礎が開発されたので、一連の研究の社会的意義はきわめて大きい。小林はミトコンドリアrRNAが生殖細胞の形成に普遍的に必要であること、生殖細胞形成期の細胞ではミトコンドリアrRNAを含むミトコンドリア型(原核細胞型)のリボソームが形成されていることを明らかにした。この研究によって、ミトコンドリア型の翻訳系が生殖細胞の形成に必要であるという独創的な概念を提出した。この概念は、類する研究がないほど新しい分野をきりひらいたという意味で極めて重要である。渡辺嘉典は減数分裂に必要なRNAであるmeiRNAの機能を明らかにした。すなわち、meiRNA結合蛋白が核と細胞質をシャトルさせるためにRNAが必要であるという新しい概念を打ち立て、証明した。武藤はmRNAとtRNAの双方として機能するmtRNAの役割ドメインを決定し、その分子機構を解明した。
著者
矢野 重信 小宮 克夫 加藤 昌子 塚原 敬一 佐藤 光史
出版者
奈良女子大学
雑誌
試験研究(B)
巻号頁・発行日
1991

当研究室では生体中での酵素系の作用機序を念頭において、アミノ酸や糖質などの生体関連物質と遷移金属イオンとの相互作用に対して配位立体化学的に詳細な検討を行い、それらに高度な立体化学制御機能を賦与することを目指し研究を進めてきた。本研究では、我々のこれまでの蓄積を基盤にして、分子識別能を有する金属錯体を設計し立体化学制御に関する知見を広げ、さらに当研究室で独自に開発した金属錯体の化学修飾法を用いて金属錯体を機能素子とする高分子錯体等の高機能性複合系の開発を目指し研究を行った。まず光学活性なポリアミンとエチレンジアミン二酢酸型配位子の混合配位Co(III)錯体の立体化学制御機構について詳細に検討した。その結果複数個の配位窒素原子に対するアルキル基の位置選択的置換により金属錯体の絶対配置を高度に制御できることを明らかにした。また分子間の水素結合を介する分子識別能を有する金属錯体の設計を目指して、二糖のNi(II)グリコシルアミン錯体の合成とキャラクタリゼーションを行った。良好な結晶が得られたD-マルトース錯体についてX線結晶構造解析を行った。その結果、二糖分子内での水素結合が見られた他、錯体分子が糖ユニットの水酸基間での水素結合を介して二量化していることが判明し、金属錯体による分子識別能の発現にとって重要な知見を得た。さらに非配位の水酸基を有するポリアミノポリカルボン酸を配位子とする陰イオン性Co(III)錯体に対し、当研究室で独自に開発したクリプタンド可溶化法を用いる各種酸無水物との反応により錯体の非配位の水酸基を反応点とするエステル化に成功した。脂肪酸無水物の場合には水中でミセル形成能を示す金属錯体をヘッドグループとする新規界面活性剤の開発に成功した。さらに高分子化可能なクロトン酸およびメタクリル酸残基が連結した錯体の合成にも成功した。以上の知見を基に金属錯体の高電子化について検討している。
著者
柴田 哲男 融 健 中村 修一
出版者
名古屋工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

有機化合物へフッ素原子を導入するための試薬や方法論は多数開発されているが,現在知られている含フッ素医薬品は,ベンゼン環や複素環などの芳香族上の水素原子をフッ素に置換した例ばかりが目立ち,含フッ素ステロイド医薬品に代表されるような不斉中心にフッ素原子を有する医薬品や農薬品は少ない。これは,不斉中心にフッ素を選択的に導入する実用的な不斉フッ素化試薬やフッ素化反応がないことにも起因する。我々はこの問題に取り組み,これまでの研究例から完全に脱却した,キナアルカロイド/Selectfluor試薬を開発することに成功した。この試薬は,2種の市販試薬を有機溶媒中で混合するだけで簡単に調整出来るキラルフルオロアンモニウム塩である。簡便に反応を実施でき,適応範囲が広く,しかも不斉収率は従来法に比べ格段に高いなど,これまでにはない優れた性能を備えていた。本方法は,試薬という性格上,キナアルカロイドを化学量論量使用する必要がある。我々がこの研究を発表した直後に,Togniらによって初めての触媒的不斉フッ素化反応が報告された。彼らはβ-ケトエステルのフッ素化反応において,チタン/酒石酸を触媒に用いることにより,二点配位型の錯体を経由し,高エナンチオ選択性でフッ素化体が得られることを見出した。選択性については,まだ改善の余地が残されていたが,その後このアプローチは袖岡らのPd錯体を用いる方法により劇的に改善された。鎖状構造から環状構造までバリエーションに富んだβ-ケトエステル類の不斉フッ素化反応を,すべて90%ee以上の選択性で実現した袖岡らの方法は,この分野を一挙に完成にまで近づけた。この研究成果に刺激され,我々は,もう一歩踏み込んだ新しいフッ素化反応が出来ないものかと模索し始めていた。アミノ酸より簡便に合成できるビスオキサゾリン型触媒は,世界中で汎用されるキラル触媒の一つで,その不斉合成への実績は大きい。そこで,この触媒を活用した新しいフッ素化反応の開発を目指すこととした。着手して数ヶ月後,β-ケトエステル類の触媒的不斉フッ素化反応において,金政らの開発したDBFOX触媒とニッケル触媒が最適であることを見っけた。その不斉収率はこれまでに一度も達成されなかったことのなかった99%eeを記録しただけでなく,オキシインドール類の不斉フッ素化まで可能にすることとなった。
著者
安藤 聡彦 古里 貴士 平塚 眞樹 高橋 正弘 小栗 有子 関 啓子 宮北 隆志 境野 健兒 土井 妙子 高田 研 岩川 直樹 原子 栄一郎 石井 秀樹 片岡 洋子 広瀬 健一郎 小寺 隆幸
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、①1960年代以降世界各国において教育の「環境化」過程が生じてきたが、日本の公害教育運動は他国の社会批判的な環境教育運動と比較して、教育の目的・内容及び担い手の面でユニークであること、②チェルノブイリ原発事故後ベラルーシ共和国では放射線生態学教育が組織的に取り組まれ、日本でも福島原発事故後放射線教育が活発だが、公害教育運動の経験をふまえたアプローチも求められること、③ベラルーシ共和国において見られるリハビリ健康増進施設が日本においても有効であり、そのために公害教育研究の対象の拡大が求められること、④公害教育論の社会批判的アプローチの批判的再構築が求められること、が明らかとなった。
著者
高橋 信之 河田 照雄
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

これまで空腹時高脂血症が動脈硬化性疾患のリスク因子として重要であると考えられてきたが、近年、食後高脂血症の方が動脈硬化性疾患発症とより密接に関連していることが示され、食後高脂血症を予防・改善することが重要であると考えられている。しかし、これまでに小腸上皮細胞における脂肪酸酸化活性が食後高脂血症にどのような影響を及ぼすか検討されてこなかった。そこで本研究では、小腸上皮細胞での脂肪酸酸化活性を変化させる内因性・外因性因子の食後高脂血症に対する作用を検討した。その結果、内因性因子としてレプチンが、外因性因子として PPAR-alpha 活性化剤であるベザフィブレートが。小腸上皮細胞での脂肪酸酸化を亢進させることで食後高脂血症を改善することが明らかとなった。さらに PPAR-alpha を活性化する作用を有する DHA にも同様に食後高脂血症を改善する作用があることが明らかとなった。以上のことから、小腸上皮組織における脂肪酸酸化活性は、生体内への脂質輸送量を決定する上で重要であり、食品成分により食後高脂血症を改善することが可能であることが示された。
著者
玉田 芳史 河原 祐馬 木村 幹 水野 広祐 岡本 正明 麻野 雅子 日下 渉 横山 豪志 滝田 豪 河野 元子 上田 知亮
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

タイ、フィリピン、マレーシア、韓国の政治は、1997 年のアジア通貨危機直後には安定していたものの、その後不安定になった。その主因は、社会的な格差や分断を増幅した新自由主義経済政策であった。社会経済的地位が不安定になった中間層は、多数派庶民の政治的台頭を前にして、数に対抗するために道徳という質を強調するようになった。そうした対立と不安定化が、タイとフィリピンではとりわけ顕著になっている。
著者
中野 明彦 植村 知博 佐藤 健 安部 弘 平田 龍吾 齊藤 知恵子 黒川 量雄 富永 基樹 上田 貴志
出版者
東京大学
雑誌
特別推進研究
巻号頁・発行日
2008

細胞内膜交通の問題に生化学、遺伝学と最新のライブイメージング技術を駆使して取り組み、小胞に濃縮した積荷タンパク質を安全かつ確実に受け取る仕組みなど、選別輸送の新たな機構を解明することができた。また酵母から高等植物への展開から、進化の過程で植物が獲得した新たな膜交通機構を明らかにし、従来の動物細胞の研究だけからでは十分に理解できなかったゴルジ体層板形成、ポストゴルジ交通などの複雑な事象を整理する手がかりを得た。
著者
松田 紘子
出版者
上智大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

本研究の目的は、沖縄で語られている植民地台湾の記憶と、沖縄地上戦の記憶、さらに戦後の米軍占領と今日まで継続する米軍駐留をめぐる政治、社会運動、文化状況との相関関係を明らかにすることである。今年度は、5月と12月に台湾にそれぞれ約1週間ずつ滞在し、中央研究院や国立台湾大学などで資料調査を実施した。また研究関心を共有する研究者と面会して助言をもらうことができた。また年度末の3月には米国サンディエゴで開催されたアジア研究学会で研究報告を行った。また研究者だけが集う国内の研究会だけでなく、一般市民向けの会合(「沖縄クラブ」)で自分の研究の成果を還元できたのは有意義だった。研究の成果は国際的に高い評価を得ている学術雑誌(査読有り)のCultural StudiesとInter-Asia Cultural Studies上で学術論文というかたちで発表した。また年度内に出版できなかったが、本科学研究費で実施した研究の成果は平成25年度に3冊の共著書(和文)上で発表されることが決定している。さらに年度中に執筆した和文の学術論文が平成25年5月現在、査読審査中で、審査を通過すれば8月頃に出版される予定である。以上のように、平成24年度は前半はおおむね順調に調査と執筆活動を行うことができたが、後半は就職活動のために精神的にも時間的にも消耗してしまい、当初計画していたほどには研究を進めることができなかったことを残念に思っている。
著者
多々良 穣
出版者
東北学院榴ケ岡高等学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

世界史の授業では、暗記を重要視しがちである。試験で高得点をとらなければならない面は否定しないが、暗記に偏れば無味乾燥な授業になってしまう。しかし、なぜ教科書に書いてあるのか、どのように歴史像にたどり着いたのかについてのエピソードを盛り込むと、生徒たちの目の輝きが違う。古代文字に焦点を当てていかに高校生の関心を引き出し、彼らの歴史理解を向上させる授業を研究するのが、本研究の目的である。概説書を精読して、文字発見のエピソード、文字解読方法、文字解読による歴史(社会)の復元などをまとめた。文字が初めにこの世に誕生したのは、紀元前3500年頃に発明された楔形文字であった。世界の文字体系は、楔形文字・ヒエログリフ文字・アルファベット・漢字体系などに大別されるが、本研究では楔形文字、エジプト神聖文字、線文字B、甲骨文字、そしてマヤ文字について整理した。実際の授業で生徒が関心を持ったのは、次の事項であった。(1)楔形文字に関して、ローリンソンが命をかけて絶壁あるベヒストゥーン碑文を拓本したエピソード。やはり冒険ものは、生徒たちには面白く感じられたようである。(2)エジプト神聖文字の解読において、シャンポリオンが「プトレマイオス」と「クレオパトラ」の文字を比較し、アルファベットの音価を確定して「ラムセス」と「トトメス」という王名を解読した事例。これについては非常に具体的な言語学の話に踏み込むことができた。(3)現在話題になっている「2012」問題に絡めて説明した、マヤ文字や暦の読み方。マヤの長期暦があと2年後に循環してスタートに戻るという話には、非常に興味深く聞き入っていた。なお、私の専門である古代マヤ文明については、正しく文字解読されたことで、これまで雨の神だとされていたものが山の怪物であることがわかった。このことは本研究の成果の一つであり、後述する学術雑誌のほかに研究会やシンポジウムで発表する予定である。
著者
小林 一行
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

パーソナルEV知能化のためのJAUSコンポーネントの製作とその実装を行った.2010年度から2012年度までの間に行った研究は,主にJAUSを用いたローカルコンポーネントの開発および実験,既存のセンサをJAUSコンポーネントとして扱うことができるJAUSProtocolConverterの開発とJAUSシステムの統合に関する研究および実験を行った。そのJAUS準拠EVコンポーネントの実証実験およびデモンストレーションの場として,(1)米国で開催されたIGVC大会、(2)日本で開催されたつくばチャレンジへの参加出場、(3)第25回国際計量計測展のアカデミックプラザに出展し、JAUSProtocolConverterの試作モデルの展示を行った。
著者
矢島 新
出版者
東京農業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では疫病菌の新規防除法を開発する為に、疫病菌の有性生殖メカニズムをケミカルバイオロジー的な手法により明らかにすべく検討を行った。まず、疫病菌の有性生殖においてA2株が放出しA1株に卵胞子形成を誘導するα2の可能な4種の立体異性体を合成することに成功した。ただ一つの立体異性体のみに活性があることから、天然物の絶対立体配置を決定した。確立した合成法に基づき、α1をリガンドとする化学プローブを合成した。
著者
土屋 千尋 齋藤 ひろみ
出版者
帝京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

研究代表者土屋と分担者齋藤は、全国でも有数の外国人集住地域を校区とする小学校に研究の拠点をおき、学校・大学・地域の三者の連携・協働による子どもの学習環境づくりの実践的研究をおこなった。土屋は愛知県豊田市保見団地を校区とする豊田市立西保見小学校(全校児童数206名の内半数がブラジル人児童)を、齋藤は神奈川県いちょう団地を校区とする横浜市立いちょう小学校(全児童数203名の内半数が外国にルーツをもつ子ども-主にインドシナ難民・中国帰国者家庭の子弟)をフィールドとした。研究の成果として、次の3つがあげられる。1.外国人児童生徒への支援ネットワークの網の目に大学を位置づけて、実践の場に長期的に直接的にかかわったことにより、学校現場における実態を内側から把握することができた。2.学校現場の教育主体である教師、大学研究者、教育サポーターである学生が小学校という一つの現場で対話し、共に協働したことによって、それぞれがエンカレッジされ、教育のとらえなおしがはかられた。また、研究者は、学校の教育運営・決定のプロセスにおいて、日本語教育で蓄積されてきた知見や理論を提供し、議論参加できた。西保見小学校においては家庭内の言語環境の調査の実施、いちょう小学校においては校内研究会におけるテーマの設定が、その例としてあげられる。3.金子(1986,1992)のネットワーク論を基に、そこに差異や異質性をもつ参加者の「学習」としての実践という視点をくわえて、土屋と西保見小学校の連携を中心に、更に、地域もいれて、ネットワーク化をえがいた。外部者をうけいれることは、学校にとっては制度の整備、学校文化の質的な変容がもとめられるものであることがうかびあがった。以上、本研究における協働に基づくネットワークは、学校現場の子どもたち(外国人児童)へのよりよい教育実践をよびこむ一つのモデルになりうるとかんがえられる。
著者
齋藤 陽子
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

研究開発制度の在り方を左右する知的財産権について整理した。権利強化は取引費用の上昇につながり、公的機関の役割が改めて見直される結果となった。とりわけ孤児作物と呼ばれる投資の過少性が危惧される作物については、官民連携が模索されている。北海道または十勝管内を対象に、地域特産農産物(マイナークロップまたは孤児作物)の利用状況や需要動向を分析した。帯広市の給食は、じゃがいもを通年利用することで、食育を通した地域農産物の活用を進めていた。また、北海道を中心に新たに作付されるパン用小麦については、地産地消を実践する消費者を中心にアピールできることが分かった。
著者
吉島 茂 岡 秀夫 近藤 安月子 杉谷 眞佐子 北村 弘明
出版者
聖徳大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本年度の重点は、外国語としての英語、ドイツ語、フランス語、スペイン語および日本語に焦点を絞り、各言語圏を代表するInstitutesと研究者、また現場での実践者を一同に集め、冠テーマ『21世紀、グローカル時代の外国語教育』のもとにそれぞれの立場を表明し、直面する課題を議論することであった。2011年11月25日から27日までの3日間、東京ドイツ文化会館の講堂を借りて、シンポジウムを行った。のべ150人ほどの参加者を得た。詳細はHP www.fleeg.jpで見ることができる。その時のpresentationは加筆の上同HPに載せる予定である。この議論の中で浮かび上がったのはGlobal化した英語と、世界的に広がって、英語と並ぶcommunication言語となっているスペイン語、およびその他の言語、ドイツ語、フランス語、日本語の間の言語教育上の差違である。しかしコミュニケーション達成を根底の課題として、学習過程を構築していくことに共通の地盤を見出すことができた。Global Englishでは従来のform中心主義の教育はcommunication達成の大目標の前で影が薄くなっているが、言語能力の向上を目指すなら、そのdiversityの中で、標準化を目指す必要がある。スペイン語の場合はその地域的広がりの割に形式面でも均一性が見られ、英語の持っているような課題はないと言える。その他の言語については、その文化との関係がより大きな問題になってくる。Communicationを第一目標とすると、全ての言語において、特にpragmaticのレベルでその文化的影響が大きく出ると考えられる。これをどう標準化するか、その必要性、またdiversityに対応する能力の育成も今後の課題として認識された。CEFRの受容に関してはまさに落差が大きく理念を理解しての受容とはまだほど遠いというのが現状であり、ヨーロッパでのその取り組みには差がおおきくみられる。アメリカのSFLLについても同様である。
著者
木村 昌孝
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

フィリピンでは、1986年の民主化以来、民主主義の定着及び発展の文脈において選挙改革が重要事項のひとつであった。本研究は、フィリピンの選挙について、選挙行政研究の立場から、選挙人登録、投票、開票、及び集計の4つの局面におけるICT導入の経緯と現状について把握したうえで、選挙権の保障、不正防止、及び選挙行政の合理性(正確性、効率性、経済性)の3つの観点から分析し評価する。これら3つの要素は多くの場合トレード・オフの関係にあるので、民主政治におけるリーダーシップの正当性に不可欠な選挙の信頼性を損なわないように、様々な要請のバランスをとらなければならない。