著者
土器屋 由紀子 岩坂 泰信 梶井 克純 山本 正嘉 山本 智 増沢 武弘
出版者
江戸川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

2004年に無人化された富士山測候所を有効に活用し、国際的な視点に立って、多方面に開かれた総合研究施設とすることを目的として調査研究を行った。主要な行事としては、2006年11月22,23日に国際ワークショップ/シンポジウムを開催した。以下に内容を要約する。(1)富士山は工業発展の著しい東アジア大陸の東に位置しており、偏西風の通り道であり、大気汚染の観測サイトとしての価値は大きい。(2)富士山測候所の施設はまだ十分利用可能であり、利用されずに放棄されるのは資源の無駄と考えられる。最近、中国のWaliguan山、台湾のLulin山に大気化学観測地点が新設されている。ハワイのマウナロア、さらに中央アジアの山などを含めた高所観測ネットワークの中で富士山の観測が不可欠である。(3)航空機の宇宙線被爆の観測にとっても、富士山はユニークな連続観測地点である。(4)日本で唯一永久凍土が確認された富士山におけるコケ類の調査は地球温暖化を目視できる「指標」であり、今後、より詳しい継続的な観測には測候所を基地として利用することが望ましい。(5)富士山頂で7年間サブミリ波望遠鏡による冬季観測を成功させた技術を活かすことによって、天文学並びに超高層大気化学への利用が可能である。(6)高山病の原因の究明や高所トレーニングにとって富士山測候所は有用な施設である。(7)脂質の代謝機構の解明や、耳の蝸牛機能に対する低圧低酸素環境の影響など医学研究にも測候所の施設は有用である。(8)廃止になった筑波山測候所を生き返らせ、リアルタイムの気象データの配信を含めて水循環の研究に用いている筑波大学の業績に学ぶところが大きい。(9)新しい分析化学的な手法や新素材の開発・応用などにも低温・低圧の高所研究施設として測候所は利用できる。
著者
村山 留美子 内山 巖雄 中畝 菜穂子 岸川 洋紀
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

全国の成人を対象とし,一般市民のリスクや科学技術に関する認知レベルとその構造の把握のための調査を行った。その結果,1)17の項目について,それぞれの項目が持つ特徴的な認知構造について明らかにした。日常良く使用するものや科学技術では,必要性や恩恵を感じている場合,危険度の認知が低くなる傾向が示された。2)東日本大震災一年前の市民の地震へのリスク認知は非常に高かった。特に京浜,東海地域で意識が高く,一方で東北地方はやや低くなっていた。また,原子力発電所については,生活への必要性が高いと認知されている項目であった。半数以上が危険であると認知し,安全性がないとの意識を持っていたが,他の項目から相対的に見た場合,その意識はそれ程高くなかった。東日本大震災とそれに伴う原子力発電所の事故を鑑み,大地震や原子力発電所等の電力供給源については東日本大震災以後大きく認知構造が変わる可能性があり,今後もその変動を検討する必要がある。
著者
梅本 順子
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

多方面において人道的、かつ教育的に活動した牧師、田村直臣という人物の足跡を、The Japanese Brideに代表される日本の風習や習慣を紹介するための英書の発行や、それに先立つ童話集の翻訳などの仕事を中心に、文化の受容、発信という視点からたどった。田村の多様な活動の背景には、四年あまりのアメリカ留学と、帰国後も五年に一度の割合で海外に出かけた経験がある。当時まれにみる国際人として、幅広い知識と卓越した語学力で日本文化を発信、かつ西欧の文化の受容と紹介に努めたことが明らかとなった。田村が先駆者となったものとしては、宗教教育の実践、児童文学の翻訳の際の言文一致体の導入などが挙げられる。また、アメリカでのThe Japanese Brideという英文書籍の出版は、新渡戸稲造の『武士道』よりも早い。日本女性の窮状を、結婚をテーマに紹介した同書には、当時すでに男女平等を説く、田村の思想が表れていた。そのため、同書を日本で翻訳・出版するとなると、保守派のみならず、日本基督教会側からも圧力がかかった。それが「花嫁事件」であり、田村は牧師職の剥奪という処分を受けるが、独立教会の牧師として、「児童」と「女性」の問題に生涯にわたって関わり続けたのだった。
著者
河野 允宏
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

前年度は、3次元波動伝播理論と理論的震源関数を用いた地震動モデルを作成し、この地震動モデルの有効性の検証を、兵庫県南部地震で測定された神戸大学、新神戸変電所、松村組の技術研究所の3ヶ所の地震記録を対象に行うと共に、これらの地震動特性の構成についての考察を行っている。地震動モデル作成において、断層面での滑り分布は、Sekiguchi et al.(1995)の結果を考慮したが、震源関数を規定する断層破壊に関するパラメータは、神戸大学記録のNS成分1つのみと地震動モデルの対応する成分と合致させることから決定した。このようにして、一つの震源関数を定めた。神戸大学のEW成分、新神戸変電所および松村組技術研究所のNS、EW成分の地震動は、それぞれの地盤モデルから評価されたグリーン関数と上記の一つの震源から作成した。神戸大学、新神戸変電所、松村組技術研究所の加速度記録のNS、EW成分と地震動モデルの波形、速度応答スペクトラムの比較により、地震動モデルと観測地震動は全体的に良く合致していることが示された。しかし、3次元地盤での地震動を波動伝播理論を用いて計算すると莫大な時間を必要とする。そこで今年度は、前年度の研究成果を更に発展させ、上記の3つの観測点の震源から地震基盤までの地震動は従来と同じ3次元地盤波動伝播理論を用いて計算し、1次元の地盤で置換された表層地盤の基盤に、その地震動を入射し、表層地盤での任意の位置での地震動を評価する方法を示した。この様にして作成された地震動モデルにより、神戸大学、新神戸変電所、松村組の技術研究所の3ヶ所の地震記録のシミュレーションを行なった結果、3次元地盤の波動伝播理論を用いて作成した前年度の地震動と殆ど同じ程度のシミュレーション結果が得られた。この研究によって、兵庫県南部地震の様な直下型地震動に対しては、今年度示した方法で、将来発生する兵庫県南部地震の様な直下型地震動を極めて短時間に予測出来る可能性を充分に示した。
著者
阪口 政清 片岡 健 村田 等 許 南浩
出版者
岡山大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

がん幹細胞クローニング用プラスミドベクターを完成させたこと、このベクターを使用して、がん幹細胞の特性を備えたクローン化がん幹細胞株を樹立できたこと、があげられる。クローン化の高効率化を目指し、独自のプラスミドベクターを完成させるまでに多大な時間を費やした。現在、膜タンパク質を調製し、免疫のステップに移行している。
著者
櫻井 純 小林 敬子 永浜 政博 藤井 儀夫
出版者
徳島文理大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

ウエルシュ菌α毒素は、致死、壊死、溶血活性、さらには、血管、腸管の収縮活性など多彩な生物活性を有する特異な毒素である。一方、本毒素は、本菌によるガス壊疸の主要毒素であるので、この感染症に対する毒素の役割を明らかにするため、主に、細胞膜に対する作用に焦点を絞り検討した。α毒素をウサギ赤血球に作用させると、毒素量に従って破壊される赤血球数が増加し、さらに、血球膜中におけるホスファチジン酸合成の促進することが判明した。このホスファチジン酸合成の促進は、赤血球膜ゴ-スト本毒素を作用させた場合も認められた。これらの結果から、本毒素による溶血作用発現にはホスファチジン酸合成が密接に関係していると推察される。次に、GTP、NAD存在下赤血球膜ゴ-ストに本毒素を作用させると、ホスファチジン酸合成は、著しく促進されることが判明した。但し、intact赤血球における本毒のホスファチジン酸合成の促進作用に対して、GTP、NADの添加効果は認められなかった。これらの結果から、本毒素による赤血球膜のリン脂質合成促進は、内因性のGTP、NADが重要な因子であると推察される。これらの結果を確かめるため、血小板に対する本毒素の影響を検討した。ウサギ血小板は、毒素の用量に従って凝集し、しかも、血球の場合と同様に細胞膜中のホスファチジン酸量も増加することが判明した。また、赤血球の場合も、血小板の場合も、本毒素による他のリン脂質、そして、アラキドン酸の合成促進は認められなかった。一方、脂肪細胞に毒素を作用させると、毒素量に従ってアラキドン酸合成が促進されることが明らかとなった。以上から、本毒素が生体膜に作用すると、リン脂質代謝が活性化され、その影響によっておのおのの細胞が有する特有の代謝系も活性化されると推察される。その結果、細胞膜が破壊されたり、細胞凝集が引き起こされると思われる。
著者
大森 亮介
出版者
九州大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

ウイルスの抗原性は多様な原因により決定され、温度などの環境要因からも大きく影響を受ける。これまでの進化学や理論疫学での感染症の研究では環境変動の感染症流行に与える影響を詳細に調べたものは少なく、宿主免疫の進化を考える上で、この環境要因による影響を考慮することは必要不可欠である。このため、環境要因の変化による感染症の流行をコイヘルペスウイルスを例に解析した。コイヘルペスは感染した個体の80%以上が死亡する非常に毒性の強い感染症で水産業界に多大な被害を与えた。また、コイヘルペスの流行には季節性がある事が知られており、これは感染が起きる水温の範囲が決まっている為である。この特性を利用し、感染が確認された後に水温を感染が起きない様な水温に人工的に変化させ、流行を抑制する治療法が考案された。この治療法を評価し最適な治療スケジュールを決定する為に、水温と感染率の関係性の実験データ(Yuasa et al. 2008)をもとに養殖場内の鯉の集団での感染を記述する数理モデルを構築し、解析を行った。コイヘルペスの流行の季節変動性は感染から発病までの期間、発病から死亡または回復するまでの期間の長さが水温によって変わる事に起因する(Yuasa et al. 2008)。また、水温を人工的に変える治療法は場合により治療を行っていない時よりも被害が増大することも明らかになった。ここから、感染症抑制の為の環境要因のコントロールは計画的かつ正確に行われる必要があることが示唆された。
著者
今野 幹男 長尾 大輔
出版者
東北大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

磁性ナノ粒子(マグネタイト)とシリカを均一に複合化することで、電場と磁場の両者に迅速に応答する単分散な複合粒子を合成した。複合粒子の合成過程では、磁性ナノ粒子をシリカ粒子表面に均一に担持した後に、粒子表面を別のシリカで薄く被覆した。このシリカ被覆により、複合粒子が水溶液でも均一に分散するようになった。さらに、複合粒子の集積状態を光学顕微鏡で容易に観察できるように、複合粒子をミクロンサイズまで大粒径化した。この複合粒子の懸濁液に電場を印加したところ、複合粒子は電場印加方向に対して平行な鎖状構造を形成した。磁場を印加した場合も、類似の鎖状構造を形成した。これらの外場下で形成される複合粒子の鎖は、いずれの外場印加に対してもその強度とともに伸長した。さらに、磁場と電場を互いに直交方向に印加した場合は、複合粒子がヘキサゴナル型に配列したシート状構造体を形成した。このような外場印加を雪だるま型の複合粒子に対しても行った。磁性ナノ粒子を含む雪だるま型粒子に磁場を印加したところ、磁性成分を含む雪だるまの頭部が印加磁場方向に対して並んだ構造を示した。一方、電場作用下での雪だるま複合粒子は、印加方向に対して粒子長軸を平行に向けた鎖状構造を形成した。さらに、磁場と電場の両者を同一方向に印加した場合は、雪だるま粒子の頭部を一方向に向けて配列した構造も観察することができた。これらの結果から、電場および磁場を複合的に利用することで、異方性粒子の配向性も制御できることを示した。
著者
熊倉 俊郎 陸 旻皎 石坂 雅昭 田村 盛彰 山口 悟
出版者
長岡技術科学大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

季節的な大雪や強い降雪は雪国の社会生活に危険を及ぼす。これを避けるために除雪、防護柵設置、安全情報の配信などが行われているが、その際に、本来利用したいのにできないのが、雨か雪かあられかの降水種別情報である。理由は、粒子種別を正確にかつ簡易的に自動で行う機器がないためである。そこで、ここでは簡易的な雨・雪・あられの判別器を試作し、特別なデータ処理により、自動では難しいとされる雪とあられの判別率を8割にまで高めた。また、この降水種別データを用い、未解明な課題に対して新たな知見を得た。
著者
井村 英人
出版者
愛知学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

口蓋突起癒合後に解離し,口蓋裂が発症している現象に着目し,口蓋裂発生のメカニズムを細胞・分子レベルでのシグナル伝達の相互作用と、制御機構から解明することを目的とした。口蓋形成期における口蓋突起癒合時に,上皮索基底膜のパールカンおよびコラーゲンIVの消失が認められ、口蓋突起上皮細胞が分泌したヘパラナーゼは間葉系細胞の分化・増殖を惹起する可能性が推測された。また、口蓋突起が伸長する際、口蓋突起鼻腔側の基底膜にLamininの陽性反応を認めた。癒合前の口蓋突起全体にPCNA の局在を認め、活発に細胞増殖が行われていることが考えられた。
著者
小菅 正裕
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究は、地震波の波形を用いて震源位置を推定する方法を開発し、特に本震直後の余震活動を明らかにすることを目的としている。2011年東北地方太平洋沖地震等については通常の方法での震源決定を行い、余震域が本震からの経過時間の対数に比例して広がったことを明らかにした。本研究で開発した方法は、ひな形(テンプレート)地震と連続波形の相関を用いて震源を推定するものである。この手法を東北地方太平洋沖地震へ適用したが、余震活動の全容解明には課題を残した。しかし、この手法の改善により、例えば地殻内の流体分布の解明などへの応用が期待できる。
著者
岡本 峰雄
出版者
東京海洋大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

1.藻類増殖具の改良新型増殖具(鉄鋼スラグが原料のセラミック)は強度が高い微細多孔質構造という特徴を有していた。18年11月、東京湾内2ケ所(江奈漁港、竹岡海岸)のアラメ藻場に設置し、19年5,6月に回収した。また19年10-11月、館山実験場と茨城水試でアラメ着生実験を行った。2.海域実験18年に設置した増殖具は実験室で詳細な計測を行った。江奈の0m層の増殖具にはアオサ、0.2mはツノマタ、竹岡の2mはツノマタとテングサ)が生育していた。藻類はさまざまな生長段階のものが密生し(株数計測不能)、着生位は光を受ける上面から側面に限られていた。3.水槽実験館山では漂着したアラメ、茨城では当日採取したアラメを用い、遊走子を抽出した。増殖具は遊走子液に浸漬して水槽で育成した。茨城では増殖具を配置した水槽に母藻を投入する方法も追加した。増殖具表面は1-2週間で珪藻が厚く覆ったため、適時表面をブラシで軽く清掃した。20年2月段階で一部の増殖具に数ミリから10mmのアラメ幼体(胞子体)が確認され、以後は成長を速めた。増殖具に数個から数十個の幼体が密生していた。母藻を投入して放置し、適時表面をブラシで清掃したものが着生に成功した。遊走子の着生から幼体が確認できるまでの成長段階は観察することはできなかった。増殖具の微細孔に珪藻は入れないが遊走子は入れることが理由と考えるが未解明である。
著者
布川 日佐史
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

生活保護における就労支援の一環として始まった福祉事務所と公共職業安定所の連携をもとに、公共職業安定所の就労支援においても、「就労のための福祉」が課題として位置づけられるようになった。本研究は、「就労のための福祉」の展開に着目し、生活保護の実施機関である福祉事務所(自治体)と、職業紹介の実施機関である公共職業安定所(国)との連携のあり方と役割分担、すなわち、就労可能な生活困窮者に対する最低生活保障と就労支援のあり方を検討した。
著者
岡本 仁
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2009

我々は、ゼブラフィッシュの背側手綱核が、更に外側と内側の亜核に分かれており、外側亜核は脚間核の背側半分に、内側亜核は脚間核の腹側半分に選択的に投射すること、左側の手綱核では外側亜核が内側亜核よりも有意に大きく、右側の手綱核ではその反対であることを発見した(Aizawa et al., Current Biology,2005 ; Devel.Cell,2007)。平成21年度には、マウスの外側手綱核が、縫線核に投射する事に基づき、ゼブラフィッシュ脳の縫線核に色素を注入し、逆行性に細胞体を染める事によって、手綱核の腹側の部分の神経細胞が染色されたことから、ゼブラフィッシュの腹側手綱核が、マウスの外側手綱核に相当する事を確認した(Amo et al., J.Neurosci.2010)。平成22年度には、腹側手綱核特異的に、神経活動の操作を行うために、手綱核特異的遺伝子のスクリーニングを行い、2つの遺伝子が、腹側手綱核特異的に発現する事を発見した。このうちのdiamine oxydase(dao)については、この遺伝子を含むBACクローンを単離し、大腸菌内での遺伝子組換えを使って、コーディング領域を、Cre recombinaseと交換した組換え体を作成し、これを用いて、トランスジェニック系統を作成した。本系統と、vglut2-loxP-dsRed-loxP-GFPを持つ別系統とをかけ合わせることによって、腹側手綱核のみで、GFPを活性化できることを明らかにした。今後、GFPの代りに破傷風毒素や、Channelrhodopsin等を、腹側特異的に発現させる事によって、腹側手綱核の神経細胞からの、神経伝達の活性を人為的に調整し、ゼブラフィッシュの行動が、どのように影響されるかを観察する予定である。
著者
副田 義也 樽川 典子 加藤 朋江 遠藤 惠子 阿部 智恵子 株本 千鶴 嶋根 克己 牧園 清子 鍾 家新 藤村 正之 樫田 美雄 阿部 俊彦 時岡 新 村上 貴美子 藤崎 宏子 小高 良友 野上 元 玉川 貴子 坂田 勝彦 柏谷 至
出版者
金城学院大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

戦後内政の主要分野を、戦前期に内務省が専管した行政の諸分野に注目して、ひとつの統一的性格をもつものとして研究した。旧来、1947年の内務省解体は、連合国総司令部が強行した、否定的に評価されるべき事態として語られがちであった。しかし、その分割があったからこそ、その後の半世紀以上にわたる日本の福祉国家としての歩みが可能になったのである。すなわち、厚生行政、警察行政、建設行政、自治行政を担当する省庁の分立と発展、政策の複合による内政構造の拡大、深化である。
著者
菅井 俊樹 篠原 久典
出版者
名古屋大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1997

犬山P/T境界試料中にわれわれは、フラーレンC_<60>を発見し、試料中の濃度は10pptであることをつきとめた。さらに、金華山P/T境界試料や犬山P/T境界近傍試料など複数箇所の試料から、1ppt程度のフラーレンを検出した。C_<60>はサッカーボール型分子でフラーレンの代表的物質であり、これまで主に実験室で合成されてきた。ところが近年、恐竜が絶滅した6500万年前のK/T境界の試料中にC_<60>が発見されるなど、天然試料中にも存在することが明らかになってきた。この地球環境におけるC_<60>をはじめとする炭素フラーレンは木材などの有機物の燃焼や、雷などにより炭素を含む物質が蒸発・反応したことにより生成すると考えられている。フラーレンは生成条件が上述したように特殊であり、また生成後は非常に安定で水にも不溶である。これらの性質から生成時の地球環境を推測する新しい指標として有望である。われわれがC_<60>を発見した2.5億年前のP/T境界では、全地球史史上最大規模の生物の大量絶滅が起こり、海洋生物種の95%が絶滅した。この原因として、超大陸パンゲアの生成による地殻・気候変化と海洋における酸素欠乏などがあげられているが、物証が少なくよく分かっていない。C_<60>は酸素や水素の少ない条件下で効率よく生成するので、P/T境界時のC_<60>の地殻存在濃度を時代を追って調べることにより、各時代にどのような自然環境であったかが明らかになり、生物の大絶滅を解明できる可能性がある。具体的には以下のような方法でC_<60>を発見した。まず愛知県犬山の2.5億年前の黒色泥岩層から約2kgの試料をとり粒径1mm以下に粉砕した。つぎに、珪素や鉄などのC_<60>以外の部分を取り除くため弗化水素酸で一月間溶解させた。C_<60>が含まれている不溶部分をろ過して取り出し、トルエンで超音波洗浄を用いてC_<60>を抽出した。抽出溶液を高速液体クロマトグラフィーとアレイ型検出器を用いて検出・同定した。複数箇所のP/T境界試料からC_<60>が発見されたことで、この時代に地球規模のフラーレン生成を引き起こす現象が起こっていたことが明らかになった。現在のところ生成原因はパンゲアの地殻活動に伴う山火事などで生成したものと考えている。P/T境界時の自然環境との関係とC_<60>濃度の時間・地域依存性を実験に基づいて考慮している。
著者
下野 洋平
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

乳がんでは、寛解後10年以上してからがんの転移性再発がみられることがある。このような再発には、転移先の臓器で細胞周期が停止した休眠状態を維持して潜在するがん細胞が関与するとされる。本研究では、ヒト乳がん組織を直接移植したヒト乳がん異種移植マウスのがん細胞の多くが細胞周期の停止したG0期にあること、がん細胞の細胞周期の停止と一次繊毛の有無には関連がないこと、およびケモカインレセプターCXCR4の発現低下が細胞周期の停止と関連することを解明した。さらに、ヒト乳がん異種移植マウスのがん細胞に特徴的な発現を示す一連のマイクロRNAを同定し、それらが制御する遺伝子およびシグナル伝達系の一端を解明した。
著者
相澤 正夫 田中 牧郎 金 愛蘭
出版者
大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

国立国語研究所は、難解用語がもたらす言語問題への具体的な対応策として、「外来語」と「病院の言葉」を分かりやすくする提案を行なっている。これらの提案は、新しい外来語や医療用語のように一般になじみの薄い難解な用語が濫用され、国民一般の情報伝達に支障が生じている今日の社会状況を考えると、「情報弱者」を支援するための具体的な方策を提案している点において、「福祉言語学」を実践する新たな研究モデルの一つと位置付けることができる。
著者
高 台泳
出版者
神戸芸術工科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究は国内外の諸観光ガイドマップに対し、その地図記号を収集・分析したものである。その目的は従来の諸地図記号を見直して、新たな地図記号を開発するための研究基盤を設けることである。そこで、国内外の約34カ国から様々な観光ガイドマップを収集した。収集にあたっては自らユーザーの立場で諸観光ガイドマップの検証と分析も同時に努めた。これらの資料をデジタルデータ化してから、幾つかのカテゴリに分けて整理・分析した。
著者
秋元 忍
出版者
神戸大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、スポーツ用具業者がイギリスのホッケー普及過程において果たした役割について検討を行った。スポーツ用具業者は、19世紀末のゲームの組織化を契機としてホッケー関連用具製造に参入し、大量の用具を市場に提供した。またホッケー用具の供給に注力した複数の用具業者は、プレイヤーの満足度を高める工夫を試みていた。ホッケーのゲームの多様な普及を一面で支えていたのは、彼らが供給した用具であった。