著者
村上 晋
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

抗ウイルス薬であるリバビリンに耐性化するために必要な変異を持ったポリオウイルスは複製忠実度が高く、抗原変異しにくく、そして病原性が低くなることがわかっている。同じくRNAウイルスであるインフルエンザウイルスにおいても、リバビリン耐性ウイルスを獲得できれば、安全な生ワクチンが作製できる可能性がある。そこで本研究においては、インフルエンザウイルスでリバビリン耐性に必要な変異を同定し、その変異を導入した新規弱毒生ワクチンの作製を目的とした。インフルエンザウイルスの増殖に対するリバビリンの効果を調べた。ポリオウイルスでは、リバビリン存在下で培養すると、ウイルスゲノムRNA上のCがUにあるいはGがAとなる変異がランダムに挿入され、その結果ウイルス増殖抑制される。インフルエンザウイルスの場合でも同様の作用機序で増殖が抑制されるか調べた。MDCK細胞にウイルスを感染後、リバビリン存在下で培養し、上清を回収した。ウイルスRNAを抽出し、RT-PCRにてウイルス遺伝子を増幅後、クローニングし、ウイルスゲノムのシークエンスを調べた。その結果、28クローン中13クローンで変異が導入されており、そのすべてがCからUあるいはGからAの変異であった。これらの結果からインフルエンザウイルスでもポリオウイルスと同様の機序でウイルス増殖が抑制されており、複製忠実度の高いウイルスを獲得できる可能性があることが示唆された。リバビリンの有効濃度を調べたところ、20μMでウイルス増殖を50%抑制することがわかった。そこで、20μMおよび40μMのリバビリン存在下でインフルエンザウイルスを継代した。11代まで継代したが、耐性ウイルスは獲得されなかった。ポリオウイルスでは6代目で耐性ウイルスが出現したと報告されている。したがってインフルエンザウイルスではポリオウイルスよりもリバビリン耐性化がおきにくい構造のポリメラーゼを有しているものと考えられる。
著者
郭 軍 孫 寧 根元 義章 木村 正行 越後 宏 佐藤 利三郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.76, no.4, pp.835-842, 1993-04-25
被引用文献数
12

手書き文字認識の高精度化を妨げている大きな障害の一つに,筆記者それぞれの書き方による文字パターンの不規則な変形が挙げられる.手書き文字の個人差の影響を軽減するために,特徴量抽出やマッチング時にパターンをぼかす手法が提案されている.しかし,これらの手法は文字の変形が大きい場合,有効な手法となり得ず,限界があることは一般的に知られている.本論文では,手書き文字の個人差による変形を矯正し,高精度に認識する新しい手法として余弦整形変換を利用した手書き文字認識アルゴリズムを提案する.提案する余弦整形変換は,入力パターンに対し,余弦関数の部分的な非線形特徴を利用することによって,文字が上下左右のどちらかに偏っている場合に整形する機能と,最も情報量が集中している文字の中心部分を拡張する機能をもっている.提案アルゴリズムの有効性を検証するために,ETL9Bを用いて認識実験を行った.実験では,100次元程度の低次元特徴量を用い,約60万字について認識実験を行った.その結果,学習データセット(奇数セット)では93.24%,未学習データセット(偶数セット)では91.63%,平均で92.44%と高い認識率が得られた.余弦整形変換を使用しない場合に比べ,平均して5%以上認識率が高くなっていることおよび品質の悪いデータセットほど認識率の上昇度が大きいことから,提案する余弦整形変換は手書き文字認識において極めて有効であることがわかった.
著者
矢野 亮
出版者
立命館大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

平成22年度は、長期間に渡る資料調査を実施し、機密性の高い文書や資料にアクセスし、希少なリソースに到達した点については何よりの研究成果であった。具体的には、次の各時代区分に応じた詳細な資料収集と整理、分析を行ってきた。(1)1945年~1960年:大阪における融和運動とその事業展開の実際の状況について、とりわけ戦前・戦時に関する第一次資料(約700点)の収集と整理に終始した。その成果の一部として、拙著,「被差別部落における/をめぐる政策的展開と当事者運動に関する生活史研究」,セルフ社,2011年8月[予定]がある。(2)1960年~1970年;当時の資源配分に大きく関連する隣保事業について、全国隣保館協議会の諸資料を調査し当時の実情の把握を行った。これは平成22年度以降の立命館大学G-COEプログラム「生存学」創生拠点HPに掲載してきた。(3)1970年~1980年;特にここでは同和対策の資源配分が問題となる。これら同和対策をめぐる諸資料(約1800点)もすでに収集し分析を行っている。この成果物として、拙稿,「同和政策の歴史社会学--1970年代・1980年代を中心に--(仮題)」,天田・堀田・村上・山本編『差異の繋争点(仮題)』,出版社未定,2012年[予定]がある。(4)1980年~2000年;上記の時期の資料に加え、大阪市内における隣保事業及び同和事業の実施機関の一次資料の解読・分析を行ってきた。そこでは他の運動や他施策との関係性についても具体的に明らかとなってきた。その経過の一部として、「マイノリティ関連文献・資料/関連年表」と「大阪の部落問題関係資料」として上記HP(上掲)に掲載している。収集してきた文献・資料(約1800点)については言説分析を行い、成果物として、拙稿,「住吉部落をめぐる社会調査史(仮題)」,住吉隣保館編『住吉部落の歴史』出版社未定,2012年10月がある。また論文として所属学会誌等に投稿予定である。(5)2000年~現在:以上の研究の蓄積を踏まえた上で、その歴史的帰結について、拙稿,「大阪の同和政策における老いの位置--その政策的帰結(仮題)」,天田城介編『老いの政策と歴史(仮題)』,出版社未定,2012年[予定])にて分析結果を公表予定である。
著者
松井 健一
出版者
日本文化人類学会
雑誌
文化人類学 (ISSN:13490648)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.238-261, 2009-09-30

北米の先住民族と入植者は、過去400年以上の間にヨーロッパの国々やアメリカ、カナダと500以上の条約結び、条約にまつわる独特な歴史と文化を形成してきた。本稿は、このプロセスをハイブリッド文化としてとらえ、先住民族の条約を理解する上で重要な視点になると主張する。特に、ワンパムベルトや条約メダルにまつわる表象物や外交儀礼を詳しく考察しながら、これらが異文化交流の結果成立したことを明らかにする。先住民族の条約に関する先行研究は、条約文書に約束された事項を法律学や政治学の範疇で分析することが多いが、本稿は先住民族の視点をできるだけ取り入れながら、異文化交流のプロセスを歴史と文化の文脈からアプローチするエスノヒストリー的論文である。また、条約交渉・締結・更新のプロセスにおいてもたらされた銀製品や貝殻ビーズ、そのほかの交易品が果たした役割を検証し、それらが地域性豊かな先住民族の伝統文化とあいまってハイブリッド文化を形成した例を具体的に紹介する。こうした考察を加えながら、本稿が最終的に解釈する先住民族の条約とは、先住民族の権利を奪い伝統文化を打ち消すための法律文書ではなく、北米独自の歴史や文化の多様性・地域性に寄与してきた文化構築物である。
著者
岡田 秀二 伊藤 幸男 土屋 俊幸
出版者
岩手大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1999

本研究はイギリスの森林政策転換の背景を含めたその現実について明らかにしている。特に森林認証やラベリング制度といった環境重視の森林政策に注目している。80年代後半以降の林政は、60年代までの森林資源造成、木材生産重視の林政、あるいは80年代の田園地域の整備や森林へのアクセス向上から、生物多様性や持続可能な森林経営など環境林政へと展開した。国有林は依然として国内木材生産の主要な部分を担っているが、2000年に森林認証を取得したことによる大きな影響は出ていない。それは一連の政策転換の中で国有林の森林管理も環境・景観重視へと移行してきたためである。イギリスに特徴的なトラストによる森林保有の形態における森林管理では、単なる保護から積極的な管理を含む多様性の保全へという移行がみられた。イギリスの国立公園はユニークな管理の特徴が見られる。そこでは単に狭義の生態系の保全が目指されるのではなく、人間活動を含んだ田園空間の保全が目指され、そこでは分権的な制度発展がみられた。私有林の経営においては、地主的経営やエステートを中心に環境政策がある程度受け止められていたが、それは必ずしも木材生産上のインセンティブを生むものとはなっていなかった。逆に環境基準や森林認証が新たな系列化を生むという問題が見られた。森林認証については、情報公開と多様な利害関係者の参加が重視されている点が森林管理面で影響が大きいことが指摘された。また、バイヤーズグループは認証品の取扱いシェアを急速に増加させており、それはプレミアム価格を含まない形で実現されていた。このような林政転換において、政策定着のための重要な存在として政策的中間組織の役割が重要であることが明らかとなった。
著者
余田 成男 石岡 圭一 内藤 陽子 向川 均 堀之内 武 小寺 邦彦 廣岡 俊彦 田口 正和 柴田 清孝
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

全球気象解析データおよび力学コアモデルから気象庁1ヶ月アンサンブル予報モデルまでを駆使して、成層圏変化が大気大循環の主要力学過程に及ぼす影響と力学的役割を明らかにした。特に、成層圏突然昇温現象に関連して、周極渦周縁の大規模前線構造を発見するとともに、極域循環の予測可能性変動の新知見を得た。また、化学-気候モデル実験結果も加えて、成層圏寒冷化、太陽活動変動などの外部要因変動が季節内変動・年々変動の及ぼす力学的役割を明らかにした。
著者
田岡 康裕 納谷 太 野間 春生 小暮 潔 李周浩
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告ユビキタスコンピューティングシステム(UBI) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.66, pp.147-152, 2008-07-10

本稿では Bluetooth による受信信号強度を用いたユーザの位置推定手法を提案する. 本手法は医療事故の発生要因の分析などにおいて重要となる 看護師のインタラクション情報を得るためのものである. 本手法ではユーザに装着した移動局が複数の固定局から一定時間で得られる受信信号強度の平均値 最大値 最小値 中央値を特徴量として用いて位置推定を行う. 本手法の有効性を評価するために 2 床のベッドを配置した模擬的な病室環境での実験を行い ベッド際のどの位置にいるかおよびそれ以外にいるかという識別については 80% 以上 どちらのベッドの患者に対するインタラクションかの識別においては 90% 以上の識別率が得られることがわかった.This paper proposes a method for estimating a user's location with RSSI (Receiver Signal Strength Indicator) of Bluetooth in order to obtain information about the user's interactions. The method uses average, maximal, minimum and median values of RSSI that the mobile station attached to the user obtains from some fixed stations in a sliding window. This method has been evaluated experimentally in simulated ward environment with two beds. The method obtains more than 90% accuracy for identifying the patient that the user interacts.
著者
高橋 由多加 白石 陽 高橋 修
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SR, ソフトウェア無線 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.252, pp.193-198, 2010-10-20

近年,2.4GHz帯を使用する無線機器が増加してきている.その中でも,無線LANはオフィスや家庭,公共施設などに導入されてきているが,一定エリア内に複数の無線LAN機器が存在する場合,電波干渉が問題となる.電波干渉を低減するためには,空きチャネルの検出が必要だが,全てのチャネルが使用中であるケースも想定される.その場合,どこのチャネルが通信に適しているのかを知ることで,通信の安定性やスループットの向上が可能になる.本研究では,Duty Cycleという観測時間における閾値を超えた電界強度の割合をチャネルごとに解析することにより,各チャネルのトラフィック量を予測し,最適チャネルの検出を行うことを目的とする.さらに実環境による実験を行ない,Duty Cycleを用いることで各チャネルのトラフィック量の予測が可能であることを検証した.
著者
小笠原 道雄 那須 俊夫 アルカン M. 深田 昭三 ボールスマ J.P. 森 楙 相原 和邦 小倉 康 マンザーノ バヒリオ U 武村 重和 山口 武志 唐川 千秋 羽生 義正 鑪 幹八郎 二宮 皓 MANZANO V.u ALKAN M KARSTEN S KOPPEN J.k KOPPEN J.K. ALKAN M. KARSTEN S. BOORSMA J.P. 伊藤 克浩 草間 益良夫 細田 和雅 小笠原 道雄
出版者
広島大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1993

(森楙)テレビゲームがメディア・リテラシーの無意識的な形成という潜在的な教育的役割を演じている点を明らかにすることを目的に調査研究をした。(1)学生を対象に質問紙調査を行ない、テレビゲームとコンピュータ・リテラシーとの関係を調べた。その結果、知識レベル、行動レベルいずれでも、リテラシー形状には、性別、専攻、子供時代の遊びなどの要因が大きく関わっていることが分かった。(2)テレビゲームの内容分析をした。その結果、ゲームの内容が男性中心主義で、暴力を多く含んででいることが分かった。(森楙・深田昭三・ボールマス)コンピュータのイメージやビデオゲームの過去経験がコンピュータへの態度に及ぼす影響を学生について調べた。5つの尺度からなる質問紙を作成した。これらの尺度は、コンピュータやビデオゲームの使用頻度、コンピュータに対する態度、コンピュータのイメージ、などである。質問対象は学部学生633名であった。コンピュータとしてのイメージで一番多かったのはプログラミング・モデルであり、ついでメイン・フレームまたはワードプロセッサー・モデルであった。分析の結果、コンピュータにたいする態度は、「親近感」と「難しそうだという感じ」という2つの因子を含み、パス解析の結果、コンピュータのイメージは「難しそうだという感じ」を規定し、過去におけるビデオゲームの使用は、間接的にであるが、両方の因子に影響することが分かった。(山田武志)最近の、コンピュータを使った数学の教授-学習過程に関する理論的考察を行なった。一般的考察のあとコンピュータ利用によるマニピュラティーブの特徴と役割を吟味した。このようなマニピュラティーブの特徴として相互作用機能の顕著さが明らかになった。この機能は子供にたいしコンピュータの有効な使用により「推論-証明」という問題解決活動の機械を提供し、また、数学的概念の多様な表現を準備すると思われる。現行の指導要領から、数学教育においてもコンピュータや電卓等の有効な活用が本格的に盛り込まれるようになった。もちろん数学教育においては、コンピュータの構造やプログラミング言語の理解がねらいでなく、それを一種の知的道具として活用しながら、数学的な概念や考え方の理解を図ることが意図されているといえる。従来、説明やシミュレーションといった形態で活用されがちであったコンピュータの新しい分野を開拓すべく、本研究では、コンピュータに基づく教具の特徴について、表記論的な立場から検討を加えた。その結果、多様な表現を同時に提示するというコンピュータの機能によって、表現間の翻訳が推進され、そのことがひいては数学的な意味の構成にも貢献することを指摘した。さらに、方法論的な視座から、コンピュータが「仮説-検証」型の問題解決的授業の構築に貢献することを指摘した。(カルステン、コッペン)オランダの教育界におけるニューメディアを使った色々な新しい試みを報告し、新しい試みについていけない教師の問題を指摘している。技術習得の速さは教師たちよりも児童・生徒の方が勝るので、教師たちはニューメディアにたいし恐怖さえ感じている。ここで提案として、教師のこの方面での技能開発と、一般社会におけるコンピュータの使用基盤の拡大を挙げている。(マンザ-ノ、二宮)オランダを含む数カ国のインターネットを中心とする新しい教育システムの活用の実情を、文献からのみならず直接訪問して得られた情報をもとに、比較教育学的立場から、考察を行なった。なかでも「国際教育及び情報源ネットワーク」(I*EAR)並びに「ヨーロッパ学校プロジェクト」(ESP)を検討対象とした。結論として、今や電子ハイウェイが教育刷新のイニシアティーブをとっている感を強くするとしている。(相原和邦)日本文学の研究者として、日本の文学作品(特に明治期の)にみられるヨーロッパ絵画との関係を探ることを通して、イメージを通した異文化との接触による作家(とくに夏目漱石)の内面的変化の過程を考察した。漱石が最も深い共感を示しているのはターナーで、その作風は、「草枕」、「文学論」等で言及されているほか、言語による女性描写のぼかし・幻化の手法に生かされている。本国際共同研究を機会に、今後の異文化理解に関する研究の手掛かりを得ることができた。
著者
竹田 仰
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

近年,映画館やテーマパークでのVRシアターにおいて,映像や音響の効果に合わせて風や水滴などを提示して触覚情報を与える演出が多くなっている.例えば,乗り物に乗っているときには風を吹き付けたり,波しぶきに合わせて水滴を吹き付けたりする.このようにVRシアターにおいて触覚のおける役割は欠かせないものなりつつあるがまだ普及には至っていない.なぜなら触覚ディスプレイは大掛かりな上に一つの装置で表現できる演出も限られている現状にある.そこで,本研究では風圧を制御し,顔面の任意の場所に空気をあてることで触覚を伝える風圧型顔面触覚ディスプレイの提案を行う.本研究では空気砲の原理に着目し,渦輪と呼ばれる空気の塊(渦輪)を適格な風圧で顔面にあてることで,空気を利用した自由な触覚表現が可能なシステムの実現を目的とする.そこで,精密な実験を重ねて空気砲を設計し,コンピュータ制御が可能な風圧型顔面触覚ディスプレイを製作した.製作した風圧型顔面触覚ディスプレイで渦輪の特徴的な印象や演出の幅広さを評価し,印象指標を作成した.そして,移動式の大型スクリーンと組み合わせて使用できるように小型化し,観客に平等な触覚刺激を与える制御システムを製作し,評価した.
著者
松本 時子 中村 百合子 畑江 敬子 島田 淳子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.46-49, 1995-02-20

紅玉とふじの熟成度の異なるリンゴを用い、砂糖濃度30%と60%のジャムを調製し,粘弾性と官能検査による識別と嗜好性を検討した。1.リンゴ生果の水分は紅玉の場合,1ケ月保存により87.23%〜85.01%に減少したが,ぶじは,84.50%〜84.12%と,ほとんど変化しなかった。糖度は,Brix値で紅玉(12.0〜13.0),ぶじ(10.9〜14.0)とも熟成が進むにつれて高くなった。紅玉のpH値は,試料間に差がなく(3.50〜3.54),ふじのpH値は3.54〜4.14と熟成が進むにつれ高くなった。粗ペクチン量は,紅玉に多く,特に果皮に多かった。2.紅玉の過熟のジャムが貯蔵弾性率,損失弾性率とも高かったが,パネルはその差を識別できなかった。3.生果では好まれない未熟果も,ジャムにすれば好まれることが分かった。4.総合的た好ましさにおいては,酸味と甘味のいずれも強い紅玉を好む人と,マイルドなふじを好む人に好みの傾向が分かれ,いずれのジャムもそれぞれの好ましさがあることが認められた。終りに本研究にあたり,ご協力いただきましたお茶の水女子大学生活科学部調理学研究室のみたさんに感謝致します。
著者
稲垣 清二郎
出版者
駒沢女子大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:02884844)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.A1-A2, 1968-03-01
著者
日野 滋樹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. CST, コンカレント工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.105, no.389, pp.35-40, 2005-11-03

インターネットサービスの内部でグラフアルゴリズムが応用されることが増えているが、その殆どが階層構造など特別なグラフ構造に依存して高速化されたものである。ここでは、特定の構造に依存しない一般グラフ上のアルゴリズムが応用できないかを考える。例題として、ノード間の直接的関係の強さを枝重みで表すグラフにおいて、他ノードを経由して伝搬される関係強度を加味したノード間の関係強度を求める問題を取り上げ、計算方法の簡略化と適用場面を想定した妥当性の関係について考察した。計算対象経路を、起点に近いノードに発する枝優先で選択した有向木を基準として順方向の枝のみを加えた部分グラフ上の経路に絞り込むことで、一般グラフを対象とするアルゴリズムが伴いやすい組み合わせ爆発を抑止しつつ、関係強度のランキングを提示する。隣接相手が少ないノードを起点とするとき、全経路を計算したときとほぼ同じ結果を得た。これをネット上の人間関係や企業間の依存関係のモデルに当てはめると妥当な結果になる。