著者
山下 隆男 塚本 修 大澤 輝夫 永井 晴康 間瀬 肇 小林 智尚
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究では,地球温暖化による気候変動に伴い巨大化する台風,ハリケーン,サイクロンを対象として,わが国の主要湾(大阪湾,伊勢湾,有明海・八代海),メキシコ湾およびベンガル湾における,高潮,高波,強風,豪雨、洪水に関する災害外力の上限値を評価することを目的とする。このため,以下の3研究課題について,各々のサブテーマを分担課題として研究を進め,災害外力の上限値解析を行った。(1)スーパー台風(ハリケーン・サイクロン)の数値モデル(2)台風と海洋との相互作用(3)スーパー台風による災害外力の上限値解析。最終年度に得られた成果をまとめると、以下のようである。1.海水温の上昇により、熱帯性低気圧がどの程度巨大化するかを、地上風速、降雨量とについて数値的に検討した。海面水温の2度の上昇は海面風速(せん断応力)降水量(陸上および海上)に極めて甚大な影響を及ぼすことを示した。2.台風と海洋の相互作用では、台風による海水混合で台風が弱体化する機構を示した。さらに、海上の降水量、河川からの出水により海洋表層の淡水成分が増加すれば、成層構造が強化され、台風による海水の混合過程が弱まれば、台風が減衰しにくくなる可能性を示した。3.災害外力の評価では、沖縄県において台風の巨大化を考慮した高潮ハザードマップを作成し公表した。4.気候変動の捉え方として、地球の平均気温のように指数関数的に増加するトレンドとしての上昇以外にも、太平洋、大西洋、インド洋等の海洋振動の影響による数十年周期の変動(ゆらぎ)を、適応策において考慮することの重要性を指摘した。
著者
渡辺 和雄 TERESHINA E. A. TERESHINA Evgeniya
出版者
東北大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

1)Y_2Fe_<17-x>Ru_x(x=0, 0.25, 0.5, 0.75)粉末試料について、零磁場及び5T、温度10~300KでX線回折実験を行い、広い温度範囲での格子定数のInver的異常を明らかにした。またY_2Fe_<16.5>Ru_<0.5>が示す反強磁性-強磁性メタ転移はa及びc軸方向に~0.6%の磁歪を誘起し、結果として~1.8%の体積変化を生じることがわかった。X線回折実験の結果は、チェコ共和国科学アカデミーで行われた熱膨張測定の結果と一致した。2)複合化合物(Lu_<0.8>Ce_<0.2>)Fe_<17>-Hに関する実験から、反強磁性体である母体化合物(Lu_<0.8>Ce_<0.2>)Fe_<17>が水素化されると強磁性相互作用が優勢となり、反強磁性秩序の抑制が生じることが分かった。この成果を国際会議"2^<nd> International Symposium on Advanced Magnetic Materials and Applications"(ISAMMA 2010)において発表した。成果論文はJ. Phys. : Condens. Matterに投稿中である。3)水素充填化合物Tb_2Fe_<17>H_3及びHo_2Fe_<17>H_3の単結晶に関する18Tまでの磁化測定を行い、水素化物で一般にみられる自発磁化とCurrie温度の上昇のほかに、磁気異方性が容易面型から容易軸型に変化する珍しい振る舞いをTb_2Fe_<17>H_3が示すことを明らかにした。これは、容易軸型異方性及び高い飽和磁化と秩序温度を併せ持つことが要求される永久磁石材料に応用するにあたって極めて効果的である。
著者
吉野 純
出版者
岐阜大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では,独自開発した大気-海洋-波浪結合モデルと台風渦位ボーガスを用いることで,伊勢湾における現在・将来気候における可能最大高潮の力学的評価を行った.現在気候においては,伊勢湾台風時の太平洋上の海水面温度29.0℃を設定することで,紀伊半島上陸時の可能最低気圧は930hPaとなり,名古屋港での可能最大高潮(潮位偏差)は4.5mとなることで,伊勢湾台風時に観測された潮位偏差3.55mを大きく上回ることが明らかとなった.また,将来気候においては,2099年9月(A1Bシナリオ)の太平洋上の月平均海水面温度30.2℃を設定することで,上陸時の可能最低気圧は905hPaとなり,名古屋港における可能最大高潮は伊勢湾台風の倍近い6.5mとなるとこと明らかとなり,現状の計画潮位を大きく上回る可能性が示唆された.
著者
津田 敦 道田 豊 齊藤 宏明 高橋 一生 鈴木 光次
出版者
東京大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2006

本研究は、DMSなどの生物起源ガスを計測するグループに海域の生物学的な情報を提供し、その変動機構を推測する一助となった。また、台風通過を再現する培養実験により、台風通過時には大型植物プランクトンである珪藻が卓越し海域の炭素循環や食物網構造を変えることを明らかにした。クロロフィルセンサー付きアルゴフロートは、台風には遭遇しなかったが幾つかのアノマリーを観測している。知見の少なかった亜熱帯の動物プランクトンに関しては、極域で特徴的にみられる、季節的な鉛直移動が亜熱帯種においても多く観察され、台風など時空間的に予測できない高い生産が、亜熱帯の生物生産を支えている可能性を示唆した。
著者
加藤 照之 松島 健 田部井 隆雄 中田 節也 小竹 美子 宮崎 真一
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

北マリアナ諸島のテクトニックな運動を明らかにするためのGPS観測と2003年5月に噴火活動を開始したアナタハン島の地質学的な調査を実施した.GPS観測は2003年1月,同年7月及び2004年5-6月に実施,以前の観測データとあわせて解析を実施した.今回は,1回のみ観測が実施されていた北方の3島を中心とした観測を実施した.西マリアナ海盆の背弧拡大の影響が明瞭に見て取れるものの,北方3島については,繰り返し観測の期間が短いせいか,必ずしも明瞭な背弧拡大の影響は見られない.アナタハン島噴火の調査は2003年7月及び2004年1月に実施した.2003年7月の調査では,噴火はプリーニ式噴火から水蒸気爆発に移行し,一旦形成された溶岩ドームが破壊されたことが分かった.2004年1月調査で計測した噴火口は,直径400m,深さ約80mであり,火口底には周囲から流れ込んだ土砂が厚く堆積し,間欠泉状に土砂放出が起きていた.2003年7月には最高摂氏300度であった火口の温度が2004年1月には約150度と減少し高温域も縮小した.カルデラ縁や外斜面には水蒸気爆発堆積物が厚く一面に堆積しているものの,大規模噴火を示す軽石流堆積物層等は認められない.このため,アナタハン島の山頂カルデラの成因は地下あるいは海底へのマグマ移動であると推定される.この噴火についての地殻変動を調査するためにGPS観測を強化することとなった.火口の西北西約7kmに位置する観測点では,連続観測を開始したほか,2004年1月には島の北東部に新たな連続観測点を設置して観測を行っている.2003年1月と7月の観測データの比較では,水平成分がほとんど変化せず沈降約21cmが観測された.観測された地殻変動は主に噴火によるマグマ移動によって引き起こされたと考えられ,マグマ溜まりが噴火口の直下よりも島の西端にある可能性を示している.
著者
石川 裕彦 植田 洋匡 林 泰一
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

西太平洋上で発生し日本付近まで北上してきた台風は、中緯度の大気の傾圧性の影響を受け、その構造が徐々に変化する。この過程で、さまざまなメソ擾乱が発生し、災害発生の原因となることが多い。本研究では、数値シミュレーションにより台風を再現し、その構造変化、メソ擾乱の発生、気象災害との関連を調べた。不知火海の高潮災害や豊橋の竜巻等の災害をもたらした1999年の台風18号は、日本海で一旦弱まった後再発達をとげたが、この様子を数値モデルで再現することに成功した。そして、再現結果を解析することにより、最盛期の台風の上層に形成される負渦位偏差が台風衰弱に重要であること、再発達期には対流圏上層のトラフにともなう正の渦位とのカップリングが生じ、これが再発達の要因となっていることを解明した。さらに、豊橋市付近で発生した竜巻に着目した数値計算を行い、竜巻発生場所の周辺で、対流潜在位置エネルギー(CAPE)とストーム相対ヘリシティ(SREH)との積であるエネルギーヘリシティ示数(EHI)が大きな値を持つことが示された。これは、将来、台風に伴う竜巻発生を予報できる可能性を示唆した者である。近畿地方、特に奈良盆地に大きな強風害をもたらした1998年の台風7号に関しては、消防署等も含むさまざまな期間から集めた気象観測データを解析し、台風に伴う地上風を詳細に調べた。これらの強風は、台風の背面で発生していること、強風域はバンド状のメソ降水系に対応していることを明らかにした。さらに、この強風域は台風の循環と中緯度の西風との号流域にから発生していることが数値実験で示された。秋に襲来する台風にともないしばしば観測される時間スケールの短い急激な気圧低下(pressure dip)に関しても、その発生頻度や性状を観測データからあきらかにするとともに、その発生メカニズムを数値シミュレーションで明らかにした。
著者
大泉 宏
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2002

小型歯鯨類の食性研究のため胃内容物調査を行い、ツチクジラ合計32頭、マゴンドウ4頭、ハナゴンドウ11頭、ハンドウイルカ5頭、マダライルカ3頭、スジイルカ1頭、イシイルカ43頭の胃内容物標本採集を行った。この他タッパナガ22頭の胃内容物記録を行った。江ノ島水族館と共同でカマイルカの代謝および餌消費量実験を行なった。得られた標本については現在分析中であるが、イシイルカとタッパナガはそれぞれトドハダカとスルメイカを多く捕食していることが示された。カマイルカの実験では、約5800-9100kcal/dayの酸素消費率が示された。また、鯨類の餌14種について熱量分析を行った。中層性魚類耳石80種についてデジタル画像化を行った。胃内容物標本採集は平成11年度から継続して行ってきており、情報の蓄積が進んできたところである。これまでの調査でツチクジラの調査頭数は67頭になり、この他にも多くの鯨種について胃内容物標本が入手されるようになった。解析はまだ途上の部分が多いが、今後の進展が期待できる。技術開発的要素として行ってきた魚類耳石の形態に関する研究は、日本周辺のハダカイワシ類主要36種に加え、東北沿岸で定置網や着底トロール漁獲される魚類、三陸沖合城で中層トロールにより採集されたハダカイワシ類以外の中層性魚類80種の採集を行い、デジタル画像化した。さらなる種数の充実化やデータベース化は今後の作業である。また、海洋生態系におげるエネルギーフローの研究の基礎情報とするため、餌生物中の熱量を分析した。種類はタラ類を中心としたもので、主にツチクジラの餌を想定しているが、これも今後標本入手の機会があれば種類を充実化させていく。カマイルカを用いた代謝実験は予備的実験が終了し、研究用データが取れ始めたところである。
著者
天野 雅男 魚住 超
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

平成8-10年の三年間にわたり,漁船,イルカウオッチング船の協力で,タッパナガの回遊を知る目的で目撃情報を収集した.その結果,7,8月に三陸沖に現れ,9,10月には北海道南岸まで分布を広げるが,その後南下し,1から4月ごろまで三陸沖から姿を消すことが判明した.毎年,7月から9月に三陸沖,室蘭沖でタッパナガ群の直接観察調査を行った.行動調査では,タッパナガは日周的な行動パターンを示さず,一つの行動パターンが長時間連続する傾向が明らかとなった.個体識別用の写真は,現在解析中であるが,予備的な解析から,群れ間でオトナオスの割合に5-12%と変動があり,オトナオスが群れ間を移動している可能性が示唆された.また,子連れのメスの割合は15-21%であり,従来の報告より高いことが見いだされた.吸盤タグによる潜水行動の調査では,6時間にわたる潜水データが得られ,コビレゴンドウの潜水行動を初めて明らかとすることができた.装着個体は,日中は浅い潜水を行っていたが,日没後,100mを越える潜水を繰り返していた.多くの潜水は200秒以下に保たれており,また,深度と持続時間の関係が200秒付近を境に変化することから,代謝に関係するなんらかの制限がこのあたりに存在すると考えられる.潜水プロファイルは二つのパターンに分かれることが明らかになり,タッパナガが異なった潜水パターンを使い分けていることが示された.鳴音調査では,同じグループで同じ音(コール)が頻繁に聞かれる一方,群れ間では同じコールが聞かれないことから,個体または群れの識別機能を持った音声の存在が示唆された.
著者
中原 史生
出版者
常磐大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

ハクジラ類における鳴音の個体群変異を明らかにすること、個体群に特徴的な音響パラメーターの特性を把握することを目的として、北海道室蘭市沖、千葉県銚子沖、東京都小笠原諸島父島周辺海域、アクアワールド茨城県大洗水族館、沖縄美ら海水族館において鳴音調査を行った。野外では鯨類の遭遇頻度が低く、十分な調査を行うことはできなかったが、飼育個体から多くのデータを得ることができた。昨年度までに蓄積したデータにバンドウイルカ、ミナミハンドウイルカ、オキゴンドウ、コビレゴンドウ、マッコウクジラの鳴音データを加えて解析を行ったところ、バンドウイルカ、ミナミハンドウイルカ、コビレゴンドウのホイッスルにおいて個体群間で差異がみられた。判別分析の結果、各種とも70%以上の正答率で判別が可能であった。上記をふまえ、平成15年度に数値解析プログラムMATLABを用いて作成したプロトタイプ鳴音判別プログラムの再検討を行った。鳴音判別プログラムを用いた種判別はかなりの精度で行えるようになったが、個体群判別という点では、まだまだ十分な信頼性を得ることはできなかった。今後さらに判別精度を高めるために、継続して研究を行っていく必要がある。これまでの研究成果について、日本動物行動学会、海洋音響学会「声を利用した海洋生物の音響観測部会」において発表を行った。また、これらの成果はFisheries Science誌、Marine Mammal Science誌へ投稿準備中である。
著者
首藤 伸夫 今村 文彦 越村 俊一
出版者
岩手県立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

大洋を伝播して沿岸部に来襲する遠地津波の予報精度向上を目指し,本研究グループは,(1)外洋から大陸棚に入射した遠地津波の多重反射と津波エネルギーの捕捉・減衰特性の解明,(2)リアルタイム観測情報を用いた津波波源域の推定,(3)津波伝播途上における波数分散効果の解明の3点について,研究を行った.(1)では,外洋から陸棚斜面に入射した津波の伝播・減衰特性を理論的に解析した.岸沖方向に有限な陸棚斜面を想定し,沖合からの任意の入射波形に対する斜面上の津波伝播を表す理論解を求め,さまざまな入射条件において得られた理論解を整理し,特に斜面上における津波の多重反射現象に着目し,津波の捕捉・増幅・減衰特性に関する知見を得た.(2)では,従来からの地震波解析から得られる震源過程の情報に加えて,観測される津波の波形から津波波源域の空間的な諸量をリアルタイムで推定する手法を開発した.地震波解析から即時的に得られる震源要素は,震央位置,震源深さ,マグニチュード,メカニズム解である.これらの情報に加え,津波の解析を行うためには断層面の空間的な広がりを知る必要があった.従来までは余震観測により断層面の空間スケールを決定していたが,これでは津波の量的な予報には間に合わない.断層の空間スケールが発生する津波の波形に反映されることに着目し,津波の観測波形から断層面の幅と長さをリアルタイムで推定することにより,最大でも20%以内の誤差で波源推定が可能であることを示した.(3)では,特に遠地津波の予測に重要な波数分散効果を,津波発生域から遡上までのすべての伝播過程において評価できる数値モデルを開発し,日本海中部地震津波の再現を試みた結果,従来では困難であったソリトン分裂による津波増幅を良好に再現できることが分かった.
著者
平尾 和洋
出版者
立命館大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

研究完成年である2003年度については、2002年度までに行った(1)チョデ・カンポン・ロモマゴンカンポンの80年代以降の改善経過、(2)中心的建築家グループの活動内容、(3)現在の住民属性・行動観察・近隣関係・住宅改善意識調査の結果を踏まえ、a)全体の研究の取りまとめ・論文の完結・そのための再調査、b)今後の改善運動への指針の明確化、c)未だ曖昧であるロモマゴンとその協力者(以下RMGと呼称)の活動が現在の居住環境改善に如何に影響を与えたかを明らかにするための再調査、以上3点の作業を行った。具体的には下記の内容が03年度研究実績である。1.論文:2000以降の調査結果をチョデカンポンの概要、カンポン改善経過と住民属性、教育・コミュニティー活動と近隣関係、居住空間と改善意向の4つの観点から取りまとめ、日本建築学会計画系論文集に査読・発表した。査読過程で指摘をうけた、ロモカンポン調査結果とチョデ川流域カンポン全体調査のデータ比較を新に行い、ロモカンポンの空間・経済・就労・学歴面での貧困さ、ならびに今なお残存するアーバンインボリュージョンの特性をもっていることを明らかにした。2.改善活動指針:住宅の改善プロセスを類型化し住民意織との対応から、調理室・寝室・リビングの順に今後改善すべきことが明らかとなった。また集落としてのゴミ収集・トイレ整備が必要であることがわかった。3.RMGの活動に対する住民評価の実態:学歴・職業・モラル・治安面での改善影響のあるなしに関する全50世帯に対する対面式アンケートを実施した。その結果、治安と学歴改普でRMGの影響を7割以上の世帯が指摘していることがわかった。またモラル・職業改善についても4割以上の世帯に影響のあることを明らかにした。
著者
薄田 千穂
出版者
熊本大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2007

○研究目的明治24年に創刊された第五高等学校龍南会発行の校友会雑誌『龍南会雑誌』『龍南』には、夏目漱石、厨川白村、村川堅固、下村湖人、犬養孝、大川周明、梅崎春生、木下順二など多数の著名人が寄稿しており、研究者の興味を引いてきた。近代の思想・文学研究、教育史研究などに資するため、目次のデータベース化、原本の収集などを行い、それをもとに龍南会雑誌等の五高史料公開を充実させる研究を行う。○研究方法龍南会雑誌の目次をもとに、原本及びコピーで内容を確認しながら掲載項目をデータベース化する。これにより発行回数や発行人、また編集委員や所属部の変遷など龍南会に関する基礎データをまとめる。○研究成果1、発刊ペース、頁数1891〜1898年10回・平均65P、1899〜1904年6〜7回・平均108P、1905〜1912年5回・平均102P、1913〜1931年4回・平均ll9P、1932〜1939年3回・平均107P、1940〜1942年2回・平均97P、1943〜年1回・平均94P2、発行人表記の変化および内容の変化について発行人の表示に変化がみられるのは、全国の高等学校社会科学研究会が強制解散させられ、思想の絞めつけが厳しくなっていた大正15年である。これまで雑誌部と称していたのが文芸部という名称となるが、昭和7年五高に同盟休校が起こった後は、再び雑誌部となっている。また、掲載記事の傾向は大正ころから、世相的なものは姿を潜め、文芸的なものが多くを占めるようになる。3、編集委員・所属部について毎年雑誌委員が選出され、編集にあたる。文芸の欄の執筆も担当し、雑誌委員は龍南会雑誌・龍南にとって重要な役割を担っていた。毎年度の最終号には雑誌委員の「擱筆の辞」が掲載されている。また、所属部も当初の5部から漸次増加し、報国団に改組される前年の昭和14年には18部となっている。
著者
松崎 学
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

平成7年度および8年度ともに、7月末から8月はじめの1週間、何らかの問題を抱えた子どもちた(小学生)が、STEP(Systematic training for effective parenting)を用いてサポ-ティヴなかかわりをすることができるように訓練されたスタッフとともに過ごした。合宿経験を通して、自分が抱えている問題(ストレッサー)に対する認知的評価や対処行動がどのように変容するかを、特に内藤(1993a,1993b,1994,1997)によって考案されたPAC分析(Personal attitude construct)を用いて追跡検討した。その結果、研究成果報告書に示したように、母親がLD(学習障害)かもしれないという男児(小4)は、他の子どもと比較して他の子どもがわかることが自分にはわからないということに気づき、その悩みを抱えていた。その年のゴールデンウィーク以降不登校気味であったが、合宿後の2学期は、いったん登校するようになったものの、12月の風邪による欠席をもとに3学期は完全な不登校となった。しかし、その問題に正面からぶつかることとなり、結果的には一種の障害受容、ないしは、自己受容を果たし、等身大の自分の生き方を見いだした。そして、4月以降、元気に登校している。その他のケースでも、大半の子どもがストレスフルな状況におかれていて、しかし、子ども自身ではそれを乗り越えることができないほどのストレスであっても、合宿という中でのかかわりを一つの契機として子ども自身が若干の変化を見せ、それを感じた親や教師がその子に対するかかわり方に変化を見せ、本来のサポート関係をつくり出してくれると、子どもは自分の問題としてなんとか乗り越えていく姿を見せてくれると言えよう。そういうことの積み重ねが、ハ-ディネス形成につながっていくであろうと考察された。
著者
川島 牧
出版者
大阪府立大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

潜水に伴い心・血管系に機能的な変化が起こる鯨類では、大量の血液が通過する肝循環に独自の進化があると考えられた。本研究では、特に類洞の微小循環調節に関わるとされる肝星細胞(HSC)に着目した組織学的研究を行い、以下の成績を得た。調べた動物はハクジラ亜目のコビレゴンドウ(Globicephala macrorhynchus)21頭とハンドウイルカ(Tursiops truncatus)7頭である。両鯨類のHSCは、筋細胞の中間径細糸であるDesminおよび筋細胞の収縮蛋白である平滑筋actin(SM-actin)を強発現した。またSM-actin陽性HSCは対の収縮蛋白である平滑筋myosinを共発現したことから、収縮能を持つ可能性が考えられた。特筆すべきは、これらのHSCが陸棲哺乳類の知見と相反し小葉中心帯に偏在していたことである。これは潜水応答により発生する徐脈と関連があると考えられ、HSCは収縮蛋白や細胞外基質産生を駆使し、過剰な類洞の拡張を押さえ肝細胞障害を防いでいると考えられた。HSCの収縮には神経性とホルモン性の両因子が関わるが、両鯨類ではアミン作動性交感神経の積極的な分布が肝小葉内に見られず、神経因子の関わる比重は少ないと考えられた。ホルモン性因子として類洞内皮細胞の産生するエンドセリン-1が上げられたが、抗体の交差性の問題からHSC上のエンドセリン受容体の検出は成功せず、今後の課題として残った。また、SM-actin陽性HSCは活性化型HSCであると考えられたため、HSCの活性化に関わるTGF-βの検出を行ったが成功に至らず、産生細胞であるKupffer細胞との関わりについても今後の課題として残った。また、ハンドウイルカではアミン作動性神経に支配された筋性終末門脈枝もまた肝小葉内へ流入する血液量が制限することで肝循環に関与すると考えられた。
著者
田中 圭
出版者
大分大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

近年の少子化や過疎化の進行による小中学校の統廃合・廃校により、貴重な大型木造建築である木造校舎がまだ使用できる状態にもかかわらず、次々に取り壊されてきており、現在も多くの木造校舎がその危機に瀕している。その理由として、耐震性の不備と補強・補修の費用が高額であることなどを挙げる自治体が多い。そこで本研究では、昨年度に引き続き、大分市近郊の山間地域にあり、地域交流施設の一部としての利活用が検討されている木造校舎について、詳細な調査を実施し、その老朽度・耐震性などについて詳細な検討を行うとともに、補強方法についての提案を行った。また一方で、昨年度からの本研究で明らかとなった古い木造校舎特有の構造である「接合部が釘止めのみの大断面筋違を持つ耐力壁」と「大断面梁、束ね柱、方杖から構成される柱-梁接合部」について、実際に使用されている寸法、接合を再現した試験体を製作し、その耐震性能を確認する実験を行った。これにより「大断面筋違を持つ耐力壁」は、現在の建築基準法に定められている断面寸法による壁倍率に比べ極端に小さい壁倍率しか発揮できず、現状では危険である可能性が明らかとなった。しかし、その後行った同耐力壁の補強方法を検討する実験により、研究代表者らが開発した接合法を補強に応用することで、比較的簡単な施工で現在の基準と同等の耐震性能まで補強することができることが明らかとなった。また、「柱一梁接合部」の実験により、この接合部は最大耐力は比較的大きいものの、初期剛性が低く、これによりラーメン構造と考えた場合の水平耐力が低くなることが明らかとなった。このように本研究の調査により、現存する木造校舎の実態とその特徴が把握できたとともに、実験により、その性能も定量的に確認し、補強方法とその効果についても確認提案を行った。今後も研究を進め、補強の必要な木造校舎それぞれについて、現実的な補強方法などを提案していきたいと考えている。
著者
保利 一 則武 祐二 砂金 光記 東 敏昭
出版者
産業医科大学
雑誌
試験研究(B)
巻号頁・発行日
1994

有機溶剤蒸気の環境測定や個人曝露量の測定には活性炭管を使用する固体捕集方法が広く用いられている.しかし,活性炭管は蒸気が破過しても使用中にこれを検出することは不可能であるため,特に個人曝露量の測定のように長時間の捕集を行う場合,破過により正確な測定ができない可能性がある.そこで半導体ガスセンサーを利用し,使用中に破過を検出する装置を開発した.まず,センサーの特性とと破過曲線の関係について調べた.すなわち,有機溶剤蒸気を活性炭管およびセンサーを装着したカラムに通じた.センサーからの出力信号を定期的にICカードに記録するとともに,センサーの下流側に設置したサンプリングポートから空気を採取し,FID付ガスクロマトグラフ(GC)で濃度を経時的に測定し,破過曲線を求めた.測定終了後,ICカードに記録されたデータをパーソナルコンピュータに転送し,センサーの抵抗値の経時変化をGCによる破過曲線と比較検討した.溶剤蒸気にはアセトン,ジクロロメタン,クロロホルム,1,1,1-トリクロロエタン,メタノール,IPA,酢酸メチル,酢酸エチル,トルエン,1-ブタノール,メチルエチルケトンを用いた.GCで破過破過を検出する以前にセンサーは破過を検知し,抵抗値が変化することが認められた.ただし,ジクロロメタンとクロロホルムについては,センサーの抵抗値の変化は小さく,抵抗値と破過曲線の立ち上がりはほぼ同時であった.この傾向は,乾燥空気でも高湿度(80%)の条件でもほぼ同様であった。ただし,ジクロロメタンとクロロホルムに関しては,高湿度条件下ではセンサーは破過を検知できなかった.以上の結果に基づき,破過を検出すると警報で知らせるシステムを試作し,その実用性について検討した.
著者
桑野 園子 難波 精一郎 FLORENTINE M FASTL Hugo SCHICK Augus
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

公共空間において,突発的な危険を知らせる警告信号音が具備すべき条件として,(1)種々の騒音下において検知されやすいこと,(2)高齢者など広い年齢層を対象にしても検知されやすいこと,(3)音が検知された場合,それが何らかの警報であることが容易に認知されること,(4)この音の認知は文化の相違を超えた普遍性があること,すなわち警報としての機能がある特定の文化圏に限定されないこと,などが挙げられる。これらの諸条件を考え,SD法による危機感を与える音の検討,連続判断実験による種々の背景条件下で特に判断時点を定めない場合の検知実験,さらにSD法に関してはドイツ(オルデンブルグとミュンヘン),アメリカ(ボストン)で実験を行った。また,日本における実験には海外からの研究者の参加を得て相互比較の信頼性を高めるべく努めた。これらの実験の結果,早い速度で周波数変化を反復する音が検知の面でも危機感の面でも警告信号音として適当であるとの結論が得られた。またこの結論は海外の実験でも確認された。この反復する周波数変化音は広い周波数範囲を含む音なので,高齢者のように高音部の聴力が低下している場合でも,低音部の成分が検知の手掛かりを与える。今後,国際会議などでもこの結果を紹介し,ISO(国際標準化機構)における警告信号音の標準化の資料としても貢献できるように努めたい。
著者
山本 博美 若松 秀俊
出版者
足利工業大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

本年度は、3年間にわたって開発した通信回線を含む電子保護システム全体について、実際に特別養護老人ホ-ムの施設で運用を繰り返し、その信頼性や経済性などについて研究を行った。まず、特別養護老人ホ-ムに設置した電子保護システムに、前年度までにシュミレ-ションを行って確認したパ-ソナルコンピュ-タ-とモデムを接続し、さらにNTTの電話回線を接続した。また実際に監視側コンピュ-タ-(研究室)から施設側コンピュ-タ-をアクセスし、徘徊デ-タの転送収集を平成3年3月から平成4年3月の期間にわたり、繰り返し行った。同時に市販の多機能ポケットベルが作動することを確認し、老人の外出時の救護が平均約10秒程度であることがわかった。これは介護者が、救護のために警戒する出入口に急行し、出入口に設置してある警報解除スイッチを操作した時間である。このことから電子保護システムは、介護者が目 を離した隙に徘徊性老人が外出しても、確実に警報を発し介護者も平均10秒以内に急行していることからいって、その有用性が確認できた。つぎに、電話回線を通じて施設側コンピュ-タ-から送られてくる警報デ-タは、収集プログラムの改良を行い、短時間で転送できるようデ-タ圧縮転送方式およびデ-タ処理のプログラムを開発した。なお、監視システムをパ-ソナルコンピュ-タ-で構成できたので、経済性の面で有利である。また今後は、一施設のみならず栃木県圏内の数ケ所の施設間で、ネットワ-クを構築し、電話回線を通じて送られてくる警報デ-タの処理および分析が必要である。また、デ-タの送信時のノイズ等による影響については、ソフトウエアの開発によりその影響を取り除き、確実にデ-タ送信できるシステムに改良した。
著者
西手 芳明
出版者
近畿大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2009

人工透析シミュレータシステムは、透析治療中に発生する警報の6パターンを再現することができた。動脈圧低下警報や動脈圧上昇警報では、脱血針をはじめダイアライザ入口までの動脈側のトラブルを再現することができた。静脈圧低下警報や静脈圧上昇警報では、ダイアライザ出口より送血針までの静脈側のトラブルを再現することができた。気泡警報では、血液回路にある複数のセンサに関連したトラブルを再現することができた。漏血警報では、ダイアライザに関連したトラブルを再現することができた。
著者
三橋 睦子
出版者
久留米大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1998

1998年のN市における集団赤痢症例を中心に、精神健康調査および施設収容法調査により心理的問題および構成要素をコード化し、心理的援助法としての戦略を導き出した。1.集団赤痢発生の条件下での現象として、不安・緊張・不眠がみられた。条件の特性には、発生源の存在/腹痛・下痢・発熱/感染拡大・易感染/自宅待機/行動制限/収入源の途絶え/経済的負担/アンケートの協力、があり、赤痢発生から終息1〜2か月後まで持続し、周囲の人の視線により脅かしがみられた。管理戦略として、発生源の原因究明と早期管理・情報提供/行政各機関の早期協働/発生源関係者の謝罪と適切な対応/一般住民の感染に対する理解/病気・治療・感染防止に関連した情報提供/感染拡大防止への協力啓発/検便陰性・陽性に関わらない補償/生活環境の調整/アンケート調査の調整/マスコミの感染と関係者に対する理解と適切な情報提供、が必要であり、これにより、対象は集団赤痢を貴重な体験として受容し、回復の可能性が高まると考えられた。2.集団隔離・行動制限の条件下での現象として、無能力・抑うつ・社会機能障害・快感消失がみられた。条件の特性として、治療・検便/行動制限や感染に関連した説明と教育/手洗いの励行/生活の規制/持参品の制限/一般住民や周囲からの隔たり/情報源の減少/連絡手段の制限/面会の制限/排泄物の管理、があり、赤痢発生から終息1〜2か月後まで持続していた。管理戦略として、隔離に関連した情報の提供と協力の啓発/病気・治療・入院生活に関する情報提供/自由に使用できる電話の確保/同施設内一般患者への感染症の理解啓発/排泄後の後始末のディスポ手袋使用と指導/リラクゼーションの配慮/面会者への感染症の理解啓発/入浴などの規制緩和/カウンセリングなどの早期導入、が必要であり、これにより、上記同様の回復プロセスが考えられた。