著者
増田 曜章
出版者
熊本大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

小径線維ニューロパチー (SFN) は、糖尿病、トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー (ATTR-FAP) など様々な末梢神経障害に関与しており、早期治療のためにも小径線維障害を早期から正確に検出することが重要である。本研究では、SFNの早期診断および病態評価に有用なバイオマーカーの探索を行った。ATTR-FAPでは早期より皮神経脱落が認められ、無症候の時期においても認められた。皮神経脱落は罹病期間や末梢神経障害のパラメーターと相関した。以上より、皮膚生検は、SFNの早期診断および病態評価法として有用であり、臨床試験のバイオマーカーとして応用できる可能性が示された。
著者
馬場 昌範 西條 政幸
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

平成 29 年度までの研究により,重症熱性血小板減少症候群(SFTS)の原因ウイルスである SFTSV に対する in vitro 抗ウイルスアッセイ系を確立し,それを用いた薬剤のスクリーニングにより,アモジアキンに選択的な抗 SFTSV 効果を同定した。さらに,種々のアモジアキン誘導体について,それらの抗 SFTSV 効果を検討したところ,アモジアキンと比較して,抗ウイルス活性が 10 倍程度高い新規誘導体(# 90)を同定することに成功した。そこで,平成 30 年度の本研究では,# 90 について,研究代表者が in vivo 実験用に必要な量の薬剤を準備するとともに,研究分担者が国立感染症研究所において SFTSV に感受性を有する1型インターフェロン受容体ノックアウトマウスを用いた in vivo 投与実験を行った。その結果,SFTSV 感染マウスに対し,# 90 の最大量(100 mg/kg)の経口投与群においても,非投与群と比較して,有意な致死率の減少をもたらさなかった。一方で,非感染マウスの最大量投与群においても,体重減少などの有害事象が全く認められなかったため,# 90 については in vivo における薬物体内動態(経口吸収性など)に問題があるのではないかと思われた。そこで # 90 の体内動態を改善することを目的に,原体から塩体(塩酸塩)への変換を行った。次年度は #90 塩酸塩を用いて,in vitro 活性試験および in vivo 活性試験を行う予定である。また,本研究から派生した研究成果として,米国のテキサス・バイオメディカル研究所の BSL4 施設を用いた国際共同研究を実施し,# 90 に強い in vitro 抗エボラウイルス効果を有することも明らかにした。
著者
渋谷 綾子 石川 隆二 高島 晶彦
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2018-06-29

本研究では,1. 古文書の分類と製紙材料の構成物としてのデンプンなどの種類・量・密度等の対象比較による紙の質的比較解析,2. DNAによる和紙の製造手法・地域・時期の分析,3. これらの分析手法を統合した「古文書科学」という研究分野としての可能性探索,という3つを軸とする。2018年度は,資料調査と混入物の分析,現生サンプルのDNA分析による紙材料の識別実験,混入物の標準的データの抽出を試みる。混入物の分析は,(1)資料調査と紙の繊維の分析,(2)混入物の分析,(3)多角的研究,(4)文書研究の4つを柱として設定する。料紙の成分特定については,分担者(石川)とともに現生の紙や原料サンプルのDNA分析を実施し,繊維や糊などの構成物の由来材料を特定する。今年度において,分析・検討を行ったのは主に次の項目である。すなわち,東京大学史料編纂所所蔵「中院一品記」の顕微鏡撮影画像の再解析(渋谷),国立歴史民俗博物館所蔵「廣橋家旧蔵記録文書典籍類」の顕微鏡撮影画像の再解析(渋谷),「松尾大社所蔵資料」および米沢市上杉博物館所蔵「上杉家文書」の顕微鏡撮影と構成物の解析(高島・渋谷),現生の紙原料サンプル(カジノキ)のDNA分析(石川・渋谷)。また,AWRANA2018(フランス,2018年5月)や日本文化財科学会第35回大会(2018年7月),第33回日本植生史学会大会(2018年11月),Workshop on Integrated Microscopy Approaches in Archaeobotany 2019(イギリス,2019年2月)では研究手法の紹介と結果の見込みについて報告し,書籍『Integrated Studies of Cultural and Research Resources』では2018年度前半までに得られた研究成果について報告した。
著者
嶋崎 善章
出版者
秋田県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、外来生物法施行当初と現在の八郎湖のレクリエーション利用価値を推定し比較した。実際に釣りで訪れた人々を対象にしたアンケート調査と過去に収集されたデータを基に、トラベルコスト法で推定した年間の利用価値は、2003 年から 2011 年の間に推定で 3分の1以下(6.1 億円→1.8 億円)に減少していることが分かった。
著者
石原 康宏
出版者
広島大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2017-04-01

化学物質の中には、胎児期に曝露すると成長後の行動異常を引き起こすものがあることが分かっている。着目すべきは、これら化学物質の多くがエピゲノムに影響し得ることである。また、脳内の免疫細胞であるミクログリアがスパインやシナプスの貪食を介して発達期の神経回路網の形成に関わることが明らかになりつつあり、ミクログリアと行動異常との関連が議論されている。これらの背景から、本研究では、『化学物質はミクログリアの遺伝子発現を長期的に変化させ、その結果ミクログリアが活性化し、異常な神経回路網が形成される』との仮説を検証する。本年度は試験物質として、まず、胎児期の曝露によりヒトおよび実験動物(マウス、ラット)で成長後の行動異常が確認されているバルプロ酸を使用する。妊娠マウスをバルプロ酸に曝露させたところ、成長後の仔の空間認知機能と社会相互作用が低下し、反復行動を示した。バルプロ酸の胎児期曝露は、発達期のミクログリアを過剰に活性化し、シナプス数を減少させた。このシナプス数の減少は一過的であり、成長後のシナプス数は、コントロール群とバルプロ酸曝露群でほぼ同数であった。以上の結果より、胎児期のバルプロ酸曝露は発達期のミクログリアを活性化することが明らかとなり、また、発達期に活性化したミクログリアは、発達期におけるシナプスの減少や成長後の行動異常に関与する可能性がある。来年度以降、ミクログリア活性とシナプス減少、行動異常との相関を明らかにし、ミクログリア活性化メカニズムを追及する。
著者
古澤 明 青木 隆朗 高橋 浩之
出版者
東京大学
雑誌
特別推進研究
巻号頁・発行日
2018-04-23

2次元大規模連続量クラスター状態生成のための要素技術開発として、広帯域スクイーズド光4本の同時生成法確立、スクイーズド光の相対位相ロック法の開発、スクイーズド光の相対位相ロックのデジタル制御系構築を行った。広帯域スクイーズド光4本の同時生成法確立としては、100MHzスクイーズ帯域の光パラメトリック発振器を4台作製した。これらをひとつのポンプ光で同時に駆動し、それぞれ6dB以上のスクイーズド光の観測に成功した。スクイーズド光の相対位相ロック法の開発として、新規ロック法を開発した。従来のスクイーズド光相対位相ロック法は、光パラメトリック発振器それぞれに導入しているプローブ光に変調を掛け、そのビート信号からロックのためのエラー信号を得るため、高い信号/雑音比を得るのが困難であった。そのため、ロックの安定性がそれほど高くなかった。しかし、スクイーズド光4本を複雑な干渉計において、その相対位相を安定してロックするためには、従来の方法では困難であることが予想された。そのため、新規スクイーズド光相対位相ロック法として、プローブ光に変調を掛けるのではなく、周波数をシフトすることによりヘテロダイン信号として読み出す方法を開発した。これにより劇的に信号/雑音比が改善し、安定してスクイーズド光の相対位相をロックできるようになった。スクイーズド光の相対位相ロックのデジタル制御系構築としては、新たにフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)を導入し構築を行った。アダプティブヘテロダイン測定のための補助状態生成技術開発として、超伝導光子数識別器作製のためのスパッタリング装置調達とその立ち上げ、共振器QED系の立ち上げを行った。
著者
遊間 義一 金澤 雄一郎
出版者
兵庫教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は,日本全国の刑事施設に収容された性犯罪受刑者598名を出所後3-5年間追跡したデータを基に,性犯罪者処遇プログラム(以下プログラムという)の再犯抑止効果を,傾向スコアを用いて交絡因子の影響を除いたうえで,パラメトリックな生存分析により評価したものである。その結果,(1)再犯の経過は,痴漢で受刑した者(痴漢群)とそれ以外の者(非痴漢群)では異なっていること,(2)痴漢群では,プログラムは有意な再犯抑止効果を持たないこと,(3)非痴漢群では,プログラムの効果は出所後500日程度まで存在すること,(4)痴漢群では,非痴漢群より,プログラム受講の有無に関わらず再犯率が高いこと,が分かった。
著者
宮口 幸治 松浦 直己
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

2018年度は「児童・生徒の認知特性のアセスメント」を引き続き実施した。小学校・中学校において学習上に困難さを抱える児童の中には、見る、聞く、想像するといった学習の土台となる認知機能の弱さがその原因となっている場合が考えられる。そこで効果的な認知機能強化のためのプログラム策定にあたり、まず一般学校児童の認知機能の特性を学年別に調査し明らかにする必要がある。ただそれら認知機能面のアセスメントには従来の各種知能検査等では膨大な時間と費用を要し困難であること、またそれが学習にどう関係しているのかが直感的に分かり難いなど問題があった。そこで約800枚のワークシートからなるCOGET(Cognitive Enhancement Training:認知機能強化トレーニング)のうち選出した20程度の認知課題と集団で実施可能な神経心理学的検査を併用し、2018年度より児童の認知特性のアセスメントを小・中学校にて各学年、年間20回程度実施してきた。COGETは、「覚える」「写す」「見つける」「数える」「想像する」の5つの構成からなり、それぞれワークシート自体をアセスメントの評価シートとして使用した。ただ予定していた中学校1つで実施できずまた小学校・中学校を通し対象人数も少なく想定していた精度を得ることが困難だったため、特に小学校でデータを追加する必要があった。このため2017年度に引き続き「児童・生徒の認知特性のアセスメント」を継続・実施した。
著者
大須賀 穣
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

子宮内膜症はTh2型免疫応答が亢進した慢性炎症性疾患である。また、疫学的にアレルギーと関連すること、臨床的にエストロゲン依存性であることが報告されている。本研究では、以下の2点を示した。第一に、Th2型アレルギー性炎症の新しい基幹分子であるTSLPの発現が子宮内膜症の病態に関与していることを示した。第二に、Th2型免疫応答と炎症が、子宮内膜症病巣局所においてHSD3B2を相乗的に誘導することで、病巣局所でのエストロゲン産生を誘導することが示された。本研究の成果は、アレルギー性炎症やHSD3B2の調節が、子宮内膜症の新たな治療法となりうる可能性を示すものである。
著者
永沼 充 横山 章光
出版者
帝京科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究ではロボット犬を用いた歩行リハビリテーションを提案し評価している。アニマルセラピーの動物をロボットに置き換えることにより、感染症、給餌・排泄、動物虐待などアニマルセラピー普及上の問題点を回避できる。患者は加速度センサー、タッチパネル、重心動揺計などを介して自らロボットを操るので、ICT技術により、検出・記録・処理といった新たな機能が付加される。提案の重要な点はリハビリ訓練における主客の交代である。患者は自らが操作してロボットを歩かせるので結果的に自己効力感が高まりリハビリが長続きする。老人ホームなどでの予備的な検討では有効性が認められ、より定量的な研究へと展開できることが明らかになった。
著者
玉井 湧太
出版者
同志社大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2018-04-25

本研究の目的は、外科手術を必要としない、赤外光レーザー人工内耳の開発である。現在、我が国では補聴器を用いても言葉の聞き取りが困難な高度難聴者が約15万人存在する。高度難聴者の聴覚再建方法として、人工内耳の装用が挙げられる。しかし、人工内耳は電極を蝸牛内に挿入する侵襲性の高い外科手術を行う必要がある。そのため、実際に人工内耳を装用しているのは、高度難聴者のわずか数%程度である。赤外光レーザーによるレーザー刺激は、電気刺激とは異なり、生体外のレーザー刺激プローブを組織に接触させることなく神経を刺激できる。本研究では、レーザー刺激を人工内耳に応用することで、イヤホンのように気軽に装着可能な人工内耳の開発を目標として実験を行った。具体的には、外耳道から鼓膜を介して蝸牛神経を刺激する経鼓膜レーザー刺激方法を確立した。 音刺激(クリック音)と経鼓膜レーザー刺激(パルスレーザー)を提示した時の蝸牛応答を記録した。音刺激では、刺激を提示してからl ms以内に有毛細胞由来の蝸牛マイクロフォン電位(CM)が生じ、1-4 msの間に蝸牛神経由来の複合活動電位(CAP)が計測された。レーザー刺激を提示した際には、CMはほとんど計測されずに、CAPのみが、刺激提示後1-4 ms後に計測された。この結果は、経鼓膜レーザー刺激が、有毛細胞をバイパスして蝸牛神経を直接刺激したと考えられる。人工内耳装用者の対象となる感音性難聴者は、有毛細胞に障害を持っているが、蝸牛神経は機能する。このことから。経鼓膜レーザー刺激は感音性難聴に対して有効であると考えられる。また、本研究では、経鼓膜レーザー刺激方法の安全性についても評価した。1時間の連続レーザー照射を提示することで生じる蝸牛応答の変化は、統計学的に有意の変化ではなかった。この結果は、少なくともレーザー刺激が急性の障害を生じさせないことを示唆している。
著者
長谷川 裕峰 寺井 良宣 藤平 寛田
出版者
大阪大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2017-08-25

本研究課題の調査対象とした未翻刻史料群『阿弥陀房抄』は各研究機関に散在しており、その存在は知られていたが、本格的な研究は僅少であった。そこでまず、叡山文庫円覚蔵19冊、叡山文庫真如蔵13冊、叡山文庫天海蔵『義科抄』の内4冊、西教寺文庫正教蔵27冊、早稲田大学図書館教林文庫所蔵19冊を史料収集し、考察対象とした。また、その撰述者である阿弥陀房宗厳の来歴等に関して、同時代史料から検討を進めた結果、本史料群は当時の天台学における最高水準であった探題職が残した論文集としての性格を読み取ることに成功した(「『阿弥陀房抄』覚書」、『坂本廣博博士喜寿記念論文集 佛教の心と文化』、2019年)。
著者
北野 尚美 鈴木 啓之 西尾 信宏 垣本 信幸
出版者
和歌山県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

川崎病は乳幼児に好発する急性の全身性血管炎で、後天性の心障害の原因となる。病因は解明されておらず、その疫学的特徴から感染性因子の関与が示唆されている。本研究では、発症に感染性因子が関与するならば、宿主の年齢は重要な条件の1つと仮説を立て、罹患者の発症時の年齢層によって、性別の分布や発症した季節に特徴があるかを調べた。和歌山川崎病研究会が年1回実施した和歌山県内の小児科病床を有する医療機関を対象とした川崎病新規症例の調査(回収割合100%)の資料をもとに電子データベースを構築した。本研究では連続する1945例を対象に疫学的記述を行った。発症時年齢は5分割(4か月未満、4-10か月、11-47か月、48-83か月、84か月以上)し、その特徴を分析した。全体では、男女比は1.4で、年齢は1か月から212か月に分布を認めた。年齢層別に観察した結果、4か月未満で男女比は2.0で、年齢が大きくなるにつれて罹患者に占める男児の割合が小さくなる線形の関連を認め、7歳以上の年齢層では男女比が逆転して1未満であった。川崎病発症の季節性については、全体では冬が33%を占め、秋は19%であった。年齢層別に観察すると、4か月未満の6割が夏と秋に発症していた。本研究の特徴として、研究対象としたデータの選択バイアスが小さいことがある。和歌山県は疫学研究に有利な地理的条件を備えており、県内全域から17年間に報告された全症例を対象として研究を実施した点が本研究の強みである。川崎病発症時の患者年齢と発症の季節性については、年齢層によって発症のトリガーとなる環境要因(ここでは感染性因子を仮定している)が異なることを示唆する結果と考えている。
著者
石黒 浩 中村 泰 西尾 修一 宮下 敬宏 吉川 雄一郎 神田 崇行 板倉 昭二 平田 オリザ 開 一夫 石井 カルロス寿憲 小川 浩平
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-04-01

人と関わるロボットの自律動作と遠隔操作の機能を統合することで,人間やロボットが存在する社会的で現実的な場面において, 発話やジェスチャーなどの社会的振る舞いを行い, 社会に参加できるロボットシステムの実現を目指すとともに, 社会的な対話の認知心理学的な理解とモデリングに取り組んだ.今年度は, 以上の取り組みを開始したところであったが, 本提案をさらに発展させた, 人間に酷似したロボットであるアンドロイドの機構の改良や BMI の導入を含む基盤研究 S "人のような存在感を持つ半自律遠隔操作型アンドロイドの研究" が採択されたため,5月31日をもって,本研究課題を廃止し, 基盤研究 S の一部として研究を推進している.本研究課題実施時の具体的な研究内容としては, 1. 対人状況における注意制御機能と遠隔操作機能の統合の一部として, 学習アルゴリズムに基づくロボットの自律制御に関する研究, 及び, 2. 社会的状況における対話の認知科学的モデル化の研究の一部として, ロボット演劇中のロボットが人にアプローチするシーンの演出データからの社会的振る舞いの抽出に取り組んだ.現在, 基盤研究 S として, 物理的なインタラクションをも自然にするための電磁リニアアクチュエータを用いたアンドロイドの開発,複数人による雑談などの具体的な社会的状況における対話とそれに伴う行動の記録と分析に基づく対話モデルの構築や, 遠隔操作の記録を基にしたアンドロイドの自律化に取り組んでおり, 今後,行う予定のブレインマシンインターフェースによる遠隔制御の導入などとともに, 人との多様な相互作用を行うアンドロイドの開発, 社会的存在としての機能の実現, 現実社会におけるアンドロイドの社会参加の実現に取り組む.
著者
塚本 康浩
出版者
京都府立大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では、ダチョウ抗体作製技術で抗HPV中和抗体の作製を試みた。HPVはヒトの子宮頸がんの発症に関与するパピローマウイルスである。HPVのウイルス様粒子(virus-like particle: VLP)を作製し産卵ダチョウに免疫することにより卵黄よりIgYを精製した。得られたIgYはVLPに特異的に高感度で反応することが判明した。また培養細胞での感染実験で中和活性を有することが判明した。子宮頸粘膜上皮細胞へ感染する際にウイルス表面にダチョウIgYが結合し細胞への吸着・感染を抑制出来ると考えられ、ローション等への適応によりHPV感染予防、結果として子宮頸がんの予防に貢献できると期待された。
著者
池田 敬子 小山 一 鈴木 幸子
出版者
和歌山県立医科大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

皮膚に安全で不活化効果の高い消毒薬の開発を念頭に、アルギニン及びアミノ酸誘導体や食品由来天然物質のウイルスや細菌に対する作用を網羅的に調べ、ウイルス不活化作用や殺菌作用、抗ウイルス作用があることを見出した。インビトロでの解析に加えて、体表への表在性ヘルペスウイルス感染症に対してインビボでの効果についても検証した。同時に、医療者の衣服などを汚染したウイルスがもつ伝播力についても実験的な解析を行った。
著者
田中 紀子 堀 清記
出版者
神戸女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

骨格筋線維数は生後まもなく決定され、それ以後は変化しないとする線維数固定説が長い間受け入れられてきた.筋線維数は数千,数万単位であることから,線維数計数の信頼性を高めるために,同一ラット筋について硝酸処理法とパラフィン法の2つの方法を適用した.その結果,筋線維数は運動により確かに増加することが判明したが,本研究では増加した線維の由来を明らかにするために,離乳直後の雌ラットを用いて,自発運動を長期間行わせ,筋を肥大させた.実験で用いた筋は走行が単一な縫工筋とし,筋の近位から遠位に分け、各部位の横断面に現れた線維数を計数し,縦断面の線維形態を調べるとともに,各部位のDNAを定量した.えられた結果は次のとおりである.対照群,運動群ともに筋線維数は,近位部から増加し,中央部においてピークに達した後減少し,遠位部では再び,近位部の線維数に戻った.運動による変化は近位部ではなかったが,中央部において,線維数の有意な増加があった.各部位における筋線維面積を画像解析システムにより計測すると,筋中央部の面積は運動により変化しなかったが,近位部および遠位部では運動により面積が有意に増加した.中央部の筋DNA量は他の部位より増加しており,筋中央部の線維数の増加が生化学的に支持された,筋中央部の線維形態を縦断面より調べると,筋の全長を走ることなく途中に終わるtepreing fiberが頻発することが確認された.以上より縫工筋は自発運動により,肥大を起こすが,運動による筋線維形態変化は部位で異なり,近位部および遠位部では線維の太さが増大することにより,また中央部では筋線維数の増加によることが明らかにされた.この筋中央部における線維数の増加はtapering fiberの出現が一因となることが明らかにされた.