著者
岩崎 稔 八尾師 誠 大川 正彦 今井 昭夫 工藤 光一 金井 光太朗 小川 英文 米谷 匡史 篠原 琢 藤田 進 岩田 重則
出版者
東京外国語大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

国民国家内とそれを越える広域的空間として、南北アメリカ、アイルランド、ドイツ(旧東ドイツを含む)、オーストリア、フランス、イタリア、ベトナム、北朝鮮、韓国、中国、沖縄、日本を選択し、それらの「想起の文化」つまり過去の想起のあり方が、グローバル化・新自由主義の影響によって、大きく変容を遂げていることを、理論・方法論の構築ならびに事例解釈・思想史的分析を通じて明らかにした。それらの成果は世界各地の国際シンポジウム等で発表され、論文・著作として公刊された。
著者
村下 博 西中 誠一郎 洪 貴義 近藤 敦 塩原 良和 近藤 敦 塩原 良和 鈴木 江理子 塩原 良和 近藤 敦
出版者
大阪経済法科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究では、日本社会における非正規滞在外国人および在留特別許可申請者の生活状況の実態が社会学的調査によって明らかになり、また在留特別許可制度をはじめとした戦後日本における出入国管理体制の形成過程が歴史学的に再考され、さらに諸外国の移民受入れ制度や非正規滞在者政策との比較研究によって日本の制度や状況の特徴や課題が明確化された。
著者
青井 透 宮里 直樹 川上 智則 川上 智規
出版者
群馬工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

広域的な窒素飽和現象を証明することが、本研究の主たる目的であるが、そのためには複数年にわたる窒素収支を把握する必要があり、谷川連峰湯桧曽川と裏妙義山中木川を調査対象として、降雨測定、流量測定および水質調査を継続的かつ正確に実施する必要がある。そこで湯桧曽川と裏妙義中木川において2年間にわたり、降雨と渓流水を定期的に採水・分析し、それぞれの調査場所で窒素の収支を計算した。その結果、湯桧曽川では窒素降下量と窒素流出量はほぼ同量であり、中木川では窒素流出量が1.55倍高く、窒素飽和現象が発生していることが明らかとなった。単位面積当りの窒素降下量は、湯桧曽川では12.5kgN/ha/Yであり、中木川では19~26kgN/ha/Yであった。一般に窒素飽和現象が発生する年間窒素降下量は10kgN/ha/Yが目安とされているので、どちらもこれより高い値であり、この点からも窒素飽和現象が発生していることが裏付けられた。
著者
碓氷 泰市
出版者
静岡大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

1.細胞膜表面ミメティックスの作製細胞膜表面糖鎖を模倣した糖鎖分子集合体(クラスター化)の構築のため、新規ジスルフィド双頭型配糖体の合成を行った。具体的には、スペーサー部構造の異なる種々の革アセチルラクトサミン(LacNAc)配糖体を4,4'-dithiodibutyd cacidの両末端カルボキシル基に対して導入することで、各種LacNAc含有ジスルフィド双頭型配糖体を得た。また、これら双頭型配糖体は種々の糖転移酵素により糖鎖伸長が可能であり、α2,6-およびα2,3-シアリルトランスフェラーゼを用いることで双頭型配糖体の糖鎖部をヒト型やトリ型インフルエンザウイルスが認識する細胞膜表面糖鎖に変換可能であることを実証した。2.局在表面プラズモン共鳴法の確立金基盤上にジスルフィド基を用いて双頭型配糖体を固定化することで、ラベル化が不要な糖鎖固定化バイオセンサーを構築する事を目的として、金ナノ粒子修飾局在表面プラズモン共鳴(LSPR)基盤上への糖鎖の固定化を行った。蛍光顕微鏡を用いた観察では、LacNAc構造を認識する蛍光標識レクチン(デイゴマメレクチン;ECA)との糖鎖構造特異的な結合が観察された。また、LSPRにLacNAc含有ジスルフィド:双頭型配糖体固定化金基盤を用いたところ、糖鎖固定化によりECA(非標識)との相互作用問における最大吸光強度や最大吸収波長に違いがみられた。興味深いことに、この糖鎖-レクチン間相互作用における最大吸光強度や最大吸収波長は固定化糖鎖であるLacNAc含有ジスルフィド双頭型配糖体のスペーサー構造(アルキル鎖長など)によっても変化する事が示された。また、酸性糖であるシアロ型糖鎖を固定化した場合は、中性糖のときとは異なる光学特性を示すことも明らかとなった。以上の結果より、金ナノ粒子修飾LSPR法を用いることで、ラベル化が不要な糖鎖固定化バイオセンサーを開発した。さらに、高感度の光学的バイオセンサーを設計する際に、本糖鎖プローブの糖鎖構造及びスペーサー構造の重要性が示された。
著者
西口 敏宏 辻田 素子 辻田 素子
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

自己組織化するトヨタ自動車のサプライチェーン、繁栄する中国・温州の「外出人」ネットワーク、さらに近年各地で成果を上げている「部門(機能)横断型プロジェクトチーム」などを、最新のスモールワールド・ネットワーク理論の枠組みで分析し、「遠距離交際」と「近所づきあい」の絶妙なバランスを有する頑健なシステムを構築した企業や地域が繁栄していることを明らかにした。理論家の描いた世界をはるかに超える複雑な現実社会について、豊富なオリジナルデータをもとに、「信頼」や「ソーシャル・キャピタル」の効用についても指摘した。
著者
位田 隆一 甲斐 克則 木南 敦 服部 高宏 ベッカー カール 藤田 潤 森崎 隆幸 山内 正剛 増井 徹 浅井 篤 江川 裕人 加藤 和人 熊谷 健一 玉井 眞理子 西村 周三
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究では、ゲノム科学、再生医療、臓器移植、ヒト胚研究等の生命科学・医学の諸分野の科学的発展と課題を明らかにし、そこに生じうる倫理的法的社会的問題を把握し、学際的に理論的および実際的側面に配慮しつつ、新しい社会規範としての生命倫理のあり方と体系を総合的に検討して、生命倫理基本法の枠組みを提言した。具体的には、生命倫理基本法の必要性と基本的考え方、生命倫理一般原則群、分野別規範群、倫理審査体制、国や社会の取り組みを提示した。それらの内容は国際基準及びアジア的価値観とのすり合わせも行った。
著者
丸山 博 亀田 正人
出版者
室蘭工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

渡島半島地域と厚沢部町の住民を対象として、それぞれヒグマに対する意識と行動に関するアンケートとインタビュー調査を行った。その結果、北海道のヒグマ保護管理計画の問題点を指摘するとともに、住民の間にヒグマに関する予防対策を行う余地があることを明らかにした。また、ヒグマの出没や捕獲のデータの分析と現地調査、農林業政策の検証などを通して、厚沢部町固有の予防対策の必要性と可能性を見出した。
著者
田代 学 関 隆志 藤本 敏彦 谷内 一彦
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

健常被験者を対象として、安静状態と連続暗算課題による精神的ストレス下における脳内ヒスタミン遊離量を比較したところ、被験者は暗算課題による心理ストレスを感じていた一方、PETでは差は検出できなかった。一方、頸部痛、肩こりのある男性を対象として、代替医療のカイロプラクティック施術後と無治療時の脳糖代謝の差を比較したところ、PETで測定した脳糖代謝変化が自律神経活動の変化と関連している可能性が示された。また、動物介在療法に関連した課題においてもストレス緩和に関連した所見が観察された。このようにPETを用いた脳糖代謝測定によって、代替医療の治療効果を評価することが可能と考えられた。
著者
藏田 伸雄 新田 孝彦 杉山 滋郎 松王 政浩 石原 孝二 伊勢田 哲治 黒田 光太郎 調 麻佐志 金光 秀和
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

リスク管理については熟議民主主義的な社会的意思決定の枠組みが必要である。またリスク-費用便益分析の「科学的合理性」とは別の「社会的合理性」があり、参加型の意思決定がそれを確保する手段となる。またリスク評価や社会的なリスクの軽減のために専門家(特に技術職)の果たす役割は大きいが、非専門家にも意思決定への「参加義務」があると考えられる。
著者
近藤 克則 吉井 清子 末盛 慶 竹田 徳則 村田 千代栄 遠藤 秀紀 尾島 俊之 平井 寛 斉藤 嘉孝 中出 美代 松田 亮三 相田 潤
出版者
日本福祉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究の目的は,介護予防に向けて,心理的因子や社会経済的因子の影響を明らかにする社会疫学の重要性を検討することである.(1)理論研究では,多くの文献をもとに社会疫学の重要性を検討した.(2)大規模調査(回収数39,765,回収率60.8%)を実施した.(3)横断分析では,健診や医療受診,うつなどと,社会経済的因子の関連が見られること,(4)コホート(追跡)研究では,社会経済的因子が,認知症発症や要介護認定,死亡の予測因子であることを明らかにした.本研究により,社会疫学研究が,介護予防においても重要であることを明らかにした.
著者
山下 直秀 中岡 隆志 渡辺 徳光
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

悪性黒色腫に対する樹状細胞療法で反応した症例を解析した結果、治療反応症例にのみ炭酸脱水酵素(carbonic anhydrase II : CAII)に対する抗体が上昇していた。またCAIIは腫瘍血管内皮に特異的に染色された。これらの事実から本研究の目的は、(1)樹状細胞療法の反応例における腫瘍血管を破綻させる抗体の検索、(2)腫瘍血管内皮様に分化させたhUVECを抗原とした腫瘍免疫療法の確立とした。(1)についてメラノーマ腫瘍cDNAライブラリーを作製し、蛋白を発現させ、患者血清を用いたスクリーニング行った。(2)の腫瘍免疫療法については動物実験を行いその効果を確認した。
著者
加藤 大
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

ナノテクノロジーの進展により、優れたナノ物質が開発され注目を集めているが、高効率な分離精製法は報告されていなかった。我々は、カーボンナノチューブ(CNT)やアミロイドβなどのナノ物質の高精度な分離法を開発し、さらに分離したナノ物質1個の構造決定に成功した。分析法の開発と共に、溶媒に分散しないため分離することが難しいCNTを溶液や乾固した状態で安定に孤立分散させる方法を開発した。
著者
宮坂 力 池上 和志 白井 靖男
出版者
桐蔭横浜大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、新規の有機・無機ハイブリッド構造を持つ固体系光電変換素子の創製を目的とし、(1)酸化物半導体、(2)イオン伝導材料、(3)導電性ポリマー材料、(4)炭素材料、からなる接合構造と、(1)~(4)のいずれかの界面に配置した(5)光吸収体により、高効率の光励起電子移動と光エネルギー変換を実現する基盤技術を、真空工程等に依存しない平易な塗布法によって構築することを目指して行った。光吸収体に有機色素を用いたTiO_2半導体/イオン液体/ポリアニリン・炭素複合材料からなる固体型光電変換素子、ならびに、ハロゲン化鉛系ナノ結晶(量子ドット)を光吸収体に用いたTiO_2/イオン電解質からなる光電変換素子の2種を開発し、前者で対太陽光スペクトルのエネルギー変換効率4.1%、後者でエネルギー変換効率3.8%を得た。
著者
笹澤 吉明
出版者
琉球大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

小中高生の不眠症の有病率とその心理社会的要因を明らかにするため、小学生1,000名、中学生1,500名、高校生1,000名に対して3度に亘り質問紙調査を行った結果、小学生では1割程度、中高生では、2割程度が不眠症傾向であり、不眠症傾向である小中高生は共通して、抑うつ気分、登校意欲の精神保健指標と縦断的に関連があることが明らかとなった。小中高生の不眠症傾向者共通して就寝時刻が遅く、睡眠時間が短い傾向があった。また生活面では、小学生、中学生の不眠症傾向者のテレビ視聴時間との縦断的関連が明らかとなった。小中高生それぞれ6名にアクチウォッチによる睡眠-覚醒の観察を行った結果、質問紙とアクチウォッチによる睡眠時間はほぼ一致していたが、不眠症傾向者の入眠潜時、中途覚醒時間との関連はみられなかった。以上の結果から、小中高生の不眠症の予防には、テレビの視聴時間の制限と就寝時刻を早めることの徹底が効果的であることが示唆された。
著者
松井 洋 有元 典文 中里 至正 中村 真
出版者
川村学園女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

1.目的;本研究の主な目的は5つある。それらを要約すると;1)第1の目的は、社会的迷惑行為についての構造を明らかにすることである。2)第2の目的は、日本の若者の社会的迷惑行為に対する態度を、アメリカ、トルコの若者と比較することである。3)第3の目的は、社会的迷惑行為に対する態度と恥意識との関係について検討することである。4)第4の目的は、社会的迷惑行為に対する恥意識と罪悪感の比較をおこなうことである。5)第5の目的は、社会的迷惑行為に対する態度について、中学生と高校生、男子と女子との比較をおこなうことである。2.方法;1)被験者:被験者は、日本、アメリカ、トルコの中学生及び高校生と、日本の大学生である。2)手続:質問紙法による調査を三回おこなった。3.結果と考察;1)因子分析法による検討の結果、社会的迷惑行為に対する態度は非行的態度、道徳意識、恥意識とは独立した態度であることがわかった。2)トルコの被験者は最も強い社会的迷惑行為に対する自意識と罪悪感を示した。アメリカの被験者は最も弱い恥意識と罪悪感を示した。日本の被験者はその中間であった。3)恥意識は社会的迷惑行為の抑制要因として機能することが示唆された。4)社会的迷惑行為の種類によって、恥意識と関係が深いものと罪悪感と関係が深いものがあることがわかった。5)社会的迷惑行為に対する恥意識と罪悪感は中学生と高校生、男子と女子の間に違いがあるということがわかった。
著者
安藤 譲二 山本 希美子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2003

本研究では血流に起因するメカニカルストレスである剪断応力の生体作用を明らかにするために、血管内皮細胞の剪断応力の受容機構と遺伝子応答の包括的解析を行った。内皮細胞は剪断応力の強さの情報をATP作動性のカチオンチャネルであるP2X4を介する細胞外Ca^<2+>の流入反応に変換して伝達することが判明した。P2X4の欠損マウスを作製したところ、このマウスの内皮細胞では剪断応力による細胞外Ca^<2+>の流入反応が消失し、引き続いておこる一酸化窒素産生が減弱することが示された。また、P2X4欠損マウスでは正常マウスに比べ血流増加による血管拡張反応が減弱し、血圧が上昇していた。さらに、血流の減少による血管径の縮小反応がP2X4欠損マウスで障害を受けていた。このことから、P2X4を介する剪断応力の受容機構は血流依存性の血管のトーヌスや血管のリモデリングの調節に重要な役割を果たしていることが明らかになった。剪断応力に反応する内皮遺伝子についてDNAマイクロアレイによる包括的解析を行ったところ、動脈レベルの15dynes/cm^2の層流性の剪断応力に対し内皮遺伝子全体の約3%が反応して発現が変化することが判明した。このことは約600の遺伝子が剪断応力に応答することを意味している。また、クラスター解析で得た継時的な遺伝子の反応パターンは単一ではなく、多様であることが示された。さらに内皮遺伝子の応答が層流と乱流で異なることが明らかになった。例えば、層流に対してウロキナーゼ型プラスミノーゲンアクチベータ(uPA)遺伝子の発現が低下するが、乱流では増加することが示された。この場合、層流は転写因子GATA6を介する転写抑制とmRNAの分解促進を、一方、乱流はmRNAの安定化を介してuPA遺伝子の発現を修飾していた。
著者
伊東 明彦 人見 久城 南 伸昌 渡辺 一博
出版者
宇都宮大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、中学生高校生を中心に彼らがどのような力概念を持っているのかを調査し、中学校や高校で行われている初歩の物理学の授業の問題点を洗い出すことができた。それらをまとめると次のようになる。1) 中学校1年生において行われている力の学習において、力とは何かを明確に定義すべきである。少なくとも、「力とは押したり引いたりすることである」、ということを生徒に理解させる必要がある。さらに、付け加えるなら、力とは物体の速さを変える働きである、ということもとらえさせたい。2) 中学生は日常生活で使っている力という語と、理科学習に置いて使われる力の区別ができていない。3) MIF的な力概念は現在でも広く中学生高校生に認められる。以上の所見から、言葉による説明だけでは生徒に力とは何かを十分納得させることは困難であるといえる。本研究ではこのような調査結果を受けて、物体に働く力を視覚的に表示できる教材「Fi-Cube」を開発した。Fi-Cubeを用いた授業実践において、これまで習得することが困難であると思われていた慣性の法則に関する理解か大きく促進され、同時にMIF的な力概念が払しょくされることが明らかとなった。Fi-Cubeを効果的に利用することによって、これまで様々な方策が講じられながら決定的な改善策が見いだせていなかった力概念の獲得に大きく一歩踏み出すことができるものと考えられる。
著者
野井 真吾 小澤 治夫 鈴川 一宏
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究の目的は,長期滞在型キャンプの開始,終了に伴う唾液メラトニン濃度の変化を明らかにするとともに,身体活動量と唾液メラトニン濃度との関連についても検討することであった.分析対象は,9.12歳の健康な男女11名であった.すべての調査は,2010年7.9月(キャンプは,2010年7月23日.8月22日に実施)の期間に実施された.その結果,子どもの夜の唾液メラトニン濃度は,長期キャンプの開始に伴って急増し,終了に伴って比較的早い時期に元の水準に復する様子が示された.また,身体活動量と夜の唾液メラトニン濃度との間には正の相関関係が窺えた.
著者
吉田 薫 岩本 義輝
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

前庭眼反射やサッケードの正確さは適応学習により維持されている。本研究では、1)これらの眼球運動制御に抑制系が果たす役割、2)サッケード適応の時間空間特性と適応を引き起こす誤差信号の伝達経路を調べた。1)マルチバレル電極を用いて単一ニューロン活動を記録しながら、GABA受容体、グリシン受容体の阻害薬を電気泳動的に投与し抑制入力の寄与を解析した。半規管系前庭二次ニューロンはGABA作動性抑制を受け、その遮断により頭部回転応答の振幅が著明に増大した。この抑制はおそらく片葉に由来し、前庭性運動のゲイン調節を担うと考えられた。一方、サッケード運動指令の形成には、グリシン作動性抑性が重要な役割を果たすことが示された。バーストニューロン(BN)とポーズニューロン(OPN)の相互抑制、OPNへのトリガー抑制はいずれもグリシン受容体を介すること、これらの抑制によりサッケードと注視の急速な切り替えと安定な注視が起こることが明らかになった。2)サッケード適応課題遂行中に視覚誤差の方向を2度逆転させる実験により、学習反復の効果を調べた。先行適応が次の適応を促通し学習速度が上昇すること、この促通効果は誤差ゼロのサッケードにより消去されることが明らかになった。また、方向の異なるサッケードへの促進効果を解析した結果、適応を担う可塑的変化と、促通を起こす可塑的変化は類似の方向特異性を持つことが示された。サッケード適応を引き起こす誤差信号の経路を調べるために電気刺激で適応が誘発される部位を探索した。その結果、中脳被蓋内側部に刺激を加えるとサッケード直後にその終点が次第に変化すること、効果は刺激と組み合わせたサッケードに特異的であることが明らかになった。視覚誤差を伝える経路が中脳披蓋内側部を通ることが強く示唆された。