著者
田中 弥生
出版者
講談社
雑誌
群像
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.150-167, 2006-06
著者
横川 正美 菅野 圭子 柚木 颯偲 堂本 千晶 吉田 光宏 浜口 毅 柳瀬 大亮 岩佐 和夫 駒井 清暢 山田 正仁
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.E3O2227-E3O2227, 2010

【目的】昨年の日本理学療法学術大会において、地域住民を対象に認知症予防として実施した認知機能プログラムと運動機能プログラムの効果を調べたところ、前者のみならず、後者のプログラムでも記憶機能の改善が示唆されたことを報告した。本研究では、同様のプログラムを再度実施し、プログラムに参加していない対照群との比較を行った。<BR>【方法】一昨年度および前年度に地域で実施された脳健診の受診者から、明らかな脳疾患を有する者、および臨床的認知症尺度(Clinical Dementia Rating; CDR)が1以上のものを除いた806名に研究参加を募った。参加への同意が得られた37名のうち、介入前後の評価を実施できた31名を介入法の対象者とした。対照群として、本研究の趣旨を説明し協力の同意が得られたグループデイ参加者20名のうち、介入群と同時期に評価を実施できた13名を対象者とした。グループデイは概ね65歳以上で、週1回以上自主的に運営し活動するグループであり、本研究の介入法には参加していない。介入法では、参加者を無作為に2つのプログラムのうち、次のいずれかに振り分けた。一つは認知プログラム(n=17)で認知症の前段階で低下しやすいと考えられている実行機能を重点的に高める内容であり、具体的には旅行の計画立案と実施を行った。もう一つは運動プログラム(n=14)で認知機能に効果的とされる有酸素運動を主体としており、体調確認の後、準備運動、ウォーキング(10-15分)、柔軟体操を行った。2つのプログラムはどちらも週1回約1時間、合計8回実施した。介入法参加者と対照群には介入前後に認知機能検査としてファイブ・コグを施行した。<BR>【説明と同意】参加者に本研究の趣旨を説明し、書面にて同意を得た。本研究は所属する機関の医学倫理委員会の承認を得た。<BR>【結果】参加者の平均年齢は72.8±4.3歳、平均教育年数は10.0±2.0年であった。認知プログラム、運動プログラム、対照群の間で対象者の年齢、教育歴による差はみられなかった。ファイブ・コグの下位項目(運動、注意、記憶、視空間認知、言語流暢性、思考)の各評価得点について、2つのプログラムと対照群のうち、どれに参加したかという「プログラム」因子と、参加前か参加後かという「時間」因子による二元配置分散分析を行ったところ、交互作用が認められた項目はなかった。次に参加前、参加後の各評価得点をプログラム間で多重比較したところ、有意差が認められた項目はなかった。各プログラム内での多重比較では、認知プログラムにおいて、運動(22.4±5.6点→24.8±6.3点; p<0.05)と記憶(13.4±6.5点→17.1±6.1点; p<0.01)の得点が参加後、有意に改善した。運動プログラムにおいても同じく運動(19.4±6.5点→22.7±6.4点; p<0.01)と記憶(12.4±7.3点→15.6±5.7点; p<0.05)の得点が参加後、有意に改善した。対照群では、参加前後で有意に変化した項目はなかった。<BR>【考察】対照群では認知機能検査において有意な改善が認められた項目がなかったのに対し、認知プログラムと運動プログラムでは記憶の項目が改善した。2つのプログラムは昨年も同様の結果が得られている。プログラム間で改善した認知機能に差異がみられる傾向にあるが、どちらのプログラムも有効性が示唆されたことから予防事業で用いる場合に効果が期待できると考えられた。<BR>【理学療法学研究としての意義】運動療法を用いた認知症予防の方法を提案するためのエビデンスを蓄積する。
著者
Tae-Woo Kim Byoung-Hee Lee
出版者
理学療法科学学会
雑誌
Journal of Physical Therapy Science (ISSN:09155287)
巻号頁・発行日
vol.28, no.9, pp.2491-2494, 2016 (Released:2016-09-29)
参考文献数
19
被引用文献数
20

[Purpose] Evaluating the effect of brain-computer interface (BCI)-based functional electrical stimulation (FES) training on brain activity in children with spastic cerebral palsy (CP) was the aim of this study. [Subjects and Methods] Subjects were randomized into a BCI-FES group (n=9) and a functional electrical stimulation (FES) control group (n=9). Subjects in the BCI-FES group received wrist and hand extension training with FES for 30 minutes per day, 5 times per week for 6 weeks under the BCI-based program. The FES group received wrist and hand extension training with FES for the same amount of time. Sensorimotor rhythms (SMR) and middle beta waves (M-beta) were measured in frontopolar regions 1 and 2 (Fp1, Fp2) to determine the effects of BCI-FES training. [Results] Significant improvements in the SMR and M-beta of Fp1 and Fp2 were seen in the BCI-FES group. In contrast, significant improvement was only seen in the SMR and M-beta of Fp2 in the control group. [Conclusion] The results of the present study suggest that BCI-controlled FES training may be helpful in improving brain activity in patients with cerebral palsy and may be applied as effectively as traditional FES training.
著者
杉山 岳巳
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.67, no.552, pp.93-99, 2002
被引用文献数
1

1. はじめに 環境の持続可能性の重要性は明らかであり、建築においても持続可能性をめざしたデザインの必要性が提唱されている。ところが、環境の持続可能性に関する研究はこれまで環境の生物・物理学的特性に注目したものが多く、その社会的側面は無視される傾向にあった。しかしながら、私たちの住む世界は人間によって支配されており、人々の環境に対する認識や行動が環境の保護や利用に大きな影響を与えていることは明白である。つまり、持続可能性の概念は社会的環境にも大きく関わっており、持続可能性をめざしたデザインを浸透させるためにはその社会的側面に対する考慮が必要である。 2. 持続可能性をめざしたデザインに対する環境選好 本研究では持続可能性をめざしたデザインの社会的側面を扱うために「環境選好」の概念を用いる。環境選好はある環境に対する個人の好みの度合を問うものであるが、その目的は人々が好む環境の特性やパターンを特定することにある。「好み」はランダムで恣意的な現象と考えられがちだが、実際には人の好みには共通性があり、環境選好の研究はこれまで景観などの問題において重要なデータを提供してきた。また、環境選好は人間の基本的ニーズや欲求を反映したものであり、その度合はあるデザインが社会に受け入れられる程度を反映していると考えることができる。 3. 研究の目的 本研究では環境選好を用いた調査を行ったが、その目的は次のようなものである。1) 持続可能性をめざしたデザインが景観等を考慮したデザインに較べて好まれない傾向にあるという指摘がこれまでにあった。しかしながら、持続可能性をめざしたデザインに対する環境選好の実証的研究はこれまでほとんど行われていない。ここで本研究では個人によって認識されたある環境の持続可能性の度合を計測し、この持続可能性の評価と環境選好との間の関係を調べる。 2) 環境選好と持続可能性の評価から持続可能性をめざしたデザインをいくつかのグループに分類し、その分類にどのような次元が潜在的に関わっているかについて推測する。3) 持続可能性をめざしたデザインに対する印象を調べる形容詞対への回答からそれらのデザインに対する認識パターンを調べ、どのような項目がその認識において重要な位置を占めているかを理解する。4. 研究の方法 日本の四大学において158名の学部学生を対象に調査が行われた。 11枚のカラー写真が被験者に示されたが、このうち9枚は持続可能性をめざしたデザインの例であり、2枚は持続可能でないと考えられるデザインの例である。これらの写真は持続可能性のためのさまざまな手法を幅広く取り込むように選ばれたものである。質問票においてそれぞれの写真に対する被験者の印象が10個の形容詞対(興味深い-つまらない、魅力的な-魅力的でない、自然な-構築された、乱雑な-整然とした、好き-嫌い、見捨てられている-手入れされている、効率の良い-効率の悪い、複雑な-単純な、目立つ-目立たない、美しい-美しくない)で計測された。次に同じ写真に対する持続可能性の度合に関する評価が6項目(自然エネルギーの利用、環境に対する負荷、周辺の生態系への影響、環境に配慮した行動との関連、省エネルギー、人々の環境問題に対する意識との関連)からなるスケールを用いて行われた。5. 結果と討論1) 環境選好と持続可能性評価との関係 図2にそれぞれの写真の環境選好と持続可能性評価の全参加者の平均値の分布を示す。この図からもわかるように環境選好と持続可能性評価の間には強い相関関係が見られる。持続可能性をめざしたデザインにおいて両者の相関係数は9枚の写真を対象にした場合0.941(p<.001)であり、158名の被験者を対象にした場合では0.342 (p<.001)であった。この関係が写真の持つ「自然さ」に仲介された疑似相関である疑いもあるが、自然さの認識を取り除いた偏相関においても両者の間に統計的に有意な相関関係が得られた。すなわち、今回使用された写真においてはその持続可能性の評価が高いものほど、環境選好の度合も高くなるということが示された。しかし一方で、持続可能でないデザインの二例はその持続可能性評価が低いにも関わらず、環境選好の度合は高くなっている。これらのイメージは文化的価値に適合しており、環境選好に影響を与える要因として文化的欲求に関する因子が働いていることを示唆している。2) 写真の分類 図3は階層的クラスター分析により環境選好と持続可能性の評価から11枚の写真を分類した結果を示したものである。クラスターIとIIIを区別する潜在的な基準としては持続可能性の写真からのわかりやすさが考えられる。クラスターIに属する写真が持続可能性に貢献していることがわかりやすいのに対し、クラスターIIIでは写真からそれを判断するのが非常に難しくなっている。クラスターIIとそれ以外は文化的に好まれているイメージかどうかという点が判断基準となっているように思われる。クラスターIIの写真は社会的地位や余暇などの文化的に重要と考えられている要因に関連しており、このような写真に対しては持続可能性の評価はほとんど影響を与えていないように見える。この結果から使用された写真においては「持続可能性の可視性」と「文化的な好みとの適合性」という二つの潜在的判断基準が共存していると推測することができる。3) 認識パターンの分析 表2は持続可能性をめざしたデザインに対する印象の因子分析の結果を示したものである。第一因子は好ましさ、興味深さ、魅力、美しさを含んでおり、この成分は「魅力」という名で代表できると考えることができる。また効率もこの因子に含まれており、効率的という認識が持続可能性をめざしたデザインの魅力に貢献していることが示されている。第二因子は整然さ、手入れの有無、自然さなどの項目からなり、「小ぎれいさ」と名付けることができる。この因子においては自然さが負の負荷量をもっており、自然の景色に存在する乱雑さのせいで、このような現象になったと考えられる。過去の研究において環境選好と自然さの間の相関関係が示されてきたが、本研究では両者の間に別の関係があることが示唆されている。6. 結論 本研究では持続可能性をめざしたデザインに対する環境選好と持続可能性の評価との間の相関関係が実証的に示されたが、環境選好に影響を与える構成概念が他にもいくつか存在することが示唆された。今後、持続可能性をめざしたデザインの認識に対するより包括的な理解を得るためには、本研究で示された構成概念との関係を調べるとともに、被験者側の諸変数(個人差)も考慮に入れた検討が必要であるといえる
著者
西田 宗幹 門脇 明仁 本村 清二 尾崎 文彦 大西 竜哉 貝谷 誠久 窓場 勝之 坂口 綾 森本 麻紗子 植松 光俊
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, 2005-04-20

【はじめに】従来の全国学会で実施されていたワークショップは、講師の方々がテーマに沿って検討会を実施するのを参加者が聴くというタイプのものであり、実質はパネルディスカッション的なものであった。本来、ワークッショプは「研究集会:参加者が専門家の助言を得ながら問題解決のために行う共同研究講習会」である。平成16年11月7,8日、奈良県において開催された第39回日本理学療法士協会全国研修会における参加型ワークショップは、受講者が従来のような受け身的なものではなく、取り上げたテーマに対し能動的に関わりを持ち充実した研修を行うことを目的とした。その受講者アンケート調査結果より若干の知見を得たので報告する。<BR>【ワークショップ概要】今回のテーマは「歩行自立度判定」(参加者49名)、「高齢者の車いすの作製」(44名)、「装具作製はいつ行うか?」(50名)で、研修会後すぐに実際の臨床の場面で役立つと考えられるものとした。実施時間は3時間。進行内容はメイン講師によるワークショップの説明と討議内容の説明、テーブル講師の指示課題およびモデル症例・事例提示のもと各班で検討、討議後各班より発表、最後にメイン講師による総括という流れであった。ワークショップ後、参加者にアンケートを実施した。<BR>【結果】アンケート回収率は84.5%(n=126)、参加者の平均経験年数3.12年。「参加して良かったか」では「はい」が100%、「また参加したいか」では「はい」が80.2%、「いいえ」が0.8%で、「はい」と答えた方の80.2%が「勉強になった」、29.4%が「おもしろかった」と答えられた。また「今後の業務に役立つ」が98.4%、「役に立たない」が0.8%、「希望したテーマに参加できた」89.7%、「参加できなかった」8.7%であった。実施時間は「短い」36.5%、「丁度いい」56.3%、「長い」5.6%であった。あと感想として「仕事に生かせる」、「色々な方の意見が聞けて良かった」、「見方が変わった」、「もっとディスカッションをしたかった」等が聞かれた。3テーマとも、参加者の多くはワークショップ終了後も15~30分以上もの熱いディスカッションを続けていた。<BR>【考察】今回のアンケート結果より全員が参加して良かった、約9割の方がまた参加したい、約8割の方が勉強になった、ほとんどの方が今後の業務に役立つと答えられていることより若い参加者の多くは本当に現場で役に立つ研修会を望んでいると考えられた。このことより、講演やパネルディスカッションのような受動的な研修会も必要だが、参加者自らが考え、討議などを実施する能動的な研修会のあり方が臨床上では重要であり、若い参加者のニーズを把握していく必要があることを示唆した。
著者
岩本 里織 岡本 玲子 小出 恵子 西田 真寿美 生田 由加利 鈴木 るり子 野村 美千江 酒井 陽子 岸 恵美子 城島 哲子 草野 恵美子 齋藤 美紀 寺本 千恵 村嶋 幸代
出版者
一般社団法人 日本公衆衛生看護学会
雑誌
日本公衆衛生看護学会誌 (ISSN:21877122)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.21-31, 2015

目的:本研究は,東日本大震災により被災した自治体における職員の身体的精神的な健康に影響を与える苦悩を生じる状況を明らかにすることを目的とした.<br/>研究方法:研究参加者は,東日本大震災で甚大な津波被害を受けたA町職員30名であり,半構成質問紙による個別面接調査を行った.調査内容は,被災後の業務で印象に残っている内容や出来事などである.分析は,研究参加者の語りから,身体的精神的健康に関連している内容を抽出しカテゴリ化した.<br/>結果:研究参加者の平均年齢は40.6歳,男性17人,女性13人であった.研究参加者の語りから2つのコアカテゴリ,9つのカテゴリ,19のサブカテゴリが抽出された.<br/>結論:被災した自治体職員は,自身も被災者であり家族など親しい人々の死にも直面し,職務においては,津波による役所建物などの物的喪失や同僚の死による人的喪失が重なり,業務遂行の負担が大きく,身体的精神的健康に影響を与えていることが考えられた.震災後の早期から職員の健康面への継続的な支援が必要である.
著者
梛野 健司 敷波 幸治 齋藤 隆行 原田 寧
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.138, no.3, pp.122-126, 2011 (Released:2011-09-10)
参考文献数
26
被引用文献数
1 1

ガランタミン(レミニール®)は,コーカサス地方のマツユキソウの球径から分離された3級アルカロイドであり,国内2剤目のアセチルコリンエステラーゼ(AChE)阻害薬として,軽度および中等度のアルツハイマー型認知症(AD)における認知症症状の進行抑制の適応症を取得した.ガランタミンの作用機序は,AChEに対して可逆的に競合阻害作用を示し,さらにニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)のアセチルコリン結合部位と異なる部位に結合し,アロステリック活性化リガンド(APL)として作用することでnAChRに対するアセチルコリン(ACh)の作用を増強させる(APL作用).In vitro試験および動物を用いた行動薬理学的評価から,ガランタミンは,アミロイドβによる神経細胞障害に対して保護作用を示し,学習記憶の低下に対して改善効果を示した.国内臨床試験(GAL-JPN-5試験)では,軽度および中等度のAD患者580例を対象に,ガランタミン16 mg/日および24 mg/日の有効性と安全性をプラセボ対照二重盲検法により検討した.主要評価項目はADAS-J cogおよびCIBIC plus-Jの二元評価とした.その結果,認知機能評価の指標であるADAS-J cogでは,16 mg/日および24 mg/日ともにプラセボとの間に統計学的有意差を認め,そのエフェクトサイズは16 mg/日よりも24 mg/日の方が大きかった.一方,全般臨床評価であるCIBIC plus-Jでは,両投与量群ともに有意差は認められなかった.安全性評価では,16 mg/日および24 mg/日の忍容性は良好であった.ガランタミンの剤形には,錠剤(4,8,12 mg),口腔内崩壊錠(4,8,12 mg)および内用液(4 mg/mL)があり,患者の嗜好や状態により適切な剤形の選択が可能である.以上のことから,ガランタミンは,AD患者における新たな治療選択肢として期待される.
著者
佐々木八十八 著
出版者
佐々木八十八
巻号頁・発行日
vol.第68-69回, 1936
著者
馬場 朗
出版者
東京女子大学
雑誌
東京女子大学紀要論集 (ISSN:04934350)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.1-19, 2016-03

In Ovid's Metamorphoses, the story of Pygmalion, a mythological man from Cyprus since antiquity, was not necessarily aimed at celebrating the power and genius of art. It is much more likely that a religious reverence for Venus was responsible for the animation of Pygmalion's statue by the goddess so that she could become his wife and have their daughter Paphos than artistic excellence. However, in the fifth act, Sculpture, of the the 18th century opera-ballet Le Triomphe des Arts by Houdart de La Motte (1700), the story becomes explicitly concerned with the récompense for the art of Pygmalion, and the animation of the statue honours the genius in art.Rousseau's famous mélodrame, Pygmalion, first staged in 1770, seems to share such a perspective. However, Rousseau's Pygmalion cannot necessarily simply be reduced to this. Our study emphasises two points. First, a contemporary review in the correspondance littéraire of its performance in Paris, although not yet sufficiently analyzed, suggests to us that an important role is played by the vraisemblance of Pygmalion's passions, which is probably inseparable from that found in Rousseau's autobiographic attempts such as his Confessions, etc. Second, also embodied in this mélodrame is Rousseau's radical critique of French contempory opera, especially of the poétique du mervelleux confirmed in de La Motte's Opéra-Ballet as well as in the Acte de Ballet Pygmalion by Jean-Philipe Rameau (1748). More fundamental however is the possibility that his Pygmalion marked one of the most significant breaks with contemporary aesthetics still based on the poétique classique, which shall be a principal subject in the next part of our study.古代世界から語り継がれてきた、キュプロスの伝説上人物ピュグマリオンを巡る物語は、そもそもオウィディウス『変身物語』がそうであるように、芸術的天才の力を讃えるものでは必ずしもなかった。むしろピュグマリオンの彫像が生命化しその妻となって娘パフォスを生むのは、彼の芸術上の卓越さでは殆ど無くむしろウェヌスへの宗教的敬意に依っている。しかし18世紀に入り、ウダール・ド・ラ・モットのオペラ・バレェ『諸芸術の勝利』(一七〇〇年)第五幕「彫刻」が示す様に、この物語はピュグマリオンの「技」への「見返り」に明確に関るものとなる。彫像生命化は、彼の芸術上の天才に与えられる栄誉を象徴化するのである。一七七〇年に初演された、ルソーによる高名なメロドラム『ピュグマリオン』もまた上記の近代的な芸術上の天才礼賛を共有する様に見えるが、実は必ずしもそうではない。この観点から、本論は以下の二つの論点を強調することになる。第一に、未だ研究者の十分な分析を受けていない、そのパリ初演の際の『文芸書簡』の同時代の一つの劇評を介して、我々はルソーの自伝小説(『告白』等)の試みとおそらく不可分な形でのピュグマリオンの「情念」の「真実らしさ」の枢要な含意に着目する。第二に、このメロドラムには、ド・ラ・モットのオペラ・バレェだけでなくジャン・フィリップ・ラモーの「アクト・ド・バレェ」『ピュグマリオン』 (一七四八年)においても確認できる「驚異の詩学」、これに特に向けられる同時代フランス・オペラへの彼の批判が具現化されている。しかしより根本的なのは、ルソーの『ピュグマリオン』が、未だ「古典主義詩学」に基づく同時代美学に対して決定的な断絶の一つをしるしづけた可能性である。これについては次回の論考で本格的に取り組むことになろう。
著者
Hina Atsuhiro
出版者
東京大学大学院ドイツ語ドイツ文学研究会
雑誌
詩・言語 (ISSN:09120041)
巻号頁・発行日
vol.76, pp.31-42, 2012-03

本稿は東京大学ドイツ文学研究室で2011年6月30日に行われたドクター・コロキウムの発表原稿に加筆したものである。今回は1990年代のドイツ語詩を代表する詩人トーマス・クリング(1957-2005)の「ミューラウ,†」を取り上げた。この詩が1925年にブレンナーによって行われたゲオルク・トラークルの遺体(かれは1914年にクラカウの野戦病院で死亡し、その土地に埋葬されていた)のミューラウ墓地への輸送をテーマにしていることを実証しつつ、それを現代詩特有の複雑な統語法に支配された当作品を解読するための<鍵>であると考えた。さらに作品の目的が、単にトラークルの埋葬という歴史的事象を言語の中へと写しとることにではなく、その<音>による再構成をとおして同時的に、異なった歴史的事象へと意味内容をシフトさせることにこそあると考えた。ここで筆者は、哲学者ミシェル・フーコーの講演「異なった諸空間 (Andere Räume)」とそこで提起される<ヘテロトピア>という概念を積極的に参照し、詩という場所を舞台にした諸イメージの往来をクリングの詩学として定立せんと試みた。(本文ドイツ語)
著者
阿部 邦昭 Abe Kuniaki
出版者
日本歯科大学
雑誌
日本歯科大学紀要. 一般教育系 (ISSN:03851605)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.7-12, 2012-03

We analyzed initial waves of the 2010 Bonin Island tsunami which was recorded at tide stations in Japan. After reducing tidal level from the record we identified the initial wave and determined the arrival time, polarity, double amplitude and period. The amplitude, normalized at 1000 km in the epicentral distance in the assumption of geometrical spreading, was plotted to the period relative to dominant period of seiche. The resonance curve represents itself having the maximum at 1.4. Thus it is concluded that the initial wave follows a law of resonance. It suggests that the initial wave is amplified by the background oscillation.
著者
高嶺 翔太 後藤 春彦 馬場 健誠 山村 崇
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.78, no.686, pp.857-865, 2013-04-30 (Released:2013-06-04)
参考文献数
29

This study aims to clarify the effects of the morphology of the urban fabric upon the sequential scenery from the Metropolitan Expressway. The morphology of the urban fabric specified within this research is topography, land use during Edo Period and the land use prior to the construction of the Metropolitan Expressway. Through two experiments, cognitive and visual, the following has been identified.1) The topography and land use prior to the construction of the Metropolitan Expressway, effects the form of the expressway impacting the cognitive change in sequential scenery.2) The green space left from the Edo Period land use effects the cognitive change in sequential scenery.
著者
小河 邦雄
出版者
情報メディア学会
雑誌
情報メディア研究 (ISSN:13485857)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.14-25, 2016-09-30 (Released:2016-09-30)
参考文献数
21
被引用文献数
1

研究シーズ探索のための検索では検索語が明確でないことが多い.そのため,広い概念で検索すると大量の検索結果の中に研究シーズとなりうる情報が埋もれてしまうという問題がある.本稿では探索的フィルタリングとして,効率的なシーズ調査の方法を提案する.病名で Chemical Abstracts を検索し,得られた文献情報を既知の薬理メカニズム情報辞書でフィルタリングし,医薬研究に関する研究シーズリストを作成した.実験では病名の breast cancer で文献を検索し,索引情報のフィルタリングで新奇な薬理メカニズムのシーズリストを得た.CA の索引情報を利用する本稿の探索的フィルタリングによって,大量の文献からでも研究シーズを見出すことが期待できる.新奇情報リスト作成は容易ではないが,本論文で示した方法によって研究シーズの調査が改善されると考える.
著者
三浦 麻子 楠見 孝 小倉 加奈代
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.10-21, 2016

<p>This study examined chronological changes in attitudes towards foodstuffs from the areas contaminated by the Fukushima Daiichi nuclear disaster, using citizens' data (<i>n</i>=1,752) from the panel surveys conducted in 4 waves between September 2011 and March 2014. Using the dual process theory of decision-making, the study attempts an empirical examination that includes the interaction of two factors: (1) anxiety regarding the radiation risks of the nuclear accident, which is hypothesized to lead to negative emotional decision-making following the formation of relevant attitudes, and (2) knowledge, higher-order literacy, and critical thinking, which are hypothesized to promote logical decision-making. Until three years after the nuclear accident, there was no large chronological variation in either anxiety regarding the radiation risks of the nuclear accident or attitudes toward foodstuffs from affected areas. The tendency regarding the latter was particularly strong in areas far from the location of the disaster. Negative attitudes regarding foodstuffs from affected areas were reduced through the possession of appropriate knowledge regarding the effects of radiation on the human body. However, the belief of possessing such knowledge may, conversely, hinder careful consideration with appropriate understanding.</p>
著者
津村 健太 村田 光二
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.1-9, 2016

<p>After being socially excluded, people try to reconnect with others. Previous research indicated that excluded people show an enhanced ability to distinguish between-category differences relative to within-category differences of group members. It is important that excluded people distinguish in-group members from out-group members to avoid making an unnecessary effort for social reconnection or further ostracism, because in-group members afford more opportunities to reconnect compared with out-group members. We hypothesized that this perceptual change would heighten the perception of the similarity of group members. Participants were included or excluded by Cyberball (a ball-tossing computer game) and constructed imagined histograms of the perceived distribution of members of four groups across a trait dimension. As predicted, social exclusion heightened the participants' perception of the similarity of group members.</p>
著者
大崎 正雄 中川 正雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. OQE, 光・量子エレクトロニクス
巻号頁・発行日
vol.93, no.22, pp.25-30, 1993-04-27

本稿では計測や通信における合波、減衰過程のモデルであるビームスプリッタの量子力学的記述において従来のユニタリー過程に変わる作用素表現を導入する。なぜならビームスプリッタはそれ全体をとらえるとユニタリーであるがある一つのモードのみに注目した場合、その量子状態変換過程に非ユニタリーである。しかしその変換過程を条件付ユニタリー過程としてとらえると、非常に簡潔にビームスプリッタの量子状態変換過程が記述できる。その例として線形減衰モデルとしてビームスプリッタをとらえ、代表的な入力量子状態としてコヒーレンント状態、光子数状態、そしてスクィズド状態について条件付ユニタリー作用素を求める。