著者
橋本 典征 上原 秀幸 大平 孝
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. USN, ユビキタス・センサネットワーク : IEICE technical report (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.131, pp.13-18, 2009-07-09
被引用文献数
2 1

無線センサネットワークにおけるMAC層では消費電力削減のために効率的にスリープを行うプロトコルが提案されている.その中でも非同期型MACプロトコルはアクティブ状態の同期を必要としないため,同期型に比べてスケーラビリティは優れており,近年盛んに研究が行われている.しかし一方で,スリープの同期を取らないことから,宛先ノードがアクティブ状態に遷移するまでプリアンブルを送信し続けなければならない.それにより,遅延時間および消費電力が増加するという問題を抱えている.そこで本稿では,通信手順の中にアクティブ状態に遷移するまでの時間情報を付加することによって非同期状態から擬似的にリッスン状態のタイミングの同期を取る擬似同期MACプロトコルを提案する.これにより,送信ノードは宛先ノードがアクティブ状態に遷移するときに送信開始できる.実機実験により,提案方式はX-MACに比べ,デューティサイクルを約76%,遅延時間を約44%削減できることを示す.
著者
野田 敏郎 松浪 斉
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
ポリマー材料フォーラム講演要旨集 第13回ポリマー材料フォーラム
巻号頁・発行日
pp.230, 2004 (Released:2010-03-29)

プラスチックは軽量性や透明性に優れ、加工が容易で経済的なため幅広く用いられている反面、軟らかく傷付き易いため、表面にハードコート処理を施す必要性がある。しかしながら昨今の市場要求は、単純に硬さだけをもたせるのではなく、防汚性、帯電防止、防曇性といった機能性を付与したものが多く、弊社でもそれらの機能性を有するUV硬化型ハードコート剤の開発を鋭意検討している。本報では、防汚性コーティング剤の開発について報告する。日常生活のなかで、「汚れ」は避けられないものである。携帯電話やタッチパネルのディスプレイ、プラスチック成形物、壁紙等は、人の手に触れることで指紋や皮脂が付着する。また、時にはマジックインキなどの拭き取り難い汚れが付着することも考えられる。これらの汚れが付着すると美観を損ねるだけでなく、場合によっては機能の低下をもたらすこともある。これらの弊害を防ぐため、従来はハードコート剤にシリコーン系添加剤を添加するといった処方が用いられてきた。シリコーン系添加剤は、表面自由エネルギーが低いという特性も有するため、有効成分が表面にブリードした塗膜となる。その為、シリコーン系添加剤においては、繰り返し使用において効果が持続し難いといった防汚耐久性に問題点がある。我々は上記の課題に着目し、シリコーン成分をUV架橋オリゴマーに導入することで、防汚耐久性に優れた特性を有するUV硬化型の防汚性コーティング剤を開発した。本報では、弊社開発品に関する特性について紹介する。
著者
実生 史朗 藤村 俊伸 脇 一徳
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
ポリマー材料フォーラム講演要旨集 第13回ポリマー材料フォーラム
巻号頁・発行日
pp.217, 2004 (Released:2010-03-29)

電気・電子機器には数多くの有機材料が用いられているが、その多くは可燃吐物質であり、難燃性を付与するべく難燃剤が添加されている。これまで主流として用いられてきたハロゲン系難燃剤は、難燃化能は高いものの、加工時・燃焼時に発生する有毒ガスや廃棄燃焼処理時に発生するダイオキシン類似化合物の副生が指摘されており、その使用は規制されつつあり、ノンハロゲン化の動きが活発になってきている。我々は、カルボン酸をビニルエーテルにより熱潜在化する技術(以降、ブロック酸技術と呼ぶ)をキーテクノロジーとした電子材料の開発を行っているが、そのブロック酸技術を取り入れた新規反応型リン系膨然剤(潜在性リン系硬化剤)を見出し、ノンハロゲン難撚性コーティング材についての検討を行った。
著者
石川 英章 室賀 嘉夫 星 徹 萩原 俊紀 矢野 彰一郎 澤口 孝志
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
ポリマー材料フォーラム講演要旨集 第13回ポリマー材料フォーラム
巻号頁・発行日
pp.207, 2004 (Released:2010-03-29)

我々は気体の拡散性と液体の溶解性を併せ持つ超臨界二酸化炭素(scCO2)流体を用いて、汎用結晶性高分子のラメラ繰り返し構造間の全ての非晶層に通常熱力学的に混じり合わない非晶性高分子を結晶が融解しない条件で分子分散させるナノハイブリッドの創製を目指している。既にイソタクチックポリプロピレン(ipp)にメタクリル酸メチル(MMA)を含浸・重合して調製したハイブリッドはiPPの結晶領域をほとんどそのまま保持し、生成したPMMAがPPのラメラ繰り返し構造間の非晶層にナノメートルオーダーで分散していることを見出した。本研究では結晶が融解する温度においても形成されたナノ分散構造が容易に崩壊しない分散系を調製し、その構造を解析した。
著者
森川 聖士 井上 眞一
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
ポリマー材料フォーラム講演要旨集 第13回ポリマー材料フォーラム
巻号頁・発行日
pp.206, 2004 (Released:2010-03-29)

ポリウレタンエラストマー(PUE)はゴム弾性および機械的特性に優れる反面、耐熱性に劣る欠点を持つ。PUE の特性を生かしつつ、耐熱性を改善する手法の一つに有機-無機複合化が挙げられる。1990年頃から金属アルコキシドを出発原料とするゾルーゲル法を用いた有機-無機複合化に注目が集まるようになり、ナノメートルオーダーで無機物を有機高分子化合物中に分散させることが可能であることからさかんに研究が行われるようになった。当研究室では金属アルコキシドに類似し、原料として非常に安価な水ガラス(ケイ酸ナトリウム)を用いたシリカ-ヒドロゾル法によるPUE の有機-無機複合化に関する研究を行っている。今回は、PUE の構造が有機-無機複合化に与える影響について検討した結果を報告する。
著者
中井 泉
出版者
東京理科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

文化財のオンサイト分析用ポータブル蛍光X線分析装置を開発し、国内外の遺跡・社寺・美術館等において、出土ガラスや収蔵ガラスのその場分析を行い、日本の古代ガラスの組成的変遷を解明した。また、西アジアから東アジアまでのユーラシア大陸各地のガラスの組成と比較し、古代世界におけるガラスの西から東への流通について考察した。顕著な成果は、日本のガラス工芸の最高傑作である東大寺法華堂不空羂索観音菩薩の宝冠(国宝)のガラスの全容を解明し、日本の古代ガラスの変遷から宝冠を理解できたことと、今まで、未解明であったキルギス、ラオス、カンボジアのガラスを現地で分析し、日本のガラスとの関連を明らかにできたことである。
著者
山下 弘巳 森 浩亮 桑原 泰隆 亀川 孝
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2014-05-30

ゼオライトやメソポーラスシリカなどのナノ多孔材料を利用して、細孔空間や骨格内に調製したシングルサイト光触媒(孤立四配位酸化物種、光機能性金属錯体)の機能・特性の評価、ナノ多孔材料の構造・形態制御、表面修飾や他の機能性材料との複合化を通して、シングルサイト光触媒を利用する環境調和型機能材料の開発と応用を試みた。平成29年度では、以下の研究を実施した。1)シングルサイト光触媒の特異反応性の評価と可視光応答性の付与: 複数金属元素からなる多核錯体を前駆体とする可視光応答型光触媒の調製を試みた。 2)シングルサイト光触媒を組込んだ三次元ナノ細孔構造とコア・シェル構造の設計: ヨーク・シェル構造の設計に特化し、サイズ制御した細孔をシェル構造に組み込むことを目指した。 3)疎水性多孔体の創製による光触媒の高効率化: ナノ細孔内表面を機能性炭素や酸・塩基官能基で修飾することで、細孔内の疎水性や酸塩基性を制御し、反応基質の吸着濃縮を進め触媒反応の高効率化を目指した。 4)シングルサイト光触媒を利用する金属ナノ触媒・プラズモニック触媒の調製: 貴金属の使用低減を目指した汎用元素を利用するプラズモニック触媒の開発、幅広い波長域の光を効率利用する光触媒系の開発を目指した。 5)コア・シェル構造触媒設計による高効率ワンポット触媒反応系の設計: ヨーク・シェル構造の設計においてシェル内部空間の反応場環境を制御することで、ワンポット触媒反応の高効率化を目指した。 6)ナノ細孔空間で機能する金属錯体シングルサイト光触媒の設計: 励起電子の移動性が高い高表面積多孔性カーボンやC3N4を利用し、多孔担体表面の化学特性が金属錯体に与える影響を検討した。
著者
Kim Minseok 青柳 貴洋
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では,人体周辺の無線センサネットワーク(BAN)において,複数のセンサから取得した伝搬路の時間変動と人体の状態(動作や姿勢)との関係を実験的に明らかにし,人体の状態を高精度で同定する手法の開発を行った.また,人体の状態と伝搬路の状態との関係性(通信品質を決定する特徴量)を具体化し,人体の状態に応じたコーディネータの送信電力の最適化するコンテキストアウェアネス通信法を開発し評価を行った.具体的な実施内容は次のようである.「伝搬路測定系の構築」,「信号設計と伝搬路測定法の開発」,「伝搬路の時間特性による人体状態の同定法の確立」,「人体状態による伝搬路状態の分類とモデル化」などを実施した.
著者
鈴木 誠
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

建設的干渉現象を援用した同時送信型フラッディング技術を基礎として,様々なトラフィックを効率的に同一技術で収容可能とする無線センサネットワーク技術を開発した.また,開発した通信機構を利用して,橋梁モニタリングおよび農場モニタリングに適用し,消費電力,スループットなどの観点から,十分な性能を実現できることを確認した.要求の異なる2つのアプリケーションを同一技術で高効率に実現できることから,従来の無線センサネットワークで必須であった,アプリケーションごとの作り込み作業が不要となり,開発容易化が可能であることを示した.
著者
熊谷 蓉子
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.11-20, 1958-03-25

最初に本研究の意義において,立体表現活動が描画活動よりも,より容易であり根元的であることを明らかにしたが,この2つの活動が最初に行われ始める時期を考察してみると,紙とクレヨンでする描画活動の方が材料からくる抵抗が少いために,幼児にとってはより容易であり,粘土活動よりは早期に始められる。しかしながらこの期の活動は造形活動でも表現活動でもなく,ただ手のリズミカルな運動を楽しむ一種の遊びなのであって,粘土の場合も2才になると,それを握って操作するに充分な手腕力がつくため,描画活動でいわれる錯画と同じような活動が始められる。すなわち粘土のかたまりを机上にたたきつけたり,ちぎったり,くっつけたり,まるめたりするようなごく単純で無作意,無目的な活動である。ところで描画活動において錯画の中に初めて何か形らしいものが現われ,やがてそれが花や船や人の顔になり始めるころには,粘土活動でも何か形らしいものや,命名された「あめ」だの「リンゴ」だのが作られるのである。この形の現われ始める時期が両活動においてほぼ一致していることは,28名の調査を行った幼児から参考資料として集めた自由画と,その児童の粘土活動とを照合した結果明らかになった。形らしいものの現われ始める時期は,大体2才の終りから3才にかけてであるが,最初に現われる形は描画の場合と同じく,命名されていても作品と命名の結びつき19が客観的には理解しがたい場合が多い。しかしながらこの傾向は4才になると一変する。4才児は興味の持続時間命名,形の構成,活動,作品数等すべての点において3才児との問を大きく引きはなす。すでに6才児の中には形を作らない子どもは1人もいなくなり,どのような点からも明らかに造形活動として認められるのである。故に2才の粘土をただ操作して楽しんでいた遊びの時期から,造形活動へと移るのは3才から4才にかけての時期で,これが立体表現活動の最初の著しい発達をとげる時期であると考えられる。〔A〕,〔B〕2つの調査結果の共通な点,すなわち「興味の持続時間」や「題材」「作品数」などについて,幼児と学童の比較を打ってみると,5才児と1年生ではほとんどその差のないことが削る。作品をみても材料の相違があるだけで,特に著しい差は見当らない。故にこのことから児童は入学という,1つの団体生活=社会生活への本格的な出発である激しい環境の変化を経るにもかかわらず,この期には顕著な発達を示さないことが明らかにできる。従って次に著しい変化の現われるのは,I年生からIII年生にかけて,すなわち6〜8才のころである。この期になると幼児期の「食べ物」に変って「乗り物」,人物などが多くなり,空想的表現が多くなる。何を作っても一生懸命で工夫がなされるし,とかく沢山の附属物や装飾がほどこされて説明が詳しくなる。この期の作品には夢があり楽しさがあふれていて,命名も単純でなく,何か事件のようなものを表現しようとしたりして,ユーモラスな題がつけられ成人の微笑を誘う。一方更にIV年生を中心として見られる大きな変化の時期は,描画活動の写実期に相当すると思う。この期においては表現力(器用さ,立体感,運動感たどに現われている)に特に著しい発達が見られ,これはI年生とIII年生の間における差よりも,一層はなはだしい差を示している。この期の作昂はほとんど写実的表現によって支配され,用いる題材も著しく違ってくる。ここで注意すべきは,IV年生にはIII年生ほど楽しい気分があふれ,のびのびとした作品が多くないということである。幼児は自分の残した作品にはほとんど興味を示さないのに比して,高学年児ほど自分の作ったものに対する批評やその成果を気にする傾向にある。故にその作品には自然と子どもらしいのびのびとした所が失われてくるのである。しかしながらそうだからといって高学年児は粘土工作を楽しんでいないのかというと決してそうではない。参考資料として行った図画と粘土工作に対する興味の比較調査の結果が,これを如実に示している。結果をグラフで示すとFig.6になるが,高学年児ほど絵よりも粘土を好む。これは,この期の児童の知的発達がめざましく,自己の作品に対する批判眼がするどくなるためである。すなわち,二次元の平面で三次元の事物を描写する描画活動では,表現意欲とそれを表現する技術とか即応しなくなるために,絵画的表現活動の行きづまりに直面するものと解釈する。ここにおいて児童の表現活動における立体表現活動が新しい意義をもってくる。すなわち立体表現活動は外界の立体物を実立体で表現するのであるから,この高学年の児童には何の抵抗も制約も感じさせない。従って,児童はこれによって容易に絵画的表現活動の行きづまりを打開することができるのである。
著者
亀井智子 友安 直子 梶井 文子 久代 和加子 杉本 知子
出版者
聖路加看護大学
雑誌
聖路加看護学会誌 (ISSN:13441922)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.23-36, 2006
被引用文献数
2

本研究の目的は,在宅認知症高齢者に関する学際的チームアプローチの質を評価する枠組みの開発を行うことである。方法は,データベースによる文献検索から24文献,ハンドサーチから20文献,計44文献を国内外から収集し,それらの要約と統合を行い,在宅認知症高齢者に関する学際的チームアプローチによる成果(outcome)に基づく質評価の枠組みを作成した。さらにその妥当性の検討のために,計16名の保健医療福祉の各専門職実践家にインタビュー調査を行った。文献の統合により,outcome評価の具体的項目を分類し,抽象度を上げていき,在宅認知症高齢者に関する学際的チームアプローチの質評価の大・中・小項目にわたる枠組みを作成した。その結果,質評価枠組みの大項目は,次の9項目の大項目で構成されるものとなった。「I.認知障害と記憶障害とともに生きること」「II.認知と記憶の状況が見守られること」「III.認知と記憶障害に関連する問題を解決すること」「IV.活動的であること」「V.認知症以外の合併症のリスクを減らすこと」「VI.決定する力をもつこと」「VII.意思疎通できること」「VIII.活動と参加の能力を促進すること」「IX.心地よくあること」。また,各々の中・小項目では,在宅認知症高齢者の日常生活全般にわたる医学面,生活行動・活動,心身の機能,コミュニケーション,生活の質(QOL)などの側面が含まれ,日常生活全般にわたり認知症高齢者が前向きに生活する姿をoutcomeとしてケアの質を評価するものとなった。専門職へのインタビュー結果から,この枠組みは支持された。しかし,在宅認知症ケアの実践現場において質評価上不可欠とされたのはケアマネジメントの視点であることが共通にあげられ,最終的に「X.ケアマネジメントされること」を加えた10項目の大項目で構成される枠組みが作成された。今後,各々の質評価の柱に沿った具体的なケア内容,評価指標と時期,職種ごとのケアの専門性について具体化することが必要である。
著者
平尾 明子 竹下 秀俊 岡本 聡 大木 英司 山中 直明
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J97-B, no.2, pp.99-109, 2014-02-01

ネットワークのトラヒック量の増大に伴い,ネットワークの消費電力量が急増し,消費電力の削減が急務となっている.また,ネットワークのリソースを有効に活用するために多対多接続サービス実現への要求が増加している.本論文では,ネットワーク中のトラヒックを特定リンクに集約することで,空となった未使用リンクをスリープ状態にし,ネットワーク全体の消費電力を削減するMiDORiネットワーク技術における多対多対応ルーチング手法としてSuperPosed Minimum Spanning Tree (SPMST)アルゴリズムを提案する.提案アルゴリズムは,多対多接続MiDORiネットワークにおける要求条件である,高い省電力性実現,20秒以内での100ノード以上かつ,1000マルチキャストグループ以上対応の計算実行を満たす.計算機シミュレーションにより,提案するアルゴリズムの省電力性・計算時間・マルチキャストグループ収容数の有効性を示すとともに,MiDORiネットワークのプロトタイプシステムにおける提案アルゴリズムの有効性を検証した.
著者
三品 佳子
出版者
花園大学
雑誌
花園大学社会福祉学部研究紀要 (ISSN:09192042)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.11-33, 2008-03
被引用文献数
1

本研究は、イングランドの脱施設化の歴史と背景にある思想を辿るなかで日本にACTを普及するために必要なことを明らかにすることを目的にした。イングランドの精神科病床削減は、1954年に始まり、現在も引き続き進行中であり、急激ではないが、着実に減り続けている。一定の地域を定め、サービスがどの家庭にも届けられるよう配慮されている。特に北バーミンガムでの取り組みは、ケアマネジメントを機能分化させた上で、バーミンガム市の社会福祉局やボランタリーセクターと連携を図りつつ、国民保健サービス(National Healty Service:NHS)のいくつかの機能的チームが地域生活支援を展開している。包括型地域生活支援プログラム(Assertive Community Treatment:ACT)は、重い精神障害のある人への最も効果的な地域生活支援の方法である。英国の精神保健の歴史とバーミンガムの実践から、ACTを日本に普及するためには、1.援助者の人間観や援助観、2.ACTのための予算の確保、3.援助者の使命感、4.援助者の技能の向上、5.援助者の待遇改善の5点が必要であることがあきらかになった。
著者
竹田 正樹 タケダ マサキ Takeda Masaki
出版者
同志社大学保健体育研究室
雑誌
同志社保健体育 (ISSN:02864118)
巻号頁・発行日
no.45, pp.55-70, 2007-03-01

本研究は日本人高齢者の体力(ADL)について,高齢者の自己効力感を重要視した10段階評価基準の作成を試みた.被験者は60-90歳の男性106名,女性697名で,5歳刻みで評価基準を作成した.体力テスト項目は,1)開眼片足立ち,2)10m障害物歩行,3)握力,4)長座体前屈,5)椅子移動,6)椅子立ち上がり,7)ステッピング,8)一歩足踏みだし,9)シャトルスタミナウォーク,10)歩幅の10項目とした.すべての項目に対して5歳刻みの年齢毎に平均値および標準偏差を算出した.10段階評価のうち,平均値を10段階のうちの6になるように設定し,各段階は平均値±0.25SD(標準偏差)ずつ移動して,10段階評価基準を作成した.この考え方(平均値と6とする)は高齢者の自己効力感を少しでも満たそうという考えからである.すなわち,平均点が100点満点中の50点よりも60点であれば,感覚的に満足感が高いと考えられるからである.満足感が高いことは高齢者のやる気を引き出し,このことが健康教育に繋がる可能性がある.本研究ではこのような評価基準の作成は高齢者の体力評価の一つの提案と位置づけている.The author tried to make a 10-phase evaluation chart of physical fitness on Japanese elderly men and women aged 60 to 90. This study valued self-efficacy of elderly on the making the 10-phase evaluation. Physical fitness test was conducted on 106 men and 697 women. The test items were 1) one-leg balance with eye-opened, 2) 10 meters walking getting over obstacles, 3) grip strength, 4) sitting trunk flexion, 5) moving test between 2 chairs intervals, 6) 30-second squat times on the chair, 7) both legs stepping times for 30-second sitting on the chair, 8) forward step times for 30-second, 9) shuttle stamina walk for 3 minutes, and 10) step length with comfortable speed. Mean values and standard deviations were calculated as for every 5 years old on 10 measured items. Mean value of physical fitness of this study population was set at 6 of 10 phases and the range of each phase was mean value ± 0.25 standard deviation. Self-efficacy of elderly people must be considered to evaluate physical fitness, because one of important meaning of physical fitness test must be raising-up the motivation for exercise. Tables of 10-phase evaluation were made on the each test with distinction of age and sex for every 5 years old. This study was one suggestion for evaluation method of physical fitness on elderly people.
著者
中野 一茂
出版者
共栄学園短期大学
雑誌
共栄学園短期大学研究紀要 (ISSN:1348060X)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.29-38, 2010-03-31
被引用文献数
1 1

高齢者は筋力、知覚、精神機能の低下等によって予期せぬ事故に遭遇する。それらの中でも転倒・転落は生命の危険、骨折等の障害をもたらす。またその治療の過程において容易に筋力低下や関節拘縮などの廃用症候群と呼ばれる2 次障害や合併症などを引き起こし、生活機能の自立度低下につながったりする。 そのため介護現場では、転倒・転落を防止するリスクマネジメントへの取り組みがなされるようになった。リスクマネジメントにおいて事故の内容やその要因についての調査・分析が重要な課題であることは明らかであるが、高齢者の安全を守りつつ転倒・転落事故発生の対策を考えていくには、発生の傾向と要因の検討は必要不可欠である。 特別養護老人ホーム内(以下、施設と略する)の転倒・転落の特徴、事故発生に関連する諸要因の分析は、国内の先行研究においても充分に行われているとはいい難い。そこで本研究では、A 市内の特別養護老人ホーム4 施設の過去2 年間の事故報告書を用いて、先行研究を参考にして集計を行った。そのデータを基にデータベースを作成して転倒・転落事故の特徴や、事故発生に関連する要因の分析を行った。今回筆者は、その調査結果の中から高齢者本人の直接的な行動、特に排泄時の転倒・転落事故が多いということに着目し、考察を加えることにした。
著者
佐藤 丈博 樋口 雄紀 竹下 秀俊 岡本 聡 山中 直明 大木 英司
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J97-B, no.7, pp.474-485, 2014-07-01

インターネットやモバイルネットワークにおけるトラヒック量は近年急激な増加を見せており,伝送容量拡大によるネットワーク機器の消費電力増大が問題となっている.そこで,複数のネットワークサービスを単一物理網上で提供し,トラヒック収容効率の向上及び省電力化を実現する次世代光メトロ・アクセス融合型ネットワーク「エラスティック光アグリゲーションネットワーク(EλAN)」が提案されている.EλANでは局側装置であるOLTがプログラマビリティをもち,論理OLTを異なる物理OLT間や局舎間で自由にマイグレーションすることが可能になる.本論文では,EλANの省電力化を目的とした論理OLTのマイグレーション手法を提案する.具体的には,稼働する物理OLT数が最小となる論理OLTの配置,及びその配置に至るマイグレーション手順を得ることを目的とした最適化問題を線形計画問題としてモデル化し,物理OLTのスリープ率及びマイグレーションの実行回数について性能評価を行った結果を述べる.また,EλANのプロトタイプシステム上で行った論理OLTのマイグレーションの基本動作の確認について報告する.
著者
福田賢一郎 濱崎雅弘 福原知宏 藤井亮嗣 堀田美晴 西村拓一
雑誌
研究報告知能システム(ICS)
巻号頁・発行日
vol.2014-ICS-176, no.9, pp.1-6, 2014-07-15

介護の現場では記録作成業務の負荷が高いことが指摘されおり,特に被介護者の家族からの依頼や従業員の気付きなどサービス品質向上に不可欠な 「申し送り」 がノートなど紙面で行われている.我々は実践コミュニティからの要望に基づきながら,実践コミュニティ主体での申し送り業務支援システムの開発をしている.本発表では我々の提案システムが介護現場へ本格導入された事例を報告するとともに,従来のノートを用いた紙面による申し送りをすべて廃止し提案システムだけで運用した申し送り業務のデータと従来の紙面によるものとを比較した結果を考察する.