著者
深尾 篤嗣 高松 順太 河合 俊雄 宮内 昭 花房 俊昭
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.42-50, 2013-01-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
35
被引用文献数
1

甲状腺疾患の心身医療においては,患者ごとに「ホルモンが先か?ストレスが先か?」を念頭に置きながら診療することが重要である.バセドウ病,橋本病ともに精神変調を合併しやすいことが知られている.今日,精神病像として多いのはともにうつ状態,神経症であり,甲状腺機能のみならず多様な心理社会的要因が影響している.近年,多くの研究により,バセドウ病の発症にライフイベントや日常いらだち事が関与していることが確認されている.一方,本症の治療経過に影響する心理社会的要因の研究により,増悪要因としてライフイベント,日常いらだち事,抑うつ,不安,アレキシサイミア,エゴグラムのAC,摂食障害が,反対に改善要因としてエゴグラムのAやFCが見い出されている.
著者
鄭 文輝 朱 澤民 米山 隆一
出版者
公益財団法人 医療科学研究所
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.143-188, 2008 (Released:2010-05-26)
参考文献数
131
被引用文献数
1

1995年に国民医療保険制度(NHI)を導入した事は,台湾の社会保険制度にとって記念碑的出来事であった。台湾は多くの事を日本から学んだが,NHIは,単一支払者制度,総額予算支払制度(總額預算支付制度)を採用し,様々なIT技術を用いている点で,日本の制度を更に進めたものになっている。この論文は,NHI創設以降の,NHIの発展,主要な政策論争,パフォーマンス,将来の課題について,出来る限り公平に論評したものである(1995-2006年)。 過去12年間の結果の評価に関しては,保険の加入率の向上,市民が医療を受ける為の経済的障壁の減少,医療へのアクセスの改善について,はっきりとした成果を残した。コストの抑制に関しては,国民医療費のGDPに占める割合は5.29-6.09%に保たれ,1995-2006年のほとんどの時期,国民医療費は経済成長とほぼ同じ割合で増加した。 主要な改革として2つの方向が示されている。先ず,財政的継続可能性と公平の観点から,単一の加入制度に向けた基金の改革が提案されている。提案の主要素は3つである。(1)加入者をこれ以上分類しない。(2)保険加入者,雇用主,政府の三者間で保険料負担を分担する制度を維持する。(3)年間の保険料を総額予算の交渉とリンクさせ,世帯収入に従って保険料の自己負担分を分担する。更に,医療の質の改善の為に,現在改革に向けたパイロットプロジェクトとして行われている入院患者へのDRGs,外来患者への家庭医総合診療制度,医療の質に基づく支払制度を,総額予算支払制度の土台の上に,調和し,拡張することが提案されている。

2 0 0 0 OA 女性のうつ病

著者
松島 英介 市倉 加奈子
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.53, no.10, pp.984-988, 2017 (Released:2017-10-01)
参考文献数
24

うつ病は男性に比べ女性に多い精神疾患であるが、これには生物学的、心理社会的、人為的要因が関係しているといわれている。また、女性のうつ病の臨床的特徴としては、非定型的症状が多かったり、疼痛などの身体症状や不安を多く訴えたり、精神運動制止や社会的役割における機能障害が目立つ。こうした女性のうつ病患者の薬物治療に際しては、体重増加、高プロラクチン血症、性機能障害などに注意し、Quality of Life(QOL)を念頭においた対応が必要である。
著者
大櫛 陽一 小林 祥泰
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.30, no.6, pp.943-947, 2008 (Released:2009-01-13)
参考文献数
12

1. Introduction Cost of antihypertensive therapy has increased constantly. It accounts 7.8% in total cost of medical treatments in japan. Cost of antihypertension drugs also accounts 12.5% in all kinds of medical drugs. Especially, angiotensin receptor blocker (ARB) is discussed to be set cheaper. We verified the performance of antihypertensive therapy with our cohort study. 2. Methods We performed (1) cohort study to compare blood pressure levels and total disease's mortality in general population, (2) calculated hazard rates of antihypertensive therapy in general population, and (3) odds ratio of hypertension and antihypertensive therapy between general population and patients with stroke. 3. Results The total mortality were in lowest level until SBP/DBP of 160/100 mmHg. The hazard rate in persons who had cure of hypertension and blood pressure more than 180/110 mmHg at the baseline was increased five times than that in persons who did not have the cure. Hypertension did not show risk of stroke for older people over 60 years. Hypertensive therapy was risk of stroke for younger and elder people. 4. Conclusion Severe antihypertensive therapy will cause increase of total mortality and incidence of stroke. The target of the therapy should be restricted to people who have hypertension over 160/100 mmHg without atrial fibrillation. We should not decrease acutely blood pressure beyond 20 mmHg by drugs.
著者
北川 晴雄 鎌滝 哲也
出版者
一般社団法人 日本臨床薬理学会
雑誌
臨床薬理 (ISSN:03881601)
巻号頁・発行日
vol.2, no.3, pp.266-281, 1971-07-30 (Released:2010-06-28)
参考文献数
114
被引用文献数
1 1
著者
桶田 洋明
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.19, no.9, pp.379-385, 2019 (Released:2019-09-25)
参考文献数
7

油彩画における表現技法は,油絵具の性質との関わりが深く,特に媒材である乾性油,揮発性油等の特徴を生かしたものが多い。それらはテンペラ絵具やアクリル絵具には見られない,透明度の高さと可塑性の高さによる技法であり,それぞれ「透層技法」と「アラプリマ」が該当する。今後も油彩画は,油絵具と他の描画材との混合などにより,独創的な表現が可能となることで,さらなる発展が期待できる。
著者
井上 真由美
出版者
社団法人 腐食防食協会
雑誌
防蝕技術 (ISSN:00109355)
巻号頁・発行日
vol.16, no.11, pp.453-462, 1967-11-15 (Released:2009-11-25)
参考文献数
22
著者
鈴木 惟司 前田 尚子
出版者
公益財団法人 山階鳥類研究所
雑誌
山階鳥類学雑誌 (ISSN:13485032)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.77-91, 2014-03-20 (Released:2016-03-25)
参考文献数
41
被引用文献数
1 4

テンナンショウ属Arisaema(サトイモ科Araceae)は良く目立つ鮮紅色の集合果(果実序)を生産する。本属の果実は鳥によって摂食され,その種子は鳥によって散布されると考えられている。しかしテンナンショウ属の種が多数知られている日本でも,その果実食者(種子散布者)についての詳しい調査は未だ行われていない。著者らは,南関東低地で生育するミミガタテンナンショウA. limbatumとカントウマムシグサA. serratumを対象にして,自動撮影カメラを利用してその主要な果実食者を調査した。ミミガタとカントウは植物本体や果実の形状・サイズなど似通っているが,前者では夏季の7–8月に,後者では秋10月以降に鮮紅色の成熟果実が出現するという違いがある。調査は2008–2013年の期間に東京都八王子市内(多摩丘陵)と神奈川県秦野市内(丹沢山麓)の二次林で行われた。なお結果的に資料は概ね後者で得られている。ミミガタの果実を採取した鳥はヒヨドリHypsipetes amaurotis 1種であった。ヒヨドリは本種にとって最重要な果実食者と見なせた。このほかアカネズミApodemus speciosusも果実を採取するのを確認した。本種は果実というより種子を摂食していた。一方,カントウでは8種の鳥が果実食者として記録された。そのうち主要と思われるのはヒヨドリ,ルリビタキTarsiger cyanurus,シロハラTurdus pallidusおよびヤマドリSyrmaticus soemmerringiiの4種であった。他の4種はソウシチョウLeiothrix lutea(外来種),トラツグミZoothera dauma,アカハラT. chrysolaus,ジョウビタキPhoenicurus auroreusである。またそれ以外にアカネズミ属の個体による採食も記録された。
著者
加瀬 友喜 前田 晴良
出版者
PALAEONTOLOGICAL SOCIETY OF JAPAN
雑誌
日本古生物学會報告・紀事 新編 (ISSN:00310204)
巻号頁・発行日
vol.1980, no.118, pp.291-324_1, 1980-06-30 (Released:2010-05-25)
参考文献数
44

千葉県銚子地方の前期白亜紀層より得られた保存良好な軟体動物化石を検討した結果, 10新種を含む11属12種の腹足類化石(Calliostoma? ojii KASE, sp. nov., Ataphrus (s. str.) nipponicus KASE, sp. nov., Hayamia rex KASE, sp. nov., Hayamia choshiensis KASE, sp. nov., Amberleya (Eucyclus) japonica KASE, sp. nov., Oolitica sp., Metriomphalus nagasakiensis KASE, sp. nov., Perissoptera elegans KASE, sp. nov., Pietteia cretacea KASE, sp. nov., Ceratosiphon densestriatus KASE, sp. nov., Vanikoropsis decussata (DESHAYES) and Eriptycha japonica KASE, sp. nov.を識別・鑑定したので記載する。これらの中には, 腹足類の系統分類学上, 注目すべきいくつかの種が含まれている。Hayamia属は殻の外形, 表面装飾, 楕円形のフタを持つこと, および内唇の中央部に凹みを持たない点でNeritopsinae亜科の他の属から区別され, さらにHayamia属のフタはNaticopsis属のそれに類似する。以上の事実は, Hayamia属とNaticopsis属の親密な類縁関係が暗示され, Hayamia属がNeritopsis属とは異なった系列に沿って進化したことを暗示する。Pietteia cretaceaは翼状に伸びた外唇に直交する棘を持つ特異なモミジソデの一種類で, 従来本属はジュラ紀にのみ知られていたが, 今回の報告により, 前期白亜紀にも存在することが明らかになった。Ceratosiphon属はCOSSMANN (1907)以来Tessarolax属のシノニムと見なされてきたが, 両属が独立の属であることを示した。銚子層群産腹足類群の中には, フランスやイギリスのバレミアン, アプチアンあるいはアルビアンのものと共通, あるいは近縁な種が多く含まれている。
著者
伊東 優 今井 公太郎 本間 健太郎
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.428-434, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
10
被引用文献数
1

長崎市の斜面住宅地は急な坂道や階段からなる複雑な街路構造を有しており,そのアクセシビリティの低さによって様々な計画上および生活上の問題を抱えている.そこで本研究は,実際の計画や持続可能なまちづくりのための知見を提供すべく,当該地域におけるアクセシビリティの評価および改良に向けた方法を提示する.具体的にはまず,街路ネットワーク分析により,多様な移動行動における出発点から目標点までの移動時間を計測する.特に地形・年齢階層・移動手段を考慮することで,非高齢者と高齢者の歩行能力の差や,上り・下りといった移動の方向性などの細かな要因が生み出すアクセシビリティの違いを明らかにする.次に高齢化に伴うアクセシビリティの将来的な変化予測を行う.さらに現状の分析で得られた結果をもとにアクセシビリティの改良案を提示し,その有効性を検証する.
著者
落合 哉人 坊農 真弓
出版者
社会言語科学会
雑誌
社会言語科学 (ISSN:13443909)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.67-82, 2021-09-30 (Released:2021-11-16)
参考文献数
22

本稿では,指点字というコミュニケーション手段を用いる盲ろう者の会話において「揺さぶり」という動作が使用されることに着目し,基本的特徴の記述と会話の中での現れ方の検討の二点から使用実態の把握に取り組んだ.基本的特徴の記述に関しては,「揺さぶり」が,(a)長音記号とともに産出される傾向がある,(b)笑いを伴う,(c)直後に順番交替が生じる,という三つの特徴を持つことを示した.このことから当該の動作は,自らの発話に何かを面白く思う気持ちが伴うという感情的態度を示す方法となっていることを指摘した.一方,現れ方の検討に関しては「揺さぶり」を伴う発話が(1)先行する相手の発話の捉え方を示す側面と,(2)何らかの事柄に対する関心の高さを示す側面を持つことを取り上げた.特に事例分析を通して「揺さぶり」の使用が,言語形式とは独立して発話の捉え方を示したり,新たに言及された事柄に対する関心をもとに会話を展開させる余地を作ったりする実践となることを示した.
著者
杉浦 光夫
出版者
一般社団法人 日本数学会
雑誌
数学 (ISSN:0039470X)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.250-263, 1985-07-31 (Released:2008-12-25)
参考文献数
43
著者
佐久間 汐子 清田 義和 中林 智美 高徳 幸男 石上 和男 宮崎 秀夫
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.567-573, 2005-10-30 (Released:2018-03-23)
参考文献数
14
被引用文献数
1

新潟県三島町では, 1歳児を対象に3歳まで6カ月ごとのフッ化物歯面塗布(F塗布)とフッ化物配合歯磨剤(F歯磨剤)の配布による家庭内応用を組み合わせたう蝕予防事業を実施した.本研究は, 本事業の有効性, F塗布とF歯磨剤の受け入れやすさの比較, F歯磨剤の付加的効果について評価することを目的とした.対象児は, 当該町の1990年度〜1998年度の3歳児健康診査, 1997年度〜2001年度就学児健康診査の受診児である.う蝕有病者率は有意に低下し, 3歳児では事業開始前の42〜47%から17%に, 就学児では同様に73%から51%に低下した.また, 就学児を個人別に分類すると, 事業参加群の1.54本に対し, ほかの2群は3本以上であった.受け入れやすさについては, F塗布の定期受療児の割合83.6%に対し, F歯磨剤を1日1回使用した幼児の割合は55.2%であった.F塗布の定期受療児でF歯磨剤の「1日1回使用」群と「使用せず」群との3歳児および就学児の有病者率の比較は, 就学児で有意差が認められた.さらに, 就学児のdf歯数を目的変数とする段階式重回帰分析で, 有意な説明変数は「1〜3歳までF歯磨剤を使用せず」のみであった.以上より, F歯磨剤の付加的効果が示唆された.乳歯う蝕予防対策としては, 受け入れやすさを考慮すると, 6カ月ごとのF塗布を基本にF歯磨剤の使用を付随する形で指導することが望ましいと考えられる.
著者
大住 あづさ GASSELIN Pierre
出版者
日本農業経済学会
雑誌
農業経済研究 (ISSN:03873234)
巻号頁・発行日
vol.93, no.1, pp.83-88, 2021-06-25 (Released:2021-09-25)
参考文献数
9

This paper aims to study conditions of the early stage of collective action in the Val Llech project inspired by Biovallée de la Drôme, a territorial approach to ecological transitions. From interviews with key actors regarding their motivations and participation in the project, we examined which parts of their perception of the issues to be addressed in the associations are categorized into convergence, divergence, and contradictions. We subsequently identified how convergence has underpinned Val Llech’s early collective action. We further examined the group’s strengths and issues to be solved for the stabilization and future development of collective action.
著者
阿保 勝之 樽谷 賢治 原田 和弘 宮原 一隆 中山 哲厳 八木 宏
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.I_1116-I_1120, 2012 (Released:2012-11-15)
参考文献数
13
被引用文献数
2

The production of Nori (Pyropia yezoensis) in the Seto Inland Sea is getting lower because of the bleaching of Nori which is caused by nutrient deficiency. In this study, we examined effects of nutrient discharge on Nori aquaculture area in Kako River estuary. In the aquaculture area, nutrient discharge from the river, sewage treatment plant and industrial effluent sustained the Nori production in the winter season. A numerical simulation estimated the behavior of the riverine water and revealed the effects of nutrient discharge on the nutrient environment of the aquaculture area. We also evaluated the effects of moderate operation of the sewage treatment plant on the nutrient environments. We demonstrated the increase of nutrient flux in the aquaculture area and figured out the effective area of the moderate operation.
著者
大和 浩 加藤 尊秋 姜 英 清水 大地 朝長 諒 藤本 俊樹 山本 希望
出版者
The University of Occupational and Environmental Health, Japan
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.335-338, 2020-12-01 (Released:2020-12-01)
参考文献数
5
被引用文献数
3

Secondhand smoke (SHS) caused by smoking on apartment verandas is a severe social problem in Japan. If someone smokes on a veranda, SHS drifts into other residents’ rooms through their windows. Most non-smoking residents are annoyed by this, but they do not confront the person responsible. To study this situation, we burned cigarettes and measured the spread of SHS in terms of fine particle (PM2.5) concentrations. Cigarette smoke generated on a lower veranda spread to upper and horizontal neighboring verandas and into rooms through windows, reaching a maximum concentration of 139 μg/m3. The Health Promotion Act that was revised in 2018 and enacted in 2019–2020 requires all smokers to avoid producing SHS, even outdoors and at home. It is expected that combining the measurement of SHS from verandas to other verandas and rooms with the revised Health Promotion Act could create a national consensus on “no smoking on apartment verandas.”