著者
立川 明
出版者
国際基督教大学
雑誌
国際基督教大学学報. I-A, 教育研究 (ISSN:04523318)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.11-22, 2005-03

戦後日本の自殺率は,1958年前後および2000年前後と,2度にわたるピークを画している.前者の主因は当時15歳から24歳であぅた若者の自殺の激増に求められ,最近のピークは55歳から64歳までの中・高年齢層の自殺め増加により説明できる.2つのピークは共に,1936年から1945年の間に生まれた同じ世代の自殺から生じている.それぞれ彼らの社会への参入時と,社会からの引退時に対応している.本論では,2つのピークに共通する原因として,戦後教育改革期(1945-1955)における民主的な教育内容と,保守的な日本社会との対立に注目する.教え子を再び戦場に送らないとの決意のもと,改革期の教師の多くは「個人の尊厳」を強調する民主教育を展開した.しかし彼らの意図とは裏腹に,そうした教育は今度は教え子を,大量にしかも生涯にわたって,アノミックな自殺へと追いやる結果となったと推論されるのである.
著者
新本 史斉 ヒンターエーダー=エムデ フランツ
出版者
津田塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

「長編小説」の枠からはみ出し、最終的には、掌大の紙片数百枚に鉛筆書きの極小文字で書きつけられるまでに至るローベルト・ヴァルザーの散文作品は、現代ドイツ語文学屈指の、高度な複雑性を抱えた、過激な文学実験となっている。本研究においては、ヴァルザーのテクストに潜在している批評可能性を、英・仏・日本語の翻訳テクストの比較分析、諸言語への翻訳者との討論、さらには、これまで未邦訳であった作品の日本語への翻訳実践を通じて明らかにしている。
著者
吉森 和宏
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.151-162, 1999-04-30
被引用文献数
1

千葉県内の市町村に勤務する歯科衛生士が多様化していく歯科保健業務を担えるようになるため,現在の業務内容,不足している知識および技能などの研修ニーズを調査分析したところ,次のような結果を得た。1.現在の業務内容は,母子保健サービスについては,すべての歯科衛生士が従事しており,次いで,頻度の高い順に成人保健サービス,訪問歯科保健サービス,事業計画および予算案の策定,老人保健サービス,歯科保健に関する計画の策定・評価,学校保健サービスおよび心身障害児(者)保健サービスなどであった。2.不足している知識および技能について,1年未満の歯科衛生士は業務全般にわたり不足していると感じているが,勤務年数が長くなるにつれ,そう感じる者の割合が減少した。しかしながら,健康づくり推進協議会等の運営方針案の策定および運営,歯科保健関連情報等の収集および提供,心身障害児(者)保健サービス,訪問歯科保健サービスについては,勤務年数が長い歯科衛生士でも知識および技能が不足していると感じていた。3.不足している知識や技能の習得方法は,研修会への参加によるが最も多く,次いで,専門家向け雑誌の購読,他職(保健婦等)の同僚,同僚の歯科衛生士,他の市町村の歯科衛生士から情報を得た,歯科衛生士会に加入した等であった。以上の結果から,市町村に勤務する歯科衛生士の制度上の位置付けを明確化し,複数配置等マンパワー増強が必要と考えられる。また就業している歯科衛生士のさらなる知識および技能の向上が求められており,そのための研修ニーズに応えられる諸対策が実施されなければならない。
著者
Aygul Dogan Celik Yahya Celik Zerrin Yulugkural Kemal Balci Ufuk Utku
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
Internal Medicine (ISSN:09182918)
巻号頁・発行日
vol.47, no.23, pp.2091-2093, 2008 (Released:2008-12-01)
参考文献数
6
被引用文献数
3 6

Brucellosis is a zoonosis that is transmissible to humans. It is a disease with multi-systemic involvement caused by the genus Brucella. Neurological complications, including meningitis, meningo-encephalitis, myelitis-radiculoneuritis, brain abscess, epidural abscess and meningo-vascular syndromes, are rarely encountered. We present a patient presenting with acute onset myositis. This kind of presentation has not previously been reported in the English language literature. We conclude that the diagnosis of neuro-brucellosis should be considered in patients presenting with muscle weakness.
著者
高橋 由光 宮木 幸一 新保 卓郎 中山 健夫
出版者
Japan Association for Medical Informatics
雑誌
医療情報学 = Japan journal of medical informatics (ISSN:02898055)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.83-89, 2007-05-30
被引用文献数
2

[背景]アスベスト問題に関する新聞報道を定量的に分析するため,ネットワーク分析を利用したテキスト・マイニングを行い有用性を検討した.<br/> [方法]アスベストまたは石綿を含む 1945 ~ 2005 年朝日新聞見出しを対象とし,ネットワーク分析を利用したテキスト・マイニングを行った.<br/> [結果]1987 年頃と 2005 年に多かった.1987 年は 36 記事あり,汚染(40%)が高く出現し,除去と運動(26%)や除去と学校(11%)は同時に出現する単語であった.2005 年は 293 記事あり,人と死亡(9%),危険と人(8%)が多く同時に出現した.1987 年は厚生省や環境庁が関わる環境汚染に関する部分と,文部省が関わる学校からのアスベスト除去運動に関する部分があるのに対し,2005 年は人々の死亡が中心となり厚労省が関わり補償など対応策がとられた.<br/> [結論]ネットワーク分析を利用したテキスト・マイニングは情報を定量的に把握し,視覚化することを可能とした.
著者
坂本 真里子 河野 一世 熊谷 まゆみ 赤野 裕文 畑江 敬子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.427-434, 2007-12-20
被引用文献数
4

硬度の異なる3種の水,南アルプスの天然水,エビアン,コントレックスを用いて,かつお節だし,野菜スープ,牛肉のスープストックを調製した。総窒素,遊離アミノ酸,イノシン酸,グアニル酸,有機酸の分析および官能評価を行い,水の違いを比較した。かつお節だしでは用いた水の種類によって,遊離アミノ酸のパターンが異なっていた。官能評価では総合的な好ましさに有意の差は無かったが,エビアンと南アルプスの天然水が好まれる傾向にあった。野菜スープでは南アルプスの天然水に殆どの遊離アミノ酸が多く,次いでエビアンに多かった。官能評価ではこの両者が有意に好まれた。牛肉スープストックではコントレックスがアクを最も多く分離してスープは清澄であった。遊離アミノ酸合計量はエビアンに最も多く,ついでコントレックスであった。エビアンはイノシン酸,グアニル酸も有意に多かった。官能評価で最も好まれたのはエビアンであった。硬度の異なる水で3種の煮出し汁を調製すると,溶出成分に差があった。煮出し汁の好ましさは溶出成分だけでなく,水そのものの味も影響することから,溶出成分と水の味との兼ね合いで好ましさが決まるといえる。
著者
久保田 紀久枝
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

食品の風味を増強し嗜好性を高める効果を持つ匂い物質を探索した。風味増強のために使われる香辛料のにおい成分やかつお節とコンブを使う合わせだしにおけるコンブのにおい成分に着目した。コブミカン葉を加えたチキンスープではコブミカンの加熱生成香気成分が風味増強に大きく関与することが示され、またバジルの香りには、トマトスープの風味に影響する成分が存在することを確認した。合わせだしでは、味成分のうまみ相乗効果だけでなくコンブの香りも風味増強に関与することが分かった。
著者
山田 潤 五十嵐 圭里 松田 秀喜
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.134-137, 2008-04-20
被引用文献数
8

荒節だしと枯節だしのラジカル消去活性をDPPHラジカルを用いて比較した。かつお節の抽出温度・時間の違いによる検討では,100℃30分の抽出条件が荒節枯節ともに最も高いラジカル消去活性を示した。また,どの抽出条件においても荒節だしは枯節だしの1.7-1.8倍のラジカル消去活性を示していた。porapaq Qを用い香気成分の分離を行ったところ,吸着画分では荒節だしは枯節だしの4.4倍のラジカル消去活性を有していた。このラジカル消去活性の違いは主に,フェノール化合物の含有量に由来しており,含有されていたフェノール化合物のうち本研究で初めて,2つのフェノール成分の活性を明らかにした。非吸着画分の活性は,荒節だしと枯節だしで同等のラジカル消去活性を有していた。
著者
斉藤 久美子 田川 雅代 長谷川 篤彦
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.65, no.7, pp.797-799, 2003-07-25
被引用文献数
2 11

人の梅毒検査用RPRテストが兎梅毒の診断にも有用であることが報告されていることから,日本の伴侶兎について兎梅毒の血清学的調査を行った。2001年4月から2002年3月の1年間に来院した兎で,梅毒の症状も発症歴もなく,交尾歴のない単独飼育の伴侶兎100頭に対してRPRテストを行ったところ,35例が陽性,65例が陰性であった。伴侶兎における本症予防のためにはRPRテストを行って繁殖兎を選別する必要性があるものと思われた。
著者
箱嶋 敏雄
出版者
奈良先端科学技術大学院大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

1) ERMタンパク質とMT1-MMPとの相互作用昨年度に決定したMT1-MMPの細胞内領域とFERMドメインとの複合体構造に基づいて,ビオチン化したペプチドを用いた結合領域の限定や厳密で定量的な結合実験を,BIAcoreを用い手検討して論文作成の準備を進めた.2) Tiam1/Tiam2の結晶構造Tiam1/Tiam2のPHCCExドメインの結晶構造に基づいて,結合タンパク質であるCD44、Par3,JIP2,あるいはephrin B1,2,3やNMDA受容体との相互作用部位の特定の結合実験を行った.その結果,酸性残基に富む2つの配列モチーフを発見した.また,PHCCExドメイン表面の塩基性残基の一連の変異実験をして,CD44などの標的タンパク質の結合部位を同定した.更に,培養細胞を用いたin vivoでの実験で,相互作用の重要性を確認した.これらの成果をまとめて論文を作成して出版した.3) Tiam1/Tiam2-CD44、-Par3,-JlP2複合体の結晶化と構造解析上記の結晶構造研究に用いたTiam1やTiam2のPHCCExドメインと,標的タンパク質であるCD44、Par3,JIP2,あるいはephrin B1,2,3との複合体の結晶化を試みた.タンパク質比,タンパク質濃度,温度等も変化させながら,現有ロボット(HYDRA-II)を使って大規模なスクリーニングを試みたが,構造解析に用いられる結晶は得られなかった.
著者
川口 春馬 倪 恨美
出版者
慶應義塾大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2002

研究は、弱酸型モノマーと弱塩基型モノマー、骨格モノマー、架橋用モノマーの沈殿共重合により、pH応答性ヒドロゲル微粒子を作製し、粒子の物性のpH応答性を確認し、この粒子に担持された低分子物質をpHによって放出制御することを目的とするものである。pH応答性ヒドロゲル粒子は、受け入れ研究者(川口)が以前研究したもの(Kamijo, Y., et al., Angew.Macromol.Chem.,240,187(1996))であるが、Ni博士は川口らが提唱している重合機構に異議を唱え、同君独自のメカニズムを考案した。それによれば、系は重合が始まる以前から不均一系であり、存在する超微小液滴が重合粒子の核となるであろうということである。Ni博士はこれらの成果を二報の論文^*にまとめた。得られた両性ハイドロゲル粒子を低分子化合物の担体として用いその放出をpHで制御することの可能性を探るのが後半のテーマであった。まず、ハイドロゲル粒子の体積のpH応答性を調べるため、HClとKOHとでpHを調整した系で動的光散乱法により水中での粒径を求めた。弱酸性モノマーとしてメタクリル酸(MAc)、弱塩基性モノマーとしてジメチルアミノエチルメタクリレー(DMAMA)を等モル用いて得られた粒子はpH6付近で粒径が最小となり、そのときの粒径は、低pHあるいは高pHにおける粒径の約1/3であった。粒径が最小となるpHはDMAEMA/MAcによって変化させることができた。ただし、粒径はpH以外にイオン種、イオン強度にも依存した。こうして、希望するpH応答性を持ったハイドロゲル粒子を設計するための指針をまとめることができた。^*2報ともNi, H.-M., Kawaguchi, H., J.Polymer Sci., A.Polym.Chem.,
著者
橋本 祐一 石川 稔 青山 洋史 杉田 和幸 小林 久芳 谷内出 友美 松本 洋太郎 三澤 隆史
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

タンパク質の機能や存在状態(細胞内での局在・分布や安定性・寿命)はその3次構造に依存している。したがって、特定のタンパク質の3次構造の制御は、その機能や存在状態の制御に直結する。また、特定のタンパク質の3次構造の異常に基づく多くの難治性疾患が存在する。本研究では、(1)タンパク質の3次構造を制御することによって作用を発揮する各種核内受容体リガンドの創製、(2)タンパク質の異常な3次構造に基づく細胞内局在異常を修正する化合物群の創製、ならびに(3)特定のタンパク質の生細胞内での分解を誘導する化合物群の創製、に成功するとともに、(4)関わる分子設計として共通骨格を利用する手法を提案した。
著者
Takeichi Masato
巻号頁・発行日
1987-06-11

報告番号: 乙08424 ; 学位授与年月日: 1987-06-11 ; 学位の種別: 論文博士 ; 学位の種類: 工学博士 ; 学位記番号: 第8424号 ; 研究科・専攻: 工学系研究科情報工学専攻
著者
岸本 千佳司
出版者
(財)国際東アジア研究センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究の課題は、(1)IT産業(特に半導体産業)で近年成長著しい台湾と中国に注目し、地域の産業クラスターの観点から、その成長のダイナミズムを分析する(具体的には、台湾・新竹-台北エリアと中国・長江デルタ地域、および派生的研究として日本・九州エリアに注目した)、(2)さらに地域クラスターの発展には、実は、地域外(海外も含む)のアクターとのリンケージが重要な影響を及ぼすと指摘する近年の研究動向を踏まえ、両国(地域)の半導体産業クラスターの分析に、外資系企業や海外パートナーとのリンケージも視野に納めることである。成果としては、第1に、上述の2つのエリア(および九州エリア)に関して、半導体産業クラスターの中の分業関係、地域の事業環境、当該地域の企業の経営の特徴等を現地調査の結果を踏まえ詳細に分析した。第2に、各エリアのクラスターの発展に、外的アクターが様々な形で関与し影響を及ぼしていること(例えば、外資系企業として、市場・顧客として、技術提携・交流のパートナーとして、先端技術・製品コンセプトのソースとして、高度な装置・部材のサプライヤーとして)、さらには、台湾・新竹-台北エリアのようにダイナミックなクラスターほど、地域内部の企業・関連機関間リンケージの高度化を外部(特に海外アクターとの)リンケージで補完し連動させるグローバルな戦略性をもっていることを指摘した。その点、中国・長江デルタ地域は台湾に似た方向に発展しつつも、環境が未整備で外資に依存する部分が大きい。日本・九州は先発組みであるにもかかわらずやや静態的で、地域内のリンケージも国際リンケージも未発達であることが判明した。以上、一定の成果を収めつつも、海外現地調査に伴う困難と半導体産業の具体的ビジネス状況への理解不足から、不徹底な部分もある。特に、上述の2(もしくは3)地域が、如何に競合・分業関係を形成していくか、その過程で、競争力の源泉となる地域特有の制度・政策・産業構造・ビジネスモデルがどのように構築・再編されていくかという地域間の国際的相互作用を踏まえた動態的分析が残された重要課題である。
著者
平川 均 多和田 眞 奥村 隆平 家森 信善 根本 二郎 小川 光 山田 基成 中屋 信彦 奥田 隆明 佐藤 泰裕 森杉 雅史 瀧井 貞行 蔡 大鵬 崔 龍浩 徐 正解 厳 昌玉 陳 龍炳 蘇 顕揚 劉 慶瑞 宋 磊 李 勝蘭
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2006

急速な東アジアにおける発展と国際競争力の源泉を産業集積と結びつけて論じた。その結果は一般的通念とされる低賃金に基づく単なる産業の発展を超えた側面の発見であり、東アジア地域のイノベーションの持つ役割である。独自のアンケート調査を実施した。日中韓台、ベトナムなどの海外の主要な研究機関の研究者との研究ネットワークの構築に成功し、国際会議も北京、南京、名古屋、ハノイで開催した。学術刊行物として、日本語、中国語、韓国語の図書の公刊、英語での学術雑誌への発表も行った。
著者
定永 靖宗 坂東 博 竹中 規訓
出版者
大阪府立大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

平成20年度では、都市大気中の有機硝酸エステルの総量(ANs)を求めることを目的として、熱分解レーザー誘起蛍光法(TD-LIF)を用いて、有機硝酸エステルの総量を測定するシステムの構築を行なった。都市大気中の有機硝酸エステルの総量(ANs)を求めることは、都市域での有機硝酸エステルの濃度の目安となる情報を与える点で有益である。熱分解レーザー誘起蛍光法とは、試料大気に350℃程度の熱をかけることで、有機硝酸エステルとパーオキシアシルナイトレート(PANs)が分解し、NO_2を生成する。そのNO_2をレーザー誘起蛍光法で測定することにより、NO_2+PANs+ANsの濃度が測定できる。一方、試料大気に150℃程度の熱をかけるとPANsのみが熱分解するので、この場合、NO_2+PANsの濃度が求まる。両者の差分をとることにより、ANsの濃度が求まる。まず、レーザー誘起蛍光法によるNO_2測定装置の構築および、装置の最適化を行なった。その結果、本装置でのNO_2の検出下限がS/N=2,積算時間1分で50pptvとなり、実大気測定をするにあたり十分な性能が得られた。また、石英管とヒーター、SSRを用いて、自動でANsの測定を行なうためのシステムを構築し、1分毎にNO_2+PANs+ANsライン、NO_2+PANsラインを自動で切り替えるようにすることに成功した。
著者
三好登和子 今橋正征 鳥居 鉄也
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.113-128, 1988-07

南Victoria LandのDry Valley地域には多くの塩湖が点在する。それら塩湖水中のストロンチウム濃度を測定したところ, 0.0-1630mg/lであった。そこでそれらのSr/Ca比を求めたところ, 0.0-4.56×(10)^<-2>の範囲で, 内陸の塩湖水のSr/Ca比はRoss海に近い塩湖水の比よりも低いことが明らかになった。Dry Valley地域の塩湖の塩起源をSr/Ca比をもとに, 次のように要約した。1)Fryxell湖の塩類は海水に起因する。すなわち, 湖水のSr/Ca比, 約3-4×(10)^<-2>, はhaliteが蒸発析出した海水の比に似た値である。現在の塩水は, 塩分が1/5ほどであるので, 蒸発した海水と氷河融水との混合により形成したと思われる。Bonney湖の塩類もまたFryxell湖と同じような変化を経て生成したと考えられる。2)Vanda湖は, 岩石風化で生じた塩類や海水起源の塩類析出物を含んでいる氷河融水と, Onyx河川水で形成された。谷中に分布するcalciteやgypsumのような塩類析出物は, T. G. THOMPSONとK. H. NELSON (Am. J. Sci., 254,227,1956)により行われた低温下での凍結濃縮で海水から生成されたと思われる。3)Wright谷上流域のLabyrinth地帯の湖沼水は, 氷河融水や降雪による風送塩の溶解や, 玄武岩といくぶん反応した水から生じたと考えられる。
著者
河田 剛毅
出版者
長岡工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

保冷コンテナを改造した貯雪庫に約4ヶ月間雪を保存した後に、その底部に水を流して冷熱を取り出す実験を行った。その結果、(1)雪を長期保存することでその強度が増すため、貯雪底部の融解が進んでも貯雪の崩れや割れが起こりにくくなり、水の冷却性能が低下すること、(2)貯雪に崩れや割れが発生すると、水の冷却度合いが急に増加すること、(3)水の冷却性能は貯雪庫内の水位が高いほどが高いが、水位10cm程度で飽和することがわかった。