著者
三田 勝己 宮治 眞 赤滝 久美
出版者
愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2002

「重症心身障害児」(以下,重症児と略す)とは重度の知的障害と重度の肢体不自由が重複した人たちである。全国の重症児数は約36,000名と推計されており,そのうち2/3の約24,000名が居宅で家族によってケアされている。本研究は,重症児施設と居宅を通信回線で接続し,在宅ケアを支援するITシステムを開発し,その有用性を実証することを目指した。本年度は,在宅重症児の実態調査結果を踏まえて在宅支援システムの機能を決定し,これを実現できるシステムのハードおよびソフト開発を行い,さらに,主として技術的問題を明らかにするための試験運用を行った。本在宅支援システムは以下の7つの機能から構成された:音声情報機能,画像情報機能,バイタル情報機能,モニタリング機能,遠隔操作機能,自動収集機能,データベース機能。試験運用フィールドにはIT利用の有効性が高い地域として,北海道旭川市にある北海道療育園(重症児施設)が在宅支援を行っている地域を選んだ。運用のプロトコルとしては,居宅システムのみでのバイタル測定を1日1回実施した。測定項目は血中酸素飽和度,脈拍数,呼吸数,体温,血圧,心電図の6項目であった。これらは6時間毎にセンターシステムから自動収集された。また,週1回,センター(北海道療育園)からの接続により医師の電話診療を行った。その内容は健康状態や疾患の診察,日々測定されたバイタルデータに関する診断,生活に関する指導・相談を行った。以下,明らかとなった技術的問題の概要を述べる。(1)もっとも大きな問題はバイタルデータの自動収集機能がほとんど稼働せず,また,電話診療が時々できないことがあった。(2)居宅システムの電源ケーブル,接続ケーブルが多く,居宅内でのトラブルの原因になりやすいとの意見がでた。(3)ISDN回線が有線接続のため,特に居宅システムを居室間ですら移動できなかった。無線LANや携帯電話を利用したモバイル化の必要性が示唆された。(4)居宅からセンター(重症児施設)へ接続するためのセンター側の受け入れ体制がなく,特に急変時を考えると是非とも整備を要請される課題であった。
著者
渡邉 一輝 林 海 山下 勝巳
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. CAS, 回路とシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.102, no.572, pp.7-12, 2003-01-15

ディジタル通信において符号間干渉を除去する等化器の1つにRBF等化器がある.RBF等化器はニューラルネットの構造を模倣することにより精度の良い等化結果が得られるものの,センターや重みの決定に複雑な評価関数を解く,または多くの計算量を要するという欠点がある.本論文ではRSC(received signal constellation)がそれぞれ重複した値を持たないチャネルにおいて,等化器の特徴を用いたクラスターマップにより,簡単な整列アルゴリズムと教師なしLMSアルゴリズムから等化器を設計できるブラインド法を提案する.まず,チャネル同定なしにRBFセンターを決定するため,教師なし学習のクラスタリングアルゴリズムであるneural-gasアルゴリズムを用いる.更に等化器の次数,チャネルの次数を基にクラスターマップを作成し,そのマップの特徴からセンターを分類する.このセンターを分類することでRBF等化器における重みの初期値を決定できる.従って,この値を基に教師なしLMSアルゴリズムによって重みを調整することにより多くの計算量を要せずRBF等比器を設計できる.
著者
諏訪部 真 白畑 知彦
出版者
静岡大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

本研究・調査で、1において大学入試センター「外国語」(英語)」試験にリスニング・テストの導入が種々の面から検討の上、望ましいことを述べ、2では実際の導入の際にある問題点を明らかにした。1.大学入試センター「外国語」(英語)」リスニング・テスト導入に関して。1.1大学入試センター「外国語」(英語)」試験の目的、特質など。(平成8年度(1996)の英語の受験者数は530,734人であり、センター試験受験者の92%が受験する科目である。因みに他の外国語ドイツ語、フランス語の平成8年度の受験者はそれぞれ197人212人である。1.2リスニング・テスト導入に対する諸団体の要望(文部省協力者会議も含む)。1.3.新高等学校学習指導要領外国語(英語)・(評価としての)生徒指導要録外国語(英語)、特に新教科オーラル・コミュニケーションA/B/C/とリスニング・テストとの関係の詳説。1.4「外国語」(英語)」試験に対する大学入試センターの対応1.5リスニング・テスト導入の背景にある諸問題。(1)全国の公立高校入試でのリスニング・テスト(ヒヤリング・テスト)の実施状況、テスト内容の調査。(2)新教科オーラル・コミュニケーションA、同Bに使用される文部省検定教科書の採用数。(3)教室でのオーラル・コミュニケーション活動に大きな影響を与えている外国人教師(ALT)とティーム・ティーチング。(4)現在国内で実施されている諸資格テストの調査(英語検定、TOEFL、TOEIC、国連英研)。(5)大学入試センター「外国語」(英語)」試験と国際バカロレア、アビトウア試験(ドイツ)、大学入学資格検定試験の各英語試験の内容比較。2.大学入試センター「外国語」(英語)」リスニング・テストを実際に行う際の問題点として。2.1大教室(階段教室)での音源1(普通テープコーダー)による大学院生・学部生(英語専攻)を対象に、TOEFLレベルのテストを実施、座席位置による成績の違い、受験者のアン-ケ-トの実施。2.2やや大きい教室で大学1年生を対象に音源1での日本人向けのリスニング・テストを実施し、座席位置、問題文の繰り返しによる成績の違いを調査。2.3大学入試センター「外国語」(英語)リスニング・テスト調査検討委員会」のモデル大学(静岡大他3大学)での実地調査の問題の作成・録音と、静岡大学(100名の大学生)でのテスト実施(大教室及び小教室、スピーカーによる一斉聴取及び各自のCDプレーヤーによる)と結果の討議。2.4リスニング・テスト(パイロット)問題の作成と望ましいリスニング・テストの提案。
著者
那須野 三津子
出版者
筑波大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2002

外国において特殊教育を必要とする児童生徒の教育の機会均等化を促進するために求められる実現性のある解決策や対策を提言するため、今年度は以下の研究を行った。障害児童生徒の教育機会均等化を外国において実行可能とさせる条件を総合的に考察するために、いち早く1982年より障害のある児童生徒を受けいれ、その後も障害の種別や程度の異なる児童生徒の受け入れ体制を展開してきたシンガポール日本人学校を取りあげた。具体的には11月24日から12月5日の間にシンガポール日本人学校(クレメンティ校小学部・チャンギ校小学部・中学部)を訪問し、管理職及び養護教育担当者に養護教育の現状と課題について聞き取り調査を行った。また、プライバシーの保護を厳守することを条件に、養護教育展開の経緯を示す資料の閲覧を行った。さらに、12月から2月の間に、養護教育展開過程の経緯に記録されていない初期の時期について、当時の保護者および教育関係者を対象に聞き取り調査を実施した。その際、氏名の公表の可否について尋ねた。特殊教育のはじまりは20年ほど前に遡るため、当時の特殊教育関係者の記憶があいまいな点もあった。そのため、聞き取り調査においては、まず文書で残された記録の有無を尋ねた。(現在、執筆中)また、アメリカ合衆国と国内において他言語環境下にある障害児童生徒については、前年度の調査結果を基に、分析、比較、検討を行っている。
著者
松田 佳久 佐藤 正樹 中村 尚 高橋 正明
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1995

異常気象の力学の問題は複雑であり、様々な側面をもっている。本研究では、この問題を、中高緯度でのロスビー波の振る舞い、熱帯の40日振動、及び熱帯地方と中高緯度の相互作用という観点から捉え、緊密な協力の下にそれぞれの研究を行った。中村らは,東西非一様な基本流中を3次元的に伝播する定常ロスビー波束に伴う活動度フラックスの定式化に初めて成功した.それをブロッキング時に観測された偏差場に適用し,大陸上で冬季形成されるブロッキングが上流側から入射する定常ロスビー波束の「局所的破砕」に伴い増幅する事を確認した.また,等温位面データの解析で,7月にオホーツク海高気圧上空のブロッキングが同様の機構で増幅する事も確認した.松田らはこの解析結果に基づき、東西非一様な基本流中をロスビー波がどのように伝播するかを、数値実験により研究した。計算には、球面上の順圧モデルを用いた。数値実験の結果は、上流側から入射する定常ロスビー波束がジェットの出口付近で停滞し、その振幅が増幅する事を示した。この計算結果は上のデータ解析結果と興味深い対応を示している。高橋らは熱帯の40日振動に関して,年々変動の立場から解析的研究をおこなった.エルニーニョ時の40日振動はノーマルな状態にくらべ,振幅が強化され,また40日にともなうクラスターは熱帯東太平洋まで進むことがわかった.佐藤らは低緯度循環と中緯度循環の相互作用を子午面循環と角運動量輸送の観点から調べた角運動量バランスにより,熱帯の熱源が十分強い時には中緯度の傾圧帯の活動は熱帯の循環に支配される.一方,中緯度から低緯度に及ぼす影響についても,傾圧帯の活動が熱帯の積雲活動に及ぼす効果として現れる.
著者
〓 春明 越田 淳一 森山 典子 王 暁丹 有働 武三 井上 興一 染谷 孝
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.76, no.6, pp.865-874, 2005-12-05
被引用文献数
10

九州各地の堆肥化施設23カ所から,牛糞,鶏糞,生ゴミおよび下水汚泥を原料とした堆肥計29点を採取し,糞便汚染指標菌(大腸菌群,大腸菌およびサルモネラ菌)について培養検査した。1)これら堆肥試料のCECは31.4〜79.0cmol_ckg^<-1>の範囲(平均55.4cmol_ckg^<-1>)で,炭素率(C/N比)は7.6〜25.4の範囲(平均15.3)にあり,他の性状と合わせ,多くが完熟堆肥であると判断された。2)デスオキシコーレイト寒天培地により大腸菌群が29点中11点(38%)から検出され10^2〜10^6cfug^<-1> dry matterの菌数レベルであった。大腸菌群陽性堆肥試料4点のうち3点からの分離株は,大腸菌群に属するE. coli, E. vulneris, Pantoea sp., Buttiauxella agrestisと同定された。しかし,Serratia marcescensのみが分離された試料が1点,本菌とE. coliが分離された試料が1点あった。大腸菌群には属さない腸内細菌科の細菌であるS. marcescensは赤色色素を生産するため,分離培地上で大腸菌群の赤いコロニーと誤認されたものと推察された。一方,得られたE. coli5株は,病原大腸菌免疫血清試験ですべて陰性であった。3)堆肥試料12点についてクロモカルト・コリフォーム培地による大腸菌の直接培養検査およびMLCB寒天培地によるサルモネラ菌の検出を試みた結果,大腸菌はいずれの試料からも検出されず,サルモネラ菌は2点(17%)から検出され,その菌数は10^3cfug^<-1> dry matterのレベルにあった。4)堆肥原料(牛糞,鶏糞,生ゴミ等)8点のうち大腸菌群およびサルモネラ菌がいずれも6点(75%)から,大腸菌が5点(63%)から検出され,菌数はいずれも10^2〜10^8cfug^<-1> dry matterであった。5)堆肥製造施設6カ所における堆肥化過程での糞便汚染指標菌の消長を7例について追跡した結果,糞便汚染指標菌が減少して製品中で消失する場合,いったん消失するが製品で再度検出される場合,全く消失しない場合,原料から製品まで検出されない場合の4通りが観察された。発酵温度が高くてもサルモネラ菌などが生残する場合があり,その原因について,再増殖や交叉汚染の可能性を考察した。6)上記の諸結果に基づき,堆肥の製造過程における温度管理や交叉汚染防止などの適切な衛生管理の重要性を指摘した。
著者
宮地 充子
出版者
北陸先端科学技術大学院大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2004

ネットワークの普及により各種サービスがネットワークを介して実現できる基盤が確立しつつある.電子医療・政府などでは,紙面に代わり電子的なデータがネットワーク上を流通するようになる.こうして情報セキュリティの技術である公開鍵暗号系によるデータの秘匿及び完全性の技術が不可欠になった.鍵進化公開鍵暗号は,公開鍵と秘密鍵という2つの鍵ペアのうち,公開鍵は不変で対応する秘密鍵のみ定期的に進化(変化)することで,秘密鍵の露呈攻撃に強化した概念であり,IDベース暗号と密接に関係する.IDベース暗号はユーザのIDが公開鍵で,対応する秘密鍵はセンタが構築する方式であり,階層的IDベース方式はセンターの階層化によりセンタ負荷を削減した方式である.IDベース暗号はブロードキャスト暗号の公開鍵暗号化にも大きな影響を与える.ブロードキャスト暗号は大きくCS法,SD法の二つが存在するが,公開鍵CS法はIDベース暗号から,公開鍵SD法は階層的IDベース暗号から実現できることが示されている.しかし公開鍵CS法の構築は冗長性を含まない完璧な実現であるのに対し,公開鍵SD法の構築は冗長で,階層的IDベース暗号の概念とはギャップが存在し,中間概念の構築が必須である.IDベース暗号は,鍵進化公開鍵暗号,ブロードキャスト暗号の2つの概念の構築に必須の概念であり,IDベース暗号の効率化及び新たな概念の構築は,鍵進化公開鍵暗号,ブロードキャスト暗号に多大な影響を与えるといえる.この背景の下,本研究では以下の研究を行った.1.IDベース暗号と階層的IDベース暗号の中間概念(階層構造をもつIDベース暗号)の構築2.具体的な階層構造をもつIDベース暗号方式の実現3.階層構造をもつIDベース暗号方式の鍵進化公開鍵暗号及びブロードキャスト暗号への応用本研究により,鍵進化公開鍵暗号・ブロードキャスト暗号の概念に影響を与えるIDベース暗号と階層的IDベース暗号の中間概念が実現され,鍵進化公開鍵暗号・ブロードキャスト暗号の研究への多大な発展が見込まれる.さらには本概念の適用により,ブロードキャスト暗号の公開鍵SD法を冗長性を含まず完璧に実現することができ,その影響は計り知れない.
著者
田縁 正治
出版者
宮崎公立大学
雑誌
宮崎公立大学人文学部紀要 (ISSN:13403613)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.169-179, 2006

3DCGと呼ばれる3次元コンピュータグラフィックスを利用して建造物を表わすソフトウエアの開発を行った。開発の対象は大学入学のためのセンター試験の試験会場をコンピュータ上でバーチャルに表現し、下見に来た受験生に提供するソフトウエアとした。これまでに開発したソフトウエアを基に受験生の席が規則的に並んでいない場合でも対応できるように改造した。また、廊下を移動する際によりリアルな感覚を与えられるように窓の外の景色を作成した。これはかなりの効果があり、好評であった。今後のソフトウエア作成の参考となると考えられる。今後の開発環境についても議論された。
著者
勝木 渥 石井 廣湖
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.196-204, 1996

平成7年度センター試験「物理」の解答分析の資料に基づいて,個々の設問にわたる解答状況を調べ,受験生の物理に対する理解の傾向と問題点を探る。
著者
石岡 学
出版者
京都大学大学院人間・環境学研究科
雑誌
人間・環境学 (ISSN:09182829)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.1-12, 2009-12-20

本研究の目的は,戦前期の小学校における職業指導を対象とし,適職決定・就職先決定における論理・実態の分析を通して,そこにいかなる教育的眼差しがあったのか,またその教育的眼差しにはいかなる意味・機能があったのかを明らかにすることである.これは,移行問題が「教育問題」化していく過程で学校がいかなる主体的役割を果たしたのかを解明するうえで,きわめて重要な課題である.第1章では,上記の研究課題の背景・意義について述べた.第2章では,適職決定のプロセスにおける教育的眼差しとその機能について明らかにした.学校において主流となったのは「消極的指導」というあり方であった.その背景としては,求人市場の状況や適性検査への疑義に加え,児童の「可塑性」「弾力性」を重視する「教育的観点」があった.こうした「消極的指導」においては児童の「自発性」や「自己省察」が重視されていた.その理由としては,新教育的主張との連続性に加え,指導者側の責任回避という側面もあった.第3章では,就職先決定のプロセスにおける教育的眼差しとその機能を解明した.小学校が自ら求人開拓・就職斡旋を行うことは原則からの逸脱であり, 「職業精神の涵養」を重視する立場の小学校からは批判された.しかし,職業紹介所の弱体性などの現実的状況ゆえ,それは全否定されえないものであった.このような小学校における求人開拓・就職斡旋という営為は,保護者からの信頼に応えるためなどという理由づけもあって,職業紹介所のような「事務的な処理」とは異なる「教育の仕事」として積極的に肯定されてもいた.第4章では,本研究で明らかとなった知見をまとめ,総合考察を行った.
著者
井上 豪 中村 努 石川 一彦 甲斐 泰 松村 浩由
出版者
大阪大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2006

超好熱始原菌Aeropyrum pernix K1株由来のペルオキシレドキシン(Prx)であるThioredoxin Peroxidase(ApTPx)は、チオール依存型のペルオキシダーゼであり、過酸化水素H_2O_2やalkylperoxideを水やアルコールに還元する働きを持つ。ApTPxは、子量20万の10量体蛋白質であり、プロトマー1分子中に3つのシステイン残基(C50,C207,及びC213)を持ち、たとえば、過酸化水素を水に還元する反応を行う。これまでの研究から、ApTPxのアミノ酸配列は1-CysのPrxと相同性が高いのに対し、その反応機構は2-CysのPrxと同様に2つのシステイン残基(C50及びC213)が反応に必須であることが報告されている。本研究課題では、変異体C50S,C20,7S,C213Sの結晶中で過酸化水素と反応させ、中間体構造を低温でトラップしてX線構造解析を行う方法で、ApTPxによるH_2O_2の還元機構の詳細の解明を目指した。その結果、C50SおよびC213SについてX線回折強度データの収集を行い構造精密化中で反応機構に関する知見はまだ得られていないが、C207S変異体からは、Cys50がCys-SHから、Cystein sulfenic acid (Cys-SOH)の状態へと酸化され、S-OH中間体を形成し、配位子数4の硫黄原子(10-S-4)を持つ超原子価構造をとることが判明した(Proceedings of the NattionalAcademy of Sciences USA(PNAS),in press)。
著者
加藤 宏 皆川 洋喜
出版者
筑波技術短期大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究は視覚障害者のための高等教育レベルでの教材、特に図的教材の視覚障害者向け適性化と活用支援システム構築のための基礎的研究である。重度視覚障害者のための教材には点字と触図があるが、触図はグラフィック情報であり、1次元の情報ではない。結論としては図も、視覚障害者向けには文字記述形式などへの1次元情報化が推奨されることが示された。触図についてはセンター試験の点字問題の視覚障害者による解答過程と触察行動を観察した。結果は成績は、図形式へのリテラシィと教科内容についての知識の2要因に影響されることが示唆された。特にグラフ形式についての習熟が、触図の読みとりに大きく影響した。チャートや模式図・地図等の触図は、その形態・内容を比較的容易に触察できた。触図では、触覚で形の認知という問題以上に、その事象についての知識と図の諸書式への習熟、軸の意味理解等が鍵となることが示唆された。このことはキャプション情報で軸説明などを補足すれば、特別な変換を行わない原図に近い触図で対応できるということである。触図にはキャプション等が必須であることも示唆された。弱視用教材研究には眼球運動測定装置を導入した。図とテキストを含むドキュメントを解読中の眼球運動からテキスト理解に及ぼす図の外的資源機能を探った。弱視者の場合、CRT画面上の文字と図を読ませるという方法では、注視点の記録が困難である場合があることが分かった。さらに眼疾別に適切な拡大提示法を検討する必要がある。諸外国における視覚障害者への図情報提示の実態調査も行った。スウェーデンでは、視覚障害者用の大学適性試験では図は削除か文による説明に代替された。ドイツでは大学の点訳教科書では、数式や図形はマークアップ言語による線形的記述か言語説明に代替された。図情報もテキスト文と同じくテキスト情報として一元化管理されることが有効であることが示唆された。
著者
武次優 小谷一孔
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告 : コンピュータビジョンとイメージメディア
巻号頁・発行日
vol.2004, no.26, pp.111-118, 2004-03

これまで考古学や歴史学の分野では、出土した遺物等の文化財が持つ形状特徴に対し型式学的分類手法による系統的な分類が為されており、この分類結果は実測データや写真、拓本などによって記録されている。本稿では中世日本の遺跡から出土する古銭に注目し、この分類手法において、古銭分類に必要な古銭表面の特徴部位の決定とこの抽出手法を検討し、これまでに蓄積されてきた拓本から抽出した辞書パターンと古銭表面の撮影画像から抽出した入力パターンによる識別・分類実験を行う。 : In the field of archeology and history, excavated remains and cultural assets are classed systematically by classification technique of typology. The classification result is recorded with a figure of measurement and a photograph, a rubbed copy. At first, about an old coin excavated from Japanese remains of the Middle Ages, this study makes clear the classification technique and a classification characteristic. By this thing, we examine extraction technique of the partial characteristic of a shape that is necessary for an old coin classification. Using input patterns of old coin images and dictionary patterns of rubbed copy images, we class them.
著者
水江 一弘 清水 誠 松宮 義晴 竹村 暘 井田 斉 村松 毅
出版者
長崎大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1985

遠洋性のクロトガリザメを南西太平洋で練習船鶴洋丸の旋網実習で本年も多数漁獲し、雌雄の性的成熟体長・生殖分娩の時期・妊娠尾数などを明らかにし,年齢成長を知るため、現在、脊椎骨研摩標本作製中(水江)。サメ類乳酸脱水素酵素の遺伝的特性を知る目的でラブカの3つのアイソザイムを単離し、速度論的解析をした。ネズミザメ・アオザメ・ヨシキリザメ等の同酵素のアイソザイム分布を調べ、単離を試みた(村松)。本年度はウシエイ・カラスエイ・ナヌカザメ・トラザメ・などの6種類について、それらの核型を明らかにすることが出来た。これらの結果は87年発行の魚類学雑誌に投稿準備中である(井田)。ガンギエイ類の食性はその遊泳力に影響され、小型魚のときは、かなり雑食性を示すが、大型になるにつれ魚食性が顕著になる。胃内容量は体重の平均1〜2%,最大3-4%であった(竹村)。最適化技法により、板鰓類の適応戦略を模索した。卵数とサイズの進化,性比の包括適応度,成長と死亡の戦略,棲み場所と採餌の適応単位を題材として、仮説と知見を比較検討した(松宮)。エドアブラザメ,ラブカなど6種のサメについて、筋肉・肝臓の重金属(Hg,Zn,Fe,Cu)濃度を検討した。何れも従来のサメ類の分析値の範囲にあった(清水)。生態を異にする各種板鰓類の網膜および松果体の微細構造と感光色素などを調べ、いづれの結果も環境水中の光分布と大きな相関が得られた(丹羽)。板鰓類の歯の形態と組織構造について、食性および系統との関係を検討した。また、日本のペルム紀から第四紀の板鰓類の歯と皮歯の化石を、現生種との比較により研究した(後藤)。銚子沖および松生場,小笠原諸島周辺ならびにハンコック海山から採集した板鰓類の標本を比較検討したところ、それらの形態に地理的変異が存在することが明らかとなった(谷内)。プランクトン食性のウバザメの脳はミツクリザメおよびラブカと同様に深海性であることを示唆する形態を示し,ウバザメと食性が同じであるジンベエザメの脳には、強大な遊泳力の反映がみられる(佐藤)。
著者
武山 政直 津久井 かほる
出版者
慶應義塾大学日吉紀要刊行委員会
雑誌
慶応義塾大学日吉紀要 社会科学 (ISSN:13425390)
巻号頁・発行日
no.20, pp.73-89, 2009

膨大の数のユーザによる情報の投稿や編集がWeb サイト上で行なわれ、その結果として集合的な価値が生み出される、いわゆる集合知(Collective Intelligence)のモデルがビジネスの領域だけでなく、非営利の分野においても数多く見られるようになっている。さらに、GPS や各種センサーの組み込まれた携帯電話を利用することで、人々の生活環境から様々な地理的情報を集める、地理空間的集合知の試みも徐々に現れ始めている。本稿は、そのような携帯メディアの利用によって成り立つ地理空間的集合知の特性を把握するとともに、そこで生み出される知を経済的な価値と結びつけ、ビジネスの創出に応用するための条件や概念枠組について考察する。
著者
谷内 透
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1984

フトツノザメは成長,繁殖,食性を検討した。成長については銚子産,小笠原産,ハンコック海山産に違いがみられた。どの海域も雄の方が雌よりも成長が悪かった。性成熟の大きさも海域間で異なり、雌雄とも銚子産,小笠原産,ハンコック海山産の順となった。成熟年齢も同様に雌雄ともにこの順となった。交尾器長も精巣重量は性成熟の開始と共に急激に増大した。1腹あたりの胎仔数と大型卵巣卵数は親の大きさと共に増加した。成熟の大きさが異なるため、胎仔数と卵数は海域間で異なるが、種としての統一性は保持されているものと推測された。平均大型卵数は胎仔数よりも少なかった。食性についてみると、どの海域でも魚類の出現が高く、次いで頭足類,甲殻類の順となった。しかし、出現種が海域間で異なるため選択性は小さかった。小型ツノザメ類は銚子産の繁殖と食性を調べた。性成熟の大きさや最大体長は雌の方がかなり大きく、性差が著しかった。みかけの胎仔数よりも大型卵巣卵の方が実際の胎仔数を正確に反映していると判断された。胎仔の体長組成,卵径組成から判断して特定の繁殖周期はないものと推測された。食性については3種とも空胃率が著しく高いのが特徴であった。また、胃内容物重量の体重に対する割合はほとんどの場合3%以下であった。3種ともにイカ類と魚類の出現率が高かった。トラザメとニホンヤモリザメは銚子産の繁殖と食性を調べた。成熟の大きさと最大全長は雌雄でほとんど差がみられなかった。トラザメは周年卵殻をもつ雌が存在することから特定の繁殖周期はないものと推測された。2種とも空胃率はきわめて低かった。餌生物に大きな分類単位では重なりは認められるが、組成比が大きく異なること、また下位の分類単位で出現する餌生物が異なるので、両種は食い分けをしているものと推察された。