著者
小畑 精和 佐藤 アヤ子 曽田 修司 藤井 慎太郎
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

シルク・ド・ソレイユを筆頭に,R.ルパージュの演劇,ラ・ラ・ラ・ヒューマン・ステップスなどのダンスなど近年隆盛を極めているケベックのパフォーミング・アーツを分析し,製作者(劇作家・演出家・俳優・パフォーマー)や受容者(観客・評論家)の観点からばかりでなく,政策や経営も含めた文化状況全体の中で,パフォーミング・アーツを考察した。また,連邦政府の提唱するマルチカルチャリズムと,ケベック州政府が推進するインターカルチャリズムの比較を行った。研究を通して,その発展の大きな要因として,ケベック州政府の文化政策があることを明らかにした。その成果の一端を昨秋の日本カナダ学会第33回年次研究大会(9月21日セッションIII,皇学館大学)で三人がそれぞれ発表した。
著者
松家 裕子 小南 一郎 磯部 祐子
出版者
追手門学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、中国近世以来、今日にいたるまで民間で行われている、歌と語りによる唱導文藝である宝巻(宣巻)*について、実地調査(於浙江省紹興・平湖)と文献調査を行い、これらを総合したものである。個人宅や廟(神社の類)で行われる宗教的儀式に立ち会い、そのテキストを読み解くことによって、唱導文藝の担い手の性格-宗教者として、また芸能者としての-や、儀式における信仰の実相とテキストの内の信仰との関係-整合するとはかぎらない-など、中国文化史全体の問題にかかわる重要なことがらについて、いくつかの考えを提出した。*テキストとしてみるときには「宝巻」、パフォーマンスとしてみるときには「宣巻」を用いる。
著者
谷口 英理
出版者
東京芸術大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

1.長谷川三郎に関する作品・資料調査を甲南学園長谷川三郎記念ギャラリー、宇都宮美術館で実施した。また、従来、一部しか知られていなかった長谷川三郎の写真作品の画像を収集し、データベース化を進めた。今後、この作業を進めていくことによって、長谷川という作家の全体像がより明確になるはずである。2.瑛九の油彩画とフォトデッサンに関する作品調査を、宮崎県立美術館で行った。また、愛知県立美術館の山田光春アーカイヴを調査し、瑛九に関する基礎調査を進めた。特に、戦前期の瑛九の活動に関する新たな事実の発見があった。3.山田光春のガラス絵に関する作品調査を、愛知県立美術館、宮崎県立美術館で行った。山田は、主に瑛九研究者として知られており、作家としての活動は本格的に行われてこなかった。山田のガラス絵を調査・研究することは、長谷川三郎、瑛九の制作とも関連性や1930年代後半の前衛美術の流れを再考する上で重要な意味がある。4.上記1~3の基礎調査を踏まえ、メディア環境やメディア・テクノロジーとの関わりという観点から、1920年代~50年代の日本の前衛芸術を総体的に考察した。その成果の一部は、『昭和期美術展覧会の研究』所収の論文として発表し、さらに現在も学位申請論文「近代日本の前衛芸術とメディア、テクノロジー」として発表準備を進めている(2010年度提出予定)。同様のテーマから日本の前衛芸術を考察した先行研究は、個人作家論にとどまっていたが、本研究では近代日本の視覚文化をを総体的に捉えようとしている。その意味において近代日本美術史研究に新たな視点をもたらすはずである。
著者
森 英樹
出版者
慶應義塾大学日吉紀要刊行委員会
雑誌
慶應義塾大学日吉紀要. フランス語フランス文学
巻号頁・発行日
no.36, pp.1-34, 2003-03

1フランス文学と漢文学との出会い(その八)クロ.___デルと "タオ"森英樹第一章 フランスのカトリック詩人・劇作家ポール・クローデル(1868-1955)は、その26歳から41歳にかけて外交官として赴任した中国に前後三度にわたって滞在した。一度目の滞在は1895年7月から1899年10月にかけて(上海領事代理、福州及び漢口副領事館事務代理、福州副領事)、二度目は1900年末から1905年2月にかけて(福州及び天津領事など)、そして三度目は1906年5月から1909年8月にかけてであった(北京公使館一等書記官、天津領事)。 かれはその随想集『接触と環境』(《Contacts et circonstances》)中のエッセー(→「中国のこと」)においてみずから言う。わたしはその生涯の15年間を中国で過ごした。老いた西太后や光緒帝に謁見したこともある。行進する袁世凱の姿を見かけたこともある。また孫文は知己のひとりであった。わたしは中国と中国の人々とをこよなく愛した。ここにおいて見聞し身近に接触し体験するさまざまの事象がほとんど自分の嗜好に乖くものではない。あらゆる種族や風習や臭気が活気に満ちて渦巻き、沸騰し、共生しているこの国のなかにあって、わたしはみずから水中の魚のごとくに感じていた。中国の人々はわたしにとっていわば"異郷にある同じ神の子ら"(nOSfrére séparés)のように思われた、と(1926年,OEv.en prose.P.1020sqq.)。2 クローデルが中国と初めて接触したのは、かれが21歳のおり1889年のパリ万博において安南の芝居を見たのがそれであったという。文学的方面について言えば、エルヴェ・ド・サン・ドニの仏訳『唐代詩集』(→拙稿NO29et NO30)の存在は無論知っていた。知ってはいたがこれを読み通したらしい明瞭な痕跡は見出せないから、実は披読しなかったのかも知れない。『クローデルと中国的世界』の著者G・ガドッフルもまたクローデルはデルヴェを読んでいないと断定している。 ジュディット・ゴーチェの可憐な『白玉詩書』(一拙稿N・34et 35)は、クローデルはこれを福州時代に携帯しておりみずからその幾首かを翻案した(→《Autres poëmes d'aprés le chinois》)。その2年後に出た翻案詩集(一《Petit poëmes d'aprés le chinois》)は、 Tsen Tsong-mingなる中国人が出版した《唐代絶句百選》なるいささか怪しげな仏訳詩集を種本にしたもので、英訳と仏訳が並記されている。この英訳はクローデル自身のものなのか、それとも余人のものなるか判明でない。アーサー・ウエリーの『中国詩百七十首』は1918年に出ているが、クローデルはこの英訳をも読んでいないとガドッフルは言っている 魅惑的な形象と構成の哲学をもつ漢字については、レオン・ヴィジェルの著書に啓発されながら、『西洋の表意文字』を書いている。これはS.マラルメの『英語の単語』に比較されるべき、単語をめぐる詩的想像と類推を展開させたエッセーである。 ちなみに『史記』を翻訳し、「T'oung Pao」の主幹となり、当時のヨーロッパのシノロジーに君臨して名声の高かったE・シャバンヌ(→拙稿N・29.p.87)はクローデルとはルイ・ル・グラン校の仲間であったが、そうした一連のシノロジストの著作のいずれかをクローデルがとくに精読したという形跡も明らかではない。 クローデルと中国との関わりにおいて顕著な事件は、文学的方面よりは
著者
池田 美佐子
出版者
名古屋商科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、1世紀以上にわたる近代エジプト議会の展開について、おもに議会議事録を資料とし、その議会議事録と議会機能の発展に注目して考察したものである。議会議事録の分析では、初期の段階から逐語的に議事が記録されており、立憲君主制期議会の議事録はきわめて精緻に議事録の編纂が行われたことを明らかにした。議会の機能については、初期の議会は諮問機関であったものの、限定的ながら近代議会の諸機能を有しており、立憲君主制期の議会では、独立性の高い議会に発展した。さらに、時代の政治環境と議会の活動や機能との密接な関係も明らかとなった。
著者
谷口 倫一郎 谷口 秀夫 日下部 茂 有田 大作 鶴田 直之 堤 富士雄
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

ユーザが「任意の視点」でリアルタイムに情報を獲得できるようにするためには,対象世界に関する詳細な観測が不可欠であり,実世界に分散された多種多数のセンサーによって実世界をできるだけ精密に観測し,獲得された情報をユーザの視点に基づいてリアルタイムに加工,提供することが必要不可欠である.本研究は,多数の計算機が高速なネットワークで接続された環境での,実時間多メディア処理システムの構成法について研究を行い,以下のような成果を得た.1.多数カメラからの情報統合方式多くのカメラから獲得した情報を並列分散計算機システム(PCクラスタ)で実時間統合するための方式を明らかにした.また,処理時間が時々刻々変化するために起こる,システムでの遅延をほぼ一定に保ち,出力品質の低下を押さえるための,可変解像度3次元形状処理方式を開発した.2.実時間実行制御方式データ解析の信頼度と必要な資源の間にはトレードオフが存在し,実際のアプリケーションでは,用途や状況に応じてそのトレードオフを動的に解決する必要がある.本研究では,要求されるデータ解析の信頼性に基づき,予測や複数の異なる精度のアルゴリズムを動的に使い分けることにより,このトレードオフを動的に制御する方式を開発した.3.応用システムの開発による評価分散・並列計算機上の多視点カメラによる実時間3次元身体姿勢計測システム,自由視点映像生成システムを開発し,上記の情報統合方式,実行制御方式の有効性を示した.
著者
福田 安志 Fukuda Sadashi
出版者
日本イスラム協会
雑誌
イスラム世界 (ISSN:03869482)
巻号頁・発行日
no.55, pp.73-93, 2000-09

本稿ではサウジアラビアにおけるザカート(ザカー)の徴収について検討した。イスラーム諸国におけるザカートは、一般的には、イスラーム教徒が任意で提供する「お布施」的なものとして理解されることが多い。しかし、ザカートは初期イスラーム時代には、イスラームの教団国家の歳入の大きな柱であり、事実上、公租の役割を果たしていた。サウジアラビアでは18世紀半ばにサウード朝が興ったが、サウード朝は初期イスラーム時代を模範とするワッハーブ派と協力して国家を建設したため、サウード朝においてはザカートが重要な国家の歳入源となった。20世紀には石油開発が進み、石油収入が国家歳入の大部分を占めるようになったが、ザカートの徴収は現在でも続けられている。続いて、イスラーム法で定められているザカートの賦課対象と賦課率について述べ、のサウジアラビアの事例を示しながら賦課対象と賦課率について検討した。さらに、企業や個人がザカートを支払う場合の賦課対象や賦課率について述べ、サウジ企業に課せられるザカートと外資に課せられる所得税の相違について検討した。
著者
藤井 良知 阿部 敏明 田島 剛 寺嶋 周 目黒 英典 森 淳夫 佐藤 肇 新納 憲司 砂川 慶介 横田 隆夫 秋田 博伸 岩田 敏 佐藤 吉壮 豊永 義清 石原 俊秀 佐野 友昭 中村 弘典 岩井 直一 中村 はるひ 宮津 光伸 渡辺 祐美 久野 邦義 神谷 齊 北村 賢司 庵原 俊昭 桜井 實 東 英一 伊藤 正寛 三河 春樹 久保田 優 百井 亨 細井 進 中戸 秀和 西村 忠史 杉田 久美子 青木 繁幸 高木 道生 小林 陽之助 東野 博彦 木野 稔 小林 裕 春田 恒和 黒木 茂一 大倉 完悦 岡田 隆滋 古川 正強 黒田 泰弘 武田 英二 伊藤 道徳 松田 博 石川 純一 貴田 嘉一 村瀬 光春 倉繁 隆信 森田 秀雄 森澤 豊 浜田 文彦 辻 芳郎 横尾 哲也 林 克敏 冨増 邦夫 木戸 利彦 上原 豊 森 淳子 森 剛一 内田 哲也 大塚 祐一 本廣 孝 半田 祥一 山田 秀二 沖 眞一郎 吉永 陽一郎 荒巻 雅史 織田 慶子 阪田 保隆 加藤 裕久 山下 文雄 今井 昌一 鈴木 和重 岡林 小由理 金子 真也 市川 光太郎 曽田 浩子 清水 透子 長田 陽一 木葉 万里江 石橋 紳作 高橋 耕一 杉山 安見児 三宅 巧 荒木 久昭 垣迫 三夫 前野 泰樹 下飛田 毅 高岸 智也 松隈 義則 平田 知滋 田中 信夫 永山 清高 安岡 盟 林 真夫 天本 正乃 津村 直幹 小野 栄一郎 神薗 慎太郎 中嶋 英輔 永光 信一郎 野正 貴予 松尾 勇作 樋口 恵美 長井 健祐 末吉 圭子 橋本 信男 弓削 健 久保田 薫 川上 晃 渡辺 順子 藤澤 卓爾 西山 亨 岩永 理香子 牛島 高介 山川 良一 山村 純一 富永 薫 臺 俊一 安藤 寛 久田 直樹 藤本 保 元山 浩貴 丸岡 隆之 伊達 是志 杉村 徹 西依 淳 朝木野 由紀 山田 克彦 是松 聖悟 早川 広史 佐々木 宏和 木村 光一 山田 孝
雑誌
The Japanese journal of antibiotics (ISSN:03682781)
巻号頁・発行日
vol.48, no.7, pp.921-941, 1995-07-01
被引用文献数
19
著者
織田 成人
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

日本人独自の遺伝子多型からみた重症救急患者に対する個別化治療を確立することを目的としている.多施設共同研究(計5施設)で遺伝子情報と臨床情報を収集した.IL1RA 2nd intronVNTRの臨床経過や転帰への影響について検討した.その結果,導出コホート(自施設症例;n=261)および検証コホート(多施設症例;n=793)両方において,IL1RA RN^*2 alleleの保有数が多くなるにつれてICU死亡率,重症敗血症罹患率ともに有意に上昇していた.
著者
山田 雄三
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

イギリスのニューレフトと呼ばれる文化・政治運動が、実は1930年代に始まるモダニズムの理念や発想に基づいているという仮説を、これらの研究を通して提唱することができた。それにより、政治学や社会学で考えられてきたように、ニューレフトは冷戦構造と高学歴社会における一時的な現象であったのではなく、近代の産業構造の変化にともなう文化的な反応であったことが立証できた。とりわけ、ニューレフトが理性中心の西欧思想を批判する中で、感情の基づく新しい形式を文学やアートの制作を通して模索していた様態を明らかにすることができた。
著者
東海林 健二 森 博志
出版者
宇都宮大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、対象物体や人物を手持ちのカメラで同時に撮影したスナップ写真群から少ない手間で対象物体形状を得ることを目指し、視体積交差と投影を繰り返すことにより、カメラ撮影画像から物体のシルエットを矛盾の少ない形で取り出す方法と、視体積交差のためのカメラ姿勢を最適化する方法を提案した。また、視体積交差のためのよいカメラ配置とは、各カメラから得たシルエット形状が相互に異なり、なるべく複雑であるようなカメラ配置であることを実験的に示した。
著者
上田 和子/羽太 園 羽太 園
出版者
独立行政法人国際交流基金
雑誌
日本語国際センター紀要 (ISSN:09172939)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.19-36, 1999-03-20

関西国際センターでは、1997年10月より9カ月間、外交官日本語研修および公務員日本語研修を実施した。同研修では学習者の多様な背景やニーズに応え、継続学習に向けた自己学習能力獲得を支援するために、「パフォーマンス・チャート」を作成し、運用した。パフォーマンス・チャートとは、目標言語技能(ターゲット・スキル)を項目別 、到達レベル別に分類し、「———ができる」という具体的な記述で行動目標を明示したもので、これにより学習者は自分で学習目標を立て、それを実現していく過程がわかる。パフォーマンス・チャート作成にあたっては、はじめに過去の研修参加者及び現職外交官への聞き取り調査を行い、職務場面 、日常生活場面での言語使用状況を得て、そのニーズにもとづき目標言語技能項目を立てて系列化した。 研修中、パフォーマンス・チャートは日本語研修のイメージ作り、短期、長期目標の設定、到達度の確認、授業の選択のめやす、学習カウンセリングなどの場面 で活用された。また大使館実習では学習者自身が、日本語ニーズを分析し、継続学習を計画する際に利用した。 実践を通じて以下の点からパフォーマンス・チャートの有効性が認められた。まず、(1)学習者が最も必要とする職務的日本語領域を自分で見きわめ、そのために必要な項目を選択するという学習における「意志決定」が容易になる点、(2)シラバス、カリキュラム、評価などコース設計の各場面 での目標が明確になり、研修内容の一貫性が維持しやすくなること、(3)学習カウンセリングの場面で、パフォーマンス・チャートの具体性が教師と学習者に活発な議論をもたらし、両者がインターアクションする場を提供していた点である。 学習者が自律的に日本語学習を進めるためには、学習スタイルも含めたより広い枠組みでパフォーマンス・チャートをとらえ、その内容や運用方法について検討し、さらに改良していかなければならない。
著者
宮本 圭造 伊海 孝充 高橋 悠介 石井 倫子 山中 玲子
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

能楽を伝える最も古い家系である金春家伝来の文書は、能楽資料の宝庫である。今回の研究プロジェクトでは、同文書を総合的な観点から研究するために、金春家旧伝文書の中核を占める般若窟文庫の文書目録をデータ化するとともに、約二千点に及ぶ文書資料のデジタル撮影を行った。これらの成果に基づき、般若窟文庫のほぼ全ての文書の検索と、ウェブ上での画像閲覧が可能な「金春家旧伝文書デジタルアーカイブ」を作成した。また、関連文書の調査として、秋田家文書の秋田城介関連能楽伝書、毛利博物館蔵能楽伝書、吉川広家旧蔵笛伝書などの調査を行った。
著者
江井 友美 黒田 雄樹 小野 みどり 遠山 治 峯岸 孝行 深山 正幸 吉本 雅彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. CPSY, コンピュータシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.104, no.476, pp.35-40, 2004-11-25

可変長符復号コード(VLC)テーブルに動的再構成可能なハードウェアを用い,H.264,MPEG-2,MPEG-4,等のマルチスタンダードに対応し,かつ,HDTV 30fr/sに対応した可変長符復号プロセッサコアを開発した.VLCテーブルを探索木と解釈し,4×5に配列した動的再構成可能なセル各に探索木のノードを割り付けることでテーブル機能を実現している.動的再構成可能なセルは,4つのコンフィグレーションレジスタを持ち,レジスタ選択の変更のみでテーブルの再構成を行う.さらに,一致確率の高いコードから優先的にテーブルを構成することにより,再構成の回数を最小限に抑え,動作の高速化を図り,MPEG-2 HDTVサイズ,30fr/sのデコードを109MHz,で実現した.
著者
出口 徹
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究の目的は矯正歯科治療に伴う痛みに対するCO2レーザーの軽減効果のメカニズムを解明することである。本研究において、実験的歯の移動時におけるCO2レーザーの疼痛軽減の効果を中枢側(中脳路核)および末梢(歯髄、歯根幕)において検証を行った。その結果、歯の移動時に伴い、中枢側において増加した痛み発生物質(c-fos)の発現がCO2レーザー照射後に有意に減少する事が明らかとなった。一方、末梢側においては、実験的歯の移動後、末梢神経組織のマーカーとしても知られるカルシトニン遺伝子関連ペプチド: CGRPおよびPGP9. 5の発現はわずかに増加した。CO2レーザー照射後においては、CGRPおよびPGP9. 5の発現に全く変化を認めなかった。さらに、CO2レーザー照射後の温度変化を計測した結果、いずれの照射強度、時間においても40°を超えることはなく、人体に影響を与えることはないことが示唆された。以上よりCO2レーザー照射は、中枢に発現するc-fos蛋白の発現を抑制することにより、歯の移動時に認める痛みを末梢組織の損傷等を起こさずに軽減する可能性が示唆された。
著者
石田 佐恵子
出版者
大阪市立大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1997

近年急速に映像メディアの文化、インターネットをはじめとする現代メディアの文化が、世界的な規模で共有されつつある。その状況は急速に変化しているが、個別の文化の具体的なありようや展開、人びとの日常生活に及ぼす影響については十分に明らかではない。本研究では、現代メディアが日常生活に占める位置とそれがどのような形で諸個人の日常生活に現れてくるのかという観点から、現代メディア文化のさまざまな諸相についてクロス・カルチュラルな研究を試みた。平成9年度は、世界規模で共有されつつある現代文化のグローバリゼーションの成立過程について考察した。特に受け手の意味構造と社会全体の変容とに着目した。平成10年度の研究は、その継続研究に当たる。西洋的な脈絡との比較で考える観点と、アジア・アフリカ諸国との比較から考える観点の2つを併用して行われた。その考察の結果、「現代メディアの文化」と呼ばれるものには、インターネットや携帯電話のように「無国籍文化」としてとらえられるものと、マンガやアニメ、コンピュータ・ゲームのように特に「〈日本〉文化」と関連づけられて語られるものとがあることが明らかになった。クロス・カルチャー、グローバリゼーションという視点から見た現代メディアの文化は、それぞれの国々の日常生活のレベルで個別に生きられるものであると同時に、国際的な文化商品の輸出入・翻訳という観点から考察されるべきであるとの結論に達した。