著者
長谷川 紘司 加藤 伊八 池田 克己 高江洲 義矩 末高 武彦 加藤 熈
出版者
昭和大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1993

歯周炎予防プログラム作成に当たり最も重要な基礎的知見はその自然史である。岡本、長谷川は各々異なる特性集団にて、同一個体の経年的調査を行った。長谷川の調査ではポケットの変化よりもアタッチメントレベルの変化が大きく、年齢とともに増加し、特に25才以降で顕著であった。またポケットが深い方が浅い方よりもアッタチメントロスがおきやすかった。岡本の調査では、歯周病の進行は個人差、部位差が大きく、高齢者ほど進行が顕著であった。また歯肉炎から歯周炎への変遷を明解にし、若年者からの予防対策が必要である。この観点から、堀内、高江洲は若年者における歯周病変の実態とコホート調査および予防処置の効果について検索した。同時にCPITNの問題点の指摘も行われるとともに、被予防処置群では全体的には指標の改善が見られたことが報告されている。末高、加藤熈は成人の多数集団についてCPITNの調査を行った。その結果、年齢階級が高まるにつれて最大値が高くなり、さらに口腔清掃状態との関連についてその強い相関を報告している。高齢者における歯科的所見について中垣はケースコントロールスタディーで面接法にて報告している。その結果、残存歯は前歯部が、欠損歯は臼歯部に多く、8020達成者においては、若い時期における甘味に対する依存度や間食傾向がその残存歯数に大きく影響していることが示された。岩山は咬合回復可能年齢を検討した結果、50才前半で治療を行うことが安定した臼歯部の咬合支持を維持するのに必要だと示唆した。歯科保健状況については地域差が極めて大きい。これについては加藤伊八が高齢化地区でかつ常勤歯科医師の存在しない離島にて調査し、残存歯が歯科疾患実態調査と比べ著しく悪いことを報告し、現在は口腔衛生指導実施による改善程度について検索している。池田は歯周炎患者の生活習慣・環境と病変の進行程度との関連を調査し、環境要因としては、居住地域、職業、喫煙、飲酒、歯磨き習慣や歯磨き時の出血、宿主要因としては性別、全身健康総合判定などが、歯周病の進展程度と強く関連していることを示唆している。集団保健指導のあり方は、個別指導と異なる点が多くその有効性からの検討が渡邊により実施された。その結果、歯科保健指導は毎月一回、三回行うことが有効であった。宮武は歯科疾患実態調査、国民生活基礎調査、患者調査などの結果を分析し、有所見者率が高率であるにも関わらず、有訴者率が低率であることを指摘した。しかし近年歯周病の有訴者のうち、受療者は43.1%(1986)から59.0%(1992)と増加していた。これは歯科保健事業の拡大の結果とも考えられ、今後さらに進展が期待される。歯周病に対する行動科学的状況について、岩本は自己記入式質問紙(デンタルチェッカー(R))の結果と歯周病の状況に高い関連性を認め、また集団への利用により歯周病の自己確認や予防プログラムの確立への可能性を示唆した。以上の結果より、歯周病予防を行う上では比較的若年者を対象とした方が予防効果が高いと思われた。また歯周病の自己認識も乏しいことから集団を対象とした質問用紙などの利用により、疾病の自己認識を高めていくことも予防を行う上で重要であると思われる。
著者
小川 寿美子 等々力 英美 有泉 誠 吉田 朝啓 糸数 公 鄭 奎城 崎原 盛造
出版者
琉球大学
雑誌
地域連携推進研究費
巻号頁・発行日
2000

本研究は過去3年間の研究成果として、論文9本、学会発表17演題、図書3冊、視聴覚教材ビデオ8本、データベース(CD)8枚が産出された。特に最終年度には以下のような具体的な研究実績の収束に努めた。(1)第2回ケース・メソッド研修の実施(平成14年6月30日) 昨年度の第1回同研修に引き続き問題解決型開発教育モデル制作の研修を実施した。受講者は本研究協力者で、この研修後、6本のケース教材が完成した。同教材は、(5)のビデオ教材のジャケットに納める小冊子に添付され、国際協力用の教材として広く活用されている。(2)保健人材班ワークショップ開催(平成14年7月6/7日) 過去3年間でまとめた沖縄の保健人材に関する量的データを用い、システムダイナミックス・シミュレーションモデル策定のワークショップを開催した。結果は(7)で発表した。(3)国際協力への実用化-途上国の保健医療人に対する研修への応用(平成14年4月15/16日,平成15年1月17.23-25日) JICA(国際協力事業団)の研修へと多岐にわたり応用された。4月は九州・久留米市の聖マリア病院での地域保健指導者研修コースで、1月には沖縄国際センターでの島嶼保健医療政策研修コースにて、本研究にて作成された視聴覚教材とケース教材を用いた授業が展開され、受講生(途上国の医師・看護師・助産師)から好評を得た。(4)論文、学会発表、図書 今年度は本研究に関する論文が8本、学会抄録は8本、図書は1冊が産出された。これらは、初年度からの業績も含め、広く世界の研究者と共有すべく、英語に翻訳して、報告書並びに本研究のwebページで情報を開示する作業を進めている。(同年5月末完成予定)(5)視聴覚教材の制作 前年度の2本のビデオ制作に引き続き、今年度は6本のビデオを制作。ビデオ検討会議(各6本分のビデオに関する内容検討会議を、年3回、各6本分のビデオ開催)を経て、平成15年1月に日本語版と英語版が完成。JICA研修((3))をはじめ、日本や諸外国の大学・研究機関にて活用されつつある。(6)データベース(CD) 米国民政府の公衆衛生関連資料をまとめたDB、沖縄県復帰前の保健医療関連新聞記事をまとめたDB、昭和35年から現在までの衛生統計データをまとめたDB、今まで制作した計8本分のビデオ教材をパワーポイント化したDB、の計4種のCDに関して本科研費を用いて作成した。(7)国際シンポジウムの開催(平成15年1月24-26日) 過去3年間の集大成として、国際シンポジウム「沖縄における保健医療人材確保の経験から〜過去50年の検証」を開催。内外からシンポジストを迎え、ビデオ会議、同時通訳付で活発なる意見交換が行われた。同シンポジウムの本番記録は、本研究Webページで公開されている。また、現在、CDにまとめる作集を行っている。(8)最終報告書(英語版)の作成 計418ページにわたる報告書を英語版で作成し、3年間の研究・実践の成果を広く世界の研究教育機関にアピールする。
著者
中澤 淳 山田 守 野間 隆文 伴 隆志
出版者
山口大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1990

神経・筋などの興奮性細胞において活動電位の発生に寄与するナトリウムチャネルについては、その一次構造が明らかにされてはいるが、チャネルブロツカ-としてのフグ毒(テトロドトキシン)のチャネル上の結合部位はまだ明らかにされていない。本研究ではフグ毒に耐性を示すフグ自身のナトリウムチャネルの解析によりその結合部位を推定する。トラフグの脳組織を材料として、λgt10ベクタ音引きを用いて、オリゴdtとランダム配列DNAをプライマ-として、2種類のcDNAライブラリ-を作製した。PCR法により作製したDNA断片ならびに分離したcDNAの断片をプロ-ブとして、合計9個のcDNAクロ-ンを得た。これらはいずれも単独ではmRNAの全長には及ばなかったが、配列をつなぎ合わせると全コ-ド領域をカバ-できた。えられたクロ-ンの塩基配列をもとにして分類すると、フグの脳には少なくとも3種のナトリウムチャネルが存在することがわかった。今回えられたフグ脳のナトリウムチャネルのアミノ酸配列を、ラット心臓、ラット器機筋、ヒト心臓のテトロドトキシン耐性チャネルならびにラット胞のテトロドトキシン感受性の3つのチャネルのアミノ酸配列と比較検討したところ、テトロドトキシン耐性のものでは、チャネルの4つの繰り返し領域の第1着目の領域中、セグメント5(IS5)とセグメント6(IS6)の間の部分に欠失が存在することがわかった。この部分は細胞外に突出していると考えられるところで、多数の糖鎖の修飾部位が存在する。単一アミノ酸残基の変化がテトロドキシン飽和性に寄与するという報告があったが、これらの残基はすべてフグのナトリウムチャネルでは、トキシン感受性のものと同じであった。従って、テトロドトキシン感受性を規定するのは単一アミノ酸残基というよりは、上述のようなIS5とIS6の間の領域の欠失ではないかと思われる。
著者
武田 清香
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

はじめに、PCMと躯体蓄熱を併用した床吹出し空調システムについて、数値シミュレーションにより夏季冷房時のピークカットに有効な運転方法について検討した。1)午前中に循環風量を少なくすることで、床下からの過剰な放熱および室温の低下を防止できることを示した。今回の計算においては、最大32m^3/h/m^2に対し、70%の22m^3/h/m^2で送風する場合、良好な蓄放熱特性および室内環境が得られることがわかった。2)夜間10時間に加え、午前中にも冷凍機を運転して蓄熱を行うことにより、PCMからの放熱をピーク時間帯まで持続させる方法を提案した。6kg/m^2以上のPCMを用いる場合には、シーズンを通して高い夜間移行率でピークカットを行えることを示した。3)設定室温が28℃のとき、26℃の場合に比べ、午前中の室内温熱環境が改善される様子が確認できた。このときピーク負荷時間帯にもPMVはほぼ中立を示し、シーズンを通して快適な室内環境となることがわかった。続いて、同システムにおいて省エネルギー性を維持しながら外気処理(除湿)機能を付加することを目的とし、夜間蓄熱時の低温排熱を用いた潜熱顕熱分離空調システムを提案した。1)シリカゲル製ハニカムを用いた吸脱着実験から、総括物質伝達係数を1.0×10^<-5>m/sと同定した。2)デシカントシステムの給排気出口温湿度を算出する数値計算プログラムを作成し、デシカントシステムにおける低温排熱の利用可能性について検討した。40℃排熱を用いて再生を行うと、1段除湿の場合は必要除湿量の約4割、2段除湿の場合には約8割を賄えることが示された。また、デシカントシステムのみで全て除湿する場合、1段除湿で約90℃、2段除湿で約53℃の再生温度が必要であることがわかった。
著者
瀬戸口 剛
出版者
北海道大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

北海道のように冬季の積雪が多い寒冷地では、駅やバス停など公共交通機関の交通結節点の計画において雪や寒さへの対策が必要で、都市デザインにおいて重要な課題である。本研究では積雪寒冷の都市を対象に、積雪シミュレーション実験を行い、冬季に吹雪の影響を受けにくい交通結節点(駅やバスターミナル)のデザインを研究し、交通結節点における都市デザイン手法を確立した。わが国では、積雪時の都市デザインシミュレーションを行った研究は、筆者以外には無い。本研究では、稚内駅および中心市街地を対象に、積雪インパクトの評価を大型風洞実験装置による積雪シミュレーションを用いて行った。実験装置は、旭川市にある北海道立北方建築総合研究所が所有するものを利用した。積雪シミュレーションにより、稚内駅舎のデザインや建物配置、乗客動線システムを具体的に計画し、実際に設計に反映できる結果を得られた。積雪シミュレーションにより、稚内駅舎計画に反映した内容は以下の3点である。(1)稚内駅舎は歩行者動線に吹きだまりをつくらないよう、曲面型のファサードとした。(2)駅前広場に雪の吹きだまりが溜まるため、堆雪スペースを中央に設ける。(3)線路の先端部分に雪の吹きだまりができにくいよう、吹き払いができる駅舎設計にするとともに、除雪がしやすいようにする。さらに、積雪シミュレーション結果を実際の設計プロセスに反映させるための、デザインガイドラインを開発した。
著者
井上 修平 藤野 昇三 手塚 則明 紺谷 桂一 小西 孝明 澤井 聡 花岡 淳 一瀬 増太郎 寺本 晃治 森 渥視
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.13, no.4, pp.545-550, 1999-05-15
被引用文献数
4

症例は60歳女性で, 膠原病, 膜性腎症等のため長期間ステロイドを投与されていた.1997年12月中旬から咳嗽, 喀痰が出現し, 翌年1月2日に39.3℃の発熱がみられた.1月4日に突然の右胸痛, 呼吸困難が出現し, 翌5日に緊急入院となった.入院時には発熱, 心肺不全を伴い起座呼吸, チアノーゼが認められた.胸部X線, CT写真では右胸腔の2/3を占める下葉中心の巨大肺嚢胞が認められ, 上中葉の無気肺, 胸水も存在した.血液検査ではCRPの高値及び低酸素血症が認められた.感染のコントロールのために抗生剤の投与をすると共に, 胸腔ドレナージ及び肺嚢胞内吸引療法を施行した.肺嚢胞吸引療法で嚢胞の増大進行を防止し, 胸腔ドレナージで呼吸不全から離脱できたため, 1月13日に安全に肺嚢胞切除術を施行できた.術後経過は順調であり術後3週間目に退院となった.
著者
井上 和子 大谷 武司 荒木 盛雄 丹後 俊郎 倉科 周介 木谷 信行 乾 宏行 品川 洋一 飯倉 洋治
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー
巻号頁・発行日
vol.34, no.12, pp.1063-1071, 1985

1981年に筆者らが気管支喘息と診断した182名の喘息児の2年間の臨床経過と, その影響因子をアンケート及び現地診察を行い調査した.同時に, 喘息発症の原因検索として, 喘息児家庭の家塵中のダニの種類と数を, また, 布団敷前後の空中浮遊細菌数の変動を検索した.その結果, 2年間の臨床経過では, 悪化8.3%, 不変24.6%, 改善51.7%, 無症状15.2%であった.予後に対する影響因子では, 血清IgE値と, 家塵とダニに対するIgE抗体が高値の者, また, 現在湿疹がある者の予後が不良であった.喘息児家庭内の家塵0.5gm中のダニ数は, 平均539匹と東京のそれよりも多く, 種類はD.p.31.1%, D.f.9.5%で, ササラダニが多く検出された.喘息児寝室内の布団敷前後の空中落下細菌は, 血液寒天培地上のコロニー数で比較したところ, 布団敷後が約3倍にも増加していた.
著者
茶谷 直人 中尾 佳亮 村上 正浩 岩澤 伸治 伊東 忍 川口 博之 真島 和志 後藤 敬 城 宜嗣 林 高史
出版者
大阪大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2010-04-01

研究は、当初予定していた以上の成果を挙げることができました。領域全体として、5年間で発表した論文数は、1400報近くあり、多くの特許申請もありました。本領域は若手育成に積極的に取り組んできました。例えば、若手研究者の海外講演派遣・国際若手セミナーの開催をおこないました。企業との交流や共同研究への展開を促進することを目的として、企業班友を設立しました。HPだけでなく、班員の研究、トッピクスなどを紹介するニュースレターは、毎月1回、50号まで発行しました。さらに、国際シンポジウムの開催や分子活性化に関連するシンポジウムやセミナーなども主催あるいは、後援し、分子活性化の活動をサポートしてきました。
著者
愛甲 英寿 野村 建太 青木 健一 鎌倉 友男 酒井 新一 JOLY Vincent
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EA, 応用音響 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.470, pp.35-40, 2008-01-22
被引用文献数
3

オーディオ信号で振幅変調された有限振幅超音波の自己復調効果を利用したパラメトリックスピーカは,超指向性音響システムへの応用が有望である.いままでに,このスピーカは技術開発されてきたし,実用に供してきている.しかし,まだいくつかの課題が残っている.特に,音質の不十分さや電気から音響への低変換効率についての改善は,更なるパラメトリックスピーカの応用に是非必要である.われわれは,前者の課題に対して,ウィーバ(Weaver)のSSB方式を用いたダイナミックなキャリヤ変調を提案する.本レポートは,プロトタイプのウィーバ変調器を用い,歪みとリニアリティの観点から,理論的および実験的に,差音など2次波の音場特性を議論する.
著者
加藤 みゆき 大森 正司 長野 宏子 加藤 芳伸
出版者
香川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

阿波晩茶製造工程中の桶漬けにおいて微生物を分離した。その中でも乳酸菌に分類されるLactobacillus pentosus, Lactobacillus plantarum, Enterococcus fecium and Enterococcus avium.を分離同定した。この DNA を解析した結果 1494bp の塩基配列が明らかとなった。阿波晩茶から分離した微生物の中にコラゲナーゼ活性を有している微生物が明らかとなった。阿波晩茶の浸出液中に抗酸化性を示す物質があることが明らかとなった。
著者
妹尾 弘子
出版者
武蔵野大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究の目的はイタリアの精神病院の閉鎖に伴う看護師の地域精神保健活動の実態を明らかにすることである。当時イタリアのトリエステで改革に携わった看護師等にインタビューを行い内容の分析を行った。看護師達は改革に伴い、患者を地域に戻すために病院内から自分達も積極的に地域に出ていき、住民に理解を得るためのミーティングや訪問を頻回に行うなど、院内での看護にとどまらず生活者としての当事者を支えた。
著者
キスチャック ウィリアム Kischuck William
出版者
川村学園女子大学
雑誌
川村学園女子大学研究紀要 (ISSN:09186050)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.190-178, 2006-03-15

カナダ人の女性作家、シーラ・ワトソン(Sheila Watson, 1909〜1998)作の短編を試訳する。シーラ・ワトソンは詩を一編、短編を六つ、それから二つの小説を発表した。今回取り上げた短編はAntigone(「アンティゴネ」)、である。Antigone(「アンティゴネ」)はワトソンの小説、名著The Double Hookと同年(一九五九年)に出版された。Antigone(「アンティゴネ」)は、ギリシャ神話に見られる名前を持つ登場人物の物語りだが、物語りの場所はカナダ、ブリティッシュ・コロンビア州にある精神病院とその周辺である。ナレーターが自分の父親を紹介することから始まる。父親は精神病院の院長を務めていると思われる。ナレーターのいとこに当たる少女二人、アンティゴネとイスメーネーをも紹介する。それから、物語りはアンティゴネが少女の頃、精神病院の敷地内にスズメの死体を埋葬する場面に移る。少年少女の三人に加えて、精神病院の女の患者であるカリストーの参列に恵まれ、お葬式は少年なりに厳粛に行われている。しかし、院長が姿を現し、この土地は公共の土地だ、とアンティゴネたちの行っているお葬式に反対をする。物語りの最後に、アンティゴネとナレーターの父親(院長)との間に生まれる同情、ナレーターの父親の寛大な態度は印象に残る瞬間である。
著者
佐藤 武
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
日本機械学會論文集 (ISSN:00290270)
巻号頁・発行日
vol.22, no.115, pp.181-187, 1956-03-25

In this paper, free vibrations of the Greek-Crossed Bar, which is formed by two bars intersecting on their middle points at right angles, are studied analytically. And the normal modes of the vibrations and the characteristic equations for determining the natural frequencies are shown. Numerical calcurations are carried out in detail and the influences of the dimensions and the physical prperties of the two bars on the natural frequencies are also discussed.
著者
角尾 篤子
出版者
信州大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

1.戦後の教育改革の中で、CIE内部にも高等教育についていわゆるヨーロッパ型教育を提唱する者と、より幅広い大衆に対する高等教育を考えるアメリカ型の考え方を推進する二つの考え方が存在した。2.1の問題については、当時の文部省内における考え方とも連携しており、旧制の専門学校についての短大構想とも結びついていた。3.Holmesと教育課で一緒に教育改革の仕事をしていたWiggleswirthの帰国後、米国で短期大学連盟の理事をしていたEellsがその後任として着任し、今までの、教育課の政策からはずれた様々な見解を展開し、Holmesの4年制新制大学推進案と鋭く対立し、高等教育プロジェクトが停滞させられた。4.戦前日本の教育事情を実際に体験していたHolmesは、大学が自ら大学設置基準を策定し、日本の高等教育を推進していく為の大学基準協会を創立させた。5.Holmesは、加えて日本の女子高等教育の必要性から、二つの国立女子大学の創設、私立の女子大学の設立、家政学部の創設に重要な役割を果たした。6.民主主義を推進するためには、草の根からの日本社会の変革が必要と考えたHolmesは、大学婦人協会、全国女子学生連盟などの組織化に尽力した。7.女子に対する差別教育を撤廃するために、小学校から男女共修の家庭科を履修させるカリキュラムを、Holmes,Donovan,山本松代等が中心になって作り上げた。
著者
室伏 誠
出版者
日本大学短期大学部
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

魚類の性染色体分化について明らかにする目的で、染色体調査を行った。分析を行った魚種は、トラギス科、ハタ科、ネンブツダイ科、スズメダイ科、ツバメコノシロ科、タカベ科、アジ科、タイ科、イシダイ科、タカノハダイ科、カワハギ科、セミホウボウ科、ゴンズイ科の計13科21種である。染色体調査は、著者らが確立した鰭組織の初代培養法によって得た培養細胞を用いた。染色体数は、クラカケトラギスの2n=26から、ツバメコノシロの2n=50の範囲に含まれ、このうち48が最も多く12種であった。一方、核型は、すべて単腕型を示したコウライトラギス他7種から、すべて両腕型であったクロホシイシモチ他1種までさまざまであった。このうち、NZ産カワハギについては日本生物地理学会誌(1989)に、同国産ブル-モキについては同学会第45回大会において発表した。中でも、性染色体分化に関する興味深い知見がスズメダイ科1種において観察された。すなわち、スズメダイでは、対をなさない大型のM型染色体をもつ2n=47の雄個体と、それを含まずA型染色体が1対多い2n=48の雄および雌個体が観察された。雄に見られた2つのタイプは、複合性染色体機構の派性過程にあるため、XYとXXYの両タイプが混在するものと考えられた。本結果については近く関連学会で発表の予定である。次に染色体判別のためNOR's分染を行ったところ、15種のうち13種において1ないし23対の染色体に濃染部が認められた。その他の分染法も含めマ-カ-染色体の調査が今後課題である。一方、異形を示すマダイのST染色体について、50個体の稚魚を用いてその変異を調査した。その結果、染色体が観察された41個体のうち、短腕部の大きなL型と小さなS型の出現状況は、SS型22個体、LS型7個体、不明12個体であった。これらの変異は、雌雄差による可能性も考えられ今後さらに調査を行う予定である。これら結果は日本水産学会平成2年度大会においてその概要を報告した。
著者
毛利 勝彦
出版者
国際基督教大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

要国による非公式フォーラムとしてのG8サミットは、変化する国際政治経済の文脈において、強大国の単独主義を牽制し、多国間主義再生への足掛かりとして機能しうる一方、少数国による寡頭制化の可能性もはらんでいる。新興国、アフリカ諸国、市民社会等との対話によってG8をより民主的なグローバル秩序構築のための協議体に転換する方向もありうるが、金融危機や気候変動などに対処する枠組みとして台頭してきたG20はまだ十分にその機能を果たすまでには至っていない。
著者
清野 和人 金子 正人 武内 惇 藤本 洋 薗田 考造
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ET, 教育工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.437, pp.21-26, 2006-12-08

コンピュータの構成やシステム設計法などの技術を効率よく習得させることを目的としたグループ協調学習支援システムを提案する.経験によって獲得した技術を効果的に使用する技術(経験技術)を有する技術者(熟練者)のように技術を使用することができないという問題を解決するため,熟練者の持っている「暗黙知」である経験技術を誰もが扱えるように「形式知」として表現,活用できるようにする必要がある.本論文では,経験技術の表現,経験技術に共鳴することで技術を使えるようにするグループ協調学習法,グループ協調学習における理解度の評価について提案する.
著者
渡辺 稔 武井 智美 河合 智之 今泉 祐治
出版者
名古屋市立大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1988

ラット、ブタ等の哺乳動物の虹彩散瞳筋において各種薬物により張力変動が生じる時、平滑筋細胞でのどのようなCa動態の変化がそれをもたらしているかが研究課題であった。特に副交感神経興奮時或いはムスカリン様作用薬投与時の弛緩機構解明を主に検討した。まずムスカリン作用薬がM_2タイプのリセプタ-を介する可能性が高いものの従来のM_1、M_2という分類では充分説明できないことがわかった(あたらしい眼科、1989)。また毛様体神経節除去によりラット散瞳筋を副交感神経除神経すると、神経刺激による弛緩だけでなく、ムスカリン様作用薬による弛緩も消失した(E.J.P.,1988)。このことは、化学伝達物質のアセチルコリンが何等かの弛緩物質の遊離を介して散瞳筋を弛緩させている可能性を示唆するものである。そこで、弛緩を引き起こす生理活性物質を広く検索した結果Ca、ベ-タ、アルファ、ムスカリニック拮抗薬すべての存在下で高K液により顕著な弛緩が生じることを発見した(B.J.P.,1990)。遊離弛緩物質としては、血管上皮細胞由来の弛緩物質(NO)或いはペプチドではないこと、またその弛緩の際の細胞内情報伝達系としては、_cーGMPおよび_cーAMPが関与している可能性は低いことが示唆された。一方、上頸神経節切除による交感神経除神経では、散瞳筋の交感神経終末の変成によるノルアドレナリン再取り込み能消失のためと考えられるノルアドレナリンに対する特異的感受性の増大が見られたが、ムスカリン性弛緩は影響を受けなかった(J.J.P.,1989)。Ca動態を探るのに最も有用と思われたFura2による細胞内Ca濃度の測定は散瞳筋では組織が非常に小さいため張力との同時測定の成功率が非常に低くまだ結果の発表段階に到っていない。以上の結果からラットおよびブタ虹彩散瞳筋において、ムスカリン作用薬および高K液は副交感神経由来の弛緩物質を遊離させ、筋を弛緩させる可能性の高いことがわかった。