著者
山本 修吾 林 豊彦 中山 貞夫 伊藤 建一 鈴木 禎宏 古賀 良生 宮川 道夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MBE, MEとバイオサイバネティックス
巻号頁・発行日
vol.96, no.257, pp.101-108, 1996-09-25
被引用文献数
14

本論文は, 人工膝関節置換術(total knee arthroplasy, TKA)により人工膝関節に置換した膝関節運動の術中測定について述べたものである. この測定のために, 術中計測に必要な滅菌, 操作性, 精度の諸条件を考慮し, 著者らは高分解能リニアCCDカメラを用いた光3次元測定装置を開発した. 二つの人工関節コンポーネントに各4個, 計8個のLEDを取り付け, その3次元位置を左右3台, 計6台のCCDカメラを用いてサンプリング周波数100Hzで測定する. カメラキャリブレーションの後, 精度評価実験を行った結果, LED位置の測定誤差は0.24mm以内, 空間分解能は0.06mmであることが明らかとなった. また切断肢を用いた予備実験から, 本システムは術中測定に必要とされる操作性と精度を十分に備えていることが判った.
著者
田中 真 内田 純平 宮岡 祐一郎 戸川 望 柳澤 政生 大附 辰夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. VLD, VLSI設計技術 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.104, no.478, pp.127-132, 2004-11-25
被引用文献数
4

レジスタ分散型アーキテクチャを用いると,レジスタ間データ転送を利用することによって配線遅延が回路の性能に与える影響を削減することが可能であるが,高位合成のスケジューリングの段階からフロアプラン情報を考慮する必要がある.本稿では,レジスタ分散型をターゲットアーキテクチャとし,(1)スケジューリング,(2)レジスタバインディング,(3)モジュール配置,の工程を繰り返し,(3)から得られたフロアプラン情報を(1),(3)の工程にフィードバックすることによって,解(合成結果)を収束させる高位合成手法を提案する.提案手法により,フロアプランを考慮したレジスタ間データ転送を用いた回路を解として得ることが可能となる.また,計算機実験によって,提案手法の有効性を示す.
著者
増田 育司 酒匂 貴文 松下 剛 白石 哲朗 切通 淳一郎 神村 祐司 小澤 貴和
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.709-716, 852, 2003-09-15
被引用文献数
5

鹿児島湾産アカカマス1631尾の耳石横断薄層切片をもとに,本種の年齢と成長を検討した結果,縁辺成長率の経月変化および優勢ないし劣勢年級群の経年出現状況から,用いた耳石輪紋(不透明帯内縁)は年輪であることが立証された。6月1日を誕生日と仮定して,輪紋数に応じて個体毎に年齢を割り振り,Bertalanffyの成長式を当てはめた結果,雄はL_t=304.6{1-exp[-0.433(t+3.385)]},雌はL_t=337.5{1-exp[-0.421(t+2.972)]}で表された。両式は有意に異なり,いずれの年齢においても雌は雄より大きい体サイズを示した。最高年齢は雄で11歳,雌で8歳であった。
著者
小林 和男 飯山 敏道 藤本 博巳 酒井 均 平 朝彦 瀬川 爾朗 古田 俊夫
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(A)
巻号頁・発行日
1988

本補助金による2年度にわたる集中的な研究によって西南日本沖(南海トラフ陸側斜面)の海底湧水帯の位置が精密に同定され、その実態がはじめて詳しく解明された。シロウリ貝群集が湧水帯上に集中して生息することは1985年のKAIKO計画においてすでに推定され、世界の他海域(バルバドスやオレゴン沖)でも証拠が挙がっていたが、今回現場での海底下鉛直温度勾配測定によって1年数mに及ぶ湧出水がシロウリ貝群集直下の径1m程度の範囲に集中して存在することが明瞭に示された。この湧出水はやや、深部からもたらされたメタン、硫黄等を含み貝の生育を助ける共生バクテリアの餌となると共に、酸素に富んだ表層間隙水により酸化されて炭酸カルシウムをつくり、周囲の堆積物の間隙を埋めて堆積物を固結させる働きをすることがわかった。湧水帯が集中する海溝付加帯の変動前面(水深3800〜3600m)でも1m弱の軟い堆積物の下に固化した砂泥の存在が推定され、海底にもいくつかの堆積物チムニ-が顔を出していることが曳航テレビと潜水船で観察されて試料採取にも成功した。この地点では3ケ月にわたる地殻熱流量と海底電位差の連続測定が行われ、有意な時間変動を検出している。一方、変動前面の上方に当るバックスラスト域(水深2000m)では小さなシロウリ貝群集が発見されスラストに沿う小規模の湧水が推定されるが、それ以外の海底には貝殻を含む固結した堆積物が露出し侵食を受けていることが判った。前面域で堆積し固化したものがしだいに上方に押し上げられて一部が露出するがほとんど地層内にとり込まれて行く一連の過程が1地域で観察されたことになり、プレ-ト沈み込みに伴う海溝付加帯の生成と成長についてこれまで古い地質時代の地層について推定されていたできごとが、現に海底で起こっているようすをありのまゝにとらえることができた点で日仏協力KAIKO-NANKAI計画の一環としても価値の高い成果である。
著者
山口 剛史 井島 亮一 塚本 和也 樫原 茂 尾家 祐二
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IN, 情報ネットワーク (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.105, no.628, pp.293-298, 2006-02-23
被引用文献数
3

近年の無線LANの急速な普及に伴い,今後は複数の通信事業者が提供する公衆無線LANサービスが混在し,互いにオーバラップすることで,ユビキタス環境が形成されると予想される.このようなユビキタス環境では,(1)端末の移動,及び(2)干渉による通信品質の劣化が頻繁に発生すると考えられる.そのため,これらの品質劣化を適切に検知し,より良い通信品質を提供可能な無線LANヘハンドオーバすることが重要となる.先行研究ではハンドオーバ決定指標に着目し,既存のハンドオーバ決定指標の問題点に言及した上で,フレーム再送回数の有効性をシミュレーション実験により示した.しかし,電波の再現性などの問題から,電波強度との比較実験は行っていない.そこで,本論文では実環境においてFTP通信とVoIP通信を用いて,(1),(2)の検討項目に関して実験を行い,その結果からハンドオーバ決定指標としての電波強度の問題点とフレーム再送回数の有効性を明らかにする.
著者
奥山 嘉昭 村上 卓弥 村津 文武 浅井 伸一 佐藤 直樹 中本 幸一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告モバイルコンピューティングとユビキタス通信(MBL) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.21, pp.111-118, 2004-03-04
被引用文献数
5

PDAなどの携帯端末の発展によって,利用者が移動する毎に公衆無線LANアクセスポイント・車内無線LANなど様々な無線LANネットワークに接続する形態が現実のものとなっている.しかし,従来の携帯端末では,無線LANに接続するための設定が煩雑である上,ユーザのニーズにあったネットワークを自動で選択し,接続しているとは言い難い,そこで本稿は,無線LANに接続するための設定簡略化と,ユーザのニーズにあったネットワークに自動的に接続を行うためのデータ管理方式について提案する.ユーザのニーズに応じて複数の無線LANネットワークの設定の中から適切なネットワーク設定をダウンロードし,適切なネットワークに自動的に接続を行うことでユーザの無線LANネットワーク設定/接続時の負担を減らすことができる.Mobile terminal users connect several wireless LAN network, such as public, office and home wireless LAN progress of PDA. However, it is troublesome for the present mobile terminal user to setup mobile terminals to connect with wireless LAN. Also it is impossible for the terminal to select the most suitable network which the user requires. This paper introduces automatic configuration method for wireless LAN and data management method for automatic network selection. By using these methods, user can connect wireless LAN network easily and terminal connects automatically to network which user requires.
著者
岩坪 充雄 工藤 航平 久野 俊彦 谷口 眞子 杉 仁
出版者
「書物・出版と社会変容」研究会
雑誌
書物・出版と社会変容
巻号頁・発行日
no.4, pp.89-123, 2008

「碑」としての字姿と「文献」としての文字 / 岩坪充雄資料としての筆子塚等の可能性へ向けて / 工藤航平記念碑の言説と建碑の心意 : 三つの水害記念碑 / 久野俊彦「武州~上州の碑文調査」参加記 / 谷口眞子武州~上州、在村碑文の調査と補足資料 / 杉仁
著者
佐藤 信夫 角谷 秀典 井坂 茂夫 島崎 淳 松嵜 理
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.83, no.8, pp.1263-1269, 1992-08-20
被引用文献数
5 1

1975年から1988年の間に千葉大学医学部泌尿器科でTURを施行した表在性膀胱移行上皮癌(Ta,T1かつG1,G2)159例を対象として,進展を予測する因子につき検討した. 臨床所見:年齢,性,主訴:症状発現から受診までの期間,検査所見:ESR,CRP,貧血,内視鏡所見:腫瘍の位置,数,大きさ,形態,病理組織学的所見:異型度,深達度,尿細胞診,ABH血液型抗原(ABH),Thomsen-Friedenreich抗原(T-ag)につき検討した.進展と有意に相関したのは高年齢,多発,広基性腫瘍,G2,T1,陽性尿細胞診,ABH陰性,T-ag異常であった. 多変量解析法で分析すると,進展に影響をおよぼす因子の重要度はABH,深達度,T-ag,形態,異型度,年齢,数の順であり,ABH,深達度,T-ag,形態の4因子が有意に高かった.さらにABH,T-agは他の臨床病理学的因子と相関せず,表在性膀胱腫瘍の進展の予知因子として有用であると考えられた.
著者
北浦 かほる
出版者
一般社団法人日本建築学会
雑誌
日本建築学会論文報告集 (ISSN:03871185)
巻号頁・発行日
no.275, pp.75-86, 1979-01-30
被引用文献数
2

建築空間内におけるテクスチュアの視知覚現象については, (その1)で明らかにした。ここでは, その見えの現象を支配すると想定される主な要因, 粒子の断面形粒度面での輝度をとりあげ, 箇々の知覚現象について検討した。最終的には, これらの見えの現象の場である実空間内の視知覚に, より近似されるため, 擬似完全拡散光状態における見えのあらさを求め, その傾向を把握した。これらの分析より明らかになった主要な事項は, (1)粒子の断面形と視知覚現象とは密接に結びついており, 断面形によって, 誘因されやすい知覚型が存在する。例えば, 多角形断面では, 視知覚現象は, A型知覚(暗部図視型)を中心に展開され, それに比して円形断面では, B型知覚(明部図視型)をとりやすい。又, 粒子のあらさと知覚型の関係では, 両断面形とも, 粒子があらい程B型知覚をとりやすい傾向がある。断面形による知覚現象の支配の強さは, 個人の知覚特性よりも強く働いている。(2)同じ知覚型に属していても, 断面形により, 視知覚量に大きな差異が認められる。即ち, 多角形断面粒子では, 明部が多様に分化し, ハイライトをもつ面が特に強調して知覚されるため, 小さな粒子のように理解される。そのためB型知覚の粒子の見えは, ハイライト部分の面積と相関し, A型知覚よりも小さな値をとる。円形断面粒子では, 明度が漸次, 連続的に変化するため, 明部は1つにまとまりをもって知覚される。見えのあらさは球表面積と強い相関をもっている。その結果, B型知覚の見えの大きさは, A型知覚よりも大きな値を有する。(3)見えのあらさにおいて, 10点平均あらさが有効となる閾値は約100μである。それ以下では, 10点平均あらさ, 又はあらさ幅の中, より大きな値を示す方が, 見えのあらさとして判断される。60μ以下の細かい粒子では, 反射グレアの影響がみられる。ハイライト部分を「図」と認識するため, B型知覚が増加する。あらさの知覚尺度の上限については, (その1)の結果とも併せて考えれば, 照射角別の回帰式が一点に集中し, 見えのあらさが, 照射角の影響をうけなくなる値であるといえる。(4)見えのあらさは, 表面あらさ粒子の細かいもの程, 面の明るさに影響されている。明るさによって, 継時的場が構成され, その誘導効果もみられる。即ち, 暗順応の場では, 見えのあらさの誤差率が大きく, 明順応の場では小さい。あらいものでは, 粒子の実像とその上に投影されている明, 暗部分とを分離して知覚出来るため, 輝度による「継時的場」の影響を直接的に受けない。(5)面の明るさと見えのあらさとの関係を実験で求め尺度化した。見えのあらさは輝度による場の誘導効果を除去すれば, 粒度とは関係せず, 輝度との相関のみで表わせる。(6)完全拡散光状態における, 視知覚現象をとらえ定量化した。完全拡散光状態における見えは, 照射角15°におけるA型知覚とほぼ類似した傾向を示している。しかし, 視知覚量は, 粒度の小さい範囲では, 照射角15°のものより大きく, 粒度の大なる範囲では, 幾分小さい値をとる。あらさによる見えの変化率は完全拡散光下の方が幾分小さい。 終りにあたって本研究について, 御指導, 御助言いただいた大阪市立大学, 上林博雄教授に深く感謝致します。又, 実験にあたっては, 丹原, 河原, 畠田, 荒蒔, 福知, 各氏, 及び被験者として協力いただいた大阪市立大学学生諸氏に対し, 心から感謝の意を呈します。 尚, 本研究の一部は文部省化学研究費補助金によってなされた事, 実験用試料の一部は, 天辻鋼球, 田中寛治氏の御厚意によるものであることを付記します。
著者
武内 章記 柴田 康行 田中 敦
出版者
一般社団法人 日本環境化学会
雑誌
環境化学 (ISSN:09172408)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.1-11, 2009 (Released:2009-09-25)
参考文献数
21
被引用文献数
1 1

Mercury (Hg) is a globally distributed and highly toxic pollutant in the environment. Its mobility and biomagnification in aquatic food chains depend on its biogeochemistry and redox cycling. Hg isotope analysis is an important new tool for identifying Hg source and tracking Hg transformations in the environment. This review summarizes the following 4 points to endorse the Hg isotope research; 1) definition of Hg delta (δ) values and Hg standards, 2) methods of Hg isotopic measurement, 3) Hg isotopic fractionation, and 4) natural Hg isotope variation.
著者
網本 勝彦 佐々木 修 磯貝 誠 北島 崇 大石 英司 岡田 伸隆 安原 寿雄
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.60, no.6, pp.681-685, 1998-06
被引用文献数
2 15

Clostridium novyi(C.novyi)B型菌のα毒素を精製し, トキソイド化後, りん酸アルミニウムゲルアジュバントを加えた精製α毒素トキソイドワクチンを作製した.4μg以上のトキソイドを含むワクチンを2回免疫したモルモットは全てC.novyi B型菌の芽胞攻撃に対して耐過した.攻撃前のモルモットの抗毒素価をVero細胞を用いて測定したところ, 10単位以上を示したモルモットは全て攻撃耐過していた.ついで, トキソイド化した培養上清及びこれに不活化した破砕菌体を加えた非精製α毒素トキソイドワクチンをモルモットへ免疫および攻撃したところ, 10単位の抗毒素価が攻撃後のモルモットの生死の境となった.また, 死亡したモルモットの攻撃から死亡までの時間は抗毒素価に比例した.以上の成績より, α毒素が, Clostridium novyi B型菌の培養上清中の主要防御抗原であるものと推察された.
著者
Pak Son-Il Han Hong-Ryul 清水 晃
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.61, no.9, pp.1013-1018, 1999-09-25
被引用文献数
4 36

病院犬から分離したメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)12株の試験管内薬剤感受性, 毒力, パルスフィールドゲル電気泳動法(PFGE)による遺伝子型別を行った. 薬剤感受性試1験では, 大多数の菌株が供試したβ-ラクタム系に耐性で, 全株がグリコペプチド系に感受性であった. アミノ配糖体系は抗菌活性がなかった. LD<50>は菌液を腹腔内接種し, Spearman-Kardcr法で求めた. MRSAとMSSA(メチシリン感受性黄色ブドウ球菌)のマウス致死活性は, 正常マウスとサイクロフォスファミド処置マウスで意義ある違いが認められず, 両株は同等の毒力を有していた. MRSAとMSSAの間でエンテロトキシン産生率に違いがみられ, MRSAの83.3% (10/12),MSSAの14.3%(1/7)がエンテロトキシンを産生じ, MRSAの優勢エンテロトキシン型はB型であった. MRSAの全株が莢膜型5型に属し, 一方MSSAは多様な莢膜型(4株:5型, 1株:8型, 2株:型別不能)を示した. PFGE解析では, 12株のMRSAは48.5-630.5kbの間で9-11のフラグメントを産生し, 6つの異なったパターンを示した。 これらの結果から, エンテロトキシンの産生性と莢膜型はマウスに対する病原性に役割を演じていないこと, またPFGEはMRSAの特徴づけに有用な方法であることが示された. 本論文は韓国の獣医学領域における最初のMRSA分離報告例である.
著者
楊 暁伶 北島 宣 長谷川 耕二郎
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.538-543, 2002-07-15
被引用文献数
2 8

'土佐文旦'×'水晶文旦'の交雑実生二倍体, 三倍体および四倍体個体群について, CMA染色による染色体構成を明らかにし, 染色体対合様式や二倍体間の交雑で三倍体や四倍体が出現する機構を検討した.1. 交雑実生二倍体38個体ではCMA染色により13種類の異なる染色体構成が認められ, 交雑実生個体は極めて多様な染色体構成を示すことが明らかとなった.2. 交雑実生二倍体の染色体構成において, A型染色体は1&acd;3本, B型染色体は0&acd;1本, C型染色体は3&acd;5本, D型染色体は2&acd;4本, E型染色体は8&acd;10本の範囲で出現した.また, B型染色体をもつ個体ではA型染色体が1&acd;2本の範囲で出現した.これらのことから, '土佐文旦'染色体の対合様式は, AB+CC+CC+CD+DE+EE+EE+EE+EEまたはAB+CC+CC+DD+CE+EE+EE+EE+EEと推定された.3. 交雑実生三倍体では6個体で3種類の異なる染色体構成が出現した.これらの染色体構成は, 減数第I分裂または第II分裂の非還元による非還元雌性配偶子に起因しているか, 減数第II分裂の非還元による非還元雄性配偶子に起因している可能性が示唆された.4. 交雑実生四倍体では3個体で2種類の異なる染色体構成が出現した.これらはB型染色体を2本もち, いずれの染色体型も偶数存在することから, 雌性配偶子, 雄性配偶子ともに減数第II分裂の非還元に起因すると考えられた.これらのことから, '土佐文旦'×'水晶文旦'の二倍体間の交雑で三倍体が出現するのは, 非還元雌性配偶子に起因する場合と非還元雄性配偶子に起因する場合のどちらも存在すると考えられた.
著者
麻生 武志 TATSUMI Kenichi YOSHIDA Hisahiro YOSHIDA Yataro
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.88-96, 1983-01-01
被引用文献数
1

MN血液型不適合のために過去4回妊娠29-36週にて子宮内胎児死亡を来した症例に対して新しく開発した母体血中抗体除去法を施行し生児をうることができたので報告する.本妊婦の血液型はO,NNss,CcDeeで夫はO,MMss,CcDEeであり,今回の妊娠18週における抗M抗体は×512に上昇したため再度の胎内死亡を防ぐために先ず抗体を含まない新鮮凍結血漿を用いてplasmapheresis(1回の交換量2,500ml)を6回実施したところ重症の輸血後肝炎を発症した.肝炎の急性期が過ぎた後抗体除去法を開始したが本法は成分採血装置により患者血漿を採取し,バッグ内で4℃,10分間,1/2.5量のMM血球と反応させ抗M抗体を吸着除去した後に血漿を再輸注するもので,血漿量3.0-7.0L/週の割合で妊娠23-32週にわたり計22回行った.これにより母体血中抗体の上昇は×512に留まり,羊水中ODD-450値はLiley graphのupper mid zoneの範囲を維持し,母体肝機能は正常化して児頭大横径の変化も標準的であったが,妊娠33週に入り胎動の減弱とNST上sinusoidal patternがみられ胎児切迫仮死の診断の下に緊急布切を行い1,960gの女児をApgar score 2で娩出,児は強度の貧血を呈したため交換輸血,血小板輸濫等を要したが生後の身体的知能的発育は正常である.本法の原理は他の抗体除去にも応用可能で,血液型不適合による胎児貧血の進行を抑え胎外生活が可能となるまで子宮内生存を延長させる方法として副作用も少なく有用であると考えられる.