著者
宮下 英明 神川 龍馬
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

「天狗の麦飯」と総称される土壌様微生物塊について,既報産地の再調査・解析をおこない,異なる山系のものが類似の微生物群集構造をもつも一方で,全く異なる微生物群集構造をもつものがあること,「天狗の麦飯」の弾力のある粒状微生物塊の形成には,細胞外粘質物質をもつγ-proteobacteria及びAcidobacteriaが寄与していること,既報産地の「天狗の麦飯」の消滅に,植物による被覆や土壌化,人為的攪乱が深く関わっている可能性があること,が明らかになった。
著者
佐々木 あや乃 藤井 守男
出版者
東京外国語大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

研究代表者は、『精神的マスナヴィー』の逸話部分の下訳を終え、出版に向け訳書の解説執筆に着手した。研究分担者は、ルーミー研究に不可欠な基本文献蒐集をおこない、『精神的マスナヴィー』全篇の翻訳も鋭意続行した。『精神的マスナヴィー』の数多の写本の存在が知られているが、本研究では、当初の予定通りニコルソン版を底本とし、データベースを作成する作業を進めるため、研究代表者はエンジニア班と校閲・入力班を組織し、本年度はほぼ毎月研究会を開催し、進捗状況を報告しあう機会をもった。作業途中で、イランの言語・文学アカデミー(ファルハンゲスターン)から最新のマスナヴィーが出版されたとの情報を得て最新版を入手したものの、ニコルソン版との差異がかなり激しいことが判明したため、この版は採用せず、当初の予定通りニコルソン版を底本としたデータベース作成を続行することとした。また、ニコルソン版では、冒頭から2835詩行までが、マスナヴィー最古の版であるコニヤ版を反映しきれていないという事実も判明した(ニコルソン版は2836詩行以降はコニヤ版を完全参照している)ため、本研究においては、ニコルソン版とコニヤ版を比較しながら、2835詩行までの完全版データベースを構築するという方針転換を強いられることとなった。よって、毎月の研究会開催により鋭意準備を進めた結果、今年度は1200詩行前後までの校閲と入力、修正作業にとりかかり、作業のペースを把握することとした。次年度(最終年度)でコニヤ版に基づいた、全2835詩行のデータベース構築が完成する予定である。
著者
安部 有紀子 杉本 和弘 望月 由起 蝶 慎一
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究は、日本の学寮プログラムの教育的展開の実態と特徴を明らかにし、質保証を基盤にした教育的な学寮プログラムを開発することを目的とする。本研究では各国の学寮改革の進展状況や、日本の学寮の教育的プログラムの実像へアプローチするとともに、質保証を基盤とした学寮プログラムの開発を試みる。
著者
倉沢 愛子
出版者
名古屋大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

平成6年度の研究を継続させ、平成7年7月-8月と12月にはインドネシアにおもむいて現地での資料収集ならびにインタビュー調査を行った。昨年から整理している、バリ島で教師をしていた一日本人の日記をワープロに入力し、整理する作業は、院生らの協力を得てようやく完成し、その内容分析を行った。さらに、日本占領期に制作されたニュースやドキュメンタリー映画の中に収録されている、日本軍司令官や、スカルノら対日協力者の演説の文言を分析し、日本が具体的にどのような理論で、インドネシアの住民を戦争協力に向けて動員しようとしていたのかを分析した。これらの研究活動と平行して、これまでの研究成果を具体的な形で出した。そのひとつは、終戦50周年を記念して神奈川県湘南セミナーハウスで平成7年11月に三日間にわたって開催された「東南アジア史のなかの日本占領」と題するシンポジウムに参加し、日本のインドネシア占領に関する研究発表を行ったことである。さらにインドネシア独立50周年を記念して平成7年7月11日から14日までインドネシアのジャカルタで開催された"National Revolution:Memories,studies,reflections"と題する国際会議にも出席し、研究発表を行った。その他、本研究テーマに関しいくつかの雑誌論文を刊行した。
著者
磯部 悠
出版者
大阪大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2019-08-30

CO中毒死事例は年間2,000人前後であり、日本の中毒死亡者の半数近くを占める。法医解剖事例においてCO中毒死事例が散見されるが、その中には血中CO濃度が致死的高濃度でないにも関わらず、死に至った事例が複数存在する。法医解剖業務の一環として死因究明を目的にゲノム解析を実施しており、当該事例においてはミトコンドリア遺伝子の高病原性希少変異が同定された。本研究では法医解剖事例におけるCO中毒死事例のCOによって障害を受ける心臓、脳などの臓器所見・ミトコンドリア遺伝子の変異・当該組織の遺伝子発現量情報を組み合わせたマルチオミクス解析を実施することにより、非致死的CO濃度で死に至る機序の解明を目指す。
著者
朝野 維起
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

昆虫の外骨格は、キチン及びキチン結合性タンパク質を主成分とするマトリクスである。脱皮に伴って外骨格が硬化する際に、カテコールアミン類がラッカーゼによっての酸化される反応を経るとされている。その結果生じるキノン、およびキノンが異性化されて生じるキノンメチドは反応性が高く、周囲の成分と共有結合的に架橋構造をつくる事で、外骨格が硬くなると考えられている。本研究は、キノンメチド生成に関わるキノンイソメラーゼの単離を目的とした。家蚕蛹外骨格の抽出物を出発材料に、各種クロマトグラフィーによる分離操作を行った結果、キノンイソメラーゼ活性を示す因子をほぼ単離した。
著者
神戸 大朋 片山 高嶺 高橋 正和
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

炎症性腸疾患(Inflammatory Bowel Disease:IBD)は、過去40 年にわたり急激に増加した疾患として知られる。IBDの発症や憎悪化のメカニズムの一つとして、「亜鉛欠乏」が「腸型アルカリフォスファターゼ(IAP)の活性消失」を引き起こすことがあげられることを、細胞及び動物レベルで証明し、IBDの予防と治療に亜鉛の活用が実践的であることを示す。さらに、亜鉛の吸収効率を上昇させる食品因子を探索し、本因子が実際にIBDの予防や治療に有効に作用することを実証する。亜鉛を充足させる食の提案は、医薬や食品など幅広い分野の応用に新しい展開をもたらすものと期待される。
著者
山本 英二 渡邉 匡一 山田 健三 佐藤 全敏 西田 かほる
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究では、これまで荒唐無稽で信憑性に欠けるとして研究対象と見られてこなかった偽文書や由緒書を活用して、近世日本における歴史認識と記憶の問題について取り組んだ。具体的には、長野県木曾郡王滝村御嶽神社を事例に、これまで19世紀以降に展開すると考えられがちであった由緒を、17世紀にさかのぼって分析・検討した。本研究では、従来の研究では手薄であった寺社縁起と由緒の関係に着目して、その由緒を論じた。またアーカイブズ学の方法論を活用して、史料群自体が有する歴史的言説について明らかにした。今回の研究では、戦前・戦後を通じてその全貌が明らかでなかった御嶽神社の古文書整理を完遂することができた。
著者
竹村 英二 伊東 貴之 江藤 裕之 Kornicki Peter Francis Elman Benjamin A. Tortarolo Edoardo Domanska Ewa Guthenke Constanze Grafton Anthony Pollock Sheldon Collcutt Martin C. Tankha Brij Mohan 佐藤 正幸 大川 真 尾崎 順一郎
出版者
国士舘大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本科研研究では、(1) 18~19世紀日本の儒学世界において発展した実証主義的学問の解明、(2) その清代考証学との比較検討と日中間の学問特性の相違点の考察、(3) 日本考証学と西欧のフィロロギーとの比較研究が目指され、これらを、分野の異なる研究者との共同研究、海外の研究者との国際研究連携をもってすすめ、下記「研究成果」に列挙したごとくの成果が産出された。またその過程では、ヨーロッパ日本研究協会(EAJS、欧州最大の日本研究学会)を含めた主要な国際学会での研究発表、英ケンブリッジ大学に於ける国際研究集会の開催も実施され、これらを通じ、高い水準の日本思想史研究の海外への発信にも寄与した。
著者
中園 聡 平川 ひろみ
出版者
鹿児島国際大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究課題では遺跡の発掘調査を実施し,調査の細かな過程や遺物の出土状況等について徹底した3D計測するなど,実践を通じてこれまでにないレベルでの高密度記録に挑む。実例をもって,その実現と展開の可能性を広く示し,調査時から始まる情報の陳腐化という難問への対処や再現可能性,データの利用可能性等を追求する。また,取得データを活用した研究上・教育普及上の活用例の一端も示す。
著者
OLAH Csaba
出版者
国際基督教大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

2020年度は主に二つのテーマについて研究を遂行してきた。一つには、これまでに収集してきた日記や文書からのデータを分析し、中世日本における唐物消費の実態状況について検討した。唐物の財産としての要素に注目し、国内での入手経路や売却、質入、贈与に関する事例を分析してきた。困窮を理由に唐物を売却・質入したり、あるいは経済的余裕があって唐物を収集したりするといった事例から、唐物流通に関わる禅僧の存在が浮かび、彼らの目利きとしての役割が見えた。禅僧が遣明使節の目利きとして起用された背景には、禅僧の唐物に対する知識、あるいは禅僧の国内における唐物流通への関与が大きく影響したことが再確認できた。美術史分野における唐物研究から知見を得て、中世における美術品としての唐物の価値や、価格の判断基準について知識を深めた。唐物輸入に関しては、宝徳年間および文明年間の遣明使節に関する記録に基づき、遣明船の出発前の唐物注文およびそのための資金提供、そして帰国後の積載貨物の荷降ろし作業の事例について再検討を行った。もう一つには、遣明使節による唐物入手の実態について検討した。『初渡集』『再渡集』の事例から、中国滞在中の唐物の入手経路や購入価格、購入のための資金調達などについて明らかにした。さらに『壬申入明記』を二つの視点から分析した。一つ目は、日本商品に対して明朝が支給する買取価格(給価)をめぐる寧波・南京・杭州での折衝の流れを再現し、給価およびその後の中国での貿易活動との関連性について考察した。二つ目は、華人との私貿易の時に起きた納品滞納の事件について分析し、実は二つの事件が記録されており、個別の検討が必要であるという新事実が明らかになった。
著者
竹井 成美
出版者
宮崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

1641年.オランダ人は出島に移され1868年の明治政府誕生までのほぼ200年間を過ごす。その間,キリスト教伝来以来西洋の音楽が日本にある程度根付き花開くまでになっていたのが、表舞台から姿を消す。しかし、『オランダ商館日記』には、1820年に長崎奉行の交代式でオペレッタが上演されたという記述や、出島の医官シーボルトが在日中にピアノ作品を書いたり、そのピアノ自体を山口・萩の豪商熊谷五右衛門に贈っで帰国したという資料がある。本研究では、主として平成17年度には(1)オペレッタの内容、平成18年度には(2)いわゆるシーボルトのピアノの実態調査とその作品について研究した。その結果、オペレッタは「短気な男」と「二人の漁師とミルク売り娘」が上演されたこと、その上演については、シーボルトのお抱え絵師の川原慶賀が七枚の絵に表して残しており、当時の様子を物語る貴重な資料となっている。一方、シーボルトのピアノは、1955年に郷土史家の田中助一によって発見され、その後広島の楽器店が修理したり、2000年の日蘭交流400年を記念したコンサートで音が再度よみがえる機会があったものの、全面的な修復までには至らなかった。しかし、1965年に財団法人熊谷美術館が発足し「シーボルトのピアノ」として展示されてから今日まで、同館の貴重な一品として所蔵されている。このように、本研究によって、200余年間におよぷ小さな出島の中で、西洋音楽がどのように鳴り響き受け継がれてきたかを少なくとも検証することができた。
著者
鍋島 茂樹
出版者
福岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究計画では、麻黄湯による宿主のオートファジー機構強化を介したインフルエンザウイルスに対する感染防御メカニズムを明らかにすることを目的とした。実験的にインフルエンザを感染させた細胞株にて、オートファジーの成熟阻害と細胞のアポトーシスが起こることがわかった。麻黄湯はオートファジー機能を正常化し、アポトーシスを阻害することがわかった。また、同時に麻黄湯は感染細胞が産生するIL-1β、IL-6などの炎症性サイトカインの産生を抑制する作用があることがわかった。さらに、麻黄湯はエンドゾームの酸性化を抑え、インフルエンザの脱核を阻害することがわかった。
著者
川久保 善智 大野 憲五 岡崎 健治 波田野 悠夏 竹下 直美 鈴木 敏彦 橋本 裕子
出版者
佐賀大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2022-04-01

1907年、京都市三玄院で石田三成の墓が発掘され、頭蓋の石膏製のレプリカが作成されたが、その直後に紛失していた。このレプリカが2014年、約100年ぶりに再発見された。本研究では、このレプリカの表面形状をレーザースキャンで3Dデータ化し、破損箇所の補修や皮膚形状のシミュレーション等を行い、それらの結果を加味し、3Dプリンターで出力した頭蓋の復顔を行う。
著者
増田 美恵子
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

妊娠期から産褥期に記憶の低下を自覚する女性は多い。そこで、妊娠期から産褥期にかけての女性の認知機能、特に記憶や注意の変化とその関連要因を明らかにするために、妊娠初期から産褥1ヶ月までの認知機能と関連要因を縦断的に調査したところ、視覚性記憶、言語性記憶、注意・集中力のいずれにも、妊娠期から産褥期での明らかな低下はみられないことが分かった。また、分娩時の異常があった褥婦は、産褥期に注意・集中力が低下する傾向がみられた。
著者
立原 一憲 大城 直雅 林田 宜之 西村 美桜 伊藤 茉美
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

琉球列島におけるバラフエダイ、バラハタ、ドクウツボの年齢と成長を解析し、各年齢と体重におけるシガテラ毒の含有量を分析した。その結果、寿命は、バラフエダイ79歳、バラハタ20歳、オジロバラハタ15歳、ドクウツボ25歳であった。いずれの種も高齢魚・大型魚ほどシガトキシンの含有量が多い傾向が認められた。バラフエダイでは、体長500㎜、体重4kg、年齢20歳以上になると強毒個体が出現し、宮古諸島のものが特に高い値を示した。バラハタとオジロバラハタでは、強毒個体は、いずれも1個体のみであった。ドクウツボでは、強毒個体は出現せず、大量摂取しなければ中毒を発症する恐れは少ないと判断された。