著者
横山 茂雄
出版者
奈良女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

英国エリザベス朝の学者ジョン・ディー(1527-1609)が、1582年から1587年にかけて協力者のエドワード・ケリー(1555-1597?)と共同でおこなった魔術作業を、彼らが遺した手稿群に依拠しつつ、詳細に分析する。特に、1583年から開示が開始された所謂『エノクの書』については、その複雑な開示方法を含めて、全容の解明に努めると共に、西欧ルネッサンス期の魔術、オカルティズムにおいて占める位置を明らかにしようとした。
著者
横山 茂雄
出版者
奈良女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

英国エリザベス朝の学者ジョン・ディー(1527-1608)が1582年から協力者のエドワード・ケリー(1555-1597?)と共におこなった魔術作業に関して、『神秘の書』の翻字刊本と直筆手稿の双方に依拠しつつ、特に初期の段階に焦点をあてて、「聖なる」知識、情報が具体的にどのような方法で開示されたのか詳細に分析した。
著者
白石 久二雄 サフー サラタ・クマール 幸 進 木村 真三
出版者
独立行政法人放射線医学総合研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2003

1986年のチェルノブイリ事故は世界に与えた環境汚染程度ならびにその後の放射線被ばくによる健康影響についても大きなインパクトをのこした。多くの研究が実施され結果も報告されているが、本研究では汚染地域を含むウクライナ国民の健康維持の観点から、放射性核種ならびに非放射性核種の摂取量について研究し、他の要因との関連性を、特に"住民の元素摂取量"に関連した健康影響因子に関して調査・解明を現地研究者と共同で行った。食事試料は陰膳方式で約300試料をウクライナ全国(25洲)から収集した。牛乳等の主要食品試料も収集した。試料は化学処理後、微量元素(I, U, Th, Co, Cs, Sr, Rb, Ba, Tl, Bi等)並びに主要、中間元素(Na, K, Ca, Mg, P, Fe, Mn, Cu, Zn等)をICP-MS(誘導結合プラズマ・質量分析法)ないしICP-AES(誘導結合プラズマ・発光分光法)にて定量した。灰化した試料については放射性核種(^<134>Cs, ^<137>Cs, ^<40>K等)の分析をγ-スペクトロメータで測定した。ウクライナ人の一日摂取量はBa O.51mg, Bi O.37μg, Br 3.Omg, Ca O.70g, Cd 8.0μg, Co 9.7μg, Cr 113μg, Cs 3.8μg, Cu O.70mg, Fe 7.9mg, 145μg, K 2.9g, Mg O.25g, Mn 2.3mg, Na 4.1g, P 0.99g, Pb 33μg, Rb 2.2mg, Sr 1.9mg, Tl 0.37μg, Zn 6.6mg, ^<60>Co ND-0.28 Bq, ^<134>Cs N.D.-0.59Bq, ^<137>Cs 0.5-570 Bq, ^<40>K 89 Bq, ^<226>Ra N.D.-11mBq, ^<232>Th 2.1mBq, ^<238>U 12mBqであった。日本人や世界の報告値と比較すると、Br, Cu, I, Mn, Znの摂取量が低い。元素間の相関を調べた所、高い相関を示す物もあり、環境汚染時を含めた食物連鎖における元素挙動の観点から重要である。興味が持てる。ウクライナには克山病やモリブデン毒等の著名な風土病はみあたらないが、特に、ヨウ素摂取量は栄養所要量、100μg以下であり、平素からの欠乏状況とチェルノブイリ事故の甲状腺異常との因果関係があると推察された。これらの精度の高い莫大なデータはウクライナの研究者から重要なデータとして賞賛を受けた。今後の事故対策、栄養・医学研究に役立つ基礎データを本研究で提供することができた。
著者
渡部 邦昭
出版者
九州歴史資料館
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、戦前期において軍事に関係する輸送を行っていた博多湾鉄道汽船および朝倉軌道という二つの地域交通事業者を取り上げ、軍事輸送がその経営にどのような意味を持っていたのかという点を明らかにした。具体的には、次の二点が判明している。一点目は、地域交通事業者が軍事輸送から得られる利益は、必ずしも常に大きいものではなかったという点である。二点目は、軍部や行政は軍事輸送の必要上、事業者にとっては採算性の低い輸送事業の実施を期待したが、その期待は事業者側も認識していたという点である。この二点から、軍事輸送に対する事業者と軍部の利害が、必ずしも一致しているとはいえないことを明らかにした。
著者
中野 春夫
出版者
学習院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は16世紀イングランド文学における浮浪者(vagabond)表象の分析である。本研究がこの社会集団に注目する理由は、16世紀の浮浪者が社会変化によって生みだされた近代最初の公的な貧困者たちであり、同時代のイングランド文学がこの集団に対して差別的イメージの原点となる負のステレオタイプを貼りつけたことにある。本研究は引籠りや離職者から、特定の外国人(ジプシーやアイルランド人など)、特定の職業(鋳掛屋や行商人など)まで一括して浮浪者と呼ばれた社会集団の表象において、16世紀イングランド文学が議会制定法、歴史書、パンフレットとの相互影響関係の中で特異なイメージを発達させた過程を歴史的に解明した。
著者
土井 守
出版者
岐阜大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2002

和歌山県日高郡南部町千里の浜と愛知県渥美郡渥美町恋路が浜に産卵のため上陸したアカウミガメから採取した卵を用いて、1)受精卵の移植前後の発生率の変化と最適な移植時期の検討、2)発生の進行に伴う胚の固着現象の意義、3)発生過程で生じる卵殻の白濁現象の組織学的解明並びに卵白蛋白質成分の変化、5)飼育下の雌雄アカウミガメの繁殖生理に関する内分泌学的研究について実施した。1)産卵直後から産卵後16時間以内に転卵(移植)を行うと発生の停止が起こらないことや、産卵後約30日以降に行った場合でも発生率の低下が抑えられる可能性も推察できた。2)胚が固着する卵殻上部(切断径3cm/卵殻径4cm)の卵殻と卵殻膜を切断除去した状態で培養を進行させると、卵黄上部に位置した胚が培養7日目には卵殻(膜)切断面まで移動し、培養後約30日を越えると胚の固着強度が弱まり、培養後50日以降に水分吸収による卵殻内圧の上昇が起こった後、2個体正常に孵化した。3)卵殻の白濁部と非白濁部を詳細に検討した結果、組織学的な違いは認められなかったが、水分の透過性の違いが卵殻の両域を形成するものと思われた。また、発生の進行に伴って分子量約40000の蛋白質の出現と消失が認められた。5)飼育下雌個体の血中エストロジェン濃度と非透過性カルシウム濃度は6〜8月から上昇し、翌年の4〜5月に最も高い値を示し5〜6月に低下する年周期を示した。また、血中プロジェステロン濃度は4〜5月中旬に急激に上昇した。一方、雄の血中テストステロン濃度は、測定開始時の1月以降5〜6月にかけて高い値を維持し、特に3〜4月で激しい変動幅が確認され、同時期に追尾などの性行動も観察された。以上の研究より、アカウミガメの発生学的または繁殖生理学的な基礎的知見を明らかにすることができ、これらの結果は今後の保護対策に大いに役立つものと考えられた。
著者
数馬 広二
出版者
工学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

この研究は、江戸時代を通して、関東(上野国(群馬県)、武蔵国(東京)、常陸国(茨城県)、安房国、下総国、上総国(ともに千葉県))の農村において剣術流派がどのように存在し、継承されたかを調査することで、農民の身体観を明らかにしようとする試みである。特に剣道場の場所(上野国群馬郡金古村・小野派一刀流中澤清忠、上野国・馬庭念流の江戸道場)、門弟の援助(馬庭念流20世樋口定廣の例)、流派による奉納額(中沢清忠、樋口定廣の奉納額)を調査した。また、下野国の剣術流派の分布をみた。また武蔵国八王子犬目村の八王子千人同心家、斎藤家が所蔵した文書を整理し、2013年までに、4,600のリストを作成した。
著者
佐藤 毅彦 前田 健悟 今井 一雅 戎崎 俊一 川井 和彦 坪田 幸政
出版者
独立行政法人宇宙航空研究開発機構
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2005

平成17年度に引き続き、星座カメラi-CANを米国ニューメキシコ州(アパッチポイント天文台)、スペイン・カナリー諸島(ブラッドフォード望遠鏡施設)、米国ハワイ州(国立天文台すばる望遠鏡)に設置した。これにより、海外6サイト、国内1サイトのネットワークが完成した。特にスペイン・サイトの設置は、日本の早朝に夜空の観察を可能とし、学校の授業での利用に対する制限を大幅に緩和した。また、ハワイ・サイトは、子どもたちが帰宅した後、自宅から星空を見るのに便利である。授業後の感想に大変多い「家へ帰ったら、早速見てみたい」という希望を叶えるものとなった。授業実践も、熊本市立龍田小学校、同清水小学校、同松尾西小学校、天草市立本町小学校、北海道教育大学附属小・中学校、石狩市立石狩小学校などにおいて、多数行った。また、科学技術館におけるサイエンス・ライブショー「ユニバース」での定期的な活用、熊本市博物館における特別講演会「ワンダー・プラネタリウム:南天の星空を見上げて」など、社会教育への展開も精力的に行った。これらを通じて、子どもたちの反応をアンケートにもとづき評価し、「興味・関心・意欲」といった情意面、「知識・理解」といった認知面の両方において有効な天体学習ツールに成長し得たことを確認できた。今後は授業での活用を継続するとともに、科学館・博物館における有効利用、さらに宇宙航空研究開発機構などで推進されている宇宙開発の啓蒙の一端を担うツールとしての発展が期待される。
著者
伊東 正博 小森 敦正
出版者
独立行政法人国立病院機構(長崎医療センター臨床研究センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

チェルノブイリ組織パンクにはこの2年間で約300症例が登録され、計3,000症例の症例集積が進んでいる。被曝甲状腺癌には一つの決まった特徴はなく、被曝形式により形態学的にも分子生物学的にも多様な形態を呈していた。チェルノブイリ地域から発生した小児甲状腺乳頭癌において、被曝の有無により、組織像に差はみられなかった。しかし、ヨード摂取の高い国の症例とは有意に差が存在し、低ヨード摂取は小児甲状腺疵の発生頻度の上昇、潜伏期の短縮、形態形成、浸潤性に影響を及ぼしていることが推察された。
著者
畑農 鋭矢 田村 哲樹 堀江 孝司 水落 正明 水野 誠 桑島 由芙 竹下 諒 野地 もも
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究の骨格として経済政策に関するアンケート調査を計6回実施した。蓄積されたパネル・データは各研究分担者の専門の観点から実証分析の対象となり,いくつかの重要な発見がなされた。多岐にわたる研究成果のうち,とりわけ幸福度に関する知見が注目される。すなわち,本調査の結果によると消費税に対する反応パターンによって幸福度が異なるらしいのである。幸福な人ほど消費税増税に無頓着で消費行動を変えず,幸福でない人ほど消費税増税にネガティブに反応する。つまり,消費税の影響も心の状態次第ということになる。
著者
佐藤 洋子 良村 貞子 森下 節子
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

1.小児入院施設の安全対策:(承諾が得られた小児入院3施設安全管理マニュアル、施設設備の検討)1)事故発生状況:調査前年度の病院別事故発生状況は、転落事故が23件、転倒事故3件であったが、その他の事故はなかった。2)3病院いずれも事故防止のための入院時資料を作成していたが、保護者を対象とするものが多く、小児を対象とする資料は、ビデオ・写真など、視覚的理解を促すものであった。3)3病院いずれも事故防止目的で環境整備(点滴、ベッド柵に関する安全使用表示。点滴スタンド脚の5脚化等、用具の工夫。クッションフロア・プレイルーム等環境の工夫)を実施していた。4)事故防止のために、B病院は7歳以上の患者を対象とする転倒・転落予測ツールを使用していた。2.入院患児の保護者の意識(質問紙回収率88.3%):1)保護者が入院中起こりやすいと考えている事故は、1位転落、2位転倒、3位打撲・外傷であった。2)事故防止実施上の責任を保護者と回答した者は、91.5%であった。保護者が看護師に期待する事故防止策は「環境整備を徹底してほしい」60.4%、「子供の行動を注意して観察してほしい」10.4%であった。以上のように、小児入院環境下では事故(転倒・転落、誤飲や窒息・打撲や外傷・火傷等)防止をするためのさまざま対策がとられていた。しかし、小児入院施設としての統一的な安全基準はなく、施設の工夫に任されていることが明らかになった。また、保護者は事故防止の責任を保護者にあると認識していた。保護者が、看護師に求める事故防止対策は、入院環境の整備が多いことが示された。このようなところから、看護師は、小児の病状を観察し、安全な環境を整備することが必要であり、安全基準の策定、保護者ならびに小児に対する教育等、具体的な事故防止の支援を進めることが今後の課題と考える。
著者
野家 啓一 川本 隆史 篠 憲二 清水 哲郎 鈴木 淳子 座小田 豊
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

ヘラクレイトスの「万物は流動する」(panta rhei)やゼノンのパラドックスを引くまでもなく、哲学の源流をなす思想家たちにとって《動き》は重要なテーマであった。モノの動きとヒトの動きにはどれほどの共通性があり、どこが違うのか。あるいは同じ動物の動きの中で、人間の動きにはどんな特徴があるのか。「人の移動の哲学」は、そうした哲学の根本問題に立ち返りながら知の組み替えを図り、同時に現代の社会と文化の変動が突きつけてくる実践的な難問に応答することを試みるものである。1年目は、「人の移動」を《哲学する》方法論の探究に主力を費やし、研究代表者の野家啓一は、「人の移動」がもたらす境界領域としての「異界」に注目する作業を始めた。2年目は、「人の移動」を可能にする空間のあり方を主たる検討課題とした。次いで、「人の移動」に関連する文化現象の一例として、「メタファー」を取り上げ、東北哲学会との合同シンポジウムを開催した。3年目は「人の移動」を可能にする時間のあり方の吟味から共同研究をスタートさせた。次いで、「人の移動」の哲学の基礎理論を固めるべく、世界的に再評価の動きが見られる哲学者ディルタイを取り上げ、東北哲学会との合同シンポジウムを開催した。哲学・倫理学の研究者を核として、社会心理学、比較文化論・農業経済学という関連領域の第一線のメンバーを分担者に加えた本研究の成果は、すでに各種のシンポジウムで公開したほか、東北大学倫理学研究会の協力のもと三冊におよぶ資料集を発行し、関係諸機関に送付してある。さらに研究代表者・協力者の個別の論文・報告にも共同研究の成果は折り込み済みである。
著者
野村 大成 KRUPNOVA Eve ELISSEEVA Kl 本行 忠志 中島 裕夫 杉山 治夫 ELISSEEVA Klavdiya G. EVELINA V.Kr KLAVDIYA G.E MATSKO Vladi 藤堂 剛
出版者
大阪大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1996

1. 汚染地域での土壌・生態系での放射性物質の蓄積とその核種: 汚染地域(ゴメリー、コイニキ、ブラギン)と対照地域(ミンスク)の土壌、植物、野生動物等での放射性物質の測定と核種の同定を行った。殆ど全てが^<137>Csである。チェルノブイリ核施設崩壊後、土壌、水中より放射性降下物は減少していっているのに対し、10年たった現在でも、草木、食用植物(イチゴ、キノコ等)、水棲動物(鯉、カエルなど)など野生動植物への強度の濃縮を認めた。バッタ、トンボ、モグラ、マウスへとより高度の放射性物質の生物学的濃縮がみられた。2. 微量長期汚染の生態系への継世代的影響: 野生のショウジョウバエ、カエル、ハタネズミでの染色体異常の検出を行ったところ、カエル等に事故後10年たった今も、直後とほぼ同じぐらい高頻度に染色体異常が検出された。これは、継世代的影響と考えるよりも、野生動物に高濃度の放射能が残存(濃縮)しているためと考えた方がよい。3. 生物学的影響の実験研究: 粉末化した野イチゴ、キノコなどの食物を飼料に混ぜてショウジョウバエ幼虫を飼育し、ショウジョウバエ翅毛突然変異検出を行った。赤イチゴで、有意に体細胞突然変異が検出された。4. ヒトでの遺伝子変異の調査: 放射能被曝者(放射性物質除去作業者、汚染地域住民など)およびその子供(約200名)の血液より単核球を採取し、白血病早期発見のため、WT1遺伝子発現の定量と分子レベルでの遺伝子変異の検出を行った。被曝者56名中血液症状を有した者28名中16名に異常に高いWT1遺伝子の発現がみられ、白血病高リスク群であることを示唆した。血液症状を呈しない被爆者28名中7名にも軽度のWT1の発現がみられたが、ミンスク在住正常人にも同じ傾向がみられた。しかし日本人49名や、日本在住のコーケシアン26名には全くWT1の異常値がみられず、今後の課題となった。
著者
村上 郁磨
出版者
学校法人久留米大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2011

[目的]本研究は、(1)大学事務職員独自のワークモチベーション尺度を作成し、その尺度を用いて職場のメンタルヘルスとの関係を調査すること、(2)3ヶ月間の運動介入が大学事務職員独自のワークモチベーション(以下WM)及び職場のメンタルヘルスに及ぼす影響を調べることを目的とした。[研究方法]アンケート調査にて個人的属性及び大学事務職員のWMを規定する要因を調査・分析し、大学事務職員独自のWM尺度(自己発信・他者からの評価・職務のやりがい・職業満足感・帰属意識・職場内人間関係:6因子23項目)を作成した。そして、「職場のメンタルヘルス測定尺度」(MHI-5)を独立変数、上記のWM尺度を従属変数として重回帰分析を行った。運動介入は男性事務職員20名を対象とし、歩数計を用いて実際の運動量を測定し、3ヶ月間(週2日:1回あたり速歩30分間)を行った。[研究結果]メンタルヘルス項目の「やりがい・達成感」はWM項目すべてに関係性が認められた。また、「疲労・消耗感」は、他者からの評価、職業満足感、帰属意識に関係性が認められ、さらに「社会関係の回避」は、職務のやりがい、職務満足感、職場内人間関係に関係性が認められた。また、3ヶ月間の運動介入の結果、メンタルヘルス項目の「勤労意欲の減退」、「疲労・消耗感」、「余裕・ゆとりのなさ」が改善し、大学事務職員のWM項目の職務満足感が向上した。これらの結果より、職場のメンタルヘルスが大学事務職員のワークモチベーションを部分的に予測することが明らかとなった。そして運動介入を実施することにより、職場におけるメンタルヘルスが改善され、大学事務職員のワークモチベーションが向上する可能性が示唆された。
著者
宮尾 克
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

広島の極低線量被爆者でも、広島・岡山両県の一般住民に比較して有意に高い各種のがん死亡が存在したことをLSS12に基づき、明らかにした。放射線影響研究所の研究者らが、遠距離被爆者のリスクを低く推定してしまった誤りの原因を明らかにした。被爆時の年齢が0歳から14歳の広島と長崎の被曝者を、全国の同世代の小児と比較した、がん死亡に関する追跡疫学研究を行なった。その結果、有意に高いがん死亡が認められた。
著者
渦岡 良介 松浦 純生 小川 真由 丸山 友也 神田 祥五
出版者
徳島大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

台風時などによる風倒木が発生した箇所では斜面崩壊が発生する場合がある。本研究では樹木の振動を受ける根系周辺地盤の緩みを力学特性の変化と考え、模型実験および現場実験により、この力学特性の変化のメカニズムと影響因子との関係を明らかにすることを目的とする。実験の結果、細粒分の多い緩い地盤で風荷重による振動によって根系周辺地盤の緩みが生じやすいことがわかった。
著者
片山 一道
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

京都市の伏見区、かつての伏見城城下の西部にあたる場所で江戸時代の廃寺の墓地(伏見城跡遺跡)が調査でされ、約630人分におよぶ古人骨資料(伏見人骨資料)が発掘された。この資料を骨人類学や骨考古学的の方法で分析して、江戸時代人京都町民の顔立ちや体形などの身体特徴、平均寿命や人口曲線などに関する人口学的特徴、歯疾患や骨梅毒疾患などの罹患率を明らかにするとともに、主要なタンパク質摂取源を推定する食性分析、人骨の鉛濃度分析などを実施した。成人の平均身長は男性が158cmで女性が144cmほどと短躯であったこと、丸顔の人が多かったこと、出生児の平均余命は男性が40歳弱で女性が30歳弱ほどと短命であったこと、虫歯と梅毒の罹患が著しく高率であったこと、淡水産や海産の魚介類をタンパク質源として利用していたことなど、すくなからずの特記すべき研究成果を達成できた。
著者
勝俣 啓 辻 宏道 纐纈 一起 束田 進也 大木 聖子 勝俣 啓
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

平成20年度に発生したチリ地震では津波の日本への到達が予測され,一日以上にわたって注意報や警報が発令された.地震発生から一週間後に津波に関する意識調査を実施した.「外国で起きた地震で発生した津波は日本まで到達することがあると思うか」などの問いに対しておよそ95%の正答率が得られ,日本人の津波に関するリテラシーの高さが明らかとなった.平成22年度はイタリアにおける地震予知問題に関する調査を実施した.地震予知情報を的確に発令しなかったことに対して,地震学者が刑事責任を問われるという特異な事件の経緯を現地調査も含めて詳しく分析した.
著者
KNELLER Robert 玉井 克哉 森口 尚史 隅蔵 康一
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

産学連携の改善が日本の経済回復にとって極めて重要であることは、日本のトップ官僚やビジネスリーダーたちはよく理解しているし、その課題の1つとして、知的財産管理の問題が重要であることにも気付いているようである。しかしながら、日本の大学および政府系研究機関で行われた発明の帰属のあり方、またそれが産学問の研究協力と産業におけるイノベーションにどのように影響を与えてきたかに関しては、体系的な分析はほとんど行われてきていない。本章では、日米の産学連携のシステムの比較分析を通じて、この問題に取り組む。技術移転システムに関する民間企業の新しいアイディア、新しい製品、新しい発明はどこから来ているか?少なくとも欧米に関しては、バイオ分野に関する主な発明の源は大学とバイオベンチャーにある。欧米の経済において産学連携システムは重要である。日本の製薬産業では、大部分の新薬は社内の研究所で発生しており、他の産業でも同じことが言える。日本の大企業が自前主義的イノベーションにより世界競争力を維持できるのであれば、アメリカ的産学連携システムはいらないであろう。1998年以前の曖昧な産学連携システムで十分かもしれない。しかし、この曖昧な産学連携システムが日本の産業上の需要を満たしていないのであれば、精力的なベンチャー企業、または積極的に技術経営を行う大学が必要であろう。日本におけるイノベーションシステムと産学連携システムはお互いに関連しあっているため、この関連性について、アメリカにおけるイノベーションシステムと産学連携システムを比較しながら、この2つのシステムが日本経済に将来的にどのような影響を与えるかを分析する。
著者
SIVILKA Juliann KHOMENKO Olga KHOMENKO OLGA
出版者
早稲田大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

オリガ・ホメンコ(研究分担者)は6月12日から20日まで共同研究成果を米国のボストンで開催されたジェンダーと消費者行動学会で、日本におけるバレンタインの歴史・プレゼント交換の文化史について発表を行った。その際に米国の研究者と意見交換を行い、また、発表を雑誌論文にする計画を立てた。6月3日から9日までモスクワにあるロシア国立図書館で、ソ連崩壊後の消費文化構造の変化、商品広告の誕生についての広告資料の収集を行い,それらを分析して戦後日本の事情と比較した結果を10月に名古屋で行われたロシア・東欧学会で、「ソ連崩壊後のロシア消費構造と消費文化の変化と転回・戦後日本との共通点と違い」として発表した。その時に多くの日本のロシア研究者と意見交換でき、次の共同研究につながることを期待している。6月27日から29日に仙台で行われたカルチャラルタイフィン学会では「戦後日本人女性の自己実現・広告と現実の間」について発表した。その時に日本におけるカルチャラルスタディーズの重要な人物と面会でき、自らの研究について報告もできた。以上の研究活動の結果として、今年度四つの雑誌論文を投稿することができた。日経広告研究所が発行している「日経広告研究所報」の4月と5月号に「戦後の商品広告と女性アイデンティティー形成(上)-「もの」と「幸せ」の関係」(上・下)を投稿した。そしてウクライナ科学アカデミーが発行している「東洋の世界」に"Women's, western cosmetics, advertising and shaping of women's identity in Japan during 1950s"と東京大学出版会発行の『思想史』(2008年9月号)に「婦人雑誌の家電広告における女性像の変化について(50年代後から)-母親像から多様な女性像への変化-」を投稿した。