著者
江崎 智絵
出版者
防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群)
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

オスロ・プロセスが停滞して以降、現在に至るまでの期間は、ハマースの動向に注目すると以下の3つの時期に区分することができる。第一期が2001年から2005年まで、第二期が2006年から2010年まで、第三期が2011年以降である。本研究の対象期間は、第三期に該当するものである。本研究では、2012年以降のパレスチナ情勢を事例として取り上げ、まず、パレスチナ内部の政治情勢および同地域を取り巻く国際関係の推移を時系列で整理する。それを踏まえ、①パレスチナ内部のパワー・バランスにおけるハマースの動き、②ハマースと近隣中東諸国との関係、という2つの側面について同時並行的に分析していく。
著者
大西 永昭
出版者
松江工業高等専門学校
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2023-04-01

新規メディアの登場とともに更新されてきた我々人間の認識や感性が文学にどのように影響してきたのかを、世界でも有数のビデオゲーム大国である日本の現代文学を題材として考察を行い、ゲーム的な感性が現代人にいかに根付いているかを明らかにする。
著者
綿貫 茂喜
出版者
九州大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究は日本人集団におけるセロトニントランスポーター遺伝子多型(5-HTTLPR)と社会的集団維持に関わる生理心理反応の関連を明らかにすることを目的とし、人物画像の呈示実験における生理反応、性格特性との関連を検討した。その結果ss型は、人物画像により大きな注意反応を示し、lアレル及びオキシトシンレセプター遺伝子多型のAアレルを持つ被験者は、Buss-Perry攻撃性質問紙の「言語的攻撃」「敵意」「短気」得点が有意に高かった。従って社会的集団維持に寄与すると考えられる生理反応や一部の性格特性が5-HTTLPR 遺伝子多型に影響を受けることが示唆された。
著者
遠藤 朝則 児玉 浩希
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2023-04-01

植物を用いたPlant-Based Vaccineという次世代の希少蛋白の合成技術は、国際的に研究され特に注目されており、本邦においての実用化が期待される。本研究では、ペプチド免疫療法を応用した次世代の経口ワクチンである「スギ花粉米」と同様の技術により、スギ花粉症およびヒノキ花粉症に対して効果的な遺伝子組換え技術による米を利用した経口ワクチンの有効性を評価する。遺伝子組み換え技術を利用した安全で抗原の大量合成を可能にする経口ワクチンは、米を食べるだけで多くの国民が罹患するスギ・ヒノキ花粉症を克服する可能性を持っている。その成果は社会的に大きく貢献することが期待される。
著者
安達 登 澤田 純明 神澤 秀明
出版者
山梨大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

縄文から中世に至るまでの幅広い年代の人骨について、ミトコンドリア、およびY染色体を含む核ゲノムの遺伝子解析をおこない、得られた結果を比較検討することで、東北地方における古代人の遺伝的変遷を明らかにする。遺伝的変遷の時期や、その内容が明らかになったところで、その原因について考古学的情報を踏まえて考察する。これによって、これまでその人類学的実像が不明であった「エミシ」と呼ばれた人々の遺伝的実像を明らかにすることができると考えている。
著者
藤田 あき美
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2022-04-01

日本における科学技術分野の女性比率は他国と比べても極端に低い。日本社会に根付くジェンダーステレオタイプが女子の趣向から進学・キャリアの選択に至るまで影響を与えているようだ。よって、Tik TokやYouTube教育プラットフォームで、反ステレオタイプ的女性ロールモデルとの対談やストーリーを定期的に発信し、10代から親世代までのジェンダーステレオタイプに対する意識の変化を促し、その変化の継続性と10-20代女子の理系進学率を含めた追跡調査のためのプラットフォームを構築することを目指す。本研究は、理系分野に限らず全ての女性がステレオタイプから解放される、女性エンパワーメントの取り組みに貢献すると考える。
著者
深澤 百合子 細谷 葵 中村 大 クレイグ オリバー
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究の成果は、擦文人が擦文土器を使用してサケやヒラメをはじめキュウリウオなどの小型魚類やとオオムギ、キビなどの栽培された雑穀類を主食素材として調理を、調理においては吹きこぼれが多く生じていたことが証明できた。このような雑炊、汁物メニューは食材、調理方法において後続するアイヌ文化に継承されたと言える。このことから物質文化の変化がみられる土器から鍋への調理用具の変化やカマドから炉への調理施設の変化が起因する要因を研究する必要がある。調理実験の有効性が確認できたことも成果と言えるため土器に付着した吹きこぼれ痕は鍋に痕跡が観察されるのか、具材と穀類の調理割合が異なるのかなど今後の研究課題となる。
著者
稲垣 兼一
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

松果体より分泌されるメラトニンは網膜から入る光刺激により負に調節され、生体内の概日リズム形成に寄与している。近年副腎ホルモン分泌についてもメラトニンが直接作用、調整する可能性を示唆する研究が報告されている。本研究では副腎皮質及び髄質モデル細胞株を用いて、副腎におけるステロイド及びカテコラミン分泌に対してメラトニンが直接的に及ぼす影響とその細胞内メカニズムについて検討した。その中でメラトニンが細胞局所因子や他のホルモン調整因子と連関し副腎内ホルモン合成を調整している可能性が示唆された。
著者
杉本 智俊 月本 昭男 越後 屋朗 牧野 久実 佐藤 育子 佐藤 孝雄
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

エン・ゲヴ遺跡(イスラエル)の発掘調査によって印章などの宗教遺物を検出し、古代イスラエルおよびそれに隣接する諸国家の成立に新ヒッタイト文化の影響が見られることを指摘した。また、この印章や「生命の木」の図像、ユダ式柱状土偶などの宗教遺物の分析を行い、それらの示す宗教的画期から、古代イスラエル王国にカナンの多神教が単純に継続されていたわけでないことを明らかにした。さらに、2011年8月には、国際カンファレンスを主催し、古代西アジアにおける多神教の代表的女神アスタルテがイスラエルとその周辺世界でどのように異なって理解されていたのかを議論した。
著者
小貫 麻美子 松本 光司 柊元 巌
出版者
昭和大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究では、1) 定期接種プログラムが定める適切な年齢(12-16歳) で子宮頸癌ワクチンを接種したにも関わらずHPV16/18陽性CIN・子宮頸癌を発症した若年日本人女性(=ブレイクスルー症例) を対象にまず初交年齢・ワクチン接種時年齢を聴取することで接種時に実は既感染であったと考えられる患者の割合を推定すること、2) 初交前に適切にワクチン接種を行っていた症例ではHPVゲノム解析・pseudovirionを用いた中和活性測定を行い、現行のワクチンでは予防できない変異ウイルス(variant) を探索する。
著者
吉田 謙一 花尻 瑠理 川原 玄理 林 由起子 前田 秀将
出版者
東京医科大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2018-06-29

ラットに腹腔内に合成カンナビノイド(sCB)の一種AB-CHMICAを投与し代謝物変化を調べた結果、ヒト急死例における迅速な代謝と臓器移行の知見は確認できなかった。ゼブラフィッシュ(Zf)用行動解析装置で同時・多数・経時的に、薬物投与後の行動を記録・解析し、死亡率を推定できる実験系を確立した。当初、この装置を利用して、sCBによる急死の機序を解明する予定であったが、法規制のため入手困難となった。そこで、 大麻(CB)成分の一つカンナビジオール(CBD)をZfに投与した後、光刺激のある“明期”、ない“暗期”を交互に反復した「ストレス負荷」の後、薬物を除去し、投与24時間の「離脱後」に同じ明暗刺激に暴露した。活動量は、投与後、濃度依存的に減少、離脱後、高濃度で活動量が増加した。明暗刺激が進むにつれ活動量が減少する「馴化」は、CBD低濃度で、投与後・離脱後に増加し、高濃度では馴化はせず、活動量が低下した。離脱後には、高濃度ほど馴化が低下し、高活動量状態を維持したZf用行動解析装置を用いてsCBによる急死の機序を解明する予定であったが、sCBを使えなくなったので、代替薬を探した。カフェインは、大量摂取すると突然死することがあるが、機序は不明である。そこで、Zfにカフェインを投与すると、容量依存性に徐脈と死を誘発したが、処置4時間後にカフェインを除去すれば、24時間後の生存率は改善された。Zfの致死性徐脈に対するカフェイン濃度は、死亡症例の血中濃度の2~5倍程度で、本実験系が、未知の物質の致死濃度の予測に有効であることが示された。5回連続、各々15分の明暗刺激に幼魚を暴露し、水泳距離分析により、暗転時の行動増加と明転時の行動減少、各々における下向き、上向きのピークが、不安行動を反映している可能性を明らかにした。本実験系が、未知の物質の不安や学習行動の評価に有用であることが示された。
著者
川村 信三 DA SILVA EHALT ROMULO
出版者
上智大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2019-04-25

イエズス会の「良心例学」の過程における「奴隷問題」の位置とその解決につき、諸文書館の第一次史料における言及を確認することによって、当問題の取り組みの一つの歴史像をあらたに構築する。そのために原文書にアクセスすることを第一の課題として考えている。
著者
針原 伸二 住 斉 井原 邦夫 伊藤 繁
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009-04-01

日本人は先住の縄文人(狩猟採集民)と後入り渡来系弥生人(水田稲作民)の混血により成立した。渡来系弥生人は、今から3千~2千5百年前、大陸から朝鮮半島を経て、北九州近辺に入って来た。大陸の先進文化(稲作技術や金属器など)を携えていた。やがて彼らは縄文人を圧倒するようになり、更に日本列島上を東に進んで、3世紀末に畿内で大和朝廷を打ち立てた。それでは、縄文人の遺伝子は現代日本人の中にどれほど残っているんだろうか?また、山地や東北地方にはそれが多く残っているのではなかろうか?母方由来で伝わるミトコンドリアDNAの多型を使って、この質問に答えるための基礎理論を開拓し、その答を初めて明らかにした。
著者
細川 まゆ子
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

中国やインド等、高濃度のフッ素を含有する水を摂取している地域では骨フッ素症や斑状歯の患者が多く発生している。その他の健康被害として近年ではIQ低下、認知機能障害および学習・行動障害等自閉症スペクトラム障害と類似した症状が報告されている。フッ素は出生前後に曝露されると脳の発達に影響を及ぼす可能性があることが懸念されている。動物実験ではフッ素曝露による記憶学習能力低下や不安感について一様の見解が得られないが、一般に胎児期から発達期の化学物質曝露は神経系への影響が大とされる。本研究では、妊娠期飲料水中フッ素曝露による仔マウスの自閉症スペクトラム障害を引き起こす可能性について検討することを目的とする。
著者
是永 論 酒井 信一郎 池上 賢 重吉 知美
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、メディア上に見られる表現の理解を人々がどのように行っているのかについて、主に表現が制作される場面や、その実践に関わる人々を対象に解明するものである。短歌、写真、商業マンガを対象として、エスノグラフィー、インタビュー、ビデオ分析といった調査手法を用いた。それぞれの表現について、理解に関わる独自の実践と、それにともなう規範があることが明らかとなった。
著者
丸井 英二
出版者
順天堂大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

戦後占領期間中にGHQ/SCAPが軍政部向けに配布していた週報に添付された、急性感染症ならびに性感染症についての報告事項を抜き出し、データベース化するとともにこの時期に特徴的な問題点を拾い出し、検証した。その結果、1)各種感染症の占領期にわたる消長、ならびに全国都道府県別の感染症流行状況を把握することができた。とくに、わが国の厚生省が感染症月例統計を刊行する以前の流行状況を新たに発掘することができたことは意義が大きい。これにより、従来は資料がなかった終戦直後の流行が明らかになった。また、2)本年度は滋賀県彦根市におけるマラリア撲滅対策に注目した。彦根市では対蚊対策が中心で行政が中心となって対策が進められた。市立マラリア研究所の設立がGHQの指示に触発されたものであり、GHQの衛生工学者たちが彦根を訪れていたことも明らかとなった。しかし、今後の課題として残された問題、あるいは今回の研究の結果、改めて疑問として提示された問題も多い。たとえば、わが国で戦前からマラリア5県として知られていた滋賀、福井、石川、富山、愛知のなかで、戦後なぜ彦根市に多く患者が残ったのか、また彦根における市立マラリア研究所設立など地域独自の試みもあるものの、対策の計画ならびに実施において、台湾や沖縄でのマラリア対策の経験がどのように生かされたのかなど、今回の研究によってむしろ解決すべき問題が出てきた感がある。今回の萌芽研究をもとに今後さらに研究を続けていくことで、再び感染症対策が必要とされる現在、こうした歴史的な事実からわが国ならびに世界的な対策へのひとつの示唆を得ることができると思われる。
著者
佐々木 猛智 スティアマルガ デフィン 川島 武士 藤田 敏彦 西秋 良宏
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2019-06-28

本研究の目的は、実験的研究を通じて、博物館に収蔵された標本の新しい活用法を模索するものである。具体的には、(1)貝殻からDNAを抽出する実験、(2)次世代シーケンサを用いて博物館の標本からDNA抽出を効率的に行うための実験、(3)様々な年代、保存状態の標本を対象としたDNAの適正な保存条件の検討を行う。本研究では、微細構造、殻層ごとに実験を行う点が特に重要である。そして、以上の結果をもとに、標本を大規模に破壊することなく博物館の古い標本からDNA情報を取得するための技術を高める。
著者
井上 勝生
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

日清戦争時、朝鮮ほぼ全域で、東学農民軍が抗日蜂起し、日本軍が殲滅した。歴史から消されてきた抗日と殲滅の史実を明らかにした。日本軍部隊が編成された四国と東海地方を中心に、地方紙掲載の作戦記事、兵士の書簡、陣中日誌、戦死兵士の碑文、兵士の子孫家などを見いだした。また防衛研究所図書館にて、日清戦争直前、参謀本部で作製された巨大な「朝鮮全図」南北2枚を見いだした。韓国の戦場跡を踏査し、朝鮮全域に広がった抗日と殲滅の具体像を再現した。殲滅作戦の現場が苛酷なジェノサイドそのものであったことを実証した。
著者
伊藤 壽一 西村 幸司 扇田 秀章 大西 弘恵 山本 典生 田浦 晶子 松本 昌宏
出版者
滋賀県立総合病院(研究所)
雑誌
挑戦的研究(開拓)
巻号頁・発行日
2020-04-01

難聴は人口の高齢化に伴い、認知症との関連もあり、世界的な大問題となっている。しかし、内耳感覚細胞、ラセン神経節細胞の障害に起因する「感音難聴」は薬物治療は不可で、補聴器、人工内耳などの機器による聴覚補償が唯一の方法である。本研究では、再生医学を利用し、細胞移植による内耳細胞の再生と人工内耳の組み合わせで、難聴を克服させようとする計画である。特に移植細胞にはヒト人工多能性幹細胞を用い、人工内耳からの刺激には既存の電気刺激に加え、光ファイバーによる光刺激を用いることに新規性がある。
著者
小幡 圭祐
出版者
山形大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2021-04-01

本研究は、明治初年に長らく地方行政に携わり、その後に中央行政にも参画した、薩摩藩出身の官僚・三島通庸(1835~1888)が、どのような思想を抱き、またその思想に基づき、いかに地方・中央で行動をとったのかを、彼の残した膨大な史料群「三島通庸関係文書」(国立国会図書館憲政資料室所蔵)を網羅的に分析することで解明し、地方・中央行政史研究を深化させることを直接の目的とする。本研究により、これまで分断して行われてきた中央行政史研究と地方行政史研究の成果の見直し・架橋をはかるとともに、日本近代史研究において地方官に着目する視座を提起することを目指す。