著者
片岡 一則 横田 隆徳 位髙 啓史 津本 浩平 長田 健介 石井 武彦 西山 伸宏 宮田 完二郎 安楽 泰孝 松本 有 内田 智士
出版者
公益財団法人川崎市産業振興財団(ナノ医療イノベーションセンター)
雑誌
特別推進研究
巻号頁・発行日
2013

脳は高度に発達した生体バリアに守られているため薬剤の送達が極めて困難な部位である。本研究では、この生体バリアを克服して核酸医薬を脳内に送達して機能させるウイルス・サイズの薬剤送達システムを、高分子材料の自己組織化(高分子ミセル化)に基づいて構築した。すなわち、(1)血管内腔側内皮に局在するグルコース輸送タンパク質を標的とするグルコース結合型高分子ミセルを創製し、血管内腔からの脳内薬物移行を制限する内皮細胞バリア(血液脳関門)を突破して核酸医薬を脳内送達する事によって、アルツハイマー病(AD)の発症に関わる酵素の産生を抑制する事に成功した。(2)生体内で速やかに酵素分解を受けるmRNAのミセル内包安定化を達成し、脳室内局所投与による単鎖抗体のその場産生を実現する事によって、AD発症に関わるタンパク質であるアミロイドβ量を有意に低下出来る事を実証した。
著者
岡崎 俊太郎
出版者
生理学研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究の目的は,発声と聴覚(音声の聴取)の相互作用とその神経基盤に着目し,これまで吃音者の流暢性を増大させるために用いられてきた手法の作用機序を解明することである.特に発話が聴覚フィードバックに合わせて実行されてしまう「引き込み現象」について非吃音者および吃音者においてその特性を網羅的に調べた. 13名の非吃音者および吃音者5名において自声および他声を聴取したときの発話の音響特性を分析した.その結果,発話の途中における引き込み現象は非吃音者および吃音者双方に観測され,この現象によって,斉唱や遅延聴覚フィードバックが,吃音者の非流暢性低下させるメカニズムを説明できることが分かった.また発話の開始時においては非吃音者では引き込み現象が起こらず,能動的に発話を開始していたが,吃音者では発話の開始自体を聴覚フィードバックに対する引き込みに依存する傾向が見られた.この結果から,聴覚情報として自分の声が必要な遅延聴覚フィードバックよりも斉唱のほうが吃音者の非流暢性低減に高い効果を示す理由が説明できる.本研究の結果は,今後の吃音に対する言語聴覚療法に対して有用な情報を提供し,これまで健常者だけでは不明瞭であった発話制御機構の神経基盤解明につながるものである.
著者
宮崎 康典 穂坂 綱一 足立 純一 下條 竜夫 星野 正光 村松 悟
出版者
国立研究開発法人日本原子力研究開発機構
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

原子力機構では、地層処分する放射性廃棄物の発熱及び有害度の支配因子であるマイナーアクチノイドを分離回収するHONTA抽出剤を開発し、フローシート構築に向けた性能評価試験を行っている。一方で、耐放射線性が課題となっており、安全面の観点から、放射線分解機構の解明が不可欠となっている。本研究では、放射線分解の初期反応で生成するラジカルカチオンから分解物に至るまでの中間反応に注目し、放射光と難揮発性試料測定用光電子―光イオンコインシデンスを組み合わせた実験的な反応経路と、量子化学計算で予想される反応経路との比較評価を行い、抽出剤の放射線分解機構を明らかにする。
著者
前之園 信也 田口 友彦 向井 康治朗 高倉 正博 和栗 聡 松村 和明
出版者
北陸先端科学技術大学院大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

磁性-プラズモンハイブリッドナノ粒子(Ag/FeCo/Agコア/シェル/シェル型ナノ粒子)を創製し、このナノ粒子を用いてオートファゴソームの磁気分離に挑戦した。ハイブリッドナノ粒子を哺乳細胞にリポフェクションし培養したところ、30分後にはナノ粒子がVps26と共局在し、その後LC3と共局在する様子が観察された。最適なタイミングで細胞膜を温和に破砕し磁気分離に供した。磁気分離分画にはLC3-II、トランスフェリン受容体、及びLAMP2が濃縮されていたが、LC3-Iは含有されていなかった。これらの結果はオートファゴソームが単離できたことを示している。
著者
板橋 貴史
出版者
昭和大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

成人ASD当事者を対象に、安静時、課題fMRI、行動研究を実施し、認知的柔軟性に関わる神経基盤と周辺要因について検討を行った。安静時fMRIでは、認知的柔軟性に寄与していることが予想される島皮質に対して、その機能的分化が健康成人と異なるかを検討した。その結果、島皮質における機能分化がASDと健康成人では異なる事が明らかになり、特に認知、情動に関わる領域がASDにおいて感覚に関わる領域に置き換わっていることが明らかになった。課題fMRIでは、両側の上側頭回の賦活が低下し、その低下度合いと社会相互性の障害の重症度が相関することを明らかにした。周辺要因として心的距離に焦点をあて、調査を行い検討した。
著者
小林 亮 中垣 俊之 三浦 岳
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

真正粘菌が鉄道網のような輸送ネットワークと等価なネットワークを形成する能力があることを実験的に示し、その数理モデルを構築することによって、ネットワークの新しい設計手法を提案した。また、卵割初期における空間的配位の決定や、肺や血管網の分岐構造の形成において、情報がどのような機序で働いているかを記述するモデルを提案した。これらの研究を通して、生物の構造形成と情報を結ぶしくみを記述する数理的手法を開発した。
著者
畦 五月 中田 理恵子
出版者
香川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

レクチンは主に生の食品から精製され、加熱して後、つまり食用の食品からのレクチンの精製やその生物学的性質の研究は管見の限りみられない。そこで、材料にキントキマメ、ナタマメ、サトイモを選択し、加熱後にも食品中に残存するレクチンを精製しその性質を、食品として摂取した場合に期待できるガン細胞抑制作用及び、免疫賦活作用の両側面から明らかにした。加熱したキントキマメとサトイモにはレクチンが失活せずに残存し、タンパク質分解酵素にも耐性を示した結果から、人体に取り込まれた場合の機能性を検討した。その結果、一部のガン細胞に対する増殖抑制作用並びに、免疫賦活作用を有することが明らかになった。
著者
安井 眞奈美 中本 剛二 遠藤 誠之 倉田 誠 松岡 悦子 澤野 美智子 伏見 裕子 木村 正
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究の概要は、現代の妊娠・出産・産後を危機的状況にあると捉え、医療、女性の身体、子供の命といったさまざまな切り口から、妊娠・出産・産後の現状を総合的に解明することである。現状を変えていくための処方箋を提示する、緊急を要した実践・応用人類学の研究と位置づけられる。現代の妊娠・出産・産後の現状をインタビューも含めた文化人類学の参与観察によって解明し、エスノグラフィーを作成する点に特徴がある。
著者
澤 斉
出版者
国立遺伝学研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

我々ヒトを含む左右相称動物は、左右で鏡像対称なボディプランを持っているが、鏡像対称な形態形成機構はほとんどわかっていない。線虫において、生殖巣は前後に鏡像対称であり、DTC細胞の鏡像対称な移動によって形成されるが、その制御機構は不明であった。DTCは、前駆細胞(Z1/Z4)の非対称分裂によって作られる。我々は、Z1/Z4の極性が、三種類のWntと、Wnt否依存的に働く受容体との冗長的機構により制御されていることを発見した。また、DTCの移動方向は、前駆細胞の極性方向によって決められることを明らかにした。
著者
今川 真治 中道 正之 大芝 宣昭 金澤 忠博 糸魚川 直祐 中道 正之
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

サル社会の中では、ケンカなどの敵対的行動をしながらも毛づくろいなどの親和的行動も行われる。これら2種の行動は、社会の中で他の個体と共存していくための不可欠な行動である。順位関係が比較的厳しいマカク属のサル類を対象として、この敵対的行動と親和的行動の関係が調べられた。野外で生息するニホンザル集団の場合には、生後4年間を通して、オスの子ザルが親しく付き合う同性の個体は一定であり、「仲間関係における恒常性」が認められた。敵対的行動に基づいて明らかとなったこれらの個体の間の順位は、その母ザルの順位関係とほとんど同じであった。親しく付き合う個体は互いに、順位が隣り合うか、近い個体であった。メスの子ザルの間でも、オスの子ザルと同様の傾向が確認できた。しかし、オスとメスの異性間における仲間関係の恒常性は認められなかった。ケージ内で飼育されている準成体、成体の親和的行動と敵対的行動の頻度を、ケージ内に止まり木が多数設置されて豊かな環境と止まり木の少ない乏しい環境で比較した。予想に反して、豊かな環境内では敵対的行動も親和的行動も生起頻度は少なかった。他方、乏しい環境ではどちらの行動の生起頻度も高くなった。この事実は、止まり木が少なく、互いに好ましい場所にサルが集まり、局所的に過密になり敵対的行動が多くなりやすいが、同時に、敵対的行動が生起した後の仲直り行動や、過密による心的緊張を低下させるための親和的行動が比較的頻繁に生起したためと考えられる。これらの事実は、環境条件に即して、サルが社会的緊張を軽減する行動を行っていることを意味している。
著者
車井 浩子
出版者
兵庫県立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究では、代理変数を含む回帰モデルにおける推定量の統計的性質と代理変数の質の関係を明らかにし、実証分析へ応用することを目的とした。推定量の理論的分析に関しては、各種縮小推定量を用いて研究を行った。分析結果より、用いる代理変数の質が推定量の統計的性質の評価に影響を与えることが明らかになった。さらに、評価基準である損失関数を考慮すると、用いる損失関数によっても推定量に関する評価が異なることが明らかになった。これら結果より、推定量の統計的性質に着目した場合、代理変数の質が良い場合であってもその代理変数を用いないほうが望ましい場合があり、観測不可能な変数が回帰モデルに含まれる場合には、推定量の評価基準や代理変数の質を考慮した上で推定方法の選択を行うべきであることが明らかになった。これら結果は、論文1にもまとめられている。さらに、今年度はこれら理論分析による結果を考慮した賃金関数の実証分析、および実証分析を行う上でさらに必要となる推定量の理論分析を行っている。実証分析においては、研究対象を大卒男性とし、賃金センサスによるデータを用いている。実証分析を行う際には、得られた推定量の有意性について仮説検定を行う必要がある。しかし、本研究で用いている各種推定量については、その密度関数を理論的に求めることは難しく、仮説検定を行うことが極めて困難である。本研究では、この点にも着目し、推定量の密度関数に関してブートストラップ法を用いた分析を行っている。ブートストラップ法を用いることで、密度関数がわからない推定量についても、有意性の検定を行う際の棄却域を数値計算により求めることが可能であり、本研究や用いている各種推定量をより適切に実証分析に応用することが可能になる。論文1.非対称な損失関数に基づく代理変数の統計的性質、国民経済雑誌2005年
著者
牧野 泰美
出版者
独立行政法人国立特別支援教育総合研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究では、吃音のある子どものレジリエンス(精神的な回復力、立ち直る力)とその向上に関する知見として、レジリエンスは、人間関係、主体性、ユーモア、創造性、コミュニケーション等により構築されること、吃音問題との関連としては、折り合い、仲間、客観視、気持ちの解放、笑い、感情の対処、他者信頼等が重要な要素であること、子ども自身が吃音を対象化できること等の重要性が整理された。上記の観点を踏まえた指導・支援として、子どもと教師が対等に対話を進め、吃音について語ることができる実践内容・方法を検討・提案した。
著者
鈴木 信明 岩井 悠樹
出版者
愛知県警察本部刑事部
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2019

国内で広く使用されており、ジェネリック医薬品を含め計16社から製造販売されている睡眠薬のエチゾラム錠を本研究の対象とし、全社のエチゾラム錠について、医薬品添加物を様々な分析手法で検出し、その配合から製薬会社を特定できるかについて検討した。その結果、14社を特定することができ、残る2社は共同開発のため、成分が全く同一で区別不能であることをつきとめた。次に、実証実験として、研究協力者がエチゾラム錠を無作為に選び、研究者がわからないように粉末化したもの及び粉末化して水に加えたものを用意した。これらを同様の分析手法で分析した結果、加えられた睡眠薬の製薬会社を特定することができた。
著者
中嶋 文子 赤澤 千春 BECKER CARL.B
出版者
椙山女学園大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

SOC(首尾一貫感覚)はストレスを乗り越える力とされ、SOCが高い人ほどストレスを乗り越える力があり、ストレスを乗り越えた経験を積み重ねることはSOCを高めるとされている。就職後間もない新人看護師は、ストレスを乗り越えてゆくことでSOCを高める機会とすることもできる。我々の先行研究では、SOCを高める介入によって、就職時のSOCが低い場合、就職3ヶ月後には一旦上昇するが、その後は低下することが明らかとなった。また、教育担当者からは、看護実践の意味を言語化することが難しい者のSOCが低い傾向が指摘された。そこで、SOC得点の低い者に特化した支援を開発するため、新人看護師へのインタビューを実施した。分析対象となった6名の就職時のSOC合計得点は、50点未満の者4名、51点以上60点未満の者1名、60点以上の者はいなかった。研究協力機関では、継続的な研修とともに6ヶ月間のローテーションを行っているが、就職後6ヶ月は本配属の直前の時期であり「部署配属への期待と不安」を語っていた。そして、「看護実践の困難感」を抱きながらも「成長の実感」や「対人関係の困難感」を感じつつ「患者中心の看護の希求」を「自己実現への意欲」としていることを語っていた。また、就職後12ヶ月までに到達可能な目標をイメージできない者は、就職時SOC得点が低い傾向にあった。就職後12ヶ月のインタビューにおいて「成長の自覚」「職場チームへの帰属感」「看護の手応え」を語った者は、就職時のSOC得点が低くても、その後徐々に上昇していた。一方で、12ヶ月のインタビューにおいて「否定的な教育体制」「成長の遅れに対する焦り」を訴え、患者への看護に目を向ける余裕のなかった者は、1年間を通してSOC得点が低下していた。新卒看護師が定期的に到達可能な目標を描き、自らの成長を自覚する支援が求められていることが明らかとなった。
著者
明星 聖子 高畑 悠介 井出 新 松原 良輔 松田 隆美 中谷 崇 納富 信留 矢羽々 崇 伊藤 博明 Pekar Thomas 黒田 彰 近藤 成一 宗像 和重 杉浦 晋 武井 和人 北島 玲子
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2016-04-01

昨年度の検討を受けて、今年度は昨年度のテーマに若干変更を加えた以下のAからEの5つのテーマについて、さらに今年度からは総合的なFのテーマも加えて研究を進めた。A.ドイツ文献学の成立の事情とその日本における受容および明治/大正期の文学研究の確立をめぐる検討、B.日本文学における現在の文献学的状況を探るケーススタディ、C.再評価の機運が高まっているイタリアの文献学者S.Timpanaroの代表著作の 読解と翻訳、D.英文学研究および教育における編集文献学的方法論の実践、E.独文学研究および教育における編集文献学的方法論の実践、F.人文学テクスト全般における「信頼性」および「正統性」をめぐる総合的な編集文献学的考察。テーマごとの班活動以外に、全体としての研究会も3回、2019年6月16日に慶應義塾大学で、7月31日に放送大学で、また2020年1月26日に慶應義塾大学で開催した。第1回での研究発表は、「編集文献学の可能性」(明星聖子)、第2回は、「古典文献学の可能性」(納富信留)、「注釈の編集文献学」(松田隆美)、第3回は、「南朝公卿補任の真贋判断をめぐって」(武井和人)、「偽書という虚構ー近代日本の小説3つをめぐって」(杉浦晋)。なお、こうした活動が実を結び、2019年9月に刊行された雑誌『書物学』(勉誠出版)で、特集「編集文献学への誘い」が組まれ、そこでプロジェクトメンバーの論考6本がまとめて掲載されたことは、特筆に値するだろう。
著者
小原 道法
出版者
公益財団法人東京都医学総合研究所
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2018-06-29

乳がんは女性のがんで多く見られる悪性腫瘍で、現在1年間に新たに乳がんと診断される日本人女性は6万人を超える。根治が困難な症例も多く、適切な乳がんモデル動物で乳がんの生物学特性、治療および予防法を研究するのは急務である。乳がんモデルとしてツパイの検討を行ってきた。ツパイは、体重が約150グラムの小型哺乳動物で、ツパイ目ツパイ科に属している。ツパイは人に近い遺伝情報を持ち、ツパイの神経伝達物質の受容体は齧歯類より霊長類のものと高い相同性を持つために、毒物学とウイルス学、抗うつ薬などの前臨床研究で利用されている。また、ツパイの乳腺の生理学的特徴と発育などはヒトに類似している。自然発症乳腺腫瘍を観察した結果、発生率は24.6%(15/61)、再発率は60%(9/15) であった。細胞診の結果、上皮系悪性腫瘍であった2個体の腫瘍組織について精査を行った。多発性の全ての腫瘍組織でプロゲステロンレセプターが陽性、91.3%でエストロゲンレセプターが陽性、4.3%がHER-2陽性であった。また病理組織学的検索と実験動物用X線CT LCT-200解析の結果、腹腔内で内分泌系腫瘍も観察された。以上の結果から、ツパイは自然発症乳腺腫瘍モデルとして有用である可能性が示唆された。
著者
高野 淳一朗
出版者
国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究でヒトと類人猿以外で唯一B型肝炎ウイルス(HBV)に感受性のあるツパイ(Tupaia belangeri)を用いて、HBV感染動物モデルの作製を目的としてHBV高感受性ツパイ系統の樹立を目的とした。血中ウイルス量としては低いレベルしか確認はできなかったが、検出率の比較では雑系動物であるツパイにおいてHBV分子クローンの有用性が確認でき、F1群とF2群で比較したところ、2倍以上の検出率であることが確認できた。また、1頭だけだが、肝臓の腫瘍化も確認できた。これらの結果から、HBV高感受性ツパイ系統樹立の高い可能性と今後のHBV研究での有用性が確認できた。
著者
吉田 久美 尾山 公一
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

花色素アントシアニンの機能性研究、および生合成・膜輸送研究のさらなる展開を目指し、柔軟かつ効率的なアントシアニンの化学合成法の研究を行った。アントシアニンの生合成における鍵酵素であるアントシアニジン合成酵素(ANS)が酸化酵素であることにヒントを得て、配糖化フラボノールの金属還元によるアントシアニン合成を試みた。本反応が、フラボノール体からフラベノール体への還元と次のアントシアニンへの空気酸化の二段階の反応であることを明らかにした。さらに、種々の母核および配糖化様式のフラボノール体へ本反応を適用し、汎用性の高い反応であることを確認できた。
著者
比良松 道一
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

三倍体生物種が稀に高い有性繁殖能力を発現する機構はよくわかっていない. オニユリとその近縁種コオニユリ(いずれもユリ科ユリ属)では, オニユリゲノム2組, コオニユリゲノム1組を有する三倍体オニユリが発生し易く, 三倍体オニユリの成熟種子の生産は, 花粉親の遺伝子型に大きく影響された. 自然条件下での三倍体オニユリの発生と遺伝的分化は, 二倍性のオニユリ配偶子と高い交雑親和性を有する一倍性のコオニユリ配偶子によって促進されていると考えられる. こうした性質を有する一倍性配偶子は, ユリ属植物における三倍体レベルでの交雑育種を可能にすると考えられる.
著者
福嶋 慶繁 津邑 公暁 杉本 憲治郎
出版者
名古屋工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

計算機環境が複雑化している中,高度に最適化された機械語を得るためには,分野ごとに特化した専用プログラミング言語が必要不可欠である.しかし,最新の画像処理専用プログラミング言語でも,局所的な最適化しかできず,アルゴリズム全体の最適化は未だできない.本研究では,画像処理をデザインパターンとしてまとめ,多くのパターン集として体系化することともに,それをプログラミング言語として試作する.主に,画像処理は,FIRやIIRといった畳み込み,拡大縮小,点の処理の連続として表現され,これを効率的につなぐことで高速化可能であることを示した.さらにそれらを検証するために様々なアプリケーションで検証した.