著者
中俣 尚己 山内 博之 橋本 直幸 建石 始 小口 悠紀子 小西 円 堀内 仁 森 篤嗣 合田 陽子 加藤 恵梨 澤田 浩子 清水 由貴子 山本 和英
出版者
京都教育大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2018-04-01

2018年7月7日に京都教育大学で第1回ミーティングを行い、作業方針を固めた。以下、「新規コーパス構築」「既存コーパス分析」のそれぞれの作業について順番に実績を述べる。新規コーパス構築では、120ペア、240名の調査協力者を集めることにした。関西60ペア、関東60ペアで、さらに性別でも「男男」「男女」「女女」でバランスをとる。その上で、話題選定班の協力の元、『実践日本語教育スタンダード』を元に15の話題を選定し、各5分ずつの談話を録音することにした。調査に先立ち、協力者への説明や、同意の取り方、さらには指示の出し方など細かいプロトコルを定め、共有した。2018年度は120ペアのうち55ペアの録音を完了し、ほぼ半分の録音が完了した。2019年10月に全作業を完了する予定である。既存コーパス分析では、名大会話コーパスの全てのファイルを目で読み、『実践日本語教育スタンダード』をベースに話題の分割を行うことにした。プレ調査の結果、各ファイルにつき3名の作業者を当てることが妥当と判断した。分割のための書式を定め、結果を機械分析班が作成したプログラムで加工し、その後対面ですり合わせ作業を行う。全129ファイルを4分割して作業を進めることにした。現在、分割の作業進捗度は75%程度であり、全体の25%については2019年3月にすり合わせの作業を実施した。なお、代表者は全ファイルの作業をすでに終えている。作業の完了は2019年9月の見込みである。
著者
塩沢 健太
出版者
北里大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2020-04-24

弦が見るミクロ領域の時空構造は点粒子が見るものとは異なり、弦の巻き付きモードが重要な量であるため、これが時空に及ぼす影響について理解したい。そのためにDouble Field Theory (DFT)と呼ばれる、弦の巻き付き効果を明白に含む重力理論を用いる。超弦理論では、古典的には裸の特異点と思われていた時空解が何らかのメカニズムで特異点が解消されると期待される。また、超弦理論の議論ではミクロ領域においては弦の巻き付きモードが支配的であることが知られている。我々は、この特異点を隠すメカニズムは弦の巻き付き効果によるものと予想し、弦の巻き付きにより時空構造が変化することをDFTを用いて示す。
著者
中村 和彦 秋穂 裕唯
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

CD4^+CD25^+制御性T細胞(Treg)のin vitroでの培養増殖・分化誘導が可能であれば、Tregの潰瘍性大腸炎(UC)治療への応用に有用である。UC患者に対する血球成分除去療法産物より臨床応用可能なグレードで分離されたTregを抗CD3/抗CD28抗体ビーズ、IL-2で刺激した。細胞数は10日間で約18倍に増加し、TregのマーカーであるFOXP3発現細胞の割合は保たれた。また、通常のCD4^+T細胞との共培養で細胞増殖を抑制した。次に、CD4^+CD25^-non-TregからTGF-β1存在下にTregの誘導を試みた。誘導後、TregのマーカーであるCD25^+FOXP3^+細胞が増加し、CD4^+T細胞との共培養で細胞増殖を抑制した。以上より、Tregがin vitroで培養増殖・分化誘導可能である事が示された。更にrapamycin(RAPA)によりCD4^+T細胞からTregがin vitroで誘導可能か、誘導Tregに大腸炎抑制能があるかどうかマウスモデルで検討した。Balb/cマウス脾臓よりCD4^+T細胞を分離し、抗CD3抗体、抗CD28抗体、IL-2にてRAPA存在下に刺激培養した。RAPA存在下で培養した細胞の17%がCD25^+FoxP3^+であったのに対して、RAPA非存在下で培養した細胞はほとんどCD25、FoxP3を発現していなかった。CB-17 ScidマウスにBalb/cマウス由来CD4^+CD62L^+CD25^-T細胞1x10^6を腹腔内投与して大腸炎を誘導し、同数の分離・培養Tregを同時移入した。RAPA存在下で培養したCD4^+T細胞は、マウス脾臓より分離したTregと同様に大腸炎の発症を抑制した。RAPA誘導Tregは分離Tregと同様に大腸炎抑制能を有する事が示された。
著者
川田 紀美子 牛島 廣治 宮田 潤子 濱田 裕子 野口 ゆかり
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

総排泄腔遺残症は、女児にのみ発生する、胎生期に尿道・膣・直腸が分離不全を来し、排泄孔を一つしか持たない先天的難治性稀少泌尿生殖器疾患である。出生直後からの複数回の手術により生殖器に後遺症状を伴うため、思春期には恋愛や性交、妊娠等に支障を来す場合が多い。そのため患者には性に関する特別な配慮が必要であるが、セクシャルヘルスへの支援には母親の役割が不可欠であり、本研究結果より母親を含めた支援システムの構築を目指す。具体的には、国内複数の病院で通院治療を受けている総排泄腔遺残症患者とその母親を対象に調査を行い、母親による患者への家庭内性教育の実情と母子関係の特徴、およびそれらの関連について検討する。
著者
出村 慎一 山次 俊介 長澤 吉則 北林 保 山田 孝禎
出版者
金沢大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

本研究では大転子及び仙骨を保護するエアバッグ式ヒッププロテクターを開発することを目的とした。最終年度では、エアバッグトリガー閾値および、転倒方向と外傷の関係について検討した。まず、エアバッグ開放のトリガーとして腰部加速度の有効性を検証するために、不安定台からの前後および左右方向の転倒動作時の3次元腰部加速度(右大転子部)を計測した。いずれの転倒方向の最大加速度、最大振幅とも同程度の値を示した。また、各転倒方向のx,y,およびz軸の加速度間の相関はいずれも有意であった(最大加速度:r=0.56-0.78,最大振幅:r=0.57-0.84,p<0.05)。T字台牽引時に転倒したケースと代償的ステップにより転倒を回避したケースの加速度を比較した結果、転倒したケースの加速度が大きい傾向にあった。しかし、前方向の場合、加速度に顕著な差は認められなかった。現在、設計しているエアバッグ式ヒッププロテクターはエアバッグ開放までに約0.2秒要するため、開放トリガーはそれより前に転倒を感知しなければならない。各転倒方向において、x,y,z軸のいずれかの最大加速度もしくは最大振幅のなかで最も早く出現するものを採用していくと着床前0.430~0.775秒の間であることが確認され、最大加速度、最大振幅はエアバッグ開放のトリガーとなりうることが示唆された。しかしながら、転倒時の最大加速度や最大振幅は個人差が大きく、開放閾値の設定にはさらなる検証が必要と判断された。次に、在宅高齢者1955名を対象に転倒発生時の外傷の有無と転倒方向について調査した。過去1年間で転倒した高齢者は386名(20.9%)で、そのうち257名(66.6%)が何らかの外傷を負い、37名(9.6%)が骨折した。転倒による外傷の有無と転倒の原因および転倒した方向に関する度数に有意差は認められなかった。一方で、転倒の方向と転倒の原因および外傷部位間に有意な関係が認められ(ψ=0.49と0.32)、骨折は側方の転倒において多く発生する傾向にあった。したがって、エアバッグ式ヒッピプロテクターは側方の転倒に対する防御を重視する必要性が示唆された。
著者
三枝 暁子
出版者
立命館大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

室町期京都の権力構造を明らかにするため、比叡山延暦寺(山門)と、その末社である祇園社(八坂神社)・北野社(北野天満宮)の京都支配の構造、および三寺社と室町幕府との関係、について解明した。その際、寺社と幕府との関係を探る重要な素材として祭礼に注目し、室町期の北野社(北野天満宮)の祭礼について取り上げ、考察をすすめた。具体的には南北朝期における幕府の北野祭の再編と北野社西京神人の存在形態、あるいは神社において「神人」を統率する位置にある、「公人」について検討した。さらに中世の「北野祭」の名残りをとどめる、現在の「瑞饋祭(ずいきまつり)」について調査を行い、成果をまとめた。
著者
大森 慈子 廣川 空美 千秋 紀子 立平 起子
出版者
仁愛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、泣くことや涙に対する一般的な認識を捉えた上で、泣きと涙の定量化を試み、涙を流すことによる心身状態の変動を明らかにするものである。研究の結果、感動映画に対する泣きの程度に、内容の知識や以前に視聴した経験は大きく影響しなかった。また、他者の涙を見た際、笑顔や他の表情とは異なる感情反応が示された。綿糸、濾紙、綿球を使うことによって涙液量測定の可能性が得られた。さらに、泣くことに伴う唾液中コルチゾール値や心拍、瞬目といった生理的反応の変化が明らかになった。
著者
佐保 美奈子 入江 真行 古山 美穂 山田 加奈子 髙 知恵 島田 憲次 松本 富美 位田 忍 小杉 恵 岡本 伸彦 石見 和世 松尾 規左 鶴丸 礼子
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

総排泄腔遺残症の思春期女性の学業・就労・恋愛・結婚への支援について研究した。①性の多様性と理解 性分化疾患については、医療者も対応に苦慮しているのが実状で、社会全体で理解促進が必要である。②障がい者の就業支援 排泄障害を持つほとんどの者が上司や同僚からの配慮を必要としている。職場・社会全体の理解促進が必要である。③障がいをもつ女性のエンパワメント 総排泄腔遺残症の女性とパートナーのもつ思いやり・やさしさ・強さなどを社会に発信していきたい。研究成果物として、『膣拡張用樹脂製ダイレーター』『総排泄腔遺残症ってこんな病気』『総排泄腔遺残症の就労支援』『DSDの子どもをもつご家族の皆様へ』などがある。
著者
明石 博臣 吉川 泰弘 本藤 良 森川 茂 遠矢 幸伸 久和 茂
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

研究実績計画に基づき以下の研究を実施した。1)エボラウイルスおよびBウイルス研究エボラウイルスについては、核蛋白を安定的に発現するHeLa細胞を用いた蛍光抗体法とバキュロウイルス発現抗原を用いたELISAによる抗体検出法を確立した。この結果、霊長目の抗体調査が可能であった。Bウイルスについては、組換え抗原を用いてヒトヘルペスウイルスとの鑑別法が確立され、霊長目におけるBウイルス特異的抗体検出を行うことが可能となった。2)翼手目の免疫系解析抗コウモリIgG血清を用いたELISAの手法を開発した。この抗コウモリIgG血清は大翼手亜目、小翼手亜目ともに95%以上の高い交差性を示した。また、オオコウモリのCD4、IgFcRnについて蛋白コード領域を決定した。さらに、IFN-αの1subtypeとIFN-βのprotein cording regionの塩基配列を同定した。3)翼手目のウイルス病抗体検索法2)で確立したELISAを用いて、わが国でコウモリから分離されたヨコセウイルスの抗体調査を行ったところ、東南アジアのコウモリ血清151例中フィリッピンの1例(2.7%)、マレーシアの5例(19%)が陽性であった。陽性率が低かったため、ヨコセウイルスのコウモリに対する病原性を検討する目的で、ルーセットオオコウモリに実験感染を行った。ウイルス感染は成立したが、コウモリ体内での増殖性は悪く、ヨコセウイルスの自然宿主としてコウモリ以外の生物の存在が示唆された。
著者
上久保 靖彦 足立 壯一
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本申請では下記A・Bプロジェクトを連動させて ○p53非依存性細胞死・細胞周期停止誘導を可能とする抗腫瘍コンセンサス配列の探索とそのターゲッティング法の提唱 ○MTp53難治性造血器悪性腫瘍及び固形腫瘍(膵臓癌・食道癌・トリプルネガティブ乳癌(TNBC)等制圧を目指す新規スーパーエンハンサー制御システムの確立を目的とした。A:人工転写因子ライブラリーを用いた抗腫瘍コンセンサスの同定 B:スーパーコンピュータシミュレーションによる創薬計算・スーパーエンハンサー制御低分子(FactorZ制御低分子)の同定とp53非依存性細胞増殖抑制メカニズムの解明A:ライブラリーより、MTp53難治性造血器悪性腫瘍(AML)と固形腫瘍(膵癌、大腸癌、MRT、Her2胃癌(Sci Rep. 2018)、悪性グリオブラストーマ、髄芽腫、神経芽細胞腫、CRPC-DNPC:外科的治療不応性AR-・NE-DN 前立腺癌)を効果的に抑制するいくつかのHIT-PI-Pを抽出し、そのバリデーションを行った。各種癌腫HIT-PI-P投与下でのアポトーシスアレイの施行し、各種癌腫で新規の腫瘍アキシスを同定した(Cancer Sci. 2018)。AMLのMRD(微少残存病変)を消失させるために、骨髄環境を制御可能なPI-Pを同定し、さらにそのメカニズムを解明した(Blood Adv. 2018)。B: 膵臓癌・大腸癌・トリプルネガティブ乳癌(TNBC)、Complex karyotype AML、骨肉腫、MRTにてスーパーエンハンサー制御低分子HITをそれぞれ複数個抽出した。またHIT低分子がターゲットする遺伝子を各々の癌腫より同定した。A,Bで対象とした癌腫におけるTCGC症例GSE解析を行い、悪性化のメカニズムに重要なOncogenic Profilingを完成した。
著者
勝田 俊輔
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

19世紀前半のリムリック州における農民反乱の実態が解明された。反乱の動機面では、反乱農民は地域の農業経済上の問題の解決だけでなく社会変革も志向していたのであり、この点で政治性をもっていた。他方組織面では、同州での農民反乱は従来考えられていたよりも発達した地下組織に支えられていた。反乱農民は、ダブリンの秘密結社とネットワークを構築しており、組織構造をダブリンの結社から流用した一方で、州内各教区の「委員会」を基盤とする独自の組織を形成するにいたっていた。
著者
清水 由文
出版者
桃山学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

アイルランドにおける家族研究は1930年代に西部アイルランドであるクレア州でアレンスパークと,キンポールによりはじめて調査されたのであり、彼らは機能主義からアイルランドの直系家族の存在を明,かにした。その後、ギボンとカーティンにより1970年代に1911年センサス原簿を利用した直系家族研究が本格的に開始された。そして現在ではアイルランド家族研究には19世紀中期以降2O世紀初頭にかけて直系家族が成立し、1950年以降の商品化の浸透とともに直系家族の解体と核家族への変動という理論的枠組から理解するパラダイムが現在定着している。本研究の研究課題はそのような研究史を踏まえたうえで、19O1年と1911年のセンサス原簿を史料として2O世紀初頭においてアイルランドにおける直系家族の存在の確認をすることである。直系家族の研究枠組みとして家族規範要因と家族状況要因から明かにした。そのような枠組みに基づいて、調査地として北西アイルランドにあるドニゴール州ラージイモアと南部アイルランドにあるテッペラリー州クロヒーンを選定し、家族分析を行った。とくに本研究は1901年と1911年センサス原簿を連結させて分析したことに特徴がある。ラージイモアは貧困地域、クロヒーンは比較的恵まれている地域というよう経済的にコントラストのある両地区で家族分析をおこなった。その結果、両地域ともに単純家族世帯が支配的形態であるものの、直系家族を含む拡大家族が存在し、それが家族規範として構造化されているものと判断された。しかもラージイモアでは本来の直系家族と水平的拡大家族の2つのタイプが顕在化しているが、クロヒーンで水平的拡大よりも垂直内拡大である直系家族タイプが優位であるという違いが明確に認められたのである。
著者
石井 克幸
出版者
国立感染症研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

ヒトパピローマウイルス(HPV)はエンヴェロープの無い小型DNAウイルスである。キャプシドはL1とL2から構成される。本研究ではHPV感染の初期過程に重要な役割を果たすL2と特異的に相互作用する宿主蛋白質を同定し、この相互作用に依存したHPV感染の分子機構の解明を試みた。L2に特異的に相互作用する細胞内蛋白質Transport protein particle complex subunit 8 (TRAPPC8)を同定した。このTRAPPC8はHPVの細胞内侵入に必須な蛋白質であることが分かった。ただし、この侵入機構にL2-TRAPPC8相互作用は無関係であった。一方、L2はゴルジ体を特異的に分散することが明らかとなり、この分散はTRAPPC8ノックダウン細胞のそれと酷似していた。HPVはL1キャプシドを介したTRAPPC8に依存したエンドサイトーシス機構を利用して細胞内に侵入した後、L2がTRAPPC8の機能を阻害し、感染を成功させると推察された。このL2によるTRAPPC8の機能阻害はウイルスゲノムがトランスゴルジネットワーク(TGN)から脱出する機構に重要な役割を果たすと考えられた。
著者
馬渕 一誠 細谷 浩史 沼田 治 浜口 幸久 田中 一馬 北山 仁志 渡辺 良雄 丸山 工作 石川 春律 木下 専
出版者
東京大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
1998

収縮環の形成機構を様々な細胞を用いて解析した。分裂酵母においては収縮環は、核分裂の間に細胞中央部に蓄積するF-アクチンケーブルから形成されることが分かった。アフリカツメガエル卵で星状体微小管が分裂溝直下で連結することを見い出した。これまで細胞質分裂のシグナルに関連していると思われていたCaイオンについて、分裂後半あるいは分裂後にCa waveの発生はあるものの、分裂溝先端ではCa blip, Ca puffといった微小なシグナルでさえ見られなかった。ウニ胚第4卵割で、中心体から近い表層ではアクチンが少なく、遠い部位ではアクチンが増えて分裂することを確かめた。即ち不等分裂する植物極側割球では、赤道面に収縮環ができる前に、植物極の表層からアクチンが減少し表層が膨らんだ後分裂溝ができた。テトラヒメナのEF-1αが2量体を形成してアクチン繊維を束ね、Ca^<2+>/CaMはEF-1αを1量体にしてアクチン繊維束形成を阻害すること、フィンブリンのアクチン結合性やアクチン繊維束形成能はCa^<2+>非感受性であり、フィンブリンが収縮環と同様に分裂構でリングを作ることを明らかにした。HeLa細胞のRhoキナーゼが、アクチン結合タンパク質であるフィラミンAと結合したので両者は収縮環中で結合して存在する可能性がある。分裂シグナル伝達に関し分裂酵母の新規のRhoファミリータンパク質Rho3を見い出した。Rho3は細胞膜に局在した。Rho3とCdc42の下流に共通の標的として新規のフォルミンFor3があってアクチン細胞骨格と微小管を支配し、細胞形状や分裂位置の決定に関与することが分かった。出芽酵母のRhoファミリータンパク質Cdc42の標的であるCla4(PAK)とBnil(フォルミン)が協調的に働き分裂部位でのセプチンリング形成を制御すること、この過程にアクチンが重要な働きをすることを示唆した。
著者
高浪 景子
出版者
京都府立医科大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2010

エストロゲンは生殖や性行動などの機能調節だけでなく、体性感覚の調節に関与することが知られている。とくに、妊娠期間や更年期などのホルモン環境が変動する時期に、痒み感覚に変化がみられるが、女性ホルモンであるエストロゲンが痒み閾値を調節する機序については不明な点が多い。そこで、行動薬理学解析と組織学解析を行い、エストロゲンが痒み閾値調節に関与するか、ラットを用いて解析した。その結果、雌ラットにおいて体内エスロトゲン濃度に依存して掻破行動の変化がみられた。また、 エストロゲンが感覚神経系 CGRP の発現を制御し、痒み閾値を調節する可能性が示唆された。
著者
元 ナミ
出版者
京都大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2020-04-01

近年、国の公文書管理の乱れが社会問題として浮上している中、共同体の根幹をなす地方自治体においても行政の公文書及び地域のアーカイブズ資料の管理が諸外国に比べて遅れている。本研究では、主に地方自治体におけるアーカイブズの管理と保存、公開体制の整備を促進するために活用できる国内外の類似な外部資金制度を分析・検討し、アーカイブズの保存と利用事業に適用可能な外部資金制度のモデルを提示する。
著者
保坂 裕興 下重 直樹
出版者
学習院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

「公文書管理法」は、公的団体にレコードスケジュール、管理状況報告、特定歴史公文書とその利用請求権、公文書管理委員会等の基本構成をもたらしたが、民主主義の根幹を支える知的資源プログラムとしては必ずしも進展・充実をみていない。本研究は、国内外の主な記録アーカイブズ・プログラムがどのように構築され、その目的達成が検証されているかを調査・分析評価するとともに、アーキビストがどのような能力を持つものとして養成されているかについて諸外国の事例を分析評価することを通して、表裏一体となるプログラムと専門職のあり方を正面から捉え、その有効なあり方についての知識を学術的に集積し、情報政策に提案・反映することを企図する。
著者
西嶋 一欽 丸山 敬 林 泰一 高橋 徹 友清 衣利子 伊藤 耕介
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究は、台風に先回りして容易に設置可能な風圧計測デバイスを開発することで、台風通過時に建築物が密集した都市部に位置する低層建築物に作用する風圧を実測する。さらに、実測した建築物に対して、その周辺の遮蔽物の有無を段階的に変化させた風洞実験を実施し、実測値と比較することで、都市部に位置する低層建築物に作用する風圧特性を決定づける要因を類型化し、周辺環境の何をどこまで再現すれば十分な精度で風圧を評価できるかを明らかにする。得られた知見を用いれば、都市のどこに大きな風圧が作用し得るかを明らかにすることが可能になり、都市型強風災害リスク分析の高度化や耐風補強に関する意思決定に貢献できる。
著者
大沼 保昭 能登路 雅子 渡辺 浩 油井 大三郎 新田 一郎 遠藤 泰生 西垣 通
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

1.この2年間の研究活動の成果は、主題に関わる分野の広汎さに対応して極めて多岐にわたるが、その主要な部分は、およそ以下のように要約することができる。2.(1)「国際公共価値」の中核におかれてきた「人権」に対する評価の持つ政治的・文化的バイアスを相対化して議論の可能性を担保するための方法を供給する視点としての「文際的」視点が提示された。(2)(1)の「文際的」視点を踏まえて、「公共性」という概念の多面的な解析が試みられた。J.ハーバーマスの著作の読解を出発点として、ハーバーマスの議論が持つ特殊西欧近代的な性質と、そうした特殊性を超えて普遍的に展開されうる可能性とを、批判的に弁別する必要性が指摘された。(3)(2)の指摘をうけて、「公共性」概念の持つ普遍化可能性を測定するために、中国・日本など非欧米の伝統社会における「公」「おおやけ」観念との比較研究を行った。その結果、「普遍」的形式への志向性こそが、西欧近代文明の持つ特殊性としての重要な意味を持つ、との見通しが得られた。(4)以上のような研究を通じて、「文化帝国主義」という概念の持つ問題点が明らかとなった。アメリカを中心とした欧米文化の「世界化」は、単に政治的経済的な比較優位に基づく偶有的な現象ではなく、欧米文化が持つ「普遍」という形式が重要な意味を持つ。この「普遍」という形式の持つ特殊性の解明が、重要な課題として認識された。(5)例えば「法」は「普遍」という形式を持つが、「法による規律」は必ずしも普遍的な方式ではない。そうした点を踏まえたうえでの、真に普遍性を持ちうる「国際法」概念の再構築の必要性が指摘された。3.2年間にわたる協同研究は、多くの成果を収めた一方で、多くの新しい課題を発見した。新たに発見された課題については、引き続き研究を進めてゆきたい。
著者
音喜多 信博
出版者
岩手大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

平成29年度においては、本研究課題全体への導入として、哲学的人間学に見られる階層理論のアリストテレス主義的な特徴を総体的に整理する研究をおこなった。本年度は、とくにシェーラーとメルロ=ポンティについて考察をおこなった。アリストテレスの『魂について』においては、魂の三つの能力が論理的な階層性を成すものとして区分されているが、それに比することができるようなかたちで、シェーラーとメルロ=ポンティにおいては生物の心的機能についての一種の階層理論が見られる。シェーラーは『宇宙における人間の地位』(1928)において、「感受衝迫」から「実践的知能」まで、生物の心的機能を四段階の階層性において捉えていた。そのうえで、人間の「精神」は、このような他の生物と共有する心的機能を前提としながらも、環世界の拘束を越える「世界開放的」な自由を獲得すると述べている。メルロ=ポンティは『行動の構造』(1942)において、シェーラーの「世界開放性」概念に大きな影響を受けながらも、その宇宙論的な含意は切り捨て、生物の行動形態を「癒合的形態、可換的形態、シンボル的形態」という三つの階層に区分して、それらを現象学的に分析している。本研究の結果、以下のようなことが明らかとなった。上記の思想家たちの階層理論においては、階層の上位のものは下位のものの存在を不可欠の前提としているとともに、下位のものは上位のものにその部分として取り込まれ、その自律性を失っているというように、諸々の層は「統合」的関係にあるものと構想されている。そして、その統合の向かう方向性は、人間の行動や認識の自由の拡大という規範的なものであることが窺われる。このような考え方は、人間の精神の機能をもっぱら理性に見出すデカルト的心身二元論に対するアンチテーゼであるとともに、人間のあり方を純粋に生物学的に説明しようとする生物学主義とも一線を画すものである。