著者
庄司 浩一 牛尾 昭浩 松本 功 川村 恒夫 荒井 圭介 横野 喬
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

昨今のIT農業における実用的なセンサとして,穀粒の衝撃音をイヤホンで感知し,コンバイン上での収穫質量と水分,穀物乾燥機上で水分の推定を行った。コンバインの穀粒タンク内では別途用意した小型の衝突板に,乾燥機では側壁に市販のセラミックイヤホンを装着した。籾およびコムギの収穫時に出力を積算して実際の収穫質量と対応させると,単純な線形回帰でも標準誤差1 kg程度を得た。時系列の信号を周波数領域の音響スペクトルに演算しなおし,任意の2周波数バンドを選択して水分推定を行うと,標準誤差は籾で0.4%,コムギで0.8%を得た。乾燥機でも同様の手法で籾の水分推定を行ったところ,標準誤差0.1%を得た。
著者
高野 久輝 井街 宏 YOON Shin Le CHEOL Sang K HAN Ik Jo KYUNG Phil S IN Seon Shin SEON Yang Pa BYOUNGーGOO M 妙中 義之 松田 武久 加藤 久雄 MIN Byoung-Goo
出版者
国立循環器病センター
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1991

完全体内埋み込み型人工心臓の駆動システム、さらには、生体医用材料の血液適合成に関し、日・韓両国のメンバ-が韓国が会し、討論を行った。以下に、討論された問題点にそって両国の現状をまとめる。1.駆動システム国立循環器病センタ-では、摩擦ポンプ(アクチュエ-タ)を正・逆転させる事で、シリコン油を左右交互に動かし血液ポンプを駆動させるエレクトロハイドロリック方式が採用されている。本システムの利点は、アクチュエ-タを血液ポンプと離れた位置に埋め込み可能で、従来開発をおこなってきた空気駆動型人工心臓がそのまま利用でき、またその胸腔内へのフィッティングを損なうことが無い。しかし、モ-タ-を正・逆転させる事による効率の低下が大きい点が、現在の欠点である。生理的状態に設定された循環回路を用いたテストでは、最大60回の心拍と5L/minの心拍出量が得られている。また、成山羊を用いた急性実験でもほぼ同等の結果が得られている。今後、アクチュエ-タのデザイン及びモ-タの改良を行い、効率を向上させる事が大きな課題である。東京大学では、ユニ-クなアイデアの埋め込み型人工心臓が開発されている。これは、一つの遠心ポンプに2つの3方弁を付け、更に、それぞれの3方弁に血液の輸入出ポ-トを取り付けたもので、3方弁を切り替える事で一つのポンプが両心室の機能を果たす。現モデルを用いたin vitroテストでは、5L/min程度の流量が証明されているが、一つのポンプを用いる事による動静脈血シャントやシステムの抗血柱性等が今後の課題である。ソウル大学では、2つの血液サックの間でアクチュエ-タを左右に動かし血液を駆動する、ペンデュラムタイプの埋め込み型人工心臓が開発されている。5頭の動物実験がすでに行われ、100時間の生存記録を得ている。本システムでは、アクチュエ-タと2つのサックがひとつのハウジングの中に収められており、ポンプのデサインの自由度が低い。このため、人体内での解剖的適合性に問題がある。2.材料表面での抗血柱性の獲得国立循環器病センタ-では、医用材料表面に血液が接した場合の内因性血液凝固系やカリクレイン・キニン系の活性化に関する研究が行われている。ビタ-ガ-ドの種子から、これらの系の活性化を阻害するインヒビタが見つけられており、人工臓器や体外循環に応用できる可能性がある。また、血液面だけでなく材料面からのアプロ-チも行われている。すなわち、光照射で開裂するフェニルアジド基を吸着させたい蛋白等に化学反応させ、本物質を目的とするポリマ-上で光照射により吸着させる技術の開発が行われている。様々なポリマ-、蛋白質に応用可能であり、人工臓器やバイオセンサへの応用が期待できる。ソウル大学では、より高い抗血柱性を獲得する為に、ポリウレタン表面を内皮細胞や蛋白分解酵素であるルンブロカイネ-スで被覆する研究が行われている。また、ペンデュラムタイプ人工心臓の血液室内での、流れと血柱形成の関係に関する研究も行われている。3.その他自然心では、左右心拍出量が数%異なるが、埋め込み型人工心臓においてこの左右差をいかに実現するかは、大きな問題である。国立循環器病センタ-では、心房内シャントを利用する事を考えている。東京大学のタイプの人工心臓では、3方弁の開閉の時間を変える事で比較的容易に実現できる。ソウル大学では、血液サックを2重にして外側のサックをペンデュラムに固着し、ペンデュラムの動きを非対称にする事と、さらにペンデュラム周囲のシリコン油と空気の量を調節する事で、左右差を実現しようとしている。人工心臓には機械弁を用いるのが現在の主流であるが、ソウル大学では、人工心臓と同じ材料のポリウレタンを用いた人工弁の開発と評価が行われている。製作コストが低い事が利点であるが、耐久性や石灰化の問題が今後の課題である。
著者
HAYES BlakeE.
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では男女同権に関する雇用実施状況を調べるため複数国(日本他5カ国)の制度分析を行い、また高学歴女性雇用に対する影響力のメカニズム解明のため日本の資本主義の多様性(VOC)等について調査した。日本の大学雇用では他調査地より明確なパイプラインが存在することから、意識的、無意識的な性差ステレオタイプをベースとした男性規範による硬直的雇用及び昇進が促されていることが分かった。女性雇用は宗教、VOC(自由な市場経済(LMEs)対コーディネートされた市場経済(CMEs))や性差規範イデオロギー(差異性対同一性)など地域要因が様々に影響し経済・政治・社会的要素による複雑な相互関係が示されていた。
著者
渡邉 富夫
出版者
岡山県立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

実感し共感するかかわりの場のヒューマンインタフェースの観点から、うなずきや身振りなどの身体的リズムの引き込みを音声駆動型身体引き込みキャラクタInterActorや身体的インタラクションロボットInterRobotに導入したシステムを開発展開し、身体的インタラクション・コミュニケーションの引き込みに基づく共感インタフェースを研究開発した。本研究で開発した身体的コミュニケーション技術がゲーム大手の作品等に導入・実用化された。
著者
印南 洋 小泉 利恵
出版者
中央大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

日本の大学英語科目では、授業を履修する代わりに、外部テストのスコアに基づいて単位を認定する場合がある。本研究は英検・TOEFL・TOEICを対象に、「単位認定対象の科目内容」と「単位認定時に用いるテスト内容」がどの程度一致しているかを調べた。その結果、(1)各大学には、外部テストのスコアに基づき単位認定できる英語科目が58.5科目(中央値)あること、(2)単位認定が行われる約3分の1において、「単位認定対象の科目内容」と「単位認定時に用いるテスト内容」の間に相違がみられること、などが分かった。
著者
小林 英嗣 倉田 直道 上野 武 小篠 隆生 坂井 猛 小松 尚 鶴崎 直樹 斎尾 直子 遠藤 新 三宅 諭
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

地域・環境の再生を実現するために、関わる主体の関わり方、システム、実現組織のあり方という3つの分析視点を持ち、国内外の事例調査を行った。研究成果として、地域・環境の再生を実現に導くための共創の状態とは、既存の主体同士の中で実現されるものではなく、新たな主体同士の関わり方が必要であること、その中で、大学の果たす役割が非常に重要であること、また、活動の具体的な場所や地域の設定が重要であることが明らかになった。
著者
岡本 美子
出版者
茨城大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

惑星系形成の場としての星周円盤の性質を、円盤ダストの空間分布の観点から明らかにするため、8mすばる望遠鏡の中間赤外線観測装置COMICS等を用いた星周円盤ダストの観測を進めた。この結果、いくつかの著しく広がった円盤を発見し、特に大きな広がりを持つ天体の性質を詳しく調べた。10太陽質量星周の円盤1個については、その10-1000AUスケールの構造・フレア構造・温度分布・ダストの性質などを解明した。この円盤は、太陽質量程度の星の周囲の円盤でも期待されるような熱的構造を示す一方で、存在するシリケイトダストの種類は、低質量星周とはかなり異なり、プラズマ等による変性の可能性が示唆される。
著者
石井 大祐
出版者
早稲田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、マンガ画像の作画支援を主目的とし、作者の意図するマンガのシーンに応じた画像の半自動構築、あるいは補助的な画像効果等を付与可能とする技術の検討を行っている。研究の初年度となる本年度は、マンガの画像的特徴と物語上の表現のメタデータ化に関して検討を行った。マンガの画像的特徴を抽出するためには、マンガ画像の解析技術が必須となる。近年では、キャラクターをパーツ毎に別レイヤとして登録することで、当該キャラクターのアニメーション化が可能となる技術が実現されている。ただし、パーツをあらかじめ別画像として用意することが必須である点、キャラクターの生成については各種パラメータを数値として適切に設定する必要がある点に課題がある。より柔軟な作画支援を実施するためには、描かれたキャラクターから構成要素の分解を可能とする画像解析技術が重要となる。本年度は、画像解析に関するサーベイを実施した。本研究成果は、HCGシンポジウムオーガナイズドセッションI「コミック工学」にてオーガナイズドセッション賞を受賞した。マンガの表現の一つとして、シーンがある。我々は画像特徴を用いた表現情報の取得という観点から、マンガ画像上に配置されている構成要素の情報からシーンの分断点となるコマの検出を試みた。本研究を遂行するにあたり、正解情報の定義が必須となることから、マンガ作者に正解情報の供与を受けた。今回の検討では、手動で構成要素情報をメタデータ化し、これを用いてシーンの転換となるコマに存在する構成要素の重要性について解析を行った。我々はこれまでにマンガ関連研究を遂行するにあたり、メタデータ付与等の作業を実施しやすくするためのソフトウェアを開発してきた。マンガ関連研究の活発化のため、本ソフトウェアについてアップデートを実施し、本研究成果の一部並びに実験用マンガ画像提供用として構築したウェブサイト上にて公開した。
著者
沖本 天太 井上 克巳
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では動的環境における多目的分散制約最適化に関する研究を行った.まず,多目的分散制約最適化アルゴリズムとして,すべてのパレート最適解が求解可能な厳密アルゴリズム,パレートフロントの部分集合を求解する非厳密アルゴリズム,パレートフロントの近似解を求解する近似アルゴリズムをそれぞれ開発した.次に,動的環境における多目的分散制約最適化問題を定式化し,この問題を解く効率的なアルゴリズムを提案した.最後に,応用研究として,チーム編成問題及びナース・スケジューリング問題に本モデルを適用した.本研究は,申請書に記載した研究計画どおりに進めることが出来,AI分野の最難関国際会議に複数の論文を輩出している.
著者
春木 孝子
出版者
神戸松蔭女子学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

中世から現代にいたるアイルランド文学史における女性表象の変遷を、それぞれの歴史的、社会的、政治的な時代背景との関連において明らかにすることが報告者の主要な研究テーマであるが、その目的は日本ではまだあまり取り上げられていない英語を媒体とする女性詩人や劇作家・小説家のみならず、アイルランド語を媒体とした女性詩人を取り上げることにあり、3年間の期間内においても出来得る範囲で積極的にゲール語(アイルランド語)で書かれた文献を研究の範囲に入れるということを大きな目標として研究を進めてきた。そのため、アイルランド語の研鑽にかなりの時間を投じ、京都アイルランド語研究会のメンバーと共に中級文法書の翻訳を完成させるという形でもその成果はあがったが、特に、現代詩人のモーイラ・ヴァッカンツイーの哀歌を読み、分析するにあたって、歴史的また伝統的な背景にまでさかのぼった視点を持つことができたということが大きな成果であった。その一方で、20世紀初頭の文芸復興期以降のアイルランド文学における女性表象の大きな変化については、リアム・オフラバティーの小説に関しての論文「存在の矛盾そして狂気」のなかでだけではまだ十分に論じることができず、さらに「男の幻想と女の現実のはざまで」という枠組みでとらえ、「リアム・オフラバティーの女性表象」というタイトルで現在、論文を執筆中である。
著者
上神 貴佳 堤 英敬
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究の目標は、事実上、日本の首相を決める、自民党総裁選のメカニズムを解明することにある。とりわけ2000年代に入ってから、毎回、党員投票が実施されるようになるなど、同党の総裁選には大きな変化が生じている。一方、国会議員の投票行動には変化が生じているのか否か、(生じているとすると)どのような変化なのか、地道なデータの収集を通じて、その解明を試みた。現在、詳細な分析を続行中であるが、投票行動における派閥要因の低下が予想される。無派閥議員の増加など、派閥の拘束力低下をうかがわせる傾向と軌を一にする結果が得られるはずである。
著者
垣花 シゲ 眞榮城 千夏子 太田 光紀
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

前回の研究課題(基盤(C) 2006-2008)で開発した「途上国を対象とした感染看護教育プログラム」を実践に応用して効果を見た。プログラムの内容は、感染源別院内感染調査と標準予防策の実践である。まず、院内感染調査結果の共有を目的にラオスの協力3施設でセミナーを開催した。今研究の重点教育は、滅菌物品の清潔な保管、手術創の清潔、カテーテル挿入の際の滅菌操作等であった。プログラム評価として実施した質問紙調査および感染兆候を示す患者の減少から感染看護教育プログラムの効果が示唆された。
著者
田中 友香理
出版者
筑波大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、明治期における「転向」の学者として知られる加藤弘之の国家主義思想を解明することで「明治国家の思想」の形成―変容過程を明らかにし、新たな明治国家像を提示するものである。加藤弘之は、初代東京大学綜理、教科書調査会会長等を歴任し生涯にわたって文部行政の枢要な地位に在り続け、また元老院議官、貴族院議員として明治国家の形成を担った重要な人物の一人である。それだけでなく、天賦人権論者から「優勝劣敗」の思想家へ転じた「転向」の学者としても知られ、近代日本思想史を解明する上でも重要な人物である。そのような人物の国家主義思想の究明することで、明治国家とは何であったかという問いに一つの答えを提示できるといえよう。本研究の具体的な課題は、第一に、加藤の言動を政治史的文脈に還元して同時代的位置づけを明らかにすること、第二に、加藤の知的基盤である東京大学(書生社会)に着目しその知的環境を分析すること、第三に、加藤の国家主義思想の根幹にあった「進化論」を解明し、初期の立憲政体論から最晩年の「族父統治論」にいたる思想形成の過程を明らかにすることである。昨年度は、雑誌論文および博士論文を執筆することで、上記の課題を解決した。第一の課題に関して、元老院会議における地方自治制関連法案審議、貴族院会議における民法、条約改正論等に関する審議を分析し加藤の政治的立場を剔出した(博論第3、5章)。第二の課題に関して、加藤が主宰した雑誌『天則』の誌面をメディア史的手法によって分析し、書生社会における思想の「横」の広がりを把握し、明治憲法制定から日清戦争までの「進化論」と「日本主義」の関係を考察することができた(雑誌論文、博論第4章)。第三に、従来「転向」とされてきた加藤の思想を進化論思想の展開として捉え直し、それを基底として国家思想がいかに構築されたかを明らかにした(博論第1~5章)。
著者
後藤 百万 舟橋 康人
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

膀胱虚血再灌流モデルラット、及び下部尿路閉塞モデルラットを用い、ペンシル型CCD生体顕微鏡により膀胱虚血再灌流における膀胱壁微小循環の変化を解析した。下部尿路閉塞における膀胱蓄尿障害は、膀胱過伸展による虚血再灌流障害による膀胱血流障害に起因することを示した。また、膀胱微小循環の障害が交感神経α1遮断薬の前投与によりα1A受容体を介して抑制されることを示した。これらの結果から、下部尿路閉塞に基づく蓄尿障害の新規治療として、膀胱微小循環、特に交感神経α1A受容体をターゲットとした薬剤開発が有用であることが示唆された。
著者
川又 啓子
出版者
京都産業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究課題で実施した日仏出版社へのインタビュー調査から、コンテンツ創造には「信頼」が最重要要因であることが示された。マンガはハイリスクなビジネスであるがゆえに、創造基盤としての「信頼」(タスクに対する信頼(task reliability))と編集者の誠実さ(integrity))の重要性が当事者間で強く認識されている。しかし、作家・編集者の関係が成熟するにつれて、当事者間での意識が希薄になるのは、「信頼」が制作システムに埋め込まれるためであると考えられる。
著者
荒川 正晴 町田 隆吉 松井 太 舩田 善之 荒川 慎太郎 佐藤 貴保 坂尻 彰宏 赤木 崇敏 高橋 照彦 武内 紹人
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

各班における資料調査の成果にもとづき、シルクロード東部地域の民族や文化の交流および政治・社会・経済などの具体的な姿を、各分担者の研究領域から明確にするとともに、「出土史料学」の基盤作りを行った。すなわち当該地域より出土した各文字資料の分類とそれぞれの性格と機能を検討し、このうち公文書については、各文書群の間で相互比較することを通じて、唐~宋~元にいたる公文書の長期間にわたる通時的な展開と、周辺国家・地域への公文書の空間的な波及と受容のあり様を明らかにした。研究成果は、既に国際ワークショップを開催して公表し、今はその成果をまとめた本を準備中である。
著者
三澤 美和 千葉 義彦 酒井 寛泰
出版者
星薬科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

アレルギー性気管支喘息時に発現する気道過敏性の発症機序を薬理分子生物学的に検討を行い、以下の成果を得た。1.抗原反復チャレンジラットから摘出した気管支は endothelin-1(ET-1)収縮反応性が増大していた。このET-1 収縮反応性亢進にはCa^<2+>感受性亢進現象が関与しており、CTI-17とミオシン軽鎖キナーゼのリン酸化(活性化)が亢進していることに起因していた。2.反復抗原チャレンジにより気管支の matrix metalloproteinase (MMP)-12 mRNAとタンパク質の発現と活性化が亢進しており、MMP-12 が気道過敏性に関与していることを明らかにした。3.抗原暴露後に気管支平滑筋において活性化される転写因子を核抽出液を用いて protein/DNA array にて網羅的に把握した。活性化された転写因子のうち、RhoA プロモーター領域の配列と結合する可能性がある転写として、USF-1、Sp1、NF-E1、STAT5、STAT6 をつきとめた。4.Interleukin-13 は転写因子 STAT6を介して気道過敏性を発現した。5.Statin 系薬物である lovastatin をin vivo で投与することによって、抗原反復チャレンジによって発現するラット気道過敏性を ex vivo において抑制することが判明した。その際 RhoAの細胞膜への移行もlovastatin が抑制することも明らかとなり、statin系薬物が気管支喘息における気道過敏性の改善に有効である可能性を示唆した。6.Glucocorticoids は抗原誘発時に気管支平滑筋においてみられる RhoAupregulation を抑制することにより、気管支喘息に有効性を示すことが示唆された。
著者
奥田 隆史
出版者
愛知県立大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

我が国の大学においてもGPA制度が導入され,単位取得という学修の“量”だけに着目しがちであった成績評価を,その“質”も重んじるという効果をもたらした.一方でGPAを下げることにつながることを避けるために,学生がとる履修行動(成績評価が厳しい科目の履修回避等)が問題になってきている.つまり,GPA制度には,学修意欲向上インセンティブだけでなく負のインセンティブをも含んでいる.本研究では,野球における打者成績の質と学業成績の質とのアナロジーに着目し,野球選手評価数理理論セイバーメトリクスの着想を,大学における成績評価へ適用し,GPAに代わる新しい成績評価指標を提案するとともにその有効性を検証した.
著者
松井 利之 岩瀬 彰宏
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

FeRh金属間化合物は,室温附近で反強磁性状態から強磁性状態へと変化する物質である.我々は,この物質にイオンビームを照射し,反強磁性が安定となる温度域で,強磁性状態を安定化させることに成功している.本研究ではこの成果を利用し,物質の磁気構造を3次元的に制御することにより,従来にない磁気構造を構築し,新規なデバイス応用を検討した.その結果,マイクロイオンビーム装置を用い2次元の磁気構造描画を可能にしたこと,多様なエネルギー域のイオン照射と熱処理を併用することで層状の磁気構造を構築したこと.クラスターイオンビーム照射により,際表面層の磁気構造を選択的に変化させ得ることなどを明らかにした.
著者
伊藤 徹 荻野 雄 昆野 伸幸 平子 友長 長妻 三佐雄 笠原 一人 平芳 幸浩 松隈 洋 西川 貴子 日比 嘉高 若林 雅哉 秋富 克哉 宮野 真生子
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、日本語としての「主体性」の概念の成立と使用の歴史を、哲学、社会思想、文学、美術、演劇、建築など多様な分野において、追跡したものである。それによって、日本が近代化に伴って経験した人間理解の変化を、多様なアスペクトにおいて解明することができた。また海外の日本文化研究者との共同研究および出版事業を通じて、日本におけるテクノロジーの発展と文化との関係についての知見を国際的に発信することができた。