著者
今井 藍子 柳瀬 和也 馬場 慎介 中井 泉 中村 和之 小川 康和 越田 賢一郎
出版者
公益社団法人 日本分析化学会 X線分析研究懇談会
雑誌
X線分析の進歩 (ISSN:09117806)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.235-248, 2017-03-31 (Released:2023-08-18)
参考文献数
18

日本国内で紀元前3世紀から紀元後7世紀後半ごろに流通した古代ガラスは,全て海外からの搬入品であり,その化学組成は多様である.本研究では北海道道央地方から出土した続縄文時代のガラスビーズ計98点について,化学組成よりガラスの原料採取地や製作地の推定を試みた.分析資料は文化財であり,所蔵施設外部への持ち出しや破壊分析が困難であるため,ポータブル蛍光X線分析装置を用いて非破壊オンサイト分析を行った.その結果,資料は分析組成に基づきアルミナソーダ石灰ガラス(Na2O-Al2O3-CaO-SiO2系),ソーダ石灰ガラス(Na2O-CaO-SiO2系),カリガラス(K2O-SiO2系)の3タイプに分類された.また,東京理科大学中井研究室がこれまで分析した本州以南の古代ガラスとの微量重元素組成の比較より,同時期の北海道道央地方と本州以南では同様の起源を持つガラスが流通していたことが明らかになった.
著者
中村 洋一
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.148, pp.72-83, 2011 (Released:2017-02-17)
参考文献数
28

大規模日本語テストの実現可能性を考える時,コンピュータ適応型テスト(CAT)には,大きな貢献が期待できる。コンピュータ適応型テストとは,コンピュータを使い,個々の受験者に適する項目を適宜判断しながら出題し,効率よく受験者の能力を測定するテストで,その原理は,視力検査によく似ている。本稿では,まずその原理と,それを可能にするテスト理論の項目応答理論を概観し,コンピュータ適応型大規模日本語テストの開発を進めていくための,基本的な課題を考察する。一般的な課題として,言語能力の構成要素,学習行動目標の設定,分割点・到達基準の設定,アイテムバンクの構築言語テストに関する啓蒙をとりあげる。次に技術的な課題として,マルチメディア・テスティング,移植性とアクセス可能性の高い日本語特有の表示方法の確立,項目バンキングソフトウェアの開発,総合的なCATシステムのプログラム開発をとりあげる。
著者
井上 基浩 勝見 泰和 川喜田 健司 岡田 薫 中村 辰三 松本 勅
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.130-140, 1998-06-01 (Released:2011-03-18)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

ラットの腰部への鍼刺激による坐骨神経の血流変化についてレーザードップラー法を用いて検討した。また、その機序を調べる目的で坐骨神経の電気刺激による坐骨神経血流の反応と、薬物投与の影響についても併せて検討した。その結果、鍼刺激時には増減さまざまな変化を認め、約半数において血圧の変化に同期した反応であった。しかし、半数においては血圧の変化と必ずしも一致しない反応を認めた。神経の電気刺激は測定側の同側と反対側で行ったが、同側では血圧の変化はみられず血流のみが増加した。この増加反応はアトロピンの投与によりやや減少した。反対側の刺激では血圧の変化と必ずしも一致しない反応を認めた。これらの結果から、鍼の刺激部位や方法によっては、血圧の変化を伴わない坐骨神経に対する血管拡張性の反応が得られる可能性が示唆された。
著者
宮原 悠太 敷地 恭子 古谷 裕美 阿座上 匠 原田 美紀 水野 秀一 中村 準二
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.331-336, 2014-05-25 (Released:2014-07-10)
参考文献数
13
被引用文献数
1

MRSAのバンコマイシン(VCM)MIC測定結果が2 μg/mlの場合,臨床においてVCM治療の失敗する可能性があることが知られている.VCM MIC測定結果は測定方法によって異なることが知られており,マイクロスキャンPos Combo 3.1Jパネル(シーメンスヘルスケア・ダイアグノスティクス社)を用いた場合,プロンプト法と基準濁度法の菌液調整方法によって測定結果が異なると報告されている.本研究ではプロンプト法と基準濁度法のVCM感受性測定結果の感度の違いを検討することを目的とした.当院で検出されたS. aureus 91株を対象として,CLSI推奨微量液体希釈法に準拠するドライプレート‘栄研’(栄研化学)の測定結果を基準とし,両法のVCM MIC測定結果を比較した.結果,ドライプレート法を基準とした一致率はプロンプト法が40.7%に対し,基準濁度法は81.3%であった.プロンプト法は基準濁度法よりも高値になる傾向が見られ,VCM MICは基準濁度法を用いて測定したほうが良かった.
著者
樋口 匡貴 中村 菜々子
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.81, no.3, pp.234-239, 2010 (Released:2010-11-05)
参考文献数
17
被引用文献数
2

This research focused on (a) embarrassment at the time of condom purchase or use, and (b) stages of change (Prochaska & DiClemente, 1983) as psychological factors related to the use of condoms. A written questionnaire was completed by 376 university students. For condom purchases, ANOVAs revealed that scores for “intent of behavior” increased as participants moved from the “precontemplation” stage to the “action” stage. The scores for embarrassment, and many factors of embarrassment, were lower in the “action” stage than in the other stages. However, the patterns of condom use scores were unclear. These results indicate that with regard to condom purchases, persons who are in the “preparation” or earlier stages (i.e., persons who are not purchasing condoms) are particularly susceptible to embarrassment.
著者
小林 拓也 中村 雅俊 梅垣 雄心 池添 冬芽
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.275-281, 2014-08-20 (Released:2017-06-27)
被引用文献数
2

【目的】本研究の目的は筋力増強運動における運動速度および収縮様式の違いが骨格筋の微細損傷に及ぼす影響をあきらかにすることである。【方法】健常若年男性40名を対象とした。肘関節屈筋の筋力増強運動について,無作為に求心相と遠心相の時間を5秒とするNS群,求心相を長くするCS群,遠心相を長くするES群,求心相と遠心相の時間を1秒とするN群の4群に分類した。なお,いずれの群も総運動時間は計300秒に統一した。運動前後,1日後,2日後の最大筋力,筋厚,筋輝度,筋硬度を測定した。【結果】運動中の総筋活動量積分値は4群間で有意差は認められなかった。すべての群において運動直後では筋力は有意に低下,筋厚,筋輝度は有意に増加し,その変化率は4群間で有意差は認められなかった。【結論】総運動時間や総筋活動量が同じであれば,運動速度や収縮様式による違いはなく,骨格筋が受ける微細損傷の程度は同等であることがあきらかになった。
著者
石川 鎮清 木村 哲也 中村 好一 近藤 克則 尾島 俊之 菅原 琢磨
出版者
一般財団法人 日本健康開発財団
雑誌
日本健康開発雑誌 (ISSN:2432602X)
巻号頁・発行日
pp.202244G01, (Released:2022-08-17)
参考文献数
12

背景・目的 医療経済学への社会的要請は高まっているが、担う人材は十分とは言えず、養成上の課題は多い。そこで医療経済学の人材養成の課題を把握し、解決策の方向を示すことを目的とした。方法 2つの調査を行った。量的調査では、主要2学会の抄録集を対象に近年10年間における医療経済学分野の研究発表数、人材数を調査した。質的調査では、国内の医療経済学分野における中堅研究者8人を対象に半構造化面接を行い、質的に分析した。結果 日本経済学会では一般演題に占める医療経済学関連の演題の割合が2000年代には2%~6%台だったが、2012年を境に8%~10%台へと増加していた。医療経済学会では、経済学系の発表者の割合が2000年代には4~7割の幅で上下していたが、2013年以降は、上昇に転じ、2015年~2016年は7割を超えていた。インタビュー調査からは、大学教育における医療経済学の課題、研究職ポストの不足、データ利用の促進の必要性、経済学系と医学系との協働の可能性の4つのカテゴリを抽出した。考察 量的・質的調査の結果、社会的ニーズの増大にもかかわらず、人材育成には課題があることが明らかになった。問題解決の方向性として1)重点的で継続的な人材養成、2)雇用ポストの創出、3)医療データの利用環境の改善促進、4)医学分野と経済学分野との協働の場の創設の4つが重要と考えられた。
著者
内田 あや 大橋 美佳 中村 美保 松田 秀人
出版者
学校法人滝川学園 名古屋文理大学
雑誌
名古屋文理大学紀要 (ISSN:13461982)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.33-39, 2008 (Released:2019-07-01)

米飯食は伝統的な日本型食生活の中心であり,日本食は肥満や糖尿病食として推奨されている.米飯食が血糖コントロールの面から良い食品であるかをパン食と比較検討した.被験者は19〜20歳の健常な女性35名で,被験食品(約350kcal)を10分間で摂取させた.空腹時,食後30分,60分,90分,120分の計5回指先より採血し血糖測定器で測定した.その結果,空腹時血糖値は全員110mg/dL未満で耐糖能異常者はいなかった.食後60分,90分,120分の米飯食の血糖値がパン食より有意に高かった.また,体脂肪率30%以上の被験者ではパン食と米飯食間での有意差はなく,30%未満では食後60分,90分,120分の米飯食の血糖値がパン食より有意に高かった.米飯食で比較すると体脂肪30%未満が30%以上に比べて食後30分値が有意に高かったが,パン食では有意差はなかった.体脂肪率30%以上の人には内臓脂肪によるインスリン抵抗性が惹起しているのではないかと考えられる.
著者
濱田 信夫 中村 正樹
出版者
Osaka Urban Living and Health Association
雑誌
生活衛生 (ISSN:05824176)
巻号頁・発行日
vol.49, no.6, pp.365-371, 2005 (Released:2005-12-07)
参考文献数
5
被引用文献数
1

Three kinds of fungi were cultured on various media (including different 30 surfactants, anionic, nonionic, amphoteric, and cationic surfactants) and a comparison of their growth was made. The growth of all three fungi was inhibited by anionic, amphoteric, and cationic surfactants. In particular, no colonies of these fungi were found on 0.25% of these surfactants and only small colonies were found on 0.05%. On the other hand, although two fatty acid-amide type nonionic surfactants inhibited the growth of the three fungi, no inhibition on the their growth was found on media including other nonionics. For example, fatty-acid ester type nonionics promoted the growth of all three fungi. In particular, Scolecobasidium constrictum, a dominant fungus in washing machines, grew well on media including polyoxyethylene-alkylether nonionic surfactants, in contrast with Cladosporium cladosporioides, a common fungus in indoor environments. Fatty-acid amide type surfactants were noticed for their potential to be exploited in detergent for fungus-free washing machines.
著者
中村 友真 岸本 桂子 山浦 克典 福島 紀子
出版者
日本社会薬学会
雑誌
社会薬学 (ISSN:09110585)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.2-9, 2016-06-10 (Released:2016-07-06)
参考文献数
22
被引用文献数
6

To consider what pharmacists can do to prevent patients from having leftover prescription drugs, we conducted a qualitative study about the various causes behind the unused drugs. We interviewed one male and four female home-care patients who had leftover prescription drugs that pharmacists detected via their home visiting service. The Grounded Theory Approach was used for analysis, and two types were identified as “exogenous factors that cause confusion for the patient” and “patient’s personal thoughts and feelings.” “Exogenous factors that cause confusion” involved eight factors, including unsuitable dosing schedule for lifestyle, complex timing for taking medicine, and inadequate support for enhancing patients’ compliance. These factors were divided into [problems with prescription] and [difficult changes to manage]. In “patient’s personal thoughts and feelings,” 16 concepts were identified and their broader concepts comprised six categories: [distrust of drugs], [taking a positive view about one’s own non-compliance], [psychological distance from medical staff], and others. It was assumed that there would be a perception gap of compliance between patients and medical staff. Moreover, patients affirmed their poor compliance and they did not see the occurrence of leftover drugs as a problem. Additionally, psychological distance from medical staff prevents patients from consultation. Therefore, pharmacists should check patients’ compliance for each drug as well as any medical problems. Knowing patients’ inherent mind revealed by this study, the pharmacist can assist medication alongside patients and contribute to the early prevention of unused drugs.
著者
瀧川 裕貴 永吉 希久子 呂 沢宇 下窪 拓也 渡辺 誓司 中村 美子
出版者
NHK放送文化研究所
雑誌
放送研究と調査 (ISSN:02880008)
巻号頁・発行日
vol.73, no.3, pp.70-85, 2023-03-01 (Released:2023-03-30)

今日の社会におけるソーシャルメディアの社会的影響力は大きく、世論の動向を把握する際にソーシャルメディアの影響を考慮することは避けられない。他方で、従来の世論調査による世論の把握に比べて、ソーシャルメディアを用いた言論分析がどのような特徴と課題をもっているかについては検討が必要である。しかし、ソーシャルメディアの言論分析は従来の世論調査とは異なる方法が必要とされる。そこで、本論文では、ソーシャルメディアにおける「世論」に計算社会科学という社会科学の新たな分析方法を適用し、世論調査の結果と比較することで、ソーシャルメディアにおける「世論」の意味について検討する。その際、Twitterにおける安倍首相に関するツイートの分析を例として用いる。具体的には、教師あり機械学習によるセンチメント分析という手法を用いて、大規模なツイートデータから、安倍首相に対する支持と不支持の態度を推定する。機械学習のモデルは、ディープラーニングに基づく事前学習言語モデルBERTの改良モデルの一種であるRoBERTaを使用する。モデルの正解率は85.79%であり、十分な性能を発揮することが示された。 分類結果では、ツイートの8割近くが安倍首相に対するネガティブな態度を表していると分類され、観察期間を通じて不支持が支持を大幅に上回っていた。また、モデルが分類したセンチメントに特徴的な語を分析した結果,人間の目から見ても理解可能であり,分類がある程度妥当なものであることがわかった。このように、Twitterから読み取った安倍首相への支持と不支持の時系列変化と世論調査の内閣支持率の比較を行うと,両者は一致せず大きな乖離が見られることが明らかになった。これらの結果は,Twitter上での意見表明と一般世論との関係を考えるための材料となる。次号では,支持と不支持がどのようなトピックをめぐってなされたのか,トピックモデル分析という手法を用いて詳細に分析し,Twitter分析の有用性と課題について報告したい。
著者
渡来 靖 岡本 惇 中村 祐輔
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.100195, 2016 (Released:2016-04-08)

駿河湾域ではしばしば駿河湾収束線と呼ばれる収束線が形成され,駿河湾周辺の静岡県東部地域に局所的な荒天をもたらすこともある.駿河湾収束線の研究は古くからなされているが,近年の気候学的特徴は十分に調査されていない.本研究では,最近20年間の地上観測データから駿河湾収束線の気候学的特徴を明らかにするとともに,その形成条件について検討する. 駿河湾収束線の典型事例を抽出するために,相模湾を囲むAMeDAS観測点8地点(御前崎,菊川牧之原,静岡,清水,富士,三島,松崎,石廊崎)の地上風時別値を用い,平面近似法により一時間ごとの発散量を求めた.求まった発散量が負値であれば駿河湾域で地上風が収束していることになるが,その中で発散量が −1.0×104 s-1以下となった場合を強い収束と定義した.これは,発散量が負値となった全時間のうちの上位約5%に相当する.さらに,強い収束が少なくとも3時間以上連続した場合を収束事例とした. 1995~2014年の20年間について,駿河湾域での強い収束の出現頻度を調べたところ,強い収束は寒候期の1~3月に最もよく出現し,平均約3~4%の出現頻度である一方,夏季の6~8月にはほとんど出現しなかった.1~3月の3か月間の収束事例をカウントすると20年間で162事例(平均8.1回/3か月)であったが,2013,2014年の12回/3か月から1999,2002年の1回/3か月まで,出現頻度の年々変動は大きい. 抽出された収束事例について,ひまわり赤外画像を元に駿河湾域の雲の形状から分類を行った.全事例のうちの49%は上層の雲等の影響で相模湾域の局所的な雲の形状を判別するのが困難であった.30%は駿河湾付近を始点として南東方向に延びる雲列が見られ,駿河湾域やその南東側での地上風の収束により形成されたものと推測される.線状雲列が見られた事例はさらに,雲列の東側にも雲域が広がる場合(以降T型と呼ぶ)と,そうでない場合(S型)に分けられる。S型,T型の割合はそれぞれ19%,11%である.残りの21%は,相模湾域に雲が見られなかったり,明瞭な雲列が形成されていない事例である. 輪島,浜松,館野のゾンデデータより求めた上空850hPa面の地衡風を調べたところ,強い収束の出現時は北~北北東の風であることが多く,その傾向はS型でもT型でも違いはなかった. S型の典型事例である2012年1月2日と,T型の典型事例である2012年3月21日について,領域気象モデルWRF Version 3.2.1を用いて再現計算を行い,相模湾域における収束線の形成要因を調べた.S型事例における駿河湾域の地上付近を始点とする後方流跡線解析の結果によると,相模湾では主に富士川の谷からの北風と,伊那谷を通って赤石山脈を迂回するように吹き込む西風が収束していることがわかる.T型事例ではさらに,関東山地を迂回して伊豆半島を越えて吹き込む東風も見られる.駿河湾域での収束線形成には,駿河湾周辺の地形の影響を受けて山地を迂回する流れが卓越することが重要であることを示唆する. 駿河湾収束線は主に1~3月に出現し,出現時の上空の風は北~北北東風である.S型やT型で見られる列状雲は伊豆諸島付近まで延びており,中部山岳域を大きく迂回するような地上風系に影響されていると思われるが,駿河湾域での強い収束の形成には駿河湾周辺の谷筋を抜ける流れが重要であることが示唆された.
著者
石川 勝美 岡田 芳一 中村 博
出版者
The Japanese Society of Agricultural Machinery and Food Engineers
雑誌
農業機械学会誌 (ISSN:02852543)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.51-56, 1995 (Released:2010-04-30)
参考文献数
12

生態系農業の構築等の視点から, 造岩鉱物の特性を生かした微小エネルギ利用の新しい技術開発は重要である。そこで石英斑岩に属する麦飯石による水, 土壌の活性化を期し, 麦飯石の農業面への効果的導入を図ることを目的として, その理化学的特性について検討した。
著者
鈴木 慎太郎 中村 陽一
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.87-91, 2007-02-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
10

症例は31歳の女性.夕食に寿司を食べていた最中, 顔面の痒み, 口唇の腫脹や喉頭の掻痒感, 閉塞感を自覚したため精査目的で当科を受診した.花粉症の既往がある.当初, 寿司の魚肉アレルギーもしくは醤油の原材料である小麦や大豆に対するアレルギーによる口腔アレルギー症候群を疑った.しかし抗原特異的IgE検査で調べた食餌抗原は全て陰性であり, 大豆, 小麦粉など醤油の主要成分は皮膚試験でも陰性だった.そこで実際に摂取した醤油の材料を取り寄せ, 各成分そのもので皮膚試験を行い, カツオ抽出物で強陽性を認め, カツオなど魚肉由来の醤油添加物が口腔アレルギー症候群の原因ではないかと強く疑った.市販の醤油の中には風味付けのため「だし入り」と称し, 魚肉抽出物が添加されている場合がある.小型の個別包装にはアレルギー成分表示義務がないため, こうした添加物の記載がないことも多く, 食物アレルギーの既往がある患者では指導上注意が必要である.
著者
中村 由香
出版者
東京大学大学院教育学研究科生涯学習基盤経営コース内『生涯学習基盤経営研究』編集委員会
雑誌
生涯学習基盤経営研究 (ISSN:1342193X)
巻号頁・発行日
no.34, pp.113-122, 2009

本稿の目的は近代家族と親密圏・親密性についてのこれまでのアプローチを,近代感情現象のシンボルである"愛"の側面から整理することにある。親密圏に関する理論研究において,親密圏は近代家族と同一視されてきた。そして,近代家族間での親密性の靱帯となったのは,異性間の"性"的な関係を含意した"愛情(=恋愛)"であった。近代家族研究,ジェンダー研究などの歴史社会学研究においても,"愛"の存在は自明視され,それに対して政治的視点から評価し,変革しようという研究が蓄積されてきた。"愛"は,まさに家族社会学者やフェミニズムからの糾弾を受ける原因となってきたものの,それ自体が家族ひいては親密圏という存在の否定につながるものではない。"愛"は,"家族関係の維持"という点でもある種の安定性を持っていたと同時に,"性"という衝動的な感情を含みこむことから生じる不安定性・衝動性と共存する役割を果たしてきた。本稿では,このような"性"と"愛"の関係から,親密圏を親密たらしめる持続性の構造的内実の一端を明らかにすることで,その否定・肯定のどちらかに終始するのではない親密性概念を抽出する為のアプローチを見出そうとする。研究ノート/Notes
著者
木村 五郎 赤木 博文 岡田 千春 平野 淳 天野 佳美 大村 悦子 中重 歓人 砂田 洋介 藤井 祐介 中村 昇二 宗田 良 高橋 清
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.628-641, 2012-05-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
25

【背景・目的】Lactobacillus acidophilus L-55 (L-55株)には,マウスアレルギーモデルに対する症状緩和効果が認められている.そこでL-55株含有ヨーグルト飲用による,スギ花粉症臨床指標への影響について検討した.【方法】スギ花粉症患者にL-55株含有ヨーグルト(L-55ヨーグルト群, n=26)あるいは非含有ヨーグルト(対照ヨーグルト群, n=26)を花粉飛散時期を含む13週間飲用してもらい,症状スコア,症状薬物スコア,IgE抗体について検討した.【結果】L-55ヨーグルト群の総症状スコアと症状薬物スコアは,対照ヨーグルト群より低い傾向が認められた.特に治療薬併用例(n=23)では, L-55ヨーグルト群の花粉飛散後第5週の総症状スコア,第4週の咽喉頭症状スコアおよび第1週の総IgEの変化比が有意に低値であった.【結語】L-55株はスギ花粉症に対する緩和効果を有し,治療薬の併用により効果的に症状を軽減,あるいは使用薬剤を減量することが期待された.
著者
中村 正
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.260-268, 2020 (Released:2021-02-18)
参考文献数
46

胸痛はありふれた症候で,いわゆるTietze領域に痛みを指で指し示すことができる範囲に腫脹と圧痛を認めればTietze症候群を疑う.一般に,第2・3胸肋関節や肋軟骨あるいは胸鎖関節などの領域に限局した疼痛と腫脹を伴う良性疾患の非化膿性病態で,原因は不明である.同部位の圧痛を来たす疾患の一群に,関節リウマチ,強直性脊椎炎,反応性関節炎,乾癬性関節炎などの脊椎関節炎,SAPHO症候群などのリウマチ性疾患がある.現状ではTietze症候群は独立した疾患とは考えにくく,ある種の全身性疾患や局所性疾患の異質な病態のひとつであるか,または特定の疾患の進行過程の一変化である可能性が高い.従って,リウマチ性疾患に関連したTietze症候群様病態への注意深い検討が望まれる.さらに,これらのリウマチ性疾患の炎症病態における標的分子が明らかになりつつあり,Tietze症候群の治療において分子標的薬の治療選択肢が広がる可能性がある.リウマチ性疾患を鑑別診断する過程でTietze症候群の再認識が求められ,今後の更なる症例集積や病態生理の解明が期待される.