著者
酒井 奈緒美 小倉(青木) 淳 森 浩一 Chu Shin Ying 坂田 善政
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.1-11, 2015 (Released:2015-04-08)
参考文献数
19
被引用文献数
5 1

吃音のある成人が抱える困難を,WHOの国際生活機能分類のモデルに基づき4つのセクションから包括的に評価する質問紙(Overall Assessment of the Speaker's Experience of Stuttering: OASES; Yaruss and Quesal, 2006)を日本語に訳し(日本語版OASES試案),吃音のセルフヘルプグループの活動に参加している成人30名に対して実施した.対象者の傾向として,①吃音に対する感情・行動・認知面に比較的大きな困難を感じる者が多い,②日常生活上の具体的なコミュニケーション場面における困難や生活の質の低下などは比較的小さい,③総合の重症度評定は軽度から中等度であることが示された.OASES自体に関しては,項目数の多さ,選択肢の表現や質問意図のわかりづらさなど,臨床場面にて使用するには問題となる点も認められたが,セクション間における平均得点の相違や,セクション間における平均得点の相関の高さが先行研究と一致し,海外と共通の尺度として有用であることが示された.
著者
小倉 毅 須貝 静 小倉 譲
出版者
中国学園大学/中国短期大学
雑誌
中国学園紀要 (ISSN:13479350)
巻号頁・発行日
no.7, pp.21-29, 2008-06

いきがい対応型デイサービス利用者140名に調査をした結果,前期高齢者に旅行希望が多く,国内外に関係なく観光ツアーに希望が多かった。また,国内旅行においては,夫婦や家族と旅行するより,「気のおける友人」と楽しい旅行をしたいという要望が強い。逆に海外旅行では,夫婦や家族といった身内との旅行を望んでいる。また,オーダーメイドの手作り旅行や目的地のみを設定する旅行では,兄弟や親戚,ご先祖様の供養にお墓参り,思い出の地に行きたいといった希望がある。旅行日程は「2泊3日」が最も高く,次いで「1泊2日」,「日帰り旅行」である。旅行中の心配事については,「目的地までの移動時間・手段を考えると体力に不安,荷物を運ぶのが不安,トイレが近いので,休憩回数・時間がきになる。また,後期高齢者になるほど,付き添い者がいてほしい」という結果がでた。これらの結果をもとに,「長崎に単身赴任中の息子に会いに行きたい」と願う89歳(男性)のエスコートヘルパー旅行を実施した。長崎で息子に会えた喜び,観光,希望のかなった食事に満足して,「一生懸命遊び,人生を楽しむことこそ生きがいである」という本人の人生観に基づいた旅行が実施できた。今後の課題として,旅行先の移動手段,お手洗いの整備状況,入浴・食事の手配と介助方法,疾患状況を把握するためのアセスメント技術,さらには,旅行者の「生きがい感(人生観)」を理解する技術,車いすの操作方法,準備物の運搬方法を確立する必要がある。
著者
千葉 隆司 貞升 健志 長島 真美 熊谷 遼太 河上 麻美代 浅倉 弘幸 内田 悠太 加來 英美子 糟谷 文 北村 有里恵 小杉 知宏 鈴木 愛 永野 美由紀 長谷川 道弥 林 真輝 林 志直 原田 幸子 藤原 卓士 森 功次 矢尾板 優 山崎 貴子 有吉 司 安中 めぐみ 内谷 友美 神門 幸大 小林 甲斐 長谷川 乃映瑠 水戸部 森歌 三宅 啓文 横山 敬子 吉田 勲 浅山 睦子 井田 美樹 上原 さとみ 小野 明日香 河村 真保 小西 典子 小林 真紀子 齊木 大 下島 優香子 鈴木 淳 西野 由香里 村上 昴 森田 加奈 吉丸 祥平 木本 佳那 新藤 哲也 堀田 彩乃 小林 千種 大塚 健治 吉川 聡一 笹本 剛生 稲葉 涼太 小峯 宏之 佐伯 祐樹 坂本 美穂 塩田 寛子 鈴木 淳子 鈴木 俊也 高久 靖弘 寺岡 大輔 中村 絢 成瀬 敦子 西山 麗 吉田 正雄 茂木 友里 飯田 春香 伊賀 千紘 大久保 智子 木下 輝昭 小杉 有希 斎藤 育江 高橋 久美子 立石 恭也 田中 優 田部井 由紀子 角田 徳子 三関 詞久 渡邊 喜美代 生嶋 清美 雑賀 絢 鈴木 仁 田中 豊人 長澤 明道 中村 麻里 平松 恭子 北條 幹 守安 貴子 石川 貴敏 石川 智子 江田 稔 岡田 麻友 草深 明子 篠原 由起子 新開 敬行 宗村 佳子 中坪 直樹 浜島 知子 野口 俊久 新井 英人 後藤 克己 吉原 俊文 廣瀬 豊 吉村 和久
出版者
東京都健康安全研究センター
雑誌
東京都健康安全研究センター研究年報 (ISSN:13489046)
巻号頁・発行日
no.71, pp.39-46, 2020
著者
高畑 紳一 萬谷 智之 馬屋原 容子 倉本 恭成 山口 博之 森岡 壮充
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.36, no.6, pp.525-529, 1996-08-01

今回、我々は mazindol 投与後に交流分析的アプローチが奏効した過食症の1例を経験したので報告する。症例は20歳、女性で、18歳時にダイエットを開始し、過食、下剤乱用、抑うつ気分を主訴に当科に来院した。神経性過食症(DSM-III-R)と診断され、当科入院となった。向精神薬による薬物療法、交流分析、行動療法を施行したが、治療に抵抗し、症状が増悪した。しかし、食欲抑制効果のある mazindol のみが過食行動を抑制した。両親とボーイフレンドの協力を得て交流分析を学習し、抑うつ気分などの症状は徐々に改善した。交流分析的見地から本例の発症機序や病態に関して考察し、mazindol の食欲抑制効果が過食症の治療において貢献しうることが示唆された。
著者
藤枝 重治 坂下 雅文 徳永 貴広 岡野 光博 春名 威範 吉川 衛 鴻 信義 浅香 大也 春名 眞一 中山 次久 石戸谷 淳一 佐久間 康徳 平川 勝洋 竹野 幸夫 氷見 徹夫 関 伸彦 飯野 ゆき子 吉田 尚弘 小林 正佳 坂井田 寛 近藤 健二 山岨 達也 三輪 高喜 山田 奏子 河田 了 寺田 哲也 川内 秀之 森倉 一朗 池田 勝久 村田 潤子 池田 浩己 野口 恵美子 玉利 真由美 広田 朝光 意元 義政 高林 哲司 富田 かおり 二之宮 貴裕 森川 太洋 浦島 充佳
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.118, no.6, pp.728-735, 2015-06-20 (Released:2015-07-18)
参考文献数
21
被引用文献数
2 9

これまで本邦における慢性副鼻腔炎は好中球浸潤が主体で, 内視鏡鼻副鼻腔手術とマクロライド少量長期投与にてかなり治療成績が向上してきた. しかし2000年頃からそれらの治療に抵抗性を示し, 易再発性の難治性副鼻腔炎が増加してきた. この副鼻腔炎は, 成人発症で, 嗅覚障害を伴い, 両側に鼻茸があり, 篩骨洞優位の陰影があった. 末梢好酸球も多く, 気管支喘息やアスピリン不耐症の合併もあった. このような副鼻腔炎の粘膜には多数の好酸球浸潤が認められていたため, 好酸球性副鼻腔炎と命名された. 好酸球性副鼻腔炎は, 徐々に増加傾向を示してきたが, 好酸球性副鼻腔炎の概念, 診断基準はあまり明確に普及していかなかった. そこで全国規模の疫学調査と診断ガイドライン作成を目的に多施設共同大規模疫学研究 (Japanese Epidemiological Survey of Refractory Eosinophilic Chronic Rhinosinusitis Study: JESREC Study) を行った. その結果, 両側病変, 鼻茸あり, CT 所見, 血中好酸球比率からなる臨床スコアによる簡便な診断基準を作成した. さらに臨床スコア, アスピリン不耐症, NSAIDs アレルギー, 気管支喘息の合併症, CT 所見, 血中好酸球比率による重症度分類も決定した. 4つに分類した重症度分類は, 術後の鼻茸再発と有意に相関し, 最も易再発性かつ難治性の重症好酸球性副鼻腔炎はおよそ全国に2万人いることが判明した. 治療法については経口コルチコステロイド以外まだ確立されておらず, 早急なる対応が急務と考えている.
著者
岩本 理恵 北條 敬之 渋谷 真希子 木村 幸文 亀倉 更人 藤澤 俊明
出版者
北海道歯学会
雑誌
北海道歯学雑誌 (ISSN:09147063)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.114-119, 2014-03

最近5年間(2007~2011年)に局所麻酔薬アレルギーを懸念して当科を受診した患者を対象に,受診のきっかけとなったエピソード・考えられる原因,皮膚テスト施行の有無,今後の歯科用キシロカインカートリッジR使用の可否判断等について過去の当科における同様の検討結果(1989~1993年)との比較を交え解析し,以下の結論を得た. 1 .当該患者数の全受診者数に対する割合は,今回は0.32%(13/4083)であり,前回の3.5%(54/1545)と比較して大幅に減少した.依頼医における局所麻酔薬アレルギーと他の偶発症との鑑別能力の向上がその一因と推察した. 2 .皮膚テストを行った症例数は,今回2症例であり,前回の39症例と比較して大幅に減少した.これは2004年の厚生労働省からの抗菌薬皮内テストに関する指示が出され,当院でも局所麻酔薬も含め皮内テストを極力行わない方針になったためと思われる. 3 .医療面接や検査の結果ならびにアレルギー防止の観点からみて歯科用キシロカインカートリッジRが使用可能と判断した症例の割合は,今回は82%(9/11)であり,前回の61%(27/44)と比較して増加した.2005年より歯科用キシロカインカートリッジRへのパラベン添加が取りやめになったことが大きな要因と思われ,この結果は依頼元の歯科医師および患者にとって治療遂行上,有益と思われた. 4 .エピソードの原因については,判断困難とした1症例を除き,アナフィラキシーとの鑑別は比較的容易であった.しかし,リドカインのように抗原性の著しく低い薬物でも,アナフィラキシーを発症する危険性が皆無ではなく,全ての薬物においてその使用にあたっては,十分な医療面接に加えて,ショック等に対する救急処置を行うことが出来る体制整備を怠らないことが重要である.
著者
倉林 敦 熊澤 慶伯 森 哲 土岐田 昌和 澤田 均
出版者
長浜バイオ大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

フクラガエル属(Breviceps)は、皮膚から分泌する糊によって雌雄が体を接着して交尾する、奇妙な四足動物である。我々は、発見以来60年間謎のままであったフクラガエル糊について、その物理的特徴と、構成蛋白質、およびその候補遺伝子を明らかにしつつある。本研究では、アフリカにおいてフィールドワークを行い、生殖用の糊という形質の、起源・要因・過程など、適応進化の実体を生態学・系統学・分子遺伝学の側面から解明する。この過程で、生態学・形態学的解析、新種記載、人工繁殖研究などもあわせて実施し、謎の多いフクラガエルとその近縁属の自然史について新たな知見を加えることを目的としている。本年度は、11月に南アフリカの西ケープ州、および、東ケープ州においてフクラガエル類の観察、採取を行なった。西ケープ州では、ジャイアントフクラガエル・ローズフクラガエルに加え、昨年採取はできたものの、実験前に死亡したクロフクラガエルを採取した。さらに、ケープタウンから30 kmほどの地点で、ナマクワフクラガエルを採取した。本種の分布はケープタウンから300kmほど北からと考えられていたため、これは本種の新産地の発見となった。東ケープ州では、ヘイゲンフクラガエルの採取を試みたが、成功しなかった。また、北ケープ州に分布するサバクフクラガエルを現地共同研究者に採取していただき、実験に供した。各種の糊分泌物を採取し、その強度を測定した。その結果、上記のうち1種(特許申請の関係で公表しない)は、極めて接着力の強い糊を持ち、その接着力は、アロンアルファなどの市販の接着剤を上回ることさえあった。また、フクラガエルの糊の接着力は、1)体の体積(重量)に比例して強くなる、生息地の土壌の硬さに比例して強くなる、という2つの仮説があったが、本年の研究からはそのどちらの仮説も否定された。
著者
武田 宏子 田村 哲樹 辻 由希 大倉 沙江 西山 真司 STEEL GILL
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究計画の主要な研究課題は、1990 年代以降に「男女共同参画」と「女性活躍」の政治が行われてきたにもかかわらず、なぜ日本ではいまだに高い程度のジェンダー不平等が観察されるのか明らかにし、それによりリベラル・フェミニズムが孕む問題を理論的に検討する一方で、日本においてジェンダー平等を実現するための政治過程を構想することを目指す。
著者
飯田 悟 一ノ瀬 昇 五味 哲夫 染矢 慶太 平野 幸治 小倉 実治 山崎 定彦 櫻井 和俊
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.195-201, 2003-09-20 (Released:2010-08-06)
参考文献数
6
被引用文献数
5 5

人々の清潔志向を背景に, 腋臭を中心とした体臭のデオドラントニーズは年々高まっている。われわれは, 官能評価および機器分析を用いてヒトの腋臭について研究した結果, 新たな臭気原因成分としてビニルケトン類 (1-octen-3-one, cis-1,5-octadien-3-one) を発見した。これらビニルケトン類のにおい閾値は非常に低く強烈な金属臭を有し, 腋臭に大きく寄与していることが示唆された。これら臭気は, 人体代謝物中の不飽和脂肪酸と鉄が接触して生成する酸化物であることをモデル実験によりつきとめ, におい発生のメカニズムを解明した。また, 植物抽出エキスの抗酸化作用により, ビニルケトン類の生成を抑制する方法をin vitro系にて検討し, 『クワエキス』に優れた生成抑制効果を見出した。
著者
松島 喜雄 宇津木 充 高倉 伸一 山崎 雅 畑 真紀 橋本 武志 上嶋 誠
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

阿蘇火山の地下構造を求める目的で、広帯域MT探査法による比抵抗構造調査をカルデラ内外で実施した。2015年に56測点、2016年に46測点でデータを取得し、それらの結果はHata et al. (2016,1018)で報告している。その後、それまで噴火活動により近接できなかった中岳第一火口周辺にて、2017年から2018年にかけて9測点で観測を行った。前回の報告では、中岳下から深度15km程度まで延びる円柱状の低比抵抗体が求められている。比抵抗値はもっとも低いところで1 Ω・m以下になり極めて低い。その一部は地震波トモグラフィーによって求められている低速度異常域(Sudo and kong 2001)と重なっている。また、深度15km以深のシル状地殻変動源(国土地理院、2004)や深部低周波地震(気象庁)に向かって延びているように見える。このことから、この低比抵抗体は深部のマグマ溜まりから中岳へ延びるマグマ供給系であると解釈されている。前回の解析では、深度2kmぐらいから浅部の構造が不明瞭であった。そこで、有史以来、頻繁に噴火活動を繰り返している中岳第一火口と低比抵抗体の関係を明らかにするべく、2015年のデータに第一火口周辺の9観測点を加え、あらためて3次元の比抵抗構造解析を行った。その際に、鉛直方向のグリッド形状を変更したため、地形を与え直した。インバージョンでは測定周期0.005から2380秒のうち、16周期を選択し、リモートリファレンス処理を行った4成分のMTインピーダンステンソルと2成分のティッパーベクトルを用いた。まず、インピーダンスとティッパーのエラーフロアをそれぞれ20、30%とし、RMS値の低い結果を初期値として、次にエラーフロアをそれぞれ5、10%としたイタレーションを10回行い、最もRMS値の低いものを最終結果とした。得られた結果をみると、低比抵抗体の最上部は中岳第一火口直下に位置している。また、その深度は海水準付近となり、2014年の噴出物のメルトインクルージョンの分析から推定されたマグマの深度の上限が海水準付近であること(Saito et al.,2018)と良い一致を示す。このことから、低比抵抗体は第一火口にマグマを供給する火道であると推測される。ただし、低比抵抗体の水平方向の幅は1km程とかなり厚く、火道の周囲に塩分濃度の濃い流体が存在しているのかもしれない。一方、第一火口から山腹にかけて、海水準から深度1km程度で数Ω・mの低比抵抗域が水平方向に広がっている。垂玉温泉付近の坑井のデータや、山麓での湧水の化学成分等を参考にすると、火道を中心として山体内に発達した熱水系を表しているようである。