著者
山内 昌之 ERGENC Ozer KHALIKOV A.K GRAHAM Willi ERCAN Yavuz DUMONT Paul QUELQUEJAY C ALTSTADT Aud PAKSOY Hasan 福田 安志 内藤 正典 新井 政美 小松 久男 栗生沢 猛夫 坂本 勉 WILLIAM Grah PAUL Dumont CHANTAL Quel AUDREY Altst HASAN Paksoy
出版者
東京大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1989

この共同研究が目指したものは、中東とソ連における都市とエスニシティの在り方を比較検討しながら、近現代の急速な都市化にともなう環境、人間と社会との関係、個人と集団の社会意識の変容を総合的、多角的に解明しようとするところにあった。当該地域におけるエスニシティの多様性と連続性を考慮するとき、これは、集団間の反目、矛盾が先鋭で具体的な形をとって現われてくる都市という生活の場においてエスニシティの問題を検討することであり、またエスニシティ、民族、宗教問題を媒介変数としてトランスナショナルな視角から都市の在り方と変容を検討することでもあった。本共同研究の参加者は以上の問題意識を踏まえ、まず第1に、タシケント、モスクワ等のソ連の都市と、イスタンブ-ル、テヘラン、カイロ、エルサレム等の中東の都市において現地調査を行なった。これらの諸都市での調査においては現地人研究者の協力を得た上で、都市問題の現状とエスニシティを異にする住民相互間の衝突、反目の具体的事例をつぶさに観察した。また現地調査と平行して、現地人研究者との間で意見の交換を行ない、当該地域での研究状況の把握、現地人研究者との交流に努め、さらに必要な資料の収集にも当たった。第2に、ソ連、中東世界での都市化にともなうエスニシティ、民族、宗教問題を分析した。モスクワ国家による都市カザンへの支配の実態を検証し、また経済開発によるソ連中央アジアでの居住条件の変化と、エスニシティ・グル-プの変容についての相関関係を検討した。さらにイスラエルにおいては、ソ連からのユダヤ人移民にともなうユダヤ都市の拡大・拡散による、アラブ人とユダヤ人の文化接触の問題を取り上げた。次いで都市を基盤とした民族主義イデオロギ-の形成・展開の側面についても検討を加えた。トルコにおけるトルコ民族主義の展開過程とその周辺トルコ系地域への影響を、歴史的事実を踏まえつつ分析した。同時にソ連中央アジアにおける非ロシア系民族の間での民族意識の形成過程を検証し、イスラ-ムや、アルメニア正教、ギリシャ正教の復興が民族的アイデンティティに及ぼす影響を検討した。またアゼルバイジャンでの文学活動が民族意識の形成に与えた影響を分析した。これらの事例研究によって、中東とソ連における都市問題とエスニシティをめぐる問題の相関関係を明らかにし、また都市化にともなう社会意識の変容を解明することに努めた。第3に、経済と都市間ネットワ-クの側面から都市のエスニシティの問題を検討した。アレッポの都市経済におけるアルメニア人、クルド人の役割を検討した。またドイツへのトルコ人労働移民の問題を取り上げ、出稼ぎ者、帰還者双方が引き起こす都市問題が、二地域の関係の中で明らかにされた。さらにイラン諸都市とイスタンブ-ルの間の絨毯交易に従事していたアゼルバイジャン人に注目しながら、当該地域におけるエスニシティと都市経済、都市間の関係を把握した。アラビア半島諸都市における通商活動も取り上げ、アラブ世界の都市間通商ネットワ-クにおけるインド人、ペルシャ人の役割を分析した。次いでイランや中央アジアからのメッカ巡礼を分析することを通し、宗教的側面からも都市間ネットワ-クの検討を行なった。これらの研究により、当該地域における経済と宗教を軸とする都市間ネットワ-クとエスニシティの連続性を明らかにすることに努めた。第4に、総合的、多角的研究の必要性から都市とエスニシティ問題の持つ普遍的な性格に着目し、研究交流の空間的幅を広げ、中東、ソ連の現地研究者はもちろんのこと欧米諸国の研究者との間でも共同研究や比較研究を行なった。さらにストラスブ-ルにおいて日本とフランスの研究者を中心に、ソ連と中東の民族問題に関する国際シンポジウムを開催するなど、これまでの研究成果に基づいた研究者相互間の交流を推進した。この共同研究は、湾岸危機やソ連邦の解体など当該地域をめるぐる急激な変動の渦中に実施されたにもかかわらず、比較の手法を用い都市という場におけるエスニシティの問題を解明し、都市の在り方と変容を明らかにする上で大きな成果をあげることができたと確信している。
著者
斎藤 博 向井 茂 寺西 鎮男 谷川 好男 藤原 一宏 浪川 幸彦 内藤 久資 齋藤 博
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1996

1.Alexeev,Sankaran教授を招いて1997年5月に名古屋大学においてモジュライ多様体の研究集会を開催し、アーベル曲面のモジュライに対する結果を発表するとともに一般次元主偏極の場合のトーリックコンパクト化について議論した.また、6月の数理解析研究所でもう一度会って、理解を深めることができた.この方面では(1、5)型と(1、4)型の場合に標準レベル付偏極アーベル曲面のモジュライ空間と対応する正多面体多様体の間の双有理写像を具体的に構成した.対数多様体の概念を使うと見通し良くなることと可積分系との関係がこの研究で得られた新しい知見である.2.夏からは研究計画3)の幾何学的不変式論に本格的に取組み1997年12月にはMumfordのものとは違ってlinearizationの取り方によらない商多様体の構成を発見した.これについては具体的な例でその有効性を検証中である.また、幾何学的不変式論の基礎を検証し、不変式環の有限生成性や簡約代数群の線型簡約性の証明を簡素化することができた.3.1996年度より続いている3次超曲面の周期写像の研究では幾何学的不変式論で得られるモジュライ空間と対称空間の数論的商を比較し、モジュライ空間としてふさわしいコンパクト化の候補を見つけた.これは本来問題としていたK3曲面のモジュライ空間のコンパクト化についても示唆を与えている.次数の低い場合に安定K3曲面の候補を色々実験している.
著者
内藤 直樹
出版者
徳島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

ケニア・ダダーブ難民キャンプ複合体において、ソマリ系長期化難民と地域住民であるケニア・ソマリが構築した社会.経済的関係の様態に焦点をあてた現地調査を実施した。2011年末の時点で40万人を越える難民の大量流入がもたらすインパクトは、難民と地域住民との間に対立関係を生み出す要因となっている。その一方で、難民と地域社会の人びとの双方は、約20年もの長期にわたる相互交渉の過程で、生活上の争いを回避する制度や、商品の委託販売関係、土地の貸借・売買制度などの共生を可能にする方途を練り上げてきたことが明らかになった。
著者
谷垣 真理子 塩出 浩和 容 應萸 林 少陽 日野 みどり 神長 英輔 山本 博之 山本 博之 陳 広漢 毛 艶華 程 美宝 魏 志江 黄 紹倫 鄭 宇碩 ポール・バン ダイク 飯島 典子 小川 正樹 和仁 廉夫 崔 学松 内藤 理佳 八尾 祥平
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本プロジェクトは華南を起点とする華人ネットワークが北東アジアから東南アジアまでをどのように結びつけ、ヒト・モノ・金・情報の交流が行われているのかを検討した。本プロジェクトは北東アジアを視野に入れたことが特徴であり、現地調査を大きな柱とした。具体的には、北洋におけるコンブ貿易、北海道華僑社会、東南アジア華人の複合的アイデンティティ、広東省関元昌一族、マカオのハブ機能、珠江デルタにおける人材交流、台湾の客家文化運動、珠海の三竈島についての研究が実施された。この間、中国の厦門大学と中山大学、香港城市大学香港大学との研究交流が積極的に行われた。
著者
太田 至 内海 成治 佐藤 俊 北村 光二 作道 信介 河合 香吏 内海 成治 佐藤 俊 北村 光二 作道 信介 河合 香吏 曽我 亨 湖中 真哉 内藤 直樹 孫 暁剛 中村 香子 波佐間 逸博 佐川 徹 白石 壮一郎
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

本研究の目的は、第一に、アフリカの乾燥地域に分布する牧畜社会の人々が歴史的に培ってきた知識や技術、社会関係や文化など(「ローカル・プラクティス(LP)」)を再評価すること、第二には、この社会の開発=発展のためにLP を活用する道を探究することである。東アフリカの4カ国、12民族について現地調査を実施し、人々がLPに基づきながら激動する生態・社会環境に対処している様態を解明し、LPが開発=発展に対してもつ潜在力を総合的に再評価し、それを援用する道に関する考察を深めた。
著者
湯山 賢一 西山 厚 鈴木 喜博 岩田 茂樹 内藤 栄 稲本 泰生 吉澤 悟 宮崎 幹子 谷口 耕生 野尻 忠 研清水 健 岩戸 晶子 斎木 涼子 北澤 菜月 永井 洋之 中島 博 有賀 祥隆 前園 実知雄 東野 治之 根立 研介 藤岡 穣 高橋 照彦 山崎 隆之 梶谷 亮治 杉本 一樹 成瀬 正和 尾形 充彦 西川 明彦 森實 久美子 原 瑛莉子
出版者
独立行政法人国立文化財機構奈良国立博物館
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

「奈良朝仏教美術の主要作例、もしくはその国際性を考える上で重要な周辺作例の中から対象とする文化財を選定し、それらに関する基礎資料を学界の共有財産として提供する」という目的に沿って調査研究を行い、22年度末に5部構成・2分冊からなる研究成果報告書を刊行した。薬師寺に伝来した藤田美術館所蔵大般若経(魚養経)全387巻の撮影及び書誌的データの集成、蛍光X線分析による香取神宮所蔵海獣葡萄鏡や東大寺金堂鎮壇具の成分分析を通した制作地の特定などが、代表的な成果である。
著者
内藤 勝
出版者
嘉悦大学
雑誌
嘉悦大学研究論集 (ISSN:02883376)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.85-107, 2003-10-01

最近の中国経済は、農工において発展が著しい。DGPは1兆2000億ドル(2000年)で世界第6位、しかし、12億7513万人の人口を抱えているので1人当たりの所得は847ドル(約9.3万円前後。1元は15円で計算した。)にすぎない。農林業のGDPに占める割合は17.4%である。1999年の食糧生産(米、小麦、トウモロコシ、コウリヤン、粟、その他の雑穀、いも類)の総計は5億839万tを記録している。(但し、2000年は減反政策により4億6212万tに減じた。)その内小麦は1億1440万t、米(籾)は2億0499万tを生産し米麦とも世界第1位である。その他、トウモロコシ1億262万tで世界2位、大豆1370万tで世界第4位である。かつて大躍進運動(1958〜60)の失敗と自然災害(華北の旱害、華南の水害)によって多数の餓死者を出した中国農業とは根本的に異なる。特に1978年以降、改革開放政策により農家生産請負責任制(以下個別経営と呼ぶ)が盛んになり最近(2000年)は、野菜、果物生産の増加も著しい。野菜は約4.2億tで世界1位、果物も約6.2億tで世界1位である。野菜の生産額は2500億元(3.7兆円)を上回り食糧についで2番目の額に急成長している。しかも、90年以降世界へ野菜が輸出され始め2000年のわが国への野菜輸出量は、139万tで15.8億ドルに昇る。1991年以降、我が国の農産物輸入はアメリカを抜いて中国が第1位となった。特に、華北平原(黄河がつくった中国東部の平原を指す。)からの野菜の輸入が急増している。そこで、この生産増加の要因が何処にあるのか?それを水と農法の面から考察した。特に、低エントロピー源としての水は、農業及び工業いや人類の生存にとって欠くことができない。中国農業は80年代に入るや灌漑設備が充実してきた。華北平原では黄河流域の地下水を電気ポンプで揚水する方法が90年代より急激に広まった。乾緑地帯に水が導入された事は、画期的なことであった。華北における成長要因は自由化政策による野菜、果物の需要の増加、その生産を可能にした地下水による灌漑の整備と言えよう。他方、地下水消費の増加は黄河の断流をもたらし塩害をまねいている。ここに農産物貿易の問題点がある。尚、本稿は2001〜2年にわたる山東省青州市近辺の農業調査をまとめたものである。(筆者は1980年遼寧大学の王將方氏、瀋陽大學の翁麗霞氏と瀋陽近辺の調査をしたことがある。それは個人農場制初期の調査である。あれから10年の中国農業の変化も視点に入れ考察した。)
著者
内藤 林 森 淳彦 箕浦 旨彦 高木 健 別所 正利 一色 浩
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2000

次の研究成果を得た。1)船首可動翼の制御について考察を深め、可動翼を制御するための入力信号を明確にすることが必要であることから、船首船底圧力を制御信号に選定することにし、その可能性を調べる実験を行った結果、船首船底圧力と、翼への流入迎角の間には明確な相関関係があることが実験的にも明らかになった。船首船底圧力の計測は容易であり、圧力計測装置は安価なことから、良い制御信号であるとの結論を得た。2)船首船底圧力と、翼への流入迎角の間の周波数応答関数(A)を求めた。更に、その結果を使い時間領域のインパルス応答関数(A)を求めた。それを使い、規則波中で予測した流入迎角と、その実測値を比較し、船首船底圧力を使って船首翼への流入迎角を十分な精度で予測できることを示した。3)船首船底圧力を使って不規則波中における船首翼制御の初歩的な検討を、下記の手順で計算機シュミレーションを行い、検討した。(1)船首翼が最も推力を出す場合の、船首船底圧力と翼への流入迎角の間の周波数応答関数(B)を求める。(2)それの時間領域の表現である、インパルス応答関数(B)を求める。(3)船首船底圧力の実測値とインパルス応答関数(B)から求められた信号をリファレンス信号とし、船首船底圧力の実測値とインパルス応答関数(A)から求められた信号の差を補償する制御回路を設計した。(4)船首固定翼の場合と可動翼の場合について推力を計算比較した所、可動翼にすることで固定翼が発生する推力の1.5倍以上の効果があることがシミュレーション上で確認できた。(5)翼への流入迎角が15度以上になった時、翼は失速するが、その影響は統計的等価線形化手法を使って考慮した。本来、失速しないように制御することが可能であり、今後その制御法を考察する。4)船首翼を制御することで、推力発生だけでなく大幅な横揺れを軽減できることを昨年の研究で示した。更に、コンテナー船等の場合、ラッシングレスコンテナーにすることの可能性について検討を行い、その可能性が大きいことを示した。これはアンチローリングフィンは船体中央に設置することよりは、改良を加えて船首に設置する方が、よりフィンの有効性を拡大することになり、効果的であることを示すものである。5)波エネルギーの有効利用の可能性をより一層広げるために、船首にムーンプールを作り、そこに設置したウェールズタービンでエネルギーを吸収し、それを船内電源に利用する方法に関する基礎的検討を行った。ムーンプールを作るために船内空間を一部使用することになる経済的損失との兼ね合いがあるが、一つの大きな可能性を示すものである。
著者
堀口 郁夫 松岡 延浩 松村 伸二 谷 宏 町村 尚 内藤 成規 今 久
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1994

誰にでも使用できることを目標に、衛星赤外データ解析のシステム化の研究を行って一応の完成をみた。解析ソフトは、気象衛星ノア(NOAA)のAVHRRデータと気象衛星ひまわり(GMS)データについてである。これらはMicrosoft Windows 95のパソコン上で作動するようになっている。CPUはPentium 90MHz以上、メモリ16MB以上、ディスク50MB以上のハードウエアが必要である。また、光磁気ディスクなどの補助記憶装置を備える必要があり、表示装置としては256色以上のディスプレイが必要である。これらは最近価格が安くなっており、誰でも容易に備えることが出来る。気象衛星ノア(NOAA)のAVHRRデータについては、タンジェント補正、幾何補正、プロファイルの表示、植生指数の計算、表面温度の計算、これらの印刷、ファイル保存などの処理をするソフトで構成されている。また、気象衛星ひまわり(GMS)については、画像の切り出し、地図投影、海岸線や緯度経度の表示、ピくセルの情報、拡大縮小表示、大気補正、画像出力、などのソフトが組み込まれている。試作段階のソフトとデータをインターネット上で配布するため、千葉大学にfitサイトを設置した。同時に12名のモニターを選び、配布方法とソフトも使用感に関するアンケート調査をした。1997年1月30日からデータ配布用サーバの運用を開始した。試験配布の結果から、基本的にはfitソフトとデータの配信を行うこととした。なお、申請などはネットワーク上で行うこととし、WWWサーバを利用した。
著者
桐谷 佳恵 内藤 正志 内田 和宏 赤司 卓也 杉山 和雄 渡邊 誠 小野 健太
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.1-10, 2005-05-31
参考文献数
8
被引用文献数
2

災害時や渋滞時には、交通情報を可変的に表示できる情報板が必要となる。本研究は、現状の高解像度LED式道路交通情報板の半数以下のLED数で迂回路を表示できる可変情報板のデザイン指標を得ることを目的としている。具体的には、地図構成要素の形状と色彩に関する指標である。直交表による実験計画法を用いて、「表示板の見やすさ」、「迂回路表示のわかりやすさ」など、表示板の見やすい表現を模索し, デザイン要件を決定した。その結果、道路形状、迂回路形状と表示方式、地名表示、ルートマーク、現在地表示、文字表示の仕方、文字や道路及び背景の色彩、などについての基本指標が明らかになった。本研究から得られたデザイン指標は、新しい道路情報提供を実現する情報板作成に貢献し、従来よりも低コストの可変情報板作成の可能性を示すものとなる。
著者
内藤 道興
出版者
立花書房
雑誌
警察学論集 (ISSN:02876345)
巻号頁・発行日
vol.24, no.8, pp.144-160, 1971-08
著者
耳塚 寛明 牧野 カツコ 酒井 朗 小玉 重夫 冨士原 紀絵 内藤 俊史 堀 有喜衣
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

青少年の学力および進路形成過程を総合的に把握するため、東北地方1都市(2004年調査、以下Cエリア)と、比較対象地域である関東地方1都市(2003年調査、以下Aエリア)における生徒、保護者、担任調査の統合データを用い細分析を行った。学力、キャリア展望、学校適応等と家庭的背景、ジェンダー、学校的背景、地域的背景などとの関連を明らかにした。また、学級による学力差に注目した分析を行った。主な知見は以下の通りである。Cエリア小学校における学力の学級差について基礎的な分析を行ったところ、小学校6年生に学力の学級差が大きいこと、学力が高く学級による差異が小さいグット・プラクティスの学校が存在することが明らかになった。このような学級差に関して、都市部、稲作地域、兼業畑作地域といった地域的な要因、学校内の生徒集団、生徒集団の引継といった複数の要因が関連している可能性があり、今後の分析課題とした。高校生の職業イメージとジェンダーの関連について、親の仕事に対する捉え方に注目し分析を行ったところ、これまでの分析Aエリアに比べ業績主義的な特徴を持つことが明らかになってきたCエリアにおいても、パート、主婦・家事という仕事に対するイメージや、距離感に男女で違いがあることが明らかになった。高校生の学校適応について、小さい頃本を読んでもらったことがある、博物館に連れて行ってもらった、食事を大切にしている、近所づきあいを大切にしているといった家族関係、家庭環境と関連していることが明らかになった。一方、両親の学歴や勉強部屋の有無といった物理的な教育環境は影響していなかった。生徒、担任、保護者調査の統合データを用いることで、職業や所得、教育環境、家族関係といったより複雑な家庭的背景について分析、教育実践をも視野に入れた学力形成の要因分析を行うことが可能となった。(766字)