著者
金田 千秋 加藤 哲弘 島本 浣 山田 俊幸 及川 智早 佐藤 守弘 石田 あゆう 岸 文和 前川 修 中谷 伸生 橋爪 節也 鈴木 廣之 太田 孝彦 石田 美紀
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、大正期に流通していた大衆的な視覚表象に関する2つの課題を、豊かな対話関係において、遂行するものである。すなわち、第1の課題は、大衆的な視覚表象が果たしていたメディア的な機能の多様性を、可能な限り広範な資料に基づいて、美術史学的に明らかにすることである。第2の課題は、「文化遺産」の概念を鍛え上げることによって、何らかの大衆的イメージが後世に継承される/るべきさいの条件・方法などを、美学的に考察することである。
著者
瀧口 吉郎 大川 裕司 宮川 和典 小杉 美津男 鈴木 四郎 久保田 節 加藤 務 設楽 圭一 谷岡 健吉 Park Wug-Dong 小林 昭 平井 忠明
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
vol.22, no.57, pp.13-18, 1998-10-22
被引用文献数
1

高感度固体撮像素子を目指して、a-Seのアバランシェ増倍現象を利用したHARP光電変換膜とMOS型トランジスタからなる固体走査部とを多数のInの柱で接合した固体HARP撮像素子の研究が進められている。この固体撮像素子では走査回路の耐圧が60Vであることから、HARP膜の印加電圧が60V以下に、すなわち使用できる膜の厚さが制限される。そこで、この条件下においてもっとも良好な特性の得られるHARP膜の膜厚についての検討を行った。その結果、0.4μmの膜厚とすることで、印加電圧60Vにおいて目標とする4倍の増倍率を暗電流が抑制された状態で実現できることが明らかになった。また、HARP膜のさらなる感度向上を目的として、Te添加による光電変換効率の改善を検討し、シミュレーションと試作の両面からTe添加により緑色光に対する光電変換効率を従来の2倍以上に向上できることを確認した。
著者
安藤 純子 加藤 重子 今坂 鈴江 岡平 美佐子 讃井 真理 林 君江 日川 幸江 Ando Junko Kato Shigeko Imasaka Suzue Okahira Misako Sanai Mari Hayashi Kimie Higawa Yukie アンドウ ジュンコ カトウ シゲコ イマサカ スズエ オカヒラ ミサコ サナイ マリ ハヤシ キミエ ヒガワ ユキエ
出版者
広島文化学園大学看護学部
雑誌
看護学統合研究 (ISSN:13460692)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.1-7, 2010-03

日本は,超高齢社会を迎え,高齢者の人口増に伴い医療費高騰の問題があげられる。このような社会背景の中で,本学部の老年・地域看護学領域で嚥下障害のある人のために開発されたソフト食の紹介を地域住民に対し3年間にわたり取り組んだ。地域の参加者にソフト食に対する意識を検討することを目的にアンケート調査を行なった。研究参加者は,ソフト食紹介の地域交流事業の参加者のうち,82名であった。説明内容の理解度は,回数を重ねるごとにわかりやすくなっている傾向があり,発達段階の影響を受けないことがわかった。美味しさに対しては,ソフト食のメニューの影響を受けること,また成人期の人に比べて老年期の人が美味しかったと思ったことがわかった。ソフト食の飲み込みやすさは,ソフト食のメニュー,発達段階の影響を受けることがわかった。このことから,地域住民のソフト食に対する意識が変化してきており,ソフト食は,老年期の人にとって美味しく,食べやすいことがわかった。また,介護者は「母親の食事に活かしたい」という意見もあった。
著者
前田 忠彦 松本 渉 高田 洋 伏木 忠義 吉川 徹 加藤 直子
出版者
統計数理研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

訪問面接調査や留置調査など調査員が介在する調査法,Web調査などそれ以外の調査モードを含む様々な調査で実施の際に付帯的に得られる調査プロセスに関する「調査パラデータ」を解析し,調査の精度管理に有用な情報を得ることを目指した検討を行った。また,調査不能率が高い場合に懸念される調査不能バイアスの影響を評価したり,それを調整する方法についての研究を行った。面接調査等の訪問記録や,電話調査での発信記録を分析することによって,調査員の行動をよりよく理解することができるようになり,調査員教育に生かすことができる。また他の調査モードで得られる回答所要時間のデータなどで回答者行動の理解を深めることができる。
著者
石川 由香里 加藤 秀一 片瀬 一男 林 雄亮 土田 陽子 永田 夏来 羽渕 一代 守 如子 苫米地 なつ帆 針原 素子
出版者
活水女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

今年度を総括して述べれば、来年度への調査実施に向けた準備を順調に進めることができた年度と言える。中学生と高校生向けの調査票は、昨年度においてすでに完成していたが、それに加え5月に実施した研究会において、大学生に対する調査票を確定することができた。過去7回の調査結果の分析に際しては、独立変数に設定できる質問項目が少ないことが反省材料であった。とくに家庭の社会経済的背景についてたずねることについて、学校側の抵抗感が大きく、最近ではとくに質問項目として盛り込むことが難しくなってきた。しかし、一昨年および昨年度に行われた大学生対象の予備調査において、大学生であれば親の学歴や職業についての質問項目に答えることへの抵抗はほとんど見られず、分析に耐えるだけの回答を得ることができていた。したがって本調査においても、大学生対象の調査票の項目には、親の学歴や生活状況を尋ねる質問を含めることとした。今年度のもう1つの大きな取り組みとしては、調査先の決定があった。そのために協同研究者はそれぞれ、調査候補となっている都道府県及び区市町村の教育委員会ならびに対象校へ調査の依頼のために手分けしてうかがった。その結果、年度末までには、かなり理想に近づく形での調査協力を取り付けることができた。年度内に3回実施された研究会においては、調査協力依頼のための文書を作成し、またそれぞれの調査先から調査実施の条件として示された個別の案件についても審議した。また実査に加わる調査員に対するインストラクションの内容、保険、旅費の配分など、調査に必要なすべての事柄について確認を行った。
著者
加藤 由樹 杉村 和枝 赤堀 侃司
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.93-105, 2005
参考文献数
19
被引用文献数
6

本研究は, 電子メールのコミュニケーションで生じる感情に及ぼす, メール文の内容の影響に注目した.本論文は, 研究Iと研究IIから構成される.研究Iでは, 62名の被験者に, 実際に電子メールを使ってコミュニケーションを行ってもらい, ここで収集したデータから, 電子メールの内容と, それを読んだ時の感情的な側面との関係を, 重回帰分析を用いて探索的に調べた.結果から, 「顔文字」, 「性別の返答」, 「質問」, 「強調記号」, 「文字数」の影響が示された.続いて, 研究IIでは, これらの要因の影響を仮説として, 23名の被験者に, これらの要因を操作したメール文を提示して, それを読んだときの感情を測定した.結果から, これらの要因の影響は, 概ね支持された.このことから, 電子メールでは, 自己を強く主張するのではなく, 相手との関わり合いを重視し, 顔文字などを上手く用いることで, コミュニケーションが良好になる可能性が示唆された.
著者
高橋 朝英 田口 元貴 小林 良太郎 加藤 雅彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.94, no.12, pp.2058-2068, 2011-12-01

現在,ウェブサービスは広く一般に利用され,日常生活を行う上で欠かせないものとなっている.それに伴い,ウェブサービスが停止した際の社会的影響も大きくなっている.一方,攻撃対象のシステムのサービス提供を不能にするサービス妨害(DoS)攻撃が存在し,問題となっている.手動によるDoS攻撃では,サーバ側で攻撃と思われる通信を単純にブロックしていることが攻撃者に気づかれると,攻撃者は攻撃を別の手段に切り換えて対策を回避し攻撃を行ってくる場合がある.本研究ではこの点に着目し,DoS攻撃の一種であるHTTP-GET Flood攻撃に焦点を当て,この攻撃に対して一般利用者の通信をできるだけ生かしつつ,対策を行っていることが攻撃者に気づかれにくくなるようウェブサービス提供側で可能な対策の提案を行う.本対策手法では,仮想マシンを複数台使用することで資源の分離を行い,攻撃者と通常利用者の使用する資源を分ける.また,攻撃者が利用する資源の操作を行うことで,攻撃が成功しつつあるかのように見せる.更に,提案手法の実装を行い,実験を行うことで本提案手法の有効性を確認する.
著者
加藤 淳
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.56, no.7, pp.698-699, 2015-06-15

2015年4月18〜23日までHuman-Computer Interactionに関する国際会議CHI 2015が開催された.CHI開催地は例年欧米だったが,33年の歴史上初めてアジア圏の韓国ソウルでの開催となった.アジア圏からの参加者が増加した一方,投稿論文が減少したが,15セッション同時開催というコンテンツ過多の傾向は継続した.CHIをより国際的な会議にするための運営上の工夫が目立ったほか,IoTなどに関する完成度の高い研究が多く,今後より産業界への技術移転が進むことを予感させた.今後アジア圏でHCI関連の国際会議が連続開催されるため,日本でもHCIへの注目が集まることが期待される.
著者
加藤 亮 坂口 誠一郎 林 浩平 五十嵐 康伸
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.64, no.12, pp.508-513, 2014

ビッグデータ時代に入り,ビジネス課題に対するデータ活用法(イシュー)を導出する方法論が企業では必要とされている。しかし,具体的なイシュー導出の過程や時間配分について記述している先行研究は殆どない.そこで本論文では,筆者等が参加し準優勝したデータサイエンス・アドベンチャーを事例とした事後分析に基づき,ビジネスにおける有用性及び実現性の高いイシューを導出する方法としてデータ・イシューサイクルを提案する。このサイクルは,探索期,調査期,調整期,実証期から成る。分析の結果,予測モデルの構築を行う実証期の日数は全体の1割以下であり,残り9割以上の時間はイシュー導出のための議論やデータの調査・加工を行う他3つの期間に割り当てられていたことが分かった。
著者
可児 潤也 加藤 岳久 間形 文彦 勅使河原 可海 佐々木 良一 西垣 正勝
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告コンピュータセキュリティ(CSEC) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.19, pp.1-8, 2014-02-27

近年,不正者によるサーバ攻撃が多発しており,我々はサーバ攻撃への対策として,SaaR(Sandbox as a Request) というコンセプトを提案した.本提案方式は,各クライアントからのサーバに対するリクエストごとに仮想サーバ (仮想マシンによって実装されるサーバ) をワンタイムで提供する方式となっている.正規のクライアントからのアクセスに対しても,不正なクライアントからのアクセスに対しても,サーバの 「複製」 がその都度サーバ内のサンドボックスの中に生成され,複製サーバのサービスがクライアントに提供される.複製された仮想サーバはクライアントからのリクエストに応じたサービスを終えた時点で使い捨てられる.もし不正者がサーバの脆弱性をつきサーバ内のデータの改ざんに成功したとしても,それは不正者に一時的に提供されたサーバの複製であり,サーバ本体は無傷を保つことになる.本稿では,Web サーバの形態で SaaR を実装し,実現可能性と適用範囲に関する評価と考察を行った.We proposed a method that provides a disposable virtual server to each request for a real server from a client-user, as countermeasure of attack to server(s) by malicious users. Namely, the proposed scheme, Sandbox as a Request (SaaR), generates one-time virtual machine against each access request from any client-user, regardless of legitimate user or malicious user, and then creates a copy of a real server in the sandbox. The copied virtual server provides a service to each client-user, and is cleared out when it is finished providing service appropriate to the request by the user. Even if a malicious client-user succeeds in tampering data of the copied virtual server, the real server is working without fault. This paper implements this system in the form of Web-Server, evaluates and discusses about the feasibility and the applicability.
著者
加藤 剛
出版者
京都大学東南アジア研究センター
雑誌
東南アジア研究 (ISSN:05638682)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.77-135, 1997-06

この論文は国立情報学研究所の学術雑誌公開支援事業により電子化されました。
著者
岡登洋平 加藤佳司 山本 幹雄 板橋秀一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.469-478, 1999-02-15
被引用文献数
13

機械とユーザの対話において 機械が人間と同様に相槌を打つことが可能であれば ユーザの話しやすさの改善につながる. 本研究では 話し手の発話間にポーズの出現とほぼ同時に相槌が打たれる場合を対象として システムによる相槌挿入を試みた. システムが適切なタイミングで相槌を打つにはポーズを検出するよりも早く相槌の挿入判定を行う必要がある. そこで本稿では話し手の発話から抽出した韻律情報を用いて 予測的に相槌の挿入判定を行う手法について検討した. まず対象としたテレフォンショッピングをタスクとした対話について音声を分析し 聞き手の相槌が韻律的に特徴のある話し手の発話箇所で打たれていることを示した. 次に相槌音声を消去した対話を聞かせ 相槌の箇所を人間が判定する実験を行ったところ 実際に出現した相槌の76%は実験でも検出され 発話長が長い場合に相槌を打つと判定した被験者が多いことが明らかになった. さらに相槌を打つタイミングについて 対話の分析と知覚実験を行った. この結果 相槌は発話中のポーズ開始から0.3秒以内に打つ必要があることが明らかになった. そこでテンプレートを用いた韻律パターンの認識による相槌タイミングの検出方法を提案し 相槌判定のための予測時間を変えて相槌挿入判定とタイミングの検出実験を行ったところ 予測時間0.1秒のとき84% 予測時間0.4秒のとき72%のタイミング正解率を得た. また予測時間0.1秒のとき得られたシステムの応答を人間が評価したところ 抽出箇所の74%は自然な発声箇所であると判定された.A user's degree of comfort in a man-machine spoken dialog environment is likely to improve, if spoken dialog systems can provide correct 'Aizuchi' responses to the use's utterances. This hypothesis was evaluated using a dialog corpus that relates to telephone shopping tasks, and contains 'Aizuchi' responses near the end of a speaker's utterance. The evaluation also requires a dialog system capable of detecting 'Aizuchi' timing before the end of the utterance. To this end, therefore, a method is proposed which uses prosodic information to guide correct 'Aizuchi' responses. A preliminary prosodic analysis of our utterances confirmed that an 'Aizuchi' indeed relates to the duration, speaking rate and minimum F0 of an utterance. Next, using dialogs from which 'Aizuchi' responses were previously removed, an experiment was carried out to spontaneously prompt such responses from human subjects. Results show that subjects were able to match about 80% of the 'Aizuchi' responses contained in the original dialogs, and that many subjects tended to do so during long utterances. Then, a dialog analysis was performed to investigate 'Aizuchi' timing, Results of which indicate that the system should give an 'Aizuchi' within 0.3 seconds of the end of the speaker's utterance. By comparison, in an 'Aizuchi'-prompting experiment based on prosodeic pattern recognition, the system achieved 84% with no 0.1-second prediction of end of utterance and 72% with 0.4-second prediction. Finally, human perceptual evaluation of the timing of system detection, yielded an accuracy of 74% which lends support to the naturalness of 'Aizuchi' response given by system.
著者
山家 一哲 高橋 哲也 石井 香奈子 加藤 光弘 小林 康志
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.83-87, 2015 (Released:2015-03-31)
参考文献数
17
被引用文献数
3 9

青色LED光(最大波長465 nm,80 µmol・m−2・s−1)照射が,収穫後のウンシュウミカンの青かび病抑制と果実品質に及ぼす影響について検討した.果実に青かび病菌を接種後,6日間青色LED光照射を行った結果,照射果は無照射果と比較して,腐敗部(軟化部,菌糸部,胞子形成部)が有意に小さくなった.続いて,最初に青色LED光を6日間果実に照射した後,果実に青かび病菌を付傷接種し,腐敗部の広がりを調査した.その結果,接種菌濃度が低い場合において,照射果は無照射果と比較して腐敗部が有意に小さくなった.このことから,青色LED光は青かび病菌の生育抑制と果皮の病害抵抗性を高める可能性が示唆された.青色LED光照射の有無により,果実の減量歩合とクエン酸含量に差が見られたが,その他の果実品質については照射の影響は認められなかった.
著者
嘉田 勝 吉信 康夫 友安 一夫 渕野 昌 薄葉 季路 岩佐 明 加茂 静夫 加藤 匠人 静間 荘司
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究の開始後に、当初想定できなかった研究遂行の障害が複数件生じ、当初想定していた研究方法の大幅な縮小を余儀なくされ、特に、主題として設定した「巨大基数公理を用いた集合論の手法による位相空間論へのアプローチ」については、特筆すべき成果を挙げられなかった。その一方、本研究の遂行の過程で派生的に生じた、「(1) 点列の集合への収束とコーエン強制」 「(2) 和集合公理を除いた集合論の公理系における、種々の選択公理関連命題の強弱関係」「(3) 囚人の帽子パズルの無限集合への一般化」の3点の集合論および位相空間論の問題については、興味深い成果が得られており、今後の研究の進展も期待できる。
著者
齋藤 克憲 橋田 秀明 岩代 望 大原 正範 石坂 昌則 近藤 哲 加藤 紘之
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.37, no.12, pp.1829-1833, 2004 (Released:2011-06-08)
参考文献数
24

今回我々はIIc型早期胃癌と診断され, 病理組織所見にて直下にアニサキスによる好酸球性肉芽腫を認めた1例を経験したので報告する. 症例は77歳の男性. 20年来の胃潰瘍の診断にてH2-blocker, 消化性潰瘍治療薬を内服していた. 平成14年9月, 定期検診目的の胃内視鏡検査にて胃体下部大彎側にIIc+III型病変を指摘, 組織生検にてgroup Vと診断され, 深達度がsm以上の可能性があるとして外科紹介, 幽門側胃切除術を施行した. 腫瘍は0.8×0.8cmのIIc型乳頭腺癌で深達度sm1, またそのほぼ直下の固有筋層内に好酸球性肉芽腫を認め, この中心部にアニサキス虫体を認めた. 連続切片からアニサキスはIIc部分から刺入したと思われた. アニサキスが癌や潰瘍など粘膜の脆弱部から胃壁内に進入する可能性はすでに指摘されているが, 本症例のごとく慢性化した場合, 虫体が鏡視下に視認出来ないため好酸球肉芽腫を癌の一部と誤認する可能性があり, 診断上注意が必要である.