著者
小原 慎弥 上原 隆志 木村 圭一郎 吉田 哲郎 藤原 翔平 水口 裕尊 布施 泰朗 山田 悦
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.231-240, 2009 (Released:2009-05-04)
参考文献数
16
被引用文献数
4 5

2006年12月から琵琶湖水を採水し,湖水中の溶存有機物質(DOM)を疎水性樹脂(DAX-8)で疎水性酸(HoA),疎水性中性物質(HoN)及び親水性有機物質(Hi)にカラム分画し,DOM及びその画分の鉛直分布や月変化など動態解析を行った.DOMとその画分の鉛直分布は,5月までは水深に関係なくほぼ均一だが,夏季6~9月には水温躍層(水深10~20 m)の間で大きく変化した.表層水のDOM,Hi及びHoA濃度は,5~9月に増加し,水深の深い所との濃度差が大となった.これらが増加した春季から夏季にはクロロフィルの増加が見られ,フミン物質の増加に加えて内部生産によるHi濃度の増加が影響していると考えられる.トリハロメタン(THM)生成能は,水深10 m付近で高く,水深20 m以下では35~40 μg/Lの値で水深による変化は小さかった.培養時における藻類由来有機物の単位有機炭素当たりのTHM生成能はMicrocystis aeruginosa>Cryptomonas ovata>Staurastrum dorcidentiferumの順で,その種類によってかなり異なり,土壌起源のフミン物質のTHM生成能より低い値を示した.一方,生分解時における藻類由来有機物の単位有機炭素当たりのTHM生成能は,その種類による違いは少なく,湖水の値に近い値を示した.
著者
犬飼 敏彦 萩原 修 今 陽一 藤原 隆 吉江 康正 冨澤 貴 柁原 昭夫 小林 節雄 森松 光紀
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.423-429, 1983
被引用文献数
5 2

我々は, Adie症候群,分節性無汗症,起立性低血圧を伴つた皮膚筋炎の1例を経験し,類推例を見ない極めて希な症例と思われたので報告する.症例. 30才,女性.主訴:発熱,咳嗽.現病歴: 1979年8月上旬より両側下肢に関節痛,筋肉痛および筋力低下を自覚, 9月15日より約38°Cの発熱,咳嗽をきたし, 17日当科受診.四肢近位筋の萎縮およびGOT, GPT, LDH, CPKなどの高値と間質性肺炎像が認められ26日入院.筋電図,皮膚および筋生検組織より皮膚筋炎と確診. steroidの投与により皮膚筋炎に基づく臨床症状および検査所見は改善した.一方,初診時より両側性瞳孔緊張,深部反射消失を認め,またmecholyl点眼により両側に著明な縮瞳を確認し,両側性Adie症候群の完全型であると診断.また自律神経機能検査より分節姓無汗症,起立性低血圧の存在も明らかとなつた. Adie症候群と自律神経異常との合併はよく知られており, acute pandysautonomiaの概念で把えられ病態生理学的な検討がなされている.特に無汗症との因果関係については,報告者により見解の不一致を見るが,本例においてはその臨床所見より交感神経節性障害,あるいは広範な節後障害が推測される.一方,他の疾患に伴う"症候性Adie症候群"の報告は蓄積されているが,本例の如く皮膚筋炎との合併例は,我々の検索した範囲では報告されておらず,貴重な症例と考えられ,その病態解明には今後の慎重な経過観察が必要であろう.
著者
藤原 隆之 松崎 由理 石田 貴士 秋山 泰
雑誌
研究報告バイオ情報学(BIO)
巻号頁・発行日
vol.2012, no.19, pp.1-3, 2012-06-21

タンパク質間ドッキング予測ソフトウェア "MEGADOCK" では,目的関数に形状相補性と静電相互作用の 2 つの項を用いているが,その最適なバランスは対象毎に一定ではなく,それを決定することは困難である.そのため,先行研究として予測精度改善のため目的関数のうち静電相互作用項の重みをタンパク質の表面電荷等の特徴から動的に調整する手法が提案されたが,いくつかの問題を含んでいた.そこで,本研究では従来手法の再検証を行い,サポートベクター回帰を用いた改良を提案する.改良された手法では従来使用されたデータセットにおいて予測性能の向上が確認され,その上で新たなデータセットへの適用も行った。The protein-protein docking software "MEGADOCK" uses the two terms in its target function; shape complementarity and electrostatic. However, the optimal balance between those two terms is defferent for each protein. Thus, dynamic adjustment of the weight of the electrostatic term based on the surface charge of a protein was proposed in a previous work. In this work, we improved the method by using support vector regression and additional characteristics of a protein. By using our new method, we achieved the better prediction performance for the data used in the previous study. We also applied the method to new data set.
著者
日高 健一郎 石崎 武志 井上 浩一 川西 宏幸 高根 沢均 田村 幸雄 原 隆 堀 賀貴 水嶋 英治 吉田 昭仁
出版者
東京藝術大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2009-04-01

中近東と北アフリカにおいて、ユスティニアヌス1世期(6世紀)の主要な教会堂建築を対象として基礎研究、考古学調査、工学、保存科学、遺産公開の5領域で研究を行う。リビアのトクラ遺跡では「西教会堂」の発掘で、アプシスが出土、ヨルダンのジェラシュ遺跡では「三連教会堂」の詳細実測を終え、アトリウムの一部発掘を実施し、先行建築を確認した。対象国の政情不安と騒乱で一部研究が未完となったが、研究期間後半ではハギア・ソフィア大聖堂(トルコ、イスタンブール)を主対象として、上部構造の形状と微動を計測し、劣化の主因となる壁体への水分浸透を解析した。構造と保存科学の視点から、同大聖堂の保存と公開への基本指針を得た。
著者
山口 大助 市原 隆司 熊野 史朗 佐藤 洋一 須田 義大 李 曙光
出版者
Institute of Industrial Science The University of Tokyo
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.253-258, 2011

近年,ITS技術を利用したエコドライブに関する研究が幅広く行われている.その多くは車速や加減速など自車に関する情報のみを考慮しているが,実際には渋滞や信号機の現示など周囲の状況によって最適な運転操作は異なる.そのため,自車だけでなく,渋滞,信号現示,車間距離などの周囲状況も考慮する必要がある.筆者らはこれまでに自車状況と自車周囲状況の両方を考慮したエコドライブの達成レベルを定量的に評価する手法を提案しており,本研究では自車周囲状況として交通信号機の視認を考慮に入れた場合の提案手法の妥当性をドライビングシミュレータを用いた基礎実験を通じて検討する.
著者
西尾 章治郎 原 隆浩 寺田 努 小川 剛史
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

無線通信機能をもつ小型センサノードで形成するセンサネットワークに対し、(1)センサネットワークノードのための動的機能交換ミドルウェア、(2)センサネットワークのためのデータ配置管理技術、(3)センサネットワークのためのデータ送受信技術の3 テーマを中心に研究を推進し、センサネットワークのためのデータ処理基盤となる技術の研究開発を行った。本研究の成果は、多数の学術論文誌や国際会議録等に掲載され、国内外において高い評価を得ている。
著者
白川 真澄 中山 浩太郎 原 隆浩 西尾 章治郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告情報学基礎(FI)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.56, pp.89-96, 2008-06-12

分類辞書(タクソノミー)は,文書分類や情報検索などのアプリケーションにおいて幅広くその有用性が実証されてきた.しかし分類辞書の自動構築に関する従来研究では,自然言語処理の技術的限界やノイズデータに起因する精度低下の問題がある.そこで本稿では,大規模Web百科事典の Wikipedia に構築されたカテゴリ構造(ネットワーク)を用いて,概念をベクトル化する手法を提案する.The availability of the taxonomy, which is a kind of category-sorted dictionary, has been demonstrated by various applications such as document classification and information retrieval. However, existing works on automatic taxonomy construction have the problem of decreasing the accuracy due to the technical limitation of statistical NLP (Natural Language Processing) and noise data. In this work, we propose concept vectorization methods using the category network structured in Wikipedia, a large scale Web encyclopedia.
著者
上原 隆平
雑誌
研究報告アルゴリズム(AL)
巻号頁・発行日
vol.2010-AL-131, no.11, pp.1-3, 2010-09-15

近年,計算幾何学の一部で 「計算折紙」 とよばれる分野が注目を集めている.その分野では,ある意味で折紙を計算のプラットフォームとみなしている.こうしたプラットフォーム上で,計算量理論的に手におえない困難な問題や,多項式時間で解ける問題がいくつか知られている.さてチューリング機械といった標準的な計算モデルにとって,決定不能な問題の存在は,その計算モデルの計算能力の高さを逆説的に示しているといえよう.それならば,計算折紙モデルでは決定不能な問題が存在するだろうか?本稿では,この疑問に対する解答を与える.具体的には,計算折紙モデルのごく自然な決定問題が決定不能であることを示す.
著者
川端 秀明 磯原 隆将 竹森 敬祐 窪田 歩
雑誌
研究報告コンピュータセキュリティ(CSEC)
巻号頁・発行日
vol.2011-CSEC-53, no.3, pp.1-6, 2011-05-05

Android OS の特徴として,利便性の高いアプリケーション (以下,アプリ) を実現するパーミッションという機構があり,アプリケーションのインストール時にユーザが承認することで,端末の情報や機能へのアクセス権を制御している.また,アプリの可用性の向上のために web 機能をアプリに内包する webkit を搭載している.これを用いることで,Android アプリと HTML,CSS,JavaScript など Web アプリとを柔軟に連携できる.しかし,webkit を利用したアプリが,外部サーバから JavaScript を受け取り実行した場合,アプリに与えられたパーミッションの範囲で実行される脅威がある.要するに,アプリ単体では不正な動作をしないが,後から送り込まれた悪意の JavaScript によって端末を操作されてしまう.そこで本研究では,アプリの静的解析により得られるコードの特徴から,後から送り込まれる JavaScript の機能を把握し,潜在的な脅威を推定する手法を提案する.これはアプリの実行コードの逆コンパイルによるコード解析であり,外部サーバの JavaScript から呼び出されるメソッドを特定することで,情報漏洩や端末の不正操作を推定する.
著者
成瀬 継太郎 久保 正男 佐藤 浩 松原 隆
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告数理モデル化と問題解決(MPS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.85, pp.51-54, 2008-09-11

本論文の目的は、電子掲示版システム (BBS) におけるコミュニケーションの様相を理解することである.特に本論では次の三点について議論する. (1) 調査:オープン型の BBS のログを分析し、多くの BBS に共通する特性を調べた結果,各々のユーザーによって投稿される一日あたりの記事の数が対数正規分布に従うことを明らかにする.これらの特徴は各ユーザーに明示的にそのように振る舞うように定められたものではなく,自由な相互作用の結果現れた創発現象がもつ性質である.そこで,この現象を理解するために (2) 創発現象を起こす個人特性の提示と (3) 創発現象下のユーザーの振る舞いの定式化を行い,投稿件数分布を導出している.The objective of this paper is to understand an aspect of human social interaction in bulletin board systems on internet. When an individual submits an article to a BBS, it is potentially influenced by articles from other users. A submission sometimes starts a long and hot chain of articles, but often does not. This paper tries to answer the question of why and how such a chain of articles emerges. In other words, we attempt to reveal a mechanism linking the individual voluntary activity of article submission and the social phenomenon of a long article chain.
著者
宮川 明子 清木 康 宮原 隆行 北川 高嗣
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌データベース(TOD) (ISSN:18827799)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.1-10, 2000-02-15
被引用文献数
2

画像データなどのメディアデータを対象としたデータベースシステムの実現において,検索者が求めるメディアデータを適切かつ高速に抽出することは重要である.本論文では,意味の数学モデルを拡張した意味的画像連想検索を対象とした高速化アルゴリズムの実現方式を提案する.意味の数学モデルは,文脈あるいは状況に応じて動的に変化するデータ間の意味的な関係を計算するモデルである.本論文で提案するアルゴリズムは,指定された時間内の限られた計算回数で有効な検索結果を得ることを目的としたものである.このアルゴリズムによる意味的画像検索の実験を行い,実験の結果よりその有効性を明らかにした.In the database system design for multimedia database, it is important to develop a correct and fast retrieval method for media data(e.g. image, music). This paper proposes a fast algorithm and its implementation method for semantic associative image search based on our mathematical model of meaning. This model has been designed for computing semantic relation between data items dynamically accoding to context and situation. The objective of this algorithm is to obtain the available and correct retrieval results within the given limited time in the semantic associative search. This paper also shows some experimental results of semantic image search to clarify the feasibility and effectiveness of the proposed algorithm."
著者
矢原 隆行 Yahara Takayuki ヤハラ タカユキ
出版者
日本家族研究・家族療法学会
雑誌
家族療法研究 (ISSN:09106022)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.70-77, 2011-04-30

The Reflecting team has drawn much attention from all over the world since Andersen introduced the process in 1987. Also in Japan some practices of reflecting teams have started recently,yet there are still only few studies to explore the theoretical implications of the reflecting processes. Andersen preferred to minimize the use of the term "reflecting team",because that term represents only one of almost infinite methods of organizing "reflecting processes"which means the shiftings between being engaged in talking about an issue and thinking about the talking about the issue. Therefore we must avoid the danger of its being reduced to just a technique,a novel"how to" in the manual of therapeutic practices.Such a reduction would be the loss of the philosophical richness of the ideas behind the concept, and the ways in which the ideas can be further developed.This paper attempts to examine the theoretical implications of the reflecting processes by applying Luhmann's theory of observation,as a theory of distinction. Luhmann has defined the concept of observation abstractly,so that it can be applied to psychic as well as to social operations. In addition,to explore the essence of reflecting processes we utilized three illuminations that glow by themselves while at the same time reflecting other lights. The first was the metaphor of mirror by Luhmann,that makes distinction to illuminate second-order observing systems. The second was "transversalite"by Guattari that makes distinction to indicate the concept of heterarchy. The third was the ancient Japanese linguistics by Sakabe that makesdistinction to indicate"hanashi".These illuminations enable effectively our exploration about the theoretical implications of the reflecting processes.
著者
木下 謙治 山下 祐介 吉良 伸一 坂本 喜久雄 米澤 和彦 篠原 隆弘 岩元 泉
出版者
福岡県立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1996

1. 九州の農業は、国内での農業生産のシェアを伸ばし、生産額も全国平均をかなり上回る数値をあげてきた。しかし、農外所得が低いために、農家所得は都府県平均の8割程度にとどまっている。2. 九州の各地で、佐賀県の代表的な水田地帯のようなところまで含めて、有力な専業農家は稲作への依存度を低めている。土地利用型農業の衰退化といえるが、それとともに、水田を如何に維持してゆくかが大きな問題となってきている。集落営農、機械共同利用組合、農作業センターなど様々な共同が必要となってきている。3. 南九州を中心とする畑作地帯では、茶、疏采園芸、花卉、畜産など多様な生産活動が展開しており、水田地帯よりも見通しは明るい。畑作地帯が有望となってきた背景には畑地潅漑が進展してきたことが大きい。いっそうの潅漑施設の整備が望まれる。゛4. 中山間地の農林業については、大分県上津江村でみたように、複雑な山間立地にみあった複合経営が必須である。そして、それを補うものとして、地場産業起こしが必要である。いわゆる、官民一体の地域づくりの運動の中に農林業を位置づけねばならない。5. 九州の農業を担っている中核的農家は、直系的家族である。家的な構成は、やはり、農家では今後とも維持されてゆくであろう。家=家父長制と考える必要はない。21世紀においても、農業の中心的な担い手は農家であると思われる。6. グローバルにみれば、九州農業は、日本農業と同じく零細な小農経営にとどまっている。むらに関わる共同は、なお、必要である。しかし、自治組織と生産組織との乖離は進んでいる。新しい農村コミュニティの形成も視野にいれなければならない。
著者
山下 謙一郎 若生 忠幸 小原 隆由 塚崎 光 小島 昭夫
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.74, no.6, pp.444-450, 2005-11-15
参考文献数
27

ネギのさび病抵抗性を改良するため, '聖冬一本', '岩井2号', '長寿', 'せなみ', '冬扇一本', '豊川太'の6品種を育種素材(C_0)として循環選抜を行った.循環選抜の1サイクルは2段階からなり, 最初の年に自殖および自殖系統選抜を行い, 2年目に相互交配および母系系統選抜を行った.2サイクルの循環選抜により, 10母系系統からなる改良集団(C_2)を得た.さらに, 2世代の自殖と自殖系統選抜を行い, 13のC_2S_2系統を得た.実施した循環選抜の効果を評価するために, 2回の接種検定により上記の選抜で得られた全世代のさび病抵抗性の程度を比較した.春季および秋季の接種検定において, 発病程度の指標であるarea under the disease progress curve (AUDPC)の値は循環選抜が進むにともない明らかに減少し, 抵抗性の向上が認められた.C_1からC_2世代にかけて抵抗性の変化は小さかったものの, C_2S_2世代では大幅な向上が認められ, C_2S_2系統のAUDPCは素材品種の約38%となった.以上の結果, ネギのさび病抵抗性の改良に循環選抜は有効であることが実証された.
著者
幕内 博康 町村 貴郎 宋 吉男 水谷 郷一 島田 英雄 徳田 裕 杉原 隆 佐々木 哲二 田島 知郎 三富 利夫 大森 泰 三吉 博
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.24, no.10, pp.2599-2603, 1991-10-01
被引用文献数
30

近年,診断技術とくに色素内視鏡の進歩により,食道表在癌はもとより食道粘膜癌も増加してきた.粘膜癌で粘膜筋板に達しないものでは脈管侵襲やリンパ節転移をきたすことも極めてまれである.そこで内視鏡的粘膜切除術の適応を,(1)粘膜筋板に達しない粘膜癌,(2)長径2cm以下,(3)食道全長に多発していないもの,とした.われわれは18例23病巣に内視鏡的粘膜切除術を施行しており,このうち表在癌は15例19症巣であった.手技は,(1)ヨード染色により病巣の範囲を確認し,(2)病巣周囲にマーキングを行い,(3)インジゴカルミン・エピネフリン加生食水を粘膜下に注入し,(4)内視鏡的粘膜切除術を施行して組織を回収し,(5)再度ヨード染色で切除範囲を確認するものである.皮下気腫をきたした1例以外合併症はなく,穿孔例や緊急手術の適応となったものはない.本法の発展普及と食道癌の予後改善を期待する.
著者
藤原 隆広 熊倉 裕史 大田 智美 吉田 祐子 亀野 貞
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.347-352, 2005-09-15
被引用文献数
12 20

1. 京都府綾部市において, 2003年6月〜2004年5月までの1年間に毎月2〜3回の間隔で購入した市販のホウレンソウ(合計127サンプル)に含まれるL-アスコルビン酸(AsA)と硝酸塩の周年変動を調査した.2. AsA含量は, 夏期(7月〜8月)に低く冬期から春先(1月〜3月)にかけて高い傾向が認められた.また, この傾向は可食部上部(葉身側)で特に高かった.3. 硝酸塩含量は, 7月〜9月に高く, 1月〜3月に低い傾向が認められた.また, この傾向は可食部下部(葉柄側)で顕著であった.4. 生体重および葉色(SPAD値)と2つの品質成分(AsA含量と硝酸塩含量)との間に有意な相関が認められたが, これらの相関関係は外観形質から品質成分の多寡を推定するには十分ではないと判断された.
著者
蓑原 隆
出版者
拓殖大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究では広大なアドレス空間を持つIPv6通信を対象としてアドレスに関するプライバシーを高める方法として,複数の中継ノードを利用するアドレス変換,および, Mobile IPv6におけるホームエージェントの多重化による位置プライバシーの保護の方法を提案した.また, Linux上に提案手法を実装し,そのオーバヘッドがネットワークの遅延速度に比べて許容範囲内であることを実験ネットワークで確認した.
著者
矢箆原 隆造 谷野 元一 寺西 利生 和田 陽介 生川 暁久 上野 芳也 宇佐見 和也 園田 茂
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.B1O1004, 2009 (Released:2009-04-25)

【はじめに】脳卒中患者の歩行や立位訓練において短下肢装具(以下,AFO)はよく用いられる.今までAFOの効果を検討した報告では,歩行を指標にしているものが多く,立位を指標にしている研究は少ない.そこで我々は当院に入院した脳卒中患者に対してAFOの効果を立位バランスの観点で検討したので報告する.【対象】当院に入院し,歩行訓練においてAFOを使用しており,AFO装着時と裸足時ともに上肢支持なしで1分間の静止立位が可能であった初発脳卒中片麻痺患者14名を対象とした.対象者には研究の趣旨と内容について説明し同意を得た.年齢は53.1±11.0歳,性別は男性12名,女性2名,障害側は右片麻痺9名,左片麻痺5名,診断名は脳出血10名,脳梗塞4名,発症から計測までの期間は62.1±29.7日であった.下肢Br.stageの中央値は3.5,SIAS下肢深部覚の中央値は1,FIM運動項目合計点は63.4±13.0点,FIM認知項目合計点は29.5±5.9点,FIM歩行項目は3点が3名,4点が4名,5点が7名であった.使用装具は調整機能付き後方平板支柱型AFOが10名,両側金属支柱付きAFOが3名,継ぎ手付きプラスチックAFOが1名であった. 【方法】計測機器は酒井医療社製Active Balancerを用いた.前方2mの位置に視線と同じ高さの直径5cmの指標を注視させ,上肢を下垂した状態で60秒間立位をとり,足圧中心(COP)の総軌跡長,外周面積を計測した.計測はAFO装着しての開眼時,閉眼時を計測,次に裸足での開眼時,閉眼時の順に計4回行った.そして開眼時,閉眼時それぞれのAFO装着時の総軌跡長,外周面積と裸足時の総軌跡長,外周面積を比較した.統計処理にはWilcoxon符号付き順位和検定を用い,5%未満を有意水準とした. 【結果および考察】開眼での総軌跡長はAFO装着時に159.6±63.7cmであり,裸足時に282.7±136.5cmであった(p<0.05).外周面積はAFO装着時に7.2±5.9cm2であり,裸足時に9.5±5.2cm2であった(p=0.08).開眼では総軌跡長にて有意差を認め,外周面積では有意差は認めなかったものの裸足時に比べAFO装着時では平均値が減少していた.閉眼での総軌跡長はAFO装着時に230.5±89.4cmであり,裸足時に282.7±136.5cmであった(p<0.01).外周面積はAFO装着時に12.7±8.5cm2であり,裸足時に18.1±11.2cm2であった(p<0.01).閉眼では総軌跡長,外周面積ともに有意差が認められた.この結果からAFO装着は立位バランスの向上に有用と考えられた.この理由としてAFOが麻痺側足部を固定し,関節の自由度を制約したことにより安定性が増したことが考えられた.また閉眼では外周面積においても有意差を認めたため,閉眼のような視覚を遮断し,体性感覚が優位となる難易度が高い課題ではAFOの効果がよりみられやすいと考えられた.