著者
李 成喆 島田 裕之 朴 眩泰 李 相侖 吉田 大輔 土井 剛彦 上村 一貴 堤本 広大 阿南 祐也 伊藤 忠 原田 和弘 堀田 亮 裴 成琉 牧迫 飛雄馬 鈴木 隆雄
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0161, 2014 (Released:2014-05-09)

【はじめに,目的】近年の研究によると,心筋こうそく,脳卒中など突然死を招く重大な病気は腎臓病と関連していることが報告されている。クレアチニンは腎臓病の診断基準の一つであり,血漿Aβ40・42との関連が示されている。また,糖尿病を有する人を対象とした研究ではクレアチンとうつ症状との関連も認められ,うつ症状や認知症の交絡因子として検討する必要性が指摘された。しかし,少人数を対象とした研究や特定の疾病との関係を検討した研究が多半数であり,地域在住の高齢者を対象とした研究は少ない。さらに,認知機能のどの項目と関連しているかについては定かでない。そこで,本研究では地域在住高齢者を対象にクレアチニンが認知機能およびうつ症状とどのように関連しているかを明らかにし,認知機能の低下やうつ症状の予測因子としての可能性を検討した。【方法】本研究の対象者は国立長寿医療研究センターが2011年8月から実施した高齢者健康増進のための大府研究(OSHPE)の参加者である。腎臓病,パーキンソン,アルツハイマー,要介護認定者を除いた65才以上の地域在住高齢者4919名(平均年齢:72±5.5,男性2439名,女性2480名,65歳から97歳)を対象とした。認知機能検査はNational Center for Geriatrics and Gerontology-Functional Assessment Tool(NCGG-FAT)を用いて実施した。解析に用いた項目は,応答変数としてMini-Mental State Examination(MMSE),記憶検査は単語の遅延再生と物語の遅延再認,実行機能として改訂版trail making test_part A・B(TMT),digitsymbol-coding(DSC)を用いた。また,うつ症状はgeriatric depression scale-15項目版(GDS-15)を用いて,6点以上の対象者をうつ症状ありとした。説明変数にはクレアチニン値を3分位に分け,それぞれの関連について一般化線形モデル(GLM)を用いて性別に分析した。【倫理的配慮,説明と同意】本研究は国立長寿医療研究センターの倫理・利益相反委員会の承認を得た上で,ヘルシンキ宣言を遵守して実施した。対象者には本研究の主旨・目的を説明し,書面にて同意を得た。【結果】男女ともにクレアチニンとMMSEの間には有意な関連が認められた。クレアチニン値が高い群は低い群に比べてMMSEの23点以下への低下リスクが1.4(男性)から1.5(女性)倍高かった。また,男性のみではあるが,GDSとの関連においてはクレアチニン値が高い群は低い群に比べてうつ症状になる可能性が高かった1.6倍(OR:1.62,CI:1.13~2.35)高かった。他の調査項目では男女ともに有意な関連は認められなかった。【考察】これらの結果は,クレアチニン値が高いほど認知機能の低下リスクが高くなる可能性を示唆している。先行研究では,クレアチニン値は血漿Aβ42(Aβ40)との関連が認められているがどの認知機能と関連があるかについては確認できなかった。本研究では先行研究を支持しながら具体的にどの側面と関連しているかについての検証ができた。認知機能の下位尺度との関連は認められず認知機能の総合評価指標(MMSE)との関連が認められた。しかし,クレアチニンとうつ症状においては男性のみで関連が認められたことや横断研究であるため因果関係までは説明できないことに関してはさらなる検討が必要である。【理学療法学研究としての意義】老年期の認知症は発症後の治療が非常に困難であるため,認知機能が低下し始めた中高齢者をいち早く発見することが重要であり,認知機能低下の予測因子の解明が急がれている。本研究ではクレアチニンと認知機能およびうつ症状との関連について検討を行った。理学療法学研究においてうつや認知症の予防は重要である。今回の結果は認知機能の低下やうつ症状の早期診断にクレアチニンが有効である可能性が示唆され,理学療法研究としての意義があると思われる。
著者
植田 弘師 吉田 明
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.114, no.1, pp.51-59, 1999 (Released:2007-01-30)
参考文献数
47

1976年にシグマ受容体はオピオイド受容体のファミリーに属するものとして明らかにされたが,その後分類のいきさつや生理機能が充分解明されなかった為,あまり注目されてこなかった.ところが最近,シグマ1受容体が学習記憶障害改善作用や抗うつ作用,さらには神経細胞保護作用など高次脳神経機能に関連していることが多数報告されるようになり選択的シグマ1受容体アゴニストが新しい治療薬として注目されるようになってきた.これと並行して,膜1回貫通型シグマリガンド結合タンパク質のアミノ酸配列が報告され,また一方で脳シナプス膜におけるGタンパク質連関型シグマ受容体存在の証明などを機にこれまで未知な点が多かったシグマ受容体研究が急速な発展を遂げつつある.さらに,神経ステロイドの即時型反応(non-genomic action)にこのシグマ受容体が関連することが明らかになり,様々な行動薬理,神経化学的性質をシグマ化合物と共有することが明らかになってきた.神経ステロイドの血中濃度と高次脳機能との関連が報告されはじめ,今後,シグマ受容体関連化合物が神経ステロイド機能調整薬として応用されることが期待されるであろう.
著者
吉田 省子
出版者
科学技術社会論学会
雑誌
科学技術社会論研究 (ISSN:13475843)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.109-124, 2021-05-20 (Released:2022-05-21)
参考文献数
51

中島貴子は2004 年に,食品安全委員会のBSEリスクコミュニケーションを検討し,行政や専門家と消費者との間にディスコミュニケーションが存在すると指摘し,その要因を論じた.本稿の目的は二つある.一つは,2004 年と2013 年のBSEリスクコミュニケーションを検討し,別の要因を指摘することである(3 ~4 章).それは,食品安全委員会と憂慮する市民―消費者との間に存在する,リスクコミュニケーションへの期待あるいは解釈の差異である(3 章).その差異は,日本の枠組みでは明示的ではない2 つの概念の不在に関連づけられる.IRGCのリスクガバナンスの枠組みが含む「懸念評価」とコーデックスの「その他の正当な要因(OLFs)」である(4 章). この状況下で消費者団体がリスクコミュニケーションの問題に直面する時,消費者団体は,あたかも自粛するかのように口を閉じてしまう可能性がある.この沈黙という状態を“scienceplanation”という概念を用いて示すのが,第二の目的である(5 章).6 章では,打開策として,ボトムアップでの物語作りの可能性が述べられる.
著者
吉田 右子 川崎 良孝
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.328-340, 2013-01-01 (Released:2017-05-24)

本研究ではオレゴン州スプリングフィールド市憲章,コロラド州憲法第2修正およびシンシナティ市条例という3つの同性愛差別法へのアメリカ図書館協会の反対運動に焦点を当て,図書館専門職団体としての協会の社会的責任をめぐる議論を検討した。差別法に対する協会の姿勢は明確であり,一貫して同性愛差別法への対抗的活動を行った。また同性愛差別を図書館専門職の問題として認識し,反差別に取り組むことが協会内で了解されていた。考察の結果,専門職団体としての協会は同性愛者保護を専門職の価値観に内包していたことが明らかになった。
著者
吉田 英彰
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.393-403, 2022-05-20 (Released:2022-06-22)
参考文献数
51

本稿は,未来の学習のための準備(Preparation for Future Learning:PFL)研究に着目し,個別最適な学びの実現について検討を行った.1999年から2020年の間に,学術誌に査読付き論文として掲載された論文のうち,ICT を活用したPFL に関する論文に絞り研究内容のレビューを行った.その結果,ICT を活用したPFL により,既有知識や学習達成度を把握でき指導の個別化に有効であること,自己調整しながら学習を進めることができ学習の個性化に有効であることが示唆された.最後に,PFL の知見を個別最適な学びのアプローチの一つとして位置づけ,今後研究を進めていく上での課題を検討した.
著者
前田 伸也 吉田 勇一 窪田 秀明 桶谷 寛
出版者
九州理学療法士・作業療法士合同学会
雑誌
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 第29回九州理学療法士・作業療法士合同学会 (ISSN:09152032)
巻号頁・発行日
pp.25, 2007 (Released:2008-02-01)

【はじめに】 脚延長術後の理学療法は、相対的に短縮する軟部組織の柔軟性維持を目的とした可動域訓練を行なうが、下腿延長例の足関節背屈よりも大腿延長例の膝関節屈曲の可動域改善が乏しい様に思われる。そこで下腿延長と大腿延長の下肢可動域と骨延長量を調査し、これらを比較したので報告する。【対象】 軟骨無形成症で低身長を呈し、脚延長術を実施した下腿延長例7名14肢、大腿延長例5名10肢のうち、調査可能であったそれぞれ6名12肢、4名8肢を対象とした。手術時平均年齢は下腿延長例で14歳3ヶ月、大腿延長例で17歳3ヶ月であった。なお、全例でorthofix創外固定器を使用した。【方法】 下腿延長例では膝伸展位での足関節背屈角度(DKE)、大腿延長例では膝関節屈曲角度(KF)をそれぞれ術前と延長後1ヶ月、その後1ヶ月毎に延長後7ヶ月まで調査し、各調査時の左右平均角度を求め、それぞれで術前との比較を実施した。骨延長量は、それぞれの平均延長量を求め比較した。【結果】 DKE、KFそれぞれにおいて分散分析を実施し、DKEは、術前と延長後1ヶ月、術前と延長後7ヶ月は有意差がなかったが、延長後2~6ヶ月までの5ヶ月間は術前と比較して可動域が減少した。(P<0.05)。KFでは延長後1~7ヶ月までの7ヶ月間は、術前と比較して可動域が減少した(P<0.05)。骨延長量は、下腿で平均74.7mm、大腿で平均66.9mmであり下腿が大きい結果となった。【考察】 結果より、DKEよりもKFの可動域改善が低いことが示唆された。理由として、下腿延長例は、斜面台での起立訓練や歩行時において、下腿三頭筋の持続したストレッチ効果が得られやすく、早期の可動域改善が可能ではないかと推察された。一方大腿延長例では、下腿よりも歩行時のストレッチ効果が得られず、また大腿部の筋自体も筋張力が大きいため、可動域改善が得られにくい。その他として、平岡らは、大腿延長はピン刺入により腸脛靭帯のスライドが不十分なために膝関節屈曲制限が起きると述べている。以上により大腿延長例では、軟部組織の柔軟性を獲得しにくいことが推察された。また骨延長量も大腿延長例が小さく、延長量を決定する因子として軟部組織の柔軟性が必要であるということが確認できた。これらを踏まえ、大腿延長例の理学療法は、術前に大腿四頭筋のストレッチを実施し、可動域制限を最小限に留めることが必要ではないかと考える。今後も症例数を増やしていき、更に検討したい。【結語】 下腿延長と大腿延長において、骨延長量と下肢可動域を比較した。結果、大腿延長例ではKFの改善が低く、骨延長量も小さい。大腿延長例に関して、術前に大腿四頭筋のストレッチを実施する必要があると考える。
著者
中川 遼 大西 鮎美 吉田 さちね 寺田 努 塚本 昌彦
雑誌
マルチメディア,分散協調とモバイルシンポジウム2018論文集
巻号頁・発行日
vol.2018, pp.330-337, 2018-06-27

授乳中にスマートフォンを操作する母親がいるが,授乳中のスマートフォン操作により乳児がぐずりだしたという声もある.しかし,実際に授乳中のスマートフォン操作が乳児のぐずりを引き起こしているのかは現在調査されていない.授乳中のスマートフォン操作が乳児のぐずりを引き起こしていた場合,原因を明らかにし,その原因を取り払うことで,乳児のぐずりを引き起こすことなくスマートフォンを操作できる可能性がある.また,原因がスマートフォン操作でない場合,母親は罪悪感を感じることなく授乳中にスマートフォン操作をすることが可能となる.本論文では,実際に授乳中のスマートフォン操作により乳児のぐずりが引き起こされているのか,またその場合,乳児のぐずりの原因は何であるのかを明らかにすることを目的とし,ビデオカメラや加速度センサ等を用いて授乳のみ時とスマートフォン操作時の母親の体勢や授乳中の乳児の視線や動作の変化を比較した.
著者
阿部 博行 菊池 慎一 吉田 孝行 山口 尚之 酒井 敏行
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.553-557, 2019 (Released:2019-06-01)
参考文献数
12

トラメチニブは抗がん剤として世界で初めて承認されたMEK阻害薬である。しかし,我々は始めからMEK阻害薬の開発を目指したわけではない。細胞周期抑制因子p15INK4bの発現を上昇させる化合物探索のために開発したフェノタイプスクリーニングによってリード化合物を見出し,がん細胞増阻害活性を指標に医薬品として構造最適化することによってトラメチニブ創製に至った。後に,その標的分子はMEKであることを明らかにした。本稿では,first-in-classの分子標的薬トラメチニブの創薬研究とがん治療における臨床的意義について紹介する。
著者
林 典雄 吉田 徹 見松 健太郎
出版者
日本腰痛学会
雑誌
日本腰痛学会雑誌 (ISSN:13459074)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.165-170, 2007 (Released:2008-01-22)
参考文献数
14

馬尾性間欠跛行を主訴に運動療法を実施した23例を対象とし,その効果について検討した.初診時実測した歩行距離に対し,硬膜管面積とわれわれが考案した腰椎後弯可動性テスト(PLF test)において,有意な正の相関を認めた.また22例に腸腰筋と大腿筋膜張筋に拘縮を認めた.われわれが行った,股関節ならびに腰椎の拘縮改善を目的とする運動療法は,21例(91.3%)に有効であり,初診時平均102.1 mの歩行距離が,1カ月後で8例(38.0%),2カ月後で15例(71.4%)で1 km以上の連続歩行が可能となった.その他の6例も,平均640 mの歩行が可能であった.股関節の拘縮の改善は,歩行時の骨盤前傾トルクの軽減ならびに腰椎過前弯の減少に寄与すると考えられた.また,腰椎後弯域の改善による動的pumping effectの促進は,硬膜外静脈叢の還流改善に作用し,歩行改善を得たと考察した.拘縮要素が存在する間欠跛行例では,2カ月程度を目処に運動療法を試みる価値があると考えた.
著者
漆畑 文哉 吉田 淳 平野 俊英
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
科学教育研究 (ISSN:03864553)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.174-186, 2022 (Released:2022-07-08)
参考文献数
29

To clarify the learning effect of classes using granular models, a model of concrete objects in which learners can represent and manipulate thermal phenomena dynamically, and an animation that shows the representational operations were created. Using these, we conducted a class on how water heats up (convection), analyzed the learners’ expressive manipulations to explain thermal phenomena, and investigated whether the convection concept was formed. The results indicated that some learners changed their convection concept into a scientific interpretation after the explanatory activity using the model and animation. Therefore, the results suggest that learning to manipulate scientific representations using animation with models is effective in promoting the elaboration of convection concepts.
著者
吉田 稔 久保 涼子 三迫 智佳子 鈴木 志乃舞 工藤 綾香 蜂谷 紀之 安武 章
出版者
一般社団法人 日本微量元素学会
雑誌
Biomedical Research on Trace Elements (ISSN:0916717X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.170-175, 2013 (Released:2013-10-29)
参考文献数
13

This survey aimed to determine the levels of mercury in the scalp hair of residents of Hachinohe City in relation to their fish/seafood consumption to assess the risk of methylmercury exposure among the population. A total of 363 individuals (73 males and 290 females) residing in Hachinohe City (Aomori, Japan) provided scalp hair samples and completed a questionnaire. The geometric mean levels of mercury in the scalp hair were 2.52 and 1.91 μg/g in males and females, respectively, and 1.36 μg/g in females aged 15-49 years (n=80). The percentage of females of this generation with a hair mercury level above 2.2 μg/g (corresponding to the WHO's provisional tolerable weekly intake for methylmercury) was 21%, which was lower than the mean of 25% for residents of 10 regions across Japan. The Hachinohe residents consumed a mean of 108 g/day of fish/seafood (which was higher than the mean of 80.2 g/day for the overall Japanese population), consisting mainly of salmon, squid, mackerel, saury, and Atka mackerel. These results demonstrated that the hair mercury level of the residents of Hachinohe City was not so high as the higher consumption of fish/seafood compared with the national average, indicating that the risk of methylmercury exposure through increased fish/seafood consumption among Hachinohe City residents is not particularly high compared with the national level.
著者
吉田 航太
出版者
日本文化人類学会
雑誌
文化人類学 (ISSN:13490648)
巻号頁・発行日
vol.83, no.3, pp.385-403, 2018 (Released:2019-05-12)
参考文献数
31
被引用文献数
1

本論文は、インドネシア東ジャワ州スラバヤ市で日本人技術者が開発した廃棄物堆肥化技術の事例を通じて、インフラ/バウンダリーオブジェクトというテクノロジーの二つのモードの差異を明らかにするものである。スーザン・L・スターのインフラストラクチャーの議論はバウンダリーオブジェクト論と連続性があり、前者は後者の発展型とされる。しかし、両者の間には解釈の対象としての象徴と、実践の対象としての道具という断絶が存在しており、インドネシアでの開発事業で 新たに誕生した生ゴミ堆肥化技術の事例の分析からこのことを明らかにする。スハルト政権崩壊後に発生した埋立処分場の反対運動をきっかけに、スラバヤ市は深刻なゴミ問題に悩まされた。これに取り組む開発プロジェクトが開始され、日本人技術者が開発したコンポスト手法がひとつのテクノロジーとして結実するに至った。このテクノロジーはスムーズに開発に成功したが、その後のインフラ化で困難に直面している。この事例から、スター的な協働のネットワークが長期の時間性に耐えなければならないという問題を抱えていること、テクノロジーが確固とした象徴的価値を獲得しなければならないことを議論する。
著者
冨岡 公子 山田 全啓 宇野 健司 荒木 勇雄 廣畑 弘 永井 仁美 吉田 英樹 髙山 佳洋 今井 雅尚 濱田 昌範 松本 政信
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.69, no.6, pp.473-482, 2022-06-15 (Released:2022-06-15)
参考文献数
13

目的 近畿圏内の各保健所が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の第1波,第2波にどのように対応したかについて調査することを目的としたアンケート調査のデータを分析し,今後のパンデミック発生時の資料として提示する。方法 近畿圏内の63保健所を対象とし,近畿保健所長会が作成した「新型コロナウイルス感染症対策調査票」を2020年9~10月にメールで送付・回収した。COVID-19に関連した業務・医療資源・相談,業務継続計画における最繁忙期の業務見直し状況,COVID-19対応部署における増員数,感染症対策の課題とグッドプラクティス等を質問した。保健所管内人口(以下,人口規模)を3分位によって3区分し,COVID-19関連業務などと人口規模との関連を検討した。結果 57保健所から回答を得た(回答率90.5%)。COVID-19関連業務に関して,受診調整,検体搬送,患者搬送は,9割以上の保健所が担っていた。最も少なかった訪問検体採取においても77.2%であった。いずれのCOVID-19関連業務においても,保健所の人口規模とは関係なく役割を担っていた。業務継続計画における最繁忙期の業務見直し状況に関して,医療法に基づく立入検査とがん患者サロン・難病患者会は,5割以上の保健所が中止し,保健所の人口規模とは関係なく業務を中止していた。保健所や市町村が主催する研修会や会議,健康づくり事業,市町村職員の人材育成,学生実習受入は全体で2割程度が中止していたが,保健所主催の研修会や会議,地域医療構想調整会議,市町村職員の人材育成に関しては,保健所の人口規模が大きくなるほど中止した保健所が多くなる傾向がみられた。結核患者に関する事業や感染症発生動向調査事業を中止した保健所はなかった。結論 COVID-19パンデミックによって,保健所ではCOVID-19関連業務を担うことになり,半数以上の保健所が医療法に基づく立入検査や患者会を中止し,人口規模が大きい保健所では健康増進に関する市町村保健師等への教育や研修を中止する傾向があったが,コロナ禍においても,結核などのその他感染症対策は中止できなかった。感染症対策の課題において,多くの保健所が人員不足や大きな業務負担を指摘していた。COVID-19に関わる保健所業務の軽減および応援支援体制の整備を図るとともに,保健所の体制を強化・整備する必要がある。
著者
松谷 祐希 桐谷 能生 下田 誠 宮嶋 久幸 宮本 憲隆 吉田 圭吾 吉田 修二
出版者
公益社団法人 日本工学教育協会
雑誌
工学教育 (ISSN:13412167)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.3_2-3_7, 2019 (Released:2019-05-31)
参考文献数
22

In this study, a new education teaching material using a steam locomotive model to acquire technical skills of high accuracy and high-density assembly is proposed. The proposed teaching material is processed by hand finishing, a turning process, and welding. In this teaching material, the machining and assembling accuracy are evaluated by pressure values, which are required for running, as well as the travel distance of the steam locomotive model. Thus, this teaching material can be used for introductory education for acquiring manufacturing technologies, because the importance of the machining and assembling accuracy can be understood.
著者
三橋 亮太 水野 壮 佐伯 真二郎 内山 昭一 吉田 誠 高松 裕希 食用昆虫科学研究会 普後 一
出版者
[日本食品衛生学会]
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.410-414, 2013 (Released:2014-05-12)

福島県では福島第一原子力発電所事故が発生してから,イナゴの放射線汚染を懸念してイナゴ食(イナゴを採集し,調理して食べること)を楽しむ人が減少した。そこで2011年,2012年に福島県各地で採取したイナゴに含まれる放射性セシウムを測定したところ,134Csと137Csの合計放射能濃度は,最高で60.6Bq/kgであり, 2012年に設定された食品中の放射性物質の新たな基準値である100Bq/kgを下回ることが示された。さらに,イナゴは一般的な調理過程を経ることによって,放射能濃度が15.8Bq/kg以下,未処理時の1/4程度まで低下することが示された。
著者
吉田 尚弘 土山 寿志 中西 宏佳 辻 国広 冨永 桂 松永 和大 辻 重継 竹村 健一 山田 真也 津山 翔 片柳 和義 車谷 宏
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.58, no.12, pp.2449-2457, 2016 (Released:2016-12-20)
参考文献数
20

背景:白色球状外観(white globe appearance;WGA)は,狭帯域光観察併用拡大内視鏡検査(magnifying endoscopy with narrow-band imaging;M-NBI)で認識されることのある小さな白色球状物のことである.WGAは胃癌と低異型度腺腫を鑑別することのできる新しい内視鏡的マーカーであることが報告されている.しかし,胃癌と胃炎を含む非癌病変との鑑別にWGAが有用であるかどうかは不明である.方法:胃癌と非癌病変におけるWGAの頻度を比較するために,内視鏡検査を受ける予定の患者994人を対象とした前向き研究を計画した.すべての患者に対して白色光観察で胃癌が疑われる標的病変の有無を評価し,標的病変を認めた場合にはさらにWGAの有無をM-NBIで評価した.すべての標的病変に対して生検または切除を行い,病理学的に評価した.主要評価項目は胃癌と非癌病変におけるWGAの頻度,副次評価項目はWGAの胃癌診断における診断能とした.結果:標的病変として188病変(156人)が最終的に解析され,70病変が胃癌で118病変が非癌病変であった.WGAの頻度は,胃癌で21.4%(15/70),非癌病変で2.5%(3/118)であり,有意に胃癌で高かった(P<0.001).WGAの胃癌診断における正診割合は69.1%,感度は21.4%,特異度は97.5%であった.結論:胃癌におけるWGAの頻度は非癌病変のものに比べて有意に高かった.胃癌診断におけるWGAの特異度は高く,WGAの存在は胃癌診断に有用である.