著者
髙間 晴之 太田 明雄 布施 純郎 久保田 章 小花 光夫 関口 信哉 田中 逸
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.10, pp.753-758, 2013-10-30 (Released:2013-11-07)
参考文献数
19

HMG-Co A還元酵素阻害薬が糖代謝に及ぼす影響を検討する目的で,非肥満の高LDLコレステロール血症を合併する2型糖尿病患者を対象に,ロスバスタチン2.5 mgとアトルバスタチン10 mgのクロスオーバー試験を行った.薬剤開始前および両剤開始3カ月後に,75 g-OGTTを施行して糖代謝の指標を比較した.その結果,FPGとHbA1cは開始前と各薬剤投与後の変化はなかったが,グリコアルブミンはアトルバスタチン服用後で有意に上昇した.75 g-OGTTから得られる血糖とインスリンの変動曲線下面積,HOMA-Rとwhole body insulin sensitivity index,およびinsulinogenic indexは各薬剤投与前後や両剤間での有意差はなかった.さらに膵β細胞機能を示すdisposition indexも投与前後や両剤間での有意差を認めなかった.以上から少なくとも低用量ロスバスタチン(2.5 mg)は非肥満2型糖尿病の短期間の血糖コントロールに影響しない可能性が示唆された.
著者
浜 夏樹 黄 炎 兼光 秀泰 大山 裕二郎 馬 強 羅 波 李 果 太田 宜伯 楠 比呂志 川上 博司 Tomas J. ACOSTA 奥田 潔 王 鵬彦 石川 理
出版者
Japanese Society of Zoo and Wildlife Medicine
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.119-123, 2009 (Released:2018-05-04)
参考文献数
13
被引用文献数
1

神戸市立王子動物園のジャイアントパンダにおいて2007年の発情時に新鮮および冷蔵保存した精液を用いて3日間連続で人工授精(AI)を行った。AIの適期は尿中エストロングルクロニド濃度の測定から推測した。人工授精後は尿中プレグナンジオールグルクロニド(PdG)濃度の変化を監視した。PdG濃度は妊娠後期に過去6年間と比べると異常な変動を示した。結果的に最終AI後137日目に破水し,さらにその9日後に死産した。
著者
道下 竜馬 太田 雅規 池田 正春 姜 英 大和 浩
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.11-20, 2016 (Released:2016-02-18)
参考文献数
30
被引用文献数
1 2

目的:近年,運動負荷試験中の過剰な収縮期血圧の上昇が将来の高血圧や心血管病の新規発症と関連することが多数報告されている.本研究では,勤労者の職場環境や労働形態,労働時間,睡眠時間,休日数と運動負荷試験中の収縮期血圧の反応との関係について横断的に検討した.対象と方法:某市の健康増進事業に参加した者のうち,安静時血圧が正常であった労働者362名(男性79名,女性283名,平均年齢49.1歳)を対象とした.自転車エルゴメータを使用して3分毎に10–30 wattsずつ漸増する最大下多段階漸増運動負荷試験を実施し,各負荷終了1分前に血圧を測定した.Framingham Studyの基準に準じ,運動負荷試験中の収縮期血圧の最大値が男性210 mmHg以上,女性190 mmHg以上を過剰血圧反応と定義した.また,自記式質問票を用いて,職場の有害環境や労働形態,労働時間,睡眠時間,休日数,通勤時,仕事中の身体活動時間,余暇時の運動時間について調査した.結果:362名中94名(26.0%)に運動負荷試験中の過剰な収縮期血圧の上昇が認められた.有害環境や労働時間,睡眠時間,休日数,通勤時の身体活動時間別による過剰血圧反応発生の調整オッズ比について検討したところ,過剰血圧反応発生と関連する要因は,労働時間が1日10時間以上,睡眠時間が1日6時間未満,休日数が週1日以下であった.労働時間,睡眠時間,休日数を3分割し,それぞれの組み合わせによる過剰血圧反応発生の調整オッズ比について検討したところ,労働時間が長く,睡眠時間,休日数が少ないほど,過剰血圧反応発生の調整オッズ比が有意に高かった.まとめ:本研究の結果より,労働時間が長く,睡眠時間や休日数が少ない勤労者は,将来の高血圧や心血管病発症,過労死防止のため,日常生活や職場,運動負荷時の血圧変動を把握することが重要であると考えられる.
著者
坂本 信道 西村 慎太郎 三ツ松 誠 鈴木 喬 柏原 康人 小山 順子 中川 博夫 小林 健二 三野 行徳 有澤 知世 恋田 知子 荒木 優也 太田 尚宏
出版者
人間文化研究機構国文学研究資料館
雑誌
国文研ニューズ = NIJL News (ISSN:18831931)
巻号頁・発行日
no.50, pp.1-16, 2018-01-24

●メッセージ平安時代人の散歩――国際化と辞書――●研究ノート明治27年の長塚村大字渋川の人びと――原発事故帰還困難区域の歴史資料を読む――平田国学と和歌●書評ブックレット〈書物をひらく〉2入口敦志著『漢字・カタカナ・ひらがな 表記の思想』ブックレット〈書物をひらく〉5恋田知子著『異界へいざなう女 絵巻・奈良絵本をひもとく』●トピックス「ないじぇる芸術共創ラボ NIJL Arts Initiative」について第10回日本古典文学学術賞受賞者発表第10回日本古典文学学術賞選考講評バチカン図書館所蔵マリオ・マレガ収集文書群の調査と活用 ローマでのくずし字講座と講演会の開催について大学共同利用機関シンポジウム2017 「研究者に会いに行こう!――大学共同利用機関博覧会――」平成29年度「古典の日」講演会第41回国際日本文学研究集会総合研究大学院大学日本文学研究専攻の近況●表紙絵資料紹介武蔵国多摩郡連光寺村富沢家文書「諸用扣(留)」
著者
望月 明義 伊藤 哲也 会田 仁 山本 和治 浅川 潔 太田 信行
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.141-144, 2016-12-22 (Released:2017-06-09)
参考文献数
10

長野県安曇野市の犀川で越冬する水鳥のうち,眼球突出を示した個体が2010年から5年間観察された。環形動物門ヒル綱に属するTheromyzon sp. がコハクチョウの腫大した眼部から採集されたが,血液が充満し,状態不良のため種は同定できなかった。水鳥がねぐらとする池において,ミズドリビル(T. tessulatum)の生息が確認されたことから,水鳥の眼球突出は本種ヒルの寄生によるものと考えられた。
著者
太田 龍一 金子 惇
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.143-149, 2017-09-20 (Released:2017-09-29)
参考文献数
19

目的:日本において人口の高齢化に伴う住民の健康問題の変化を調べた研究はない.プライマリ・ケア国際分類第2版(ICPC-2)によって明らかにされた現在の健康問題と先行研究を比較しその変化を考察する.方法:沖縄県離島で後ろ向きオープンコホート研究を行い受診患者すべての健康問題についてICPC-2を用いて集計した.また1990年に出版されたプライマリ・ケア健康問題国際分類注解第2版(ICHPPC-2 defined)を用いた同地域の健康問題のデータと比較検討した.結果:1年間で4660件の受診があり,15歳未満が826件,15-64歳が2146件,65歳以上が1688件であった.本研究は先行研究と比較しL筋骨格,S皮膚,A全身及び臓器が特定できないものの頻度が高かった.本研究で診療の包括性の指標である全健康問題の上位50%以内に含まれる健康問題の種類が多かった.結論:本研究において沖縄県の離島診療所では整形疾患や皮膚疾患へのニーズが高まり,診療の包括性が高まっていることが示唆された.
著者
松下 裕香 太田 博樹 WELKER Barbara PAVELKA Mary 河村 正二
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement 第27回日本霊長類学会大会
巻号頁・発行日
pp.36, 2011 (Released:2011-10-08)

L-Mオプシンの対立遺伝子分化による種内色覚多型が一般的に存在する新世界ザルの中で、唯一ホエザル属は狭鼻猿類と同様にL-Mオプシンの遺伝子重複によって、種内で一様な3色型色覚を有していると考えられてきた。そのためホエザルは霊長類の3色型色覚進化を論じる上で重要な存在となっている。しかしこれまでに野生集団を対象にその色覚多型性を検証した例はなく、実際に集団内で一様な3色型色覚を有しているかは不明だった。そこで本研究ではホエザル野生集団に対し、L-Mオプシン遺伝子の多型性を検証することを目的とした。 そのために、まずコスタリカ共和国グアナカステ保護区サンタロサ地区で採集されたマントホエザル(Alouatta palliata)3群33サンプル及びベリーズ国モンキーリバー地区で採集されたグアテマラホエザル(A. pigra)5群44サンプルの糞試料からDNAを抽出した。次にLまたはMオプシン遺伝子の欠失した個体を探索するため、L及びMオプシンの最大吸収波長に大きく関与するアミノ酸サイトの存在するexon 5の塩基配列解析を行った。各サンプルについてexon 5のPCRを行ったところ、マントホエザル11サンプル、グアテマラホエザル7サンプルでexon 5配列の増幅に成功し、それらにつきダイレクトシークエンシングとクローニングによる塩基配列の確認を行った。 その結果、LまたはMオプシンの欠失した個体は存在しなかったが、マントホエザルの1個体及びグアテマラホエザルの3個体でexon 5がLとMのhybridになっていることを発見した。このうち、視物質の最大吸収波長に関わる変異をマントホエザル1個体、グアテマラホエザル2個体に検出した。今後さらにサンプル規模を増やし、また、検出されたhybridオプシンがホエザルのL及びMオプシンの最大吸収波長からどの程度シフトするのかをin vitroでの視物質の再構成による吸収波長測定を行うことで検証していく必要はある。しかし塩基配列解析に用いたものがわずか18サンプルにも関わらず、4個体のhybridオプシン遺伝子を持つ個体が検出されたことから、ホエザルがこれまで考えられていたように種内で一様な3色型色覚を有しているのではなく、種内に高頻度で色覚多型が存在する可能性が高いことが考えられる。
著者
太田 喜元 秋田 求
出版者
近畿大学生物理工学部
雑誌
近畿大学生物理工学部紀要 = Memoirs of the School of Biology-Oriented Science and Technology of Kinki University (ISSN:13427202)
巻号頁・発行日
no.15, pp.1-13, 2005-03-01

古代ギリシアの医師ヒポクラテス(BC460頃-377頃)は、医術に携わることを志す者が立てる誓いを定めた。「医術の神アポロン、アクレピオス、ヒギエイア、バナケイアおよびすべての神々に誓う、私の能力と判断に従ってこの誓いと約束を守ることを」という言葉で始まるヒポクラテスの誓い(Hippocratic oath)の中に、「私の能力と判断に従って患者に利益すると思う医術の療法を用い、悪くて有害と知る方法を決して用いない」という言葉がある。すなわち、生命はかけがえのないものであり、生命に加えるすべての行為から生じる利益は害悪を上回るものでなければならないということである。この誓いは、生命体に影響を及ぼす医術という行為にっいて、倫理的な配慮が必要であることを古代ギリシアの時代から医師という専門家が認識していたことを示すものである。現代に至り、生命の神秘さを遺伝子のレベルで解明し、更には遺伝子を取り出したり組み換えたりする技術を手にした科学者は、古代ギリシアの医師と同じように、生命体に影響を及ぼす行為がもたらす利益(善)と弊害(悪)のバランスについて真剣に考えねばならない。特に農作物は人類を養う食糧の根幹であって生命体に直接影響するがゆえに、その遺伝子組換えにっいては注意深い検討が必要である。また、例え善を目的として研究が行われたとしても、遺伝子組換え作物の是非に対する最終的な判断は、消費者が受け入れるか否かである。消費者がその是非についての判断を下すためには、正しい情報が消費者に提供されなければならない。特に、遺伝子組換え技術を用いて研究し、かつ学生を教育する立場にある者には、安全性や倫理的側面について十分に考え、学生の教育を通じて世の中に正しい情報を提供する責務がある。本論文では、遺伝子組換え作物とはどのようなものであるか、そして遺伝子組換え作物栽培の現状について簡単に述べた後に、遺伝子組換え作物に対する倫理的側面-特に安全性、そして将来に向けての展望-について考察する。
著者
石津 日出子 大鹿 淳子 代継 由紀 竹井 よう子 藤野 吉世 平岡 英子 中原 満子 金谷 昭子 大江 隆子 原 知子 藤井 美紗子 嘉ノ海 有紀 梶本 五郎 深見 良子 的場 輝佳 高村 仁知 木村 雅美 湯川 夏子 百本 紀子 堀内 攝之 熊谷 篤呼 大山 美紀代 大重 淑美 太田 馨 富山 久代 福井 広子 真砂 佳美
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.304-309, 1993-11-20
被引用文献数
8

油脂の風味の強さを5段階表示したものを対照にし、180℃で大豆油を加熱し、同じような5段階の風味をもつまでに要した加熱時間、ならびに各段階のフライ油で揚げたポテトについて官能検査を行い、油脂と揚げポテトの風味を比較した。1.第1回目の合同実験では、フライ油の風味の点数3(油っぽい、油臭い、重い)に達するまでに要した加熱時間は、最も早い機関で16時間、遅い機関で50時間で、その差は大きかった。2.5段階表示の油脂の風味を経験した後の第2回目の合同実験結果では、フライ油の風味3に達するまでの時間は、16時間から22時間内で、第1回目の合同実験に比べ機関間のバラツキは非常に小さくなった。3.風味3のフライ油のアニシジン価は7機関の平均で150、カルボニル価は13.7であった。4.風味5(新鮮油)、4、3のフライ油で揚げたポテトの味、香りは、それぞれフライ油の5、4、3の風味とよく似た味、香りを示した。揚げポテトの風味が明らかに低下する時は、風味3のフライ油で揚げた時である。したがって、風味の良い、おいしい揚げポテトを作るためには、フライ油の風味の点数3が使用限界としての目安にできると考えた。
著者
太田 良隆
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.133-139, 2013-06-01 (Released:2013-06-01)
参考文献数
9
被引用文献数
1

日米欧中韓の五大特許庁は,特許分類に関する取り組みとして共通ハイブリッド分類(CHC)プロジェクトを実施している。本プロジェクトは,各庁の既存の内部分類(JPOのFI・Fターム,EPO・USPTOのCPC)を調和するものであり,国際特許分類(IPC)を迅速に詳細化することが期待されている。日本国特許庁はその推進のために多くの労力を費やしてきたが,その進捗は芳しいとは言えない。本稿では,このようなCHCプロジェクト等の特許分類に関する最近の動向を説明する。
著者
西村 清和 尼ヶ崎 彬 長野 順子 相澤 照明 山田 忠彰 中川 真 渡辺 裕 津上 英輔 青木 孝夫 外山 紀久子 大石 昌史 小田部 胤久 安西 信一 椎原 伸博 上村 博 木村 建哉 上石 学 喜屋武 盛也 東口 豊 太田 峰夫
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

本研究は従来自然美論、風景論、環境美学、都市美学という評語のもとで考えられてきたさまざまな具体的、個別的諸問題領域を、日常生活の場において企てられたさまざまな美的実践としてとらえなおし、あらたな理論化を目指すものである。具体的には風景、都市景観、森林、公園、庭園、人工地盤、観光、映画ロケ地、遊芸、雨(天候)、清掃アートなど多様な現象をとりあげて分析し、その成果を『日常性の環境美学』(勁草書房、2012)として刊行した。
著者
太田 聡一郎
出版者
公益財団法人 史学会
雑誌
史学雑誌 (ISSN:00182478)
巻号頁・発行日
vol.129, no.11, pp.37-60, 2020 (Released:2021-11-20)

本稿は、毒ガスの一種である催涙性ガスの戦間期日本における使用事例から、警察概念の援用が戦時国際法解釈・運用にどのような影響を与えたのか考察した。 第一次世界大戦後の国際社会では、毒ガスの戦時使用を国際条約で禁止しようと改めて試みられる一方で、治安維持やデモ制圧など催涙性ガスの警察使用がアメリカを中心に普及していった。日本陸軍はアメリカ軍人の議論の受容や一九三〇年の日本国内における催涙性ガスの警察使用への導入を通じ、催涙性ガスの警察使用を例外的に人道的と見做す発想を定着させた。 一九二五‐三四年に開催されたジュネーヴ一般軍縮準備会議・軍縮会議では、催涙性ガスの違法性や警察行為の位置づけが初めて問題化した。参加国の大多数が催涙性ガスを含む毒ガスの包括的禁止を求めたが、アメリカは催涙性ガス使用、特に警察使用の特例化を主張し、戦時使用は禁止する一方警察使用は容認するという催涙性ガスの特異な位置づけが条約案として確立していった。 軍縮会議と同時期に進行した第一次上海事変・満州事変において、日本陸軍は戦時国際法遵守の必要性と軍縮会議の議論との整合性を意識し、使用する化学兵器を煙幕に限局し対外的に声明するなど一定の配慮を行った。しかし関東軍‐陸軍中央は催涙性ガスの使用を「国内警察行為」と位置づけて法理的には問題ないと見なし、事変後満鉄警備などで実際に使用するようになる。また第一次上海事変の海軍や日中戦争の陸軍は、警察使用から戦時使用の合法性を導出することで催涙性ガス使用を正当化した。催涙性ガスの事例は、化学兵器を使いたいという陸軍内の軍事的要請と、催涙性ガスに関する国内外の法的位置づけを、事実上の戦争における「警察」概念の多義性によって合法的に結節しようとした試みだったと評価できる。
著者
山内 敏正 神谷 英紀 宇都宮 一典 綿田 裕孝 川浪 大治 佐藤 淳子 北田 宗弘 古家 大祐 原田 範雄 幣 憲一郎 城尾 恵里奈 鈴木 亮 坊内 良太郎 太田 康晴 近藤 龍也 日本糖尿病学会コンセンサスステートメント策定に関する委員会
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.91-109, 2020-03-30 (Released:2020-03-30)
参考文献数
158
被引用文献数
1

「糖尿病診療ガイドライン」は,エビデンスに基づく糖尿病診療の推進と糖尿病診療の均てん化を目的とし,3年ごとに改訂され刊行されている.「糖尿病診療ガイドライン」の策定は然るべきプロセスを踏まえる必要があり,糖尿病診療に必要なアップデート事項を毎年ガイドラインとして刊行することは困難である.そこで,日本糖尿病学会として,今後はアップデート事項を適宜コンセンサスステートメントとして刊行していくことを決定した.そのため,日本糖尿病学会理事会の下に,事務局長,事務局長代行並びに幹事からなる「コンセンサスステートメント策定に関する委員会」を設置し,本委員会が中心となって,アップデートの必要なテーマの選択とその執筆者を選び,理事会の承認を得た後に執筆を行った.本コンセンサスステートメントについては,全理事が査読者を務めた.また,他学会ガイドラインとの整合性の観点から,関連学会に外部評価もお願いした.本コンセンサスステートメントは,我が国における糖尿病診療に関する考え方について,テーマごとにできうる限り新しいエビデンスを含め,我が国の専門家間でのコンセンサスが得られた見解を取り纏めたものとご理解いただき,最善の糖尿病診療を行う上で活用していただきたい.糖尿病患者数は世界のどこよりも急速にアジア地域で増加しており,世界の糖尿病人口の3分の1はこの地域に集中していることから,我が国からコンセンサスステートメントをタイムリーに示していくことは,極めて重要な意義を有することと考えられる.今後,英語版の刊行も予定している.今回は,その第1報として,「糖尿病患者の栄養食事指導」をテーマにコンセンサスステートメントを作成した.我が国における糖尿病患者に対する栄養食事指導の考え方やその指導について,アップデートが必要なフォーカスすべき4つの内容(目標体重および総エネルギー摂取量の設定,炭水化物の摂取量,タンパク質の摂取量,管理栄養士による栄養食事指導)で構成している.主に糖尿病の管理を目的としたものであるが,タンパク質の摂取量においては,糖尿病性腎症やサルコペニア,高齢者の場合に関しても言及している.コンセンサスステートメントは,今後も糖尿病診療について適宜アップデートが必要なテーマを選び,できうる限り最新のエビデンスを盛り込みながら定期的に刊行していく.コンセンサスステートメントが,我が国での糖尿病診療の向上に貢献することを期待するとともに,新しいエビデンスを加えながら,より良いものに進化し続けていくことを願っている.
著者
林 真範 太田 郁
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.188-195, 2019 (Released:2019-06-20)
参考文献数
27
被引用文献数
4

【目的】屋内歩行自立が予測される脳卒中片麻痺患者の歩行自立までの期間を予測すること,および交差妥当性を検証し臨床応用が可能か検証すること。【方法】対象は脳卒中片麻痺患者60 名。回復期リハビリテーション病棟入棟時の評価項目を用い,病棟歩行自立までの期間を目的変数とする重回帰分析を行った。得られた重回帰式を用い,入棟時期が独立した脳卒中片麻痺患者19 名で歩行自立までの予測日数と実測日数の有意差を確認し,交差妥当性を検証した。【結果】重回帰式の説明変数として下肢12 段階片麻痺回復グレード,Motor Functional Independence Measure が採択された。入棟時期が独立した集団を用いて予測日数と実測日数を比較した結果,有意差を認めず高い相関を示したことから,当該病院の対象においての交差妥当性が支持された。【結論】当該病院における歩行自立までの重回帰式の構築と臨床応用は可能であることが示唆された。