著者
西村 直也 坪田 未希 奥 知久 森田 拓真 白澤 進一 小川 貴久
出版者
日本外科代謝栄養学会
雑誌
外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.73-78, 2023-04-15 (Released:2023-05-15)
参考文献数
19

【目的】大腿骨近位部骨折術後において, 炎症の高低によって入院中の体重変化に関わる栄養要因が異なるかどうかを明らかにする.  【対象および方法】当院にて大腿骨近位部骨折に対し手術を施行した60歳以上の223名を対象とした. 術後7±2日目のCRP値をカットオフとして, 高炎症群 (CRP≧3mg/dL), 低炎症群 (CRP<3mg/dL) の2群にわけ, 多変量回帰分析により, 術後1週間の三大栄養素摂取量それぞれの総エネルギー比と術後1カ月後の体重変化との関連性を検討した.  【結果】平均年齢は85.1歳 (女性165名),低炎症群は148名, 高炎症群は75名にわけられた. 体重減少に関連する有意な要因として, 高炎症群では, 炭水化物と脂質摂取量が少ないこと, 低炎症群では, エネルギー充足率が低いことが認められた.  【結論】大腿骨近位部骨折の患者にとって, 炎症が高値である場合は炭水化物または脂質, 炎症が低値の場合は, エネルギー充足率が体重減少に影響していることが示唆された.
著者
神谷 智恵子 小川 美江子 大川 博徳
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.291-300_1, 1991-08-05 (Released:2009-12-11)
参考文献数
17
被引用文献数
3 3

シュウ酸カルシウムによる尿路結石症の発病予防の観点から, 愛知県及び京都府の茶道教授の飲茶量をアンケートにより調査すると共に, 茶のシュウ酸及びカルシウム含量を分析し, 両者のバランスを検討した. その結果, 1杯の飲茶によるシュウ酸摂取量に対するカルシウムの不足量はそれぞれ平均, 抹茶10.23mg, 紅茶5.26mg, 玉露2.21mg, 煎茶1.87mg, 番茶0.81mgであり, 飲茶によるこのカルシウムの不足量は計算上コップ1杯の牛乳に相当する.
著者
草野 佑典 太田 伸男 湯田 厚司 小川 由起子 東海林 史 粟田口 敏一 鈴木 直弘 千葉 敏彦 陳 志傑 草刈 千賀志 武田 広誠 神林 潤一 志賀 伸之 大竹 祐輔 鈴木 祐輔 柴原 義博 中林 成一郎 稲村 直樹 長舩 大士 和田 弘太 欠畑 誠治 香取 幸夫 岡本 美孝
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.123, no.6, pp.469-475, 2020-06-20 (Released:2020-07-01)
参考文献数
14

スギ花粉症に対する舌下免疫療法薬が2014年に発売されてから4シーズンが経過したが, 実臨床における診療の実態は不明な点が多い. 2016年, 2017年にも同様の調査を行い報告してきたが, 今回2018年花粉飛散シーズン後に, スギ花粉症に対する舌下免疫療法を開始してから1~4シーズン経過した患者431例を対象として, 服薬状況, 自覚的治療効果, 副反応, 治療満足度, 治療に伴う負担などについて自記式質問紙を用いたアンケート調査を行った. 年齢分布は10歳代と40歳代に二峰性の分布を示した. 自覚的効果については1シーズン目と比較して2シーズン目以降で治療効果を自覚していると回答した患者割合が高い傾向にあり, 治療効果を自覚するためには少なくとも2シーズンの治療継続が望ましい可能性が示唆された. 副反応については, 1シーズン終了群では23.4%の回答で認めたが2シーズン目以降は5.6%, 5.0%, 1.2%と減少する傾向が見られ, 1シーズン継続することができればそれ以降の治療継続に大きな影響を及ぼす可能性は低いと考えられた. 4シーズン目になると積極的に治療継続を希望しない患者がおり, 今後は治療の終了時期に関する検討が望まれる.
著者
小川 好美 朝井 均
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要 4 教育科学 (ISSN:03893472)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.1-20, 2006-09
被引用文献数
1

性教育を施行する場合,どの時期に誰が実施するべきかなど,いつも議論の絶えないところであるが,最近は「行き過ぎた性教育」などがマスメディアに取り上げられ話題になるといった状況もある。ところで,ドイツの性教育に関する教材などを日本でも見かけることがあるが,文化的背景等の異なるところで作られたものであるということも注意しておかなければならない。本研究は,日独の性教育に関する比較検討を行うことにより,日本の性教育を客観視し,長所の再発見や応用の可能性を探ることなどを目的としたものである。日独の青少年の性交状況を比較すると性交率はドイツのほうが高かったが性交経験率の推移はどちらも上がりつつある傾向が見られた。性に関して日本では友人の影響が強いのに対し,ドイツでは親の存在感が強かった。家庭内において性教育若しくは身体発育や性に関する話をすることがあるとしても,その内容が異なるのではないかということが考えられた。ドイツではBundeszentrale fr gesundheitliche Aufklrung(連邦教育センター)から性教育に関する多種類のパンフレットなどが発行されており,具体的な性行動などについても書かれているが,愛情や様々な心情から取り扱い,身体に関する基本的な知識など多面的に盛り込まれ,また読みやすいように工夫されているものであった。一方,わが国ではそのような種類の刊行物は皆無に等しいといわざるを得ない。文化的背景,歴史,教育システム,学校と家庭の関係などが異なるので,日本とドイツの学校での性教育を単純に比較することは大変難しいが,その中で日本の性教育を考える上での参考になる点は,学校と家庭での性教育の関係,保護者と子どものコミュニケーションとその信頼関係であり,愛情や人とのつながりを考えさせ,正しい情報をわかりやすく伝えるための資料や手段などは重要であろうと考えられた。When we performs sex education, there is a difficult problem who should carry it out in which time in usually. This study was aimed at we regarded Japanese sex education as objectivity by doing comparison examination about sex education of Japan and Germany, and investigating rediscovery of a good point and potency of application. German one was high in the sex rate, but determination stopping both was seen in the transition of coitus experience coefficient when compared the young sex situation of Japan and Germany. When was troubled about sex, for the partner whom a youth talked with, influence of a parent was strong for a thing with in Germany and many friends in Japan. Even if we put it in home and could have a talk about sex education or sex, it was supposed whether you were not considerably different in the contents at Japan and Germany. Because it is different from cultural background, history, an education system, a school in domestic reference, it is not easy to compare the sex education between Japan and Germany. A point to be useful for at the top that thought about Japanese sex education was a school and communication of reference of sex education at home, a protector and a child and the relationship of mutual trust , and it was thought so that a document or medium it was easy to understand right information, and to tell were important.
著者
小川 浩太
出版者
THE LEPIDOPTEROLOGICAL SOCIETY OF JAPAN
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.43-52, 2022-07-31 (Released:2022-09-09)
参考文献数
28

In the Japanese archipelago, more than 100 species of stray butterflies originating from across the sea have been recorded. Investigation of the origin of these stray butterflies is important in the area of insular biogeography because their migrations can provide opportunities to expand their habitat and affect the biological communities of the islands. An Achillides butterfly was collected in February 2020 as a stray butterfly in the Miyako Islands, where no Achillides butterflies are distributed. Achillides is a subgenus of the genus Papilio, commonly called swallowtail butterflies, and one of the most diverse clades of swallowtails. Since the subgenus consists of many similar species and subspecies, both genetic and morphological analyses were carried out to identify this specimen and to investigate the origin of the stray butterfly. Phylogenetic network analysis based on the ND5 sequence revealed that the butterfly is a member of the bianor-polyctor group. On the basis of fine-scale morphological comparison with the subspecies in the bianor-polyctor group, the stray butterfly was identified as the Chinese peacock Papilio bianor bianor Cramer, (1777), which originates from mainland China with the closest known records being found at a distance of 550 km from where this specimen was collected.
著者
安彦 鉄平 島村 亮太 安彦 陽子 相馬 正之 小川 大輔 新藤 恵一郎
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.25, no.6, pp.935-938, 2010 (Released:2011-01-28)
参考文献数
19

〔目的〕体幹と骨盤の動きを必要とする座位に着目し,骨盤の傾斜角度の違いが背筋群の筋活動に与える影響を検討した。〔対象〕腰痛の既往のない健常成人男性10名。〔方法〕測定肢位を骨盤軽度後傾位(以下後傾位)と骨盤軽度前傾位(以下前傾位)とし,課題を安静座位と腹部引き込み運動とし,肢位と課題の組み合わせの4条件下での腰部脊柱起立筋と腰部多裂筋の筋電図を導出した。課題間の比較は,一元配置分散分析後,多重比較検定を実施した。〔結果〕安静座位と腹部引き込み運動の課題において,多裂筋の筋活動は後傾位に対し前傾位で有意に増加したが,脊柱起立筋の筋活動に有意な差はなかった。これは骨盤前傾作用として多裂筋の筋活動が増加したと考える。〔結語〕前傾位は脊柱起立筋の筋活動を有意に増大することなく,選択的に多裂筋の筋活動を高めることができる姿勢と考える。
著者
小川 容子 嶋田 由美
出版者
岡山大学大学院教育学研究科
雑誌
研究集録 (ISSN:18832423)
巻号頁・発行日
no.161, pp.87-94, 2016

本研究は,大学生を対象に,短い旋律を記憶再認する際にどのようなリズム変容がおこるのか信号検出理論に則って検討したものである。実験に用いた旋律は,リズム(等拍・ぴょんこ)×歌詞(促音,撥音,拗音を含んだもの・促音,撥音,拗音を含まないもの)×歌詞のイメージ(動的・静的)×旋律構造(順次進行・跳躍進行)に配慮して作成した6種類の新規旋律である。実験1では音楽専攻学生と非音楽専攻学生を対象とした再認実験を,実験2では音楽専攻学生を対象に直後再認と遅延再認実験を実施した。実験1の結果から音楽専攻学生の方が非音楽専攻学生に比べて強い確信度を保持し高い正答率を獲得していること,両者とも「ぴょんこ」リズムの記憶が等拍リズムよりも不安定であることが明らかにされた。実験2の結果からは,直後再認の結果が遅延再認の結果を上回ること,直後再認時の「ぴょんこ」リズムの記憶が等拍リズムよりもきわめて不安定であることが認められた。音楽専攻の有無に関わらず,等拍リズムに比べて「ぴょんこ」リズムの記憶がかなり曖昧になることから,我が国の明治後期以降の唱歌調全盛期にみられる唱歌のリズム変容との関わりが,示唆された。
著者
和久 大介 穴田 美佳 小川 博 安藤 元一 佐々木 剛 Waku Daisuke Mika Anada Hiroshi Ogawa Motokazu Ando Takeshi Sasaki
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.144-150,

ユーラシアカワウソ(Lutra lutra)はユーラシア大陸に広く分布する中型食肉目である。本種には11の亜種がおり,欧州亜種L. l. lutra,東南アジア亜種L. l. barang,中国亜種L. l. chinensis などが国内外の動物園や水族館で飼育されている。欧州の動物園や水族館にはA-line(L. l. lutra)とB-line(L. l. lutraとL. l. barangが交雑した可能性がある系統)という2つのlineが存在し,日本の動物園や水族館にも導入されている。本来は同じ亜種内で繁殖がおこなわれるが,日本では本種の個体数が少ないためA-lineとB-lineで繁殖がおこなわれている。実際にB-lineが東南アジア亜種の遺伝子を持っているか評価がおこなわれ,B-lineとA-lineの間に違いがあることが示された。ただし先行研究では,解析配列が307bpと短いことが問題として上げられる。本研究ではミトコンドリア(mt)DNA Cytochrome bの全長配列(1140bp)をA-line,B-line各1個体,中国亜種2個体から決定し,先行研究で決定されたB-lineの配列を含む4配列を加えて配列比較,系統解析をおこなった。その結果,A-line,B-lineそれぞれが特徴的な変異サイトを示し,系統解析では先行研究と同じようにB-lineは中国亜種とクレイドを形成し,A-lineは欧州亜種独自のクレイドを形成した。よって解析したB-lineのmtDNAは東南アジア亜種に由来する可能性がある。2015年現在,日本のB-line個体は全て本研究で解析したB-lineの子や孫である。亜種間交雑が示唆された国内のB-lineは,本種の繁殖・維持に活用できるが,A-lineや中国亜種の系統維持に活用することはできない。
著者
大橋 弘史 佐藤 博之 國富 一彦 小川 益郎
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会和文論文誌 (ISSN:13472879)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.17-26, 2014 (Released:2014-02-15)
参考文献数
19
被引用文献数
1 5

A new safety concept in a high-temperature gas-cooled reactor (HTGR) was proposed to provide the most advanced nuclear reactor that exerts no harmful consequences on the people and the environment even if multiple failures in all safety systems occur. The proposed safety concept is that the consequence of the accidents is mitigated by the confinement of fission products employing not multiple physical barriers as in light water reactors, but only the cladding of fuel (i.e., the coating layers of the coated fuel particle). The progression of the events that lead to the loss or degradation of the confinement function of the coating layers (i.e., core heat up, oxidation of the coating layers, and explosion of carbon monoxide) is suppressed by only physical phenomena (i.e., the Doppler effect, thermal radiation and natural convection, formation of a protective oxide layer for coating layers of fuel, oxidation of carbon monoxide) that emerge deterministically as a cause of the events. The feasibility studies for severe events and related information revealed that the HTGR design based on this safety concept is technically feasible. This concept indicates the direction in which nuclear reactor research should be headed in terms of safety after the accident at the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant.
著者
道祖土 勝彦 雨宮 恵司 佐藤 秀人 岡部 顕史 小川 直人 釜谷 保志 木暮 一啓 西村 昌彦 奥川 光治 楠井 隆史
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.61, no.7, pp.629-636, 2012-07-05 (Released:2012-07-27)
参考文献数
26
被引用文献数
2 8

日本には毎年5から15万トンの海ゴミが漂着している.この漂着ゴミの70% がポリスチレン(PS)である.漂流・漂着PSは海洋環境でスチレンオリゴマー(SO)を発生すると予測される.本研究では,PS由来の化学物質/SOによる沿岸汚染を明らかにし,発生源に関する知見を得ることを目的に現地調査を行った.このためアジア大陸から発生した漂流プラスチックが漂着する代表的な島々である沖縄本島,八重山諸島(西表島・石垣島)において目視調査をすると共に調査地において海水,砂を採取した.採取した海水,砂の選択イオンモニタリング–ガスクロマトグラフィー/質量分析(SIM-GC/MS)からSO,[スチレンモノマー,フェニルエチレン(SM),スチレンダイマー,2,4-ジフェニル-1-ブテン(SD),スチレントリマー,2,4,6-トリフェニル-1-ヘキセン(ST)の混合物]が検出された.検出されたSOの最大成分はSTであり,海砂中で最大4400 ng/gのSTが検出された.検出されたSO組成は市販発泡ポリスチレン製品中のSO組成,精製ポリスチレン単独熱分解反応生成物のSO組成とほぼ同様の傾向であった.
著者
小川 重義
出版者
一般社団法人 日本数学会
雑誌
数学 (ISSN:0039470X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.34-45, 2001-01-30 (Released:2008-12-25)
参考文献数
29
著者
阿部 瑛紀子 奥田 和之 笠井 香里 小川 将史 東 良子 香田 祐樹 角坂 芳彦 蔦 幸治
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.66, no.6, pp.726-730, 2017-11-25 (Released:2017-11-30)
参考文献数
13

症例は53歳の男性。入院3日前より微熱,右側胸部痛があり近医を受診し様子を見ていた。入院当日の朝より四肢の冷感と関節痛の症状が現れ,近医を再度受診したが,全身チアノーゼと橈骨動脈触知微弱でショック状態と判断され,当院に救急搬送となった。入院時所見は全身チアノーゼが顕著,胸部CTで肺炎像があり尿中肺炎球菌抗原が陽性であった。肺炎球菌性肺炎とそれに合併する急性感染性電撃性紫斑病と診断され治療が開始された。早期の診断と適切な治療により,敗血症,播種性血管内凝固症候群からは救命し得た。しかし,紫斑は徐々に悪化傾向を辿り,四肢末端優位に水疱形成,表皮剥離,乾性壊死へと進行し,数回にわたって壊死組織のデブリードマンが施行されたが,進行する壊死を阻止することができず,最終的に左上肢以外の三肢の切断となった。肺炎球菌性肺炎に合併する電撃性紫斑病は主に脾摘などの免疫障害をもつ患者で多く,その死亡率も高い。今回健常人に発症し,また救命し得た稀な症例を経験した。脾摘などの免疫不全がない場合でも肺炎球菌による重症感染症を発症する可能性があることを念頭におき,臨床側との密接なやりとりが必要であると考えさせられた症例であった。
著者
小川 郁
出版者
一般社団法人 日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.37-44, 2021-02-28 (Released:2021-03-20)
参考文献数
43
被引用文献数
3 3

要旨: 超高齢社会を迎え, 認知症と加齢性難聴の増加が社会問題となっている。本稿では認知症予防に対する現状での政策について概説し, さらに認知症と加齢性難聴との関係, 認知症予防対策としての補聴器の効果について文献的に考察した。