著者
菊池 直子 佐々井 啓 久慈 るみ子 山岸 裕美子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.70, pp.299, 2018

<b>目的</b> 東日本大震災後,被災者の生活支援に関して様々な観点からの研究がなされてきたが,衣生活については十分にし尽くされているとは言い難い.そこで,今回は衣服が独自にもつ精神的機能に着目し,震災から6年以上が過ぎた今だからこそ可能な,衣服に対する「思い」を中心に据えた調査を行った.また,生活再建過程における手芸活動が果たした役割についても調査した.<br><b>方法</b> 釜石市の仮設団地内サポートセンター,および大槌町の仮設団地集会所において衣生活に関するインタビューを行った.インタビューの内容は,震災によって失われた服飾に対する思いや,衣服に対する考え方の変化などである.また,大槌町の「手作り工房おおつち」を対象に,手芸活動の契機や活動による生活の変化などについてインタビューを実施した.実施機関は2017年9月~10月である.<br><b>結果</b> 生活のすべてを流失した被災者の中には,あまりの喪失感から愛着や思いも全くないという回答があった.その一方,流失した衣服を諦められず何度も思い出すという回答もあった.震災から年数が経ち,高齢女性の服装が鮮やかな色調に変化したという回答が複数認められた.明るい気持ちになりたいという思いが服装に表れたと考えられる.また,手芸活動については,支援物資の衣服のお直しや布製の袋物が必要とされたことから始まったこと,徐々にコミュニティが形成されたこと,生きる活力につながったことなどが確認された.
著者
久蔵 孝幸 一條 美香 土田 佳織 山岸 紀
出版者
北海道大学大学院教育学研究院附属子ども発達臨床研究センター
雑誌
子ども発達臨床研究
巻号頁・発行日
vol.3, pp.29-34, 2009-03-25

久蔵ら(2008)においては、背景要因としてHFPDDが疑われ、かつ家庭内暴力や非行他の複合的な問題により家庭内養育が困難に至った男児10名について、WISC-IIIに見られる評価点のアンバランスが、その後の処遇との間に相関関係があることを示した。これは、認知的なアンバランスが大きいこと自体が養育環境の中での混乱要因の一つであるだろうという直感的な仮説を実証したものである。本論においてはサンプルとなる事例を増やし、その上で同様の傾向が見られることを示す。さらに子どもを家庭で養育するための困難要因が低減すると、この相関が減衰することを示す。
著者
板垣 幸樹 金 檀一 佐々木 恒弥 デブコタ ブミナンド 山岸 則夫
出版者
日本家畜臨床学会 ・ 大動物臨床研究会
雑誌
産業動物臨床医学雑誌 (ISSN:1884684X)
巻号頁・発行日
vol.2, no.4, pp.197-204, 2011-12-30 (Released:2013-05-17)
参考文献数
23
被引用文献数
2

2006年1月から2010年12月までの5年間に,肢骨折の治療を受けた子牛ならびに育成牛25頭についての臨床記録を整理した.症例は黒毛和種19例,ホルスタイン種5例,日本短角種1例で,性別は雄が13例,雌が12例であった.月齢は0~13.0カ月(平均3.4カ月)で,12例(48%)が1カ月齢以内であった.体重は23~300kg (平均105.9kg)で,15例(60%)が100kg以内であった.骨折の種類は,上腕骨の骨幹骨折が3例,橈尺骨の成長板骨折が3例,中手骨の骨幹骨折が7例ならびに成長板骨折が4例,大腿骨頚部骨折が2例,脛骨の骨幹骨折が3例,中足骨の骨幹骨折が3例であった.橈尺骨および中手骨の成長板骨折におけるSalter-Harris分類は,タイプⅠが3例,タイプⅡが3例,タイプⅢが1例であった.また,中手骨,脛骨もしくは中足骨の骨幹骨折症例のうち4例は開放骨折であり,重症度を示すGustilo分類は,タイプⅠが2例,タイプⅢaが1例,タイプⅢbが1例であった.治療として,プラスチックキャストによるフルリムキャストの外固定(FLC)を橈尺骨折3例,中手骨骨折10例.脛骨骨折1例,中足骨骨折2例の計16例に行った.上腕骨骨折3例にはタイプⅠ創外固定を単独もしくは髄内ピン固定との併用で行った.開放骨折の4例中3例と脛骨骨折の1例には,貫通固定ピン(スタイマンピン)とFLCの併用による外固定(TPC)を行った.大腿骨頚部骨折2例では,予後不良のため治療を行わなかった.転帰はおおむね良好であり,大腿骨頚部骨折の症例を除き,23例中20例(87%)が治癒した.
著者
山岸 伶 高田 哲司
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.1119-1128, 2019-04-15

知識照合型個人認証の脅威として推測攻撃が存在し,これはとりうる秘密情報から,攻撃者が利用者の秘密情報だと考える順序をつけ,その順に試行することでなりすましを試みる攻撃方法である.推測攻撃は,多くの利用者が設定している秘密情報を優先する傾向型推測攻撃と正規利用者の属性や好みに基づいて順序をつける個人情報型推測攻撃に分類される.推測攻撃は,秘密情報の偏りや利用者の個人情報に基づいた脆弱な秘密情報により可能となる.これらの脆弱な秘密情報は作成・記憶保持可能である点を重視する利用者の秘密情報設定戦略に起因する.本研究では,a)推測攻撃に対する安全性改善,b)秘密情報の記憶保持が可能,c)利用者が秘密情報を作成可能の3要件を満たす個人認証を目的とし,単語ぺアを秘密情報とする個人認証を提案する.単語ぺアを秘密情報とすることは選択する情報を2つに増やし,そのぺア間の関連も利用者が定義可能な点から,自由度が増加して推測攻撃に対する安全性が向上すると考えた.この提案に基づいてプロトタイプシステムを実装し,要件a)とb)の観点で評価実験を実施した.その結果,提案手法は70試行までは推測攻撃の成功例がなく,1,2週間隔での利用でも記憶保持が可能という結果を得た.
著者
山岸 治男
出版者
大分大学教育福祉科学部
雑誌
大分大学教育福祉科学部研究紀要 (ISSN:13450875)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.113-122, 2008-10

財政的に疲弊した米沢藩を上杉鷹山が立て直した史実については、今日広く知られるところとなった。特に経済人や行政関係のトップに評価され、今日の日本の行財政改革において、「鷹山に学べ」の声もあがっている。こうした評価の陰で、一般には十分認知されないが、鷹山の改革内容の一つに「福祉政策」の側面がある。この側面には、今ふうに換言すれば、人権尊重、弱者救済、住民参加等を基調とする「福祉政策」的発想がある。この発想こそが財政改革を成功させた要因である。The reform of the Yonezawa clan by Uesugi Yozan is widely known in Japan. He is especially highly-appraised for his approach for the reform by the economic world today. Then, if we take a closer look at it, we can notice that his reform includes an aspect of welfare policy as well. So we can set up the following keywords in the reform by Uesugi : Protection of human rights, Standing by the weak, and Citizen's participation in policy making.
著者
山岸 哲 藤岡 正博
出版者
The Ornithological Society of Japan
雑誌
(ISSN:00409480)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.91-96, 1986-02-25 (Released:2007-09-28)
参考文献数
14
被引用文献数
9 2

(1)1984年と1985年に長野県安曇野地方においてオナガの社会学的研究をしたさい,カッコウによる托卵が見られたので,その頻度とオナガの托卵への対応,カッコウの密度などについて調査した.(2)ほぼ全ての巣を発見できたオナガの3群の計41巣中31巣(75.6%)とその周辺の7群の計30巣中15巣(50.0%)でカッコウの卵が見つかった.全托卵例46巣中8巣では2個の,1巣では3個のカッコウ卵が産み込まれていた.(3)5月中旬に初卵が産まれた巣での托卵率(11.1%)はそれ以後に初卵が産まれた巣での托卵率(68.8%)よりも低かった.(4)産み込まれていたカッコウの卵の大きさ(23.4×17.4mm,n=13)は,オナガの卵(27.67×20.16mm,n=16)より小さかった.(5)カッコウとオナガの托卵-被托卵の関係は両種の長野県内での分布の拡大にともなって最近生じ,そのことが高頻度の托卵をもたらしているものと思われる.オナガが産卵期に長時間巣を留守にしてしまうこともカッコウに托卵されやすい要因の一つだろう.
著者
山岸 司 マハルジャン ラクスマン 赤木 泰文
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌. D, 産業応用部門誌 = The transactions of the Institute of Electrical Engineers of Japan. D, A publication of Industry Applications Society (ISSN:09136339)
巻号頁・発行日
vol.131, no.1, pp.76-83, 2011-01-01
参考文献数
17
被引用文献数
2 4

This paper focuses on a battery energy storage system that can be installed in a 6.6-kV power distribution system. This system comprises a combination of a modular multilevel cascade converter based on single-star bridge-cells (MMCC-SSBC) and multiple battery modules. Each battery module is connected to the dc side of each bridge-cell, where the battery modules are galvanically isolated from each other. Three-phase multilevel line-to-line voltages with extremely low voltage steps on the ac side of the converter help in solving problems related to line harmonic currents and electromagnetic interference (EMI) issues. This paper proposes a control method that allows each bridge-cell to independently adjust the battery power flowing into or out of each battery module. A three-phase energy storage system using nine nickel-metal-hydride (NiMH) battery modules, each rated at 72V and 5.5Ah, is designed, constructed, and tested to verify the viability and effectiveness of the proposed control method.
著者
山岸 明子
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂大学スポーツ健康科学研究 (ISSN:13430327)
巻号頁・発行日
no.11, pp.37-48, 2007-03

The purpose of this study was to examine the condition of solidarity in childhood by analyzing typical examples where children either could form solidarity or couldn't. We analyzed two contrasting novels describing boys' solidarity, William Golding's ``Lord of the flies'' and Kenzaburo Oe's ``Nip the buds, shoot the kids''. Results showed that the following six conditions had effects on forming solidarity; as to tasks which boys worked on, 1) cognitive adequacy of tasks, 2) degree of task sharing, 3) clarity of results, 4) degree of necessity for cooperation, and as to boys' endowments, 5) ego maturity of group members, especially their leader, and 6) experience of independence and strength of orientation toward it. It was also considered how adults can support them to form solidarity in difficult conditions.
著者
二宮 洸三 古賀 晴成 山岸 米二郎 巽 保夫
出版者
公益社団法人 日本気象学会
雑誌
気象集誌. 第2輯
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.273-295, 1984
被引用文献数
24

1982年7月23日九州西北部(長崎市近傍)で豪雨(~400mm/1日)が発生した。この豪雨の予報実験を13層42km格子プリミティブ&bull;モデルによって行なった。<br>九州北西部に集中した降水,その近傍における小低気圧と循環系の形成は24時間予報でかなり正確にシミュレートされた。しかし実況に比較すると予報雨量(~70mm/6時間)も低気圧の深まりも不充分である。特に22日12時(GMT)を初期値とする予報実験ではspin upに時間がかかり,はじめの12時間の降雨,低気圧発達が不充分であった。これらの問題は残るが,微格子モデルによる豪雨予報の可能性が示されたものと考える。非断熱過程の効果を確かめるためdry modelによる実験を行なうと,小低気圧の発達はなく上昇流も非常に弱い。降雨にともなう非断熱効果がさらに降雨を強めるという作用が推論される。<br>モデルの分解能増加の効果を見るため,11層63km格子,10層127km格子および8層381km格子モデルの予報と比較した。分解能増加によって降雨の集中性が強まるだけでなく,総(面積積算)雨量も増加する。分解能を増すと豪雨域周辺から豪雨域へ流入する水蒸気流束が増大するからである。<br>実験データにもとづき,豪雨域の水蒸気収支,対流不安定の生成,発散方程式および渦度方程式のバランスを解析した。<br>さらに1983年7月22~23日の山陰豪雨の予報実験を行った。東西にのびる豪雨域は予報されたが,予報された豪雨のピーク時と観測されたピークとの間には数時間の差があり,前線上の弱い小低気圧近傍の降雨は実際よりはやく予報され,一方小低気圧通過後の降雨は予報されなかった。小低気圧にともなわない降水が予報されなかった理由は現在不明である。
著者
河井 恒 戸田 智基 山岸 順一 平井 俊男 倪 晋富 西澤 信行 津崎 実 徳田 恵一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム = The IEICE transactions on information and systems (Japanese edition) (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.89, no.12, pp.2688-2698, 2006-12-01
参考文献数
43
被引用文献数
15

本論文では,ATR音声言語コミュニケーション研究所が開発した新しい音声合成システムXIMERAについて述べる.XIMERAは,これまでATRで開発された音声合成システムυ-Talk及びCHATRと同様,コーパスベース方式を採用している.XIMERAの特長は,(1)大規模な音声コーパス(日本語男声110時間,日本語女声59時間,中国語女声20時間,それぞれ単一話者),(2)HMMを用いた韻律パラメータのモデル化及び生成,(3)知覚実験に基づく素片選択コスト関数の最適化,である.XIMERAの性能を評価するため,市販の音声合成システム10製品と合成音声の自然性を比較したところ,XIMERAが他のシステムより優れていることが示された.
著者
全 炳河 大浦圭一郎 能勢 隆 山岸 順一 酒向慎司 戸田 智基 益子 貴史 ブラック アラン 徳田 恵一
雑誌
情報処理学会研究報告音声言語情報処理(SLP)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.129(2007-SLP-069), pp.301-306, 2007-12-21

近年,隠れマルコフモデル (HMM) に基づく統計的パラメトリック音声合成方式が注目されている.本方式では,音声スペクトル・励振源・継続長がコンテキスト依存 HMM により同時にモデル化される.音声合成時は,合成したい文章に対応する HMM からの出力確率が最大となるよう,継続長・スペクトル・励振源系列を決定した後,音声合成フィルタを用いて波形が出力される.2002 年より我々は,HMM に基づく音声合成のための研究・開発ツール「HMM 音声合成システム(HTS)」を,オープンソースソフトウェアとして公開してきた.本報告では,その最新の開発状況と今後の予定について述べる.
著者
山岸 宏光 中筋 章人 野崎 保 平野 吉彦 中川 渉 安田 匡 棚瀬 充史 須藤 宏 三戸 嘉之 永野 統宏 小野 雅弘 安田 幸弘 濱 康之
出版者
一般社団法人日本応用地質学会
雑誌
応用地質 (ISSN:02867737)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.192-202, 2007-10-10
被引用文献数
1 2

平成19年7月16日午前10時13分,新潟県中越沖の深さ17kmを震源とするM6.8の地震が発生し,新潟県柏崎市,長岡市,刈羽村,長野県飯綱町で震度6強の大きなゆれを観測するとともに,各地で大きな被害が発生した.日本応用地質学会では,いち早く先発隊として野崎北陸支部副支部長が17日に現地調査を開始し,22日にはその結果を速報としてホームページ上に公開した.ついで北陸支部(山岸支部長)が主体となり,学会本部の新潟県中越地震による土砂災害研究小委員会(千木良委員長)が支援する形で,現地調査を行うことが決定し,調査団を募ったところ13名のメンバーが参集した.現地調査は,8月3日に猛暑(36℃)の中で行われ,13日にはその成果をホームページに公開した.本報告は,今回行なった現地調査の中から,地震災害の代表的現象である液状化・斜面崩壊・地すべりなどを対象に,その状況と発生メカニズムについて検討した結果を報告するものである.
著者
西原 健司 山岸 功 安田 健一郎 石森 健一郎 田中 究 久野 剛彦 稲田 聡 後藤 雄一
出版者
Atomic Energy Society of Japan
雑誌
日本原子力学会和文論文誌 (ISSN:13472879)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.247, 2012 (Released:2012-08-15)

日本原子力学会和文論文誌 Vol. 11, No. 1 (2012), pp.13-19   著者の申し出により,14–16頁の Table 4, 7(1/2), 7(2/2)に誤りがありましたので,PDFの通り訂正いたします。