著者
小山 豊 山岸 淳 宍倉 豊光 深山 政治 武市 義雄
出版者
千葉県農業試験場
巻号頁・発行日
no.27, pp.169-183, 1986 (Released:2011-03-05)

オモダカの防除法確立のため,その生態的特性について検討を行った。1. 出芽特性 (1)塊茎には休眠性があり,休眠覚醒に対しては0℃の低温処理及び包皮除去処理の効果が認められた。(2)塊茎からの出芽深度は塊茎の大小により異なり,土中深い位置からの出芽歩合は塊茎が小さいほど低下した。1g以上の大きい塊茎は地表下20cmの深い層からも容易に出芽した。(3)土壌の還元程度が塊茎からの出芽に及ぼす影響は同じオモダカ科の中でも異なり,ウリカワに比べてオモダカは土壌の還元に対する適応力が大きかった。(4)塊茎は土壌水分が最大容水量の80%(対乾土60%)以上で出芽した。また,湛水深が15cmと深くても出芽は劣らず,水生雑草の特徴をよくあらわしている。2. 生育特性 (1)稲わらを施用した強還元条件でも生育はほとんど劣らず,塊茎形成量はかえって多くなった。(2)遮光処理により草丈,葉面積は大となったが,地上部乾物重は低下した。(3)本県産のオモダカには3種の種内変異が認められ,各々外観,出芽時期,塊茎形成量が異なった。(4)親塊茎の大小により生育及び塊茎形成量が異なった。生体重1gと2gとの間では明らかな差は認められなかったが,0.5g以下の小塊茎は他に比べ地上部生育量,塊茎形成量ともに少なかった。3. 塊茎形成に関する諸要因 (1)塊茎形成に入る時期の地上部の生育状態により塊茎形成数及び塊茎の大小,土中分布は著しく異なった。すなわち,地上部の生育量が大であるほど塊茎形成数,一個当り塊茎重量は大となり,形成される塊茎の土中分布も広い範囲にわたった。最高値は,塊茎形成数で180個/株,一個当り重量で1.7g,形成範囲は地表下30cmまで,水平距離で50cmまでであった。また,塊茎の重量は形成される深さが深いほど,株からの水平距離が遠いほど重くなった。(2)塊茎形成は短日処理により促進された。(3)遮光処理の時期・程度にかかわらず自然条件に比べ塊茎形成数が多くなり,ミズガヤツリ,クログワイと異なった反応を示した。
著者
柿崎 真沙子 澤田 典絵 山岸 良匡 八谷 寛 斉藤 功 小久保 喜弘 磯 博康 津金 昌一郎 康永 秀生
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.179-186, 2018 (Released:2018-05-03)
参考文献数
19

目的 DPCデータを大規模なコホート研究の発症登録に利用することが可能であるかを検討するため,独自に収集した脳卒中および急性心筋梗塞発症登録数と,DPCデータを活用して得られた疾病登録数との比較を行い,脳卒中と急性心筋梗塞の各診断名において実施された治療・処置や検査から,標的疾患罹患の把握に有用な項目があるか検討した。方法 研究対象病院のDPCデータから,4種類(主傷病名,入院の契機となった病名,医療資源を最も投入した病名,医療資源を二番目に投入した病名)のいずれかに,急性心筋梗塞,脳内出血,脳梗塞が含まれる症例を抽出し,疾患ごとに実施された検査や治療の情報を抽出・集計し当該研究対象病院にてJPHC研究の一部として独自に収集した発症登録により得られた登録数を比較した。結果 DPCデータで抽出された症例数は独自に実施した発症登録数より多かったが,その差はとくに脳梗塞において顕著であった。JPHC登録数/DPC症例数の比は心筋梗塞1.13,脳内出血0.88,脳梗塞0.67であった。結論 急性心筋梗塞および脳内出血の疾病登録にはDPCデータを利用して,対象者数を概ね把握できる可能性が示された。脳梗塞についてはDPC登録病名とDPC治療・検査・診断項目を補助的に活用することで,疾病登録対象者数の同定精度を高め得る可能性がある。しかしながら,DPCデータを大規模なコホート研究の発症登録に利用するためには,地域全体での発症数がDPC導入病院の発症数でカバーできるのか,さらなる検討が必要である。
著者
山岸 常人
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.161-193, 1992-12-25

本稿は、中世の寺院において本堂或はその他の仏堂の中に何らかの意図をもって納め置かれた文書―仏堂納置文書と呼ぶことにする―をとりあげ、その納置の状態・納置文書の種類や機能・蔵に納置された文書との関係等について、主として栄山寺・高野山・金剛寺等の納置の事例をたどりながら、寺院内部における文書の安定的な保管についての原理と現実について考察を加える。文書納置には様々な種類の仏堂が使われているが、中でも御影堂・本堂、とりわけ御影堂が特に史料的に豊富な情報を残しており、御影堂が多くの寺に共通して重用されていた。多数の文書が仏堂に納置された要因は、併存する複数の僧侶集団、さらには寺外の諸権門との間での様々な権利が対立する際、権利を保障する支証となる文書の所在とその確かな伝領を実現するためにふさわしい機能を仏堂がもっていた点にある。寺の開祖や宗祖を祀る御影堂が特に選ばれているのは、世俗の諸権力より上位の権力に文書の保管を委ねたと見ることができる。ただしこのシステムは架空の上位権力の存在を想定して成立している擬制とも言えるものであった。このことは笠松宏至氏の言う「仏物」誤用禁止の法理とも共通する理念であるが、その法理の裏では、高野山の御手印縁起等の奉納状や十聴衆評定で定められた出納手続、或は文書の書面上に御影堂納置文書である旨を示す文言を加筆すること等、実態を伴った管理制度の完備によって初めて保管の実効性が保証されていた。更には金堂には下書を、御影堂には正文を置くような危険を分散する方式も編み出されて、それを補完したはずである。即ち理念や擬制だけで現実の利害や権力に対抗しきれるものではなかった。なお仏堂に納置される文書は公験・荘園文書など寺家の権利に直接関わるものに主として限られ、法会文書などは納められず、また年貢なども別の収納施設に納められ、寺内の収納施設は目的により俊別されていた。仏堂に文書を納置することは正に中世寺院の組織構造を直接に反映した現象であった。
著者
伊藤 綾 竹内 浩二 高木 章雄 櫻井 文隆 渋澤 英城 菅谷 悦子 栄森 弘己 山岸 明
出版者
関東東山病害虫研究会
雑誌
関東東山病害虫研究会報 (ISSN:13471899)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.53, pp.153-156, 2006-12-01 (Released:2010-03-12)
参考文献数
6

近年, 東京都の江東地域においてエダマメの葉の黄化や生育不良, 収穫減少などの生育障害が発生している。そこで2005年に都内のエダマメ圃場63カ所を調査した結果, 江東地域では20圃場で生育障害が発生していた。そのうち19圃場では根部にダイズシストセンチュウのシストの寄生と, 土壌中に高密度の本種のシストと卵を認め, ダイズシストセンチュウが生育障害の原因となっている可能性が高いと考えられた。なお, 多摩地域においても初めて本種の分布を確認した。
著者
山岸 裕和 小坂 仁 長嶋 雅子 桒島 真理 宮内 彰彦 池田 尚広 小島 華林 松本 歩 山形 崇倫
出版者
一般社団法人 日本てんかん学会
雑誌
てんかん研究 (ISSN:09120890)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.693-701, 2018
被引用文献数
1

<p>ペランパネル(PER)は、AMPA受容体を非競合的に阻害する新規の抗てんかん薬である。日本国内の使用実績の報告は少ない。今回、知的障害者や12歳未満の小児を含む難治性てんかんの33例について、PERの治療効果と副作用を検討した。発作が50%以上減少した症例を「有効」とし、両側性けいれん性発作への進展を含む焦点発作(Fs)と全般発作のうち強直、間代発作(GTCS)に対する有効率を検討した。FsおよびGTCSに対しては50%の症例で有効であった。全体では52%の症例に有効であった。12歳未満でも12歳以上と同等の有効率が得られた。併用薬剤別では、有意差は得られなかったものの、KBrを併用した2症例でともに有効であった。CBZやPHTといったCYP3A4を誘導する薬剤との併用例の有効率はそれぞれ30%、18%と低い傾向があった。副作用の出現率は55%で、情緒・行動面の異常が30%、傾眠・眠気が18%、めまいが15%であった。若年者や知的障害者では情緒・行動面の異常が出やすく、注意を要する。</p>
著者
山岸 三郎 小山 泰正 深草 佑一 興村 伸夫 大石 洵一 浜道 則光 新井 正
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.91, no.3, pp.351-357, 1971-03-25 (Released:2008-05-30)
参考文献数
24
被引用文献数
14 21

The metabolites of Streptomyces luteoreticuli KATOH et ARAI were investigated. Four new compounds, luteoreticulin, (V), C19H19O5N, luteothin, (VI), C22H25O5N, metabolite X, (X), C15H12O3N2, and metabolite XI, (XI), C15H14O3N2, were isolated from the acetone extract of the mycelial cake. 1-Methoxyphenazine (VII) and methyl phenazine-1-carboxylate (IX), which were first isolated from natural origin, were obtained in addition to aureothricin (I), thiolutin (II), aureothin (IV), and 1, 6-dimethoxyphenazine (VIII). The other two metabolites (III and XII) were also isolated but not identified.
著者
西川 幸太 山岸 芳夫
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.79-84, 2016-06-01 (Released:2016-12-01)

近年,いわゆる「バカッター」に代表される,情報モラルの欠如が招くトラブルは社会的問題となっており,注目を集めている。そのため,現在は情報モラルの効果的な指導法の模索が急務とされている。我々は従来通りの指導方法である,知識や実例を紹介する事例紹介型指導と,学習者に実際に体験させながら指導する体験重視型指導の二つの指導法について,出来る限り学習因子を一致させた上で教材およびカリキュラムを作成し,大学1年生と3年生の参加者に対し指導を実践,教育効果の差を検証した。その結果,事例紹介型指導を行なった参加者には,事前と事後のテスト結果に有意差はなかったが,体験重視型指導の参加者の結果には有意差が認められた。実験後の参加者による内省文の内容についても,体験重視型指導の参加者の方が学習内容についての記述が多く見受けられた。
著者
青木 啓成 児玉 雄二 小池 聰 長崎 寿夫 山岸 茂則 奥田 真央 谷内 耕平
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2005, pp.C0312-C0312, 2006

【目的】長野県理学療法士会社会局スポーツサポート部では長野県高校野球連盟の依頼により、1999年より硬式野球大会のメディカルサポート(以下サポート)を開始し、2000年より全国高等学校野球選手権長野大会(以下長野大会)一回戦よりサポート体制を整備した。また、硬式・軟式の他公式戦のサポートも開始し、長野県の高校野球選手の傷害予防とコンディショニングに取り組んできた。今回は第87回硬式長野大会のサポート結果を分析し、1回戦からのサポート体制の必要性を明確にすることを目的とした。<BR>【長野県高校野球サポート体制】硬式は長野県下の6球場に、軟式は2球場に原則1日2名の理学療法士(以下PT)を配置し、硬式・軟式の長野大会・県大会サポートを行った。内容は選手への個別対応を原則とし、試合後のチームごとのクーリングダウンなどは行わなかった。参加PTはスポーツサポート部高校野球部門に登録した63名であり、大会事前研修は年2回実施した。研修は障害特性を考慮し、補助診断として肩関節の理学所見を中心に研修を行い、専門医の受診を推奨できるようにした。また、ストレッチ・テーピング等の実技研修も行った。<BR>【対象・方法】調査大会は、第87回硬式長野大会に参加した98校を対象とした。同大会のサポート結果を集計し、大会ベスト16前・後(以下B16前・後)の選手の利用状況と障害の特徴とサポート内容について調査し、大会期間中のサポート体制について検討した。<BR>【結果】球場のサポート室を利用した選手は延べ78名、同大会参加PTは延べ74名であった。全体のサポート実施時期は試合前22件、試合中16件、試合後39件で試合後の利用が多かった。症状は急性期41件、亜急性期20件、慢性期19件であり、主訴は安静時痛16件、運動時痛54件、疲労21件で急性期・運動時痛への対応が最も多い傾向にあった。利用・治療回数は1回が65件、2回10件、3回3件であった。障害部位は肩関節23件、腰背部12件、次いで肘関節、足関節、大腿・下腿の順に多い傾向であった。治療内容はストレッチ33件、テーピング29件、アイシング26件であり、コンディショニング指導が40件であった。B16前後で比較すると試合後利用は圧倒的にB16前に多く59%、主訴に関しては安静時・運動時痛に差はないものの疲労がB16前26%、B16後14%であった。<BR>【考察】選手の利用時期はB16前の利用者が圧倒的に多いことから、一回戦からのサポート体制の妥当性と重要性が示唆された。障害部位は過去の実績同様、肩関節、腰背部障害が多く、障害特性となっている。B16前の急性期症状・疲労が多いことは慢性・陳旧性障害が大会前に悪化、または再発している可能性も考えられる。以上により、的確なサポートを実施するために、補助診断としての理学所見が必要であり、さらには、大会期間中のみでないサポートやメディカルチェックの検討が必要であると考えられた。<BR>
著者
前田 潤 安田 幹 小柳 喬幸 柴田 映道 河野 一樹 古道 一樹 福島 裕之 山岸 敬幸
出版者
特定非営利活動法人 日本小児循環器学会
雑誌
日本小児循環器学会雑誌 (ISSN:09111794)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.186-191, 2012 (Released:2012-11-26)
参考文献数
16

Fontan型手術後遠隔期の合併症である蛋白漏出性胃腸症(PLE)は予後不良であり, その治療はいまだに確立されていない. 近年, 肺血管拡張薬であるsildenafil(SIL)がPLEを改善させるという報告が散見される. 今回Fontan型手術(TCPC)後にPLEを発症し, SIL投与により症状の改善を得た3症例を経験した. 【症例1】単心室の21歳, 男性. TCPC6年後にPLE発症. SIL 30 mg/日内服を開始, 40 mg/日まで増量し, 浮腫が軽快. 【症例2】単心室, 左肺動静脈瘻の17歳, 男性. TCPC2年後にPLE発症. SIL 1 mg/kg/日内服を開始, 4 mg/kg/日まで増量し, 浮腫, チアノーゼが改善. 【症例3】両大血管右室起始の12歳, 女児. TCPC1年後にPLE発症. steroid不応性であり, SIL 0.5 mg/kg/日内服を開始, 8 mg/kg/日まで増量し, 腹水が改善. 3症例ともSILの副作用は認められなかった. SILはPLEに対する安全な治療薬で, 用量依存性に効果を示す症例もあることが示唆された.
著者
山岸 利次
出版者
教育史学会
雑誌
日本の教育史学 (ISSN:03868982)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.69-81, 2008-10-01 (Released:2017-06-01)

In this paper, the writer attempts to clarify the legal logic of the "Children's Right to Education" article in the "Child Welfare Law" (RJWG) of 1922, through a historical analysis of the process of its enactment. Juvenile delinquents were subject to correctional education since the 1878 correctional education law in Prussia. Its enactment was expected to prevent delinquency, but execution of correctional education was limited before the promulgation of the RJWG because it was thought to interfere with the autonomy of the family, especially parental authority. Although Article 135 of the civil law enforcement regulations permitted correctional education for the "prevention of serious delinquency", the application of this article was the exception. Because of this, some people maintained that in the interests of child welfare, not only private but also public legal principles that called for greater state intervention in family affairs should be embraced in order to prevent juvenile delinquency. In 1919, the Weimar constitution (WRV) was enacted; Articles 120 and 122 refer to child welfare. The former article allowed, in principle, family autonomy in relation to the state, while reserving to the state oversight of parental authority. The latter, in contrast, expressed the dominance of state authority over parental authority in the case of preventing juvenile delinquency. In 1921, the bill of RJWG was introduced to the Congress. In Article 1, "Children's Right to Education", the bill adopted the principle of public law while based on the principle of subsidiarity, a key concept of Catholic social theory that, in effect, limits state intervention. In this manner, the bill obscures the relation between the family and the state. However, RJWG Article 1 is noticeably similar to WRV Article 122, so it was interpreted that RJWG Article 1 was based on WRV Article 122. RJWG Article 64 on correctional education did further principles of public law by distinguishing "insufficient education" from the more general condition of "abuse of parental authority" as justification for state intervention. This new condition provided a 'social' perspective to the issue of state intervention in children's education. The bill was modified in the 29^<th> Committee, however. WRV Article 120 (not 122) was cited to show that Article 1 (or the RJWG as a whole) was based on WRV Article 120 rather than on 122. In addition, a new educational category of private institutions was also incorporated into the article. Private institutions could not be categorized as either a family or a state entity, but rather a 'social' entity. As for correctional education, articles were modified in order to limit state power over the family, which was allowed in the bill. RJWG, after such modifications by the 29^<th> Committee, was ratified on July 9,1922. Conclusively, RJWG was a 'social law" in two ways. First, it provided for "Children's Right to Education" from a `social' perspective (the word "social" appears in Article 1). Second, it incorporated 'social' concerns into education.
著者
緒方 雄一朗 薮田 ひかる 中嶋 悟 奥平 恭子 森脇 太郎 池本 夕佳 長谷川 直 田端 誠 横堀 伸一 今井 栄一 橋本 博文 三田 肇 小林 憲正 矢野 創 山下 雅道 山岸 明彦 たんぽぽ ワーキンググループ
出版者
日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.58, pp.175-175, 2011

始原小天体有機物は、太陽系および生命原材料物質の起源と進化を理解するための重要な情報を記録している。「たんぽぽ計画」では、大気圏突入時の熱変成や地上での汚染を受けていない宇宙塵を、国際宇宙ステーション上に超低密度シリカエアロゲルを設置して回収を試みる予定である。しかし、この方法では、宇宙塵のエアロゲルへの衝突により変成する可能性を考慮する必要がある。そこで本研究では、宇宙科学研究所・スペースプラズマ実験施設の二段式高速ガス銃を用いて、隕石微粒子の高速衝突模擬実験を行い、マーチソン隕石微粒子をシリカエアロゲルに撃ち込んだものを取り出し、2枚のアルミ板にはさみハンドプレスして圧着された隕石微粒子を、片方のアルミ板に載せた状態で、赤外顕微分光装置と顕微ラマン分光装置で測定を行った。また、SPring-8, BL43IRの高輝度赤外顕微分光装置IFS120HRでイメージング測定を行い、衝突前後の隕石有機物の分子構造の変化を見出すことを目的とした。
著者
山岸 裕 松江 正彦
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.241-244, 2011 (Released:2012-03-14)
参考文献数
8
被引用文献数
2 1

本研究では,街路樹として植栽されているイチョウ,プラタナスの地上部の形状の作成及び体積の計測を地上型レーザースキャナによる計測,計測データの編集及び樹木のサーフェスモデルを作成することにより行った。また,光波測距儀のマニュアル方式を用いた計測と比較検討を行った。本研究では,剪定後の街路樹で,切り口が瘤状の複雑な形状となり,光波測距儀では,正確にモデリングできなかったが,地上型レーザースキャナでは,枝等の瘤や樹皮の凹凸までほぼ正確に形状をトレースすることができた。ただし,イチョウなどの細枝などで一部形状を作成しきれない面も見られた。
著者
杉浦 立樹 山岸 賢治 平井 浩文 河岸 洋和
出版者
一般社団法人 日本木材学会
雑誌
木材学会誌 (ISSN:00214795)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.382-387, 2010-11-25 (Released:2011-03-05)
参考文献数
15
被引用文献数
2 2

高活性リグニン分解菌Phanerochaete sordida YK-624株の産生する,新規リグニンペルオキシダーゼの1種であるYK-LiP2をコードする遺伝子ylpAを高発現する形質転換体A-11株のリグニン分解特性を調査した。ブナ木粉培地においてA-11株は野生株より高いリグニン分解活性を示し,4週間培養後のリグニン分解率は野生株と比較して7.6%高い値を示した。また,その時のリグニン分解選択性も野生株より高い値を示した。A-11株を接種した木粉中のLiP活性は野生株のものより高く,また組換えylpAの転写解析より,A-11株は培養期間を通して安定して組換えylpAを転写していることが判明した。これらの結果より,ylpAの高発現がP.sordida YK-624株のリグニン分解活性を上昇させたことが示された。さらに,市販のセルラーゼを用いた酵素糖化性について検討したところ,A-11株により処理した木粉は野生株のものより高い糖化性を示した。
著者
山岸 真人 櫻井 敬子
出版者
日経BP社
雑誌
日経Windowsプロ (ISSN:13468308)
巻号頁・発行日
no.106, pp.100-105, 2006-01

sWindowsネットワークに無線LANを導入することで,社内のクライアント・ユーザーの利便性を高められる。ただし,セキュリティを確保しておく必要がある。s従来からあるSSIDやMACアドレス・フィルタリングではなく,WEPやWPA,WPA2といった暗号方式を採り,なおかつRADIUSサーバーを設定することで,高度なセキュリティを実現できる。
著者
山岸 常人
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
no.45, pp.p161-193, 1992-12

本稿は、中世の寺院において本堂或はその他の仏堂の中に何らかの意図をもって納め置かれた文書―仏堂納置文書と呼ぶことにする―をとりあげ、その納置の状態・納置文書の種類や機能・蔵に納置された文書との関係等について、主として栄山寺・高野山・金剛寺等の納置の事例をたどりながら、寺院内部における文書の安定的な保管についての原理と現実について考察を加える。文書納置には様々な種類の仏堂が使われているが、中でも御影堂・本堂、とりわけ御影堂が特に史料的に豊富な情報を残しており、御影堂が多くの寺に共通して重用されていた。多数の文書が仏堂に納置された要因は、併存する複数の僧侶集団、さらには寺外の諸権門との間での様々な権利が対立する際、権利を保障する支証となる文書の所在とその確かな伝領を実現するためにふさわしい機能を仏堂がもっていた点にある。寺の開祖や宗祖を祀る御影堂が特に選ばれているのは、世俗の諸権力より上位の権力に文書の保管を委ねたと見ることができる。ただしこのシステムは架空の上位権力の存在を想定して成立している擬制とも言えるものであった。このことは笠松宏至氏の言う「仏物」誤用禁止の法理とも共通する理念であるが、その法理の裏では、高野山の御手印縁起等の奉納状や十聴衆評定で定められた出納手続、或は文書の書面上に御影堂納置文書である旨を示す文言を加筆すること等、実態を伴った管理制度の完備によって初めて保管の実効性が保証されていた。更には金堂には下書を、御影堂には正文を置くような危険を分散する方式も編み出されて、それを補完したはずである。即ち理念や擬制だけで現実の利害や権力に対抗しきれるものではなかった。なお仏堂に納置される文書は公験・荘園文書など寺家の権利に直接関わるものに主として限られ、法会文書などは納められず、また年貢なども別の収納施設に納められ、寺内の収納施設は目的により俊別されていた。仏堂に文書を納置することは正に中世寺院の組織構造を直接に反映した現象であった。This paper looks at documents stored with some intention in the main sanctuary or other sanctuaries of Buddhist temples in the Middle Ages …… hereafter called "documents stored in Buddhist temples". The author examines the principles and actual situation of the secure storage of documents in temples, by tracing examples of storage mainly in Eizanji, Kôyasan, and Kongôji temples, with regard to conditions of storage, types and functions of the stored documents, and their relation with documents stored in warehouses.Various types of Buddhist sanctuaries, such as the Mieidô and the main sanctuary, were used for the storage of documents. The Mieidô, in particular, contain an abundance of historical information, and commonly held an important position in many temples. The reason many documents were stored in Buddhist sanctuaries was that these buildings were appropriate for the storage and accurate transmission of documentary evidence regarding rights, in case of confrontation between opposing groups of Buddhist priests, or disputes with various influential powers outside the temple. It seems that the Mieidô, which is dedicated to the founder of the temple or the sect, was particularly chosen for the storage of documents because a higher power than secular powers was entrusted with the storage of documents. However, this system can be said to have been a false system, which was established on the assumption of the assistance of a fictional higher authority. This idea has something in common with the legal principles behind the prohibition of the misuse of "Buddhist objects" as stated by Mr. Kasamatsu Hiroshi. Behind this principle, the validity of the documents stored in the Buddhist sanctuaries was assured only when a control system in line with real conditions was perfected, that is, letters of dedication, such as the Goshuin-engi of Kôyasan, accounting procedures determined by a meeting of ten, the addition of a phrase indicating that the documents were stored in the Mieidô, etc. Furthermore, a method of spreading risk, such as storing a draft in the main hall in addition to the original document in the Mieidô, must have been devised for greater assurance. In other words, actual interests and powers cannot have been countered by only principles or a false system. It should be further noted that the documents stored in Buddhist sanctuaries were principally limited to official documents and manor documents, those are directly related to the temples' rights and interests, documents on Buddhist meetings were not stored there, and annual land tax was stored in other storehouses. In this way, storage facilities in temples were distinguished according to purpose.The storage of documents in Buddhist sanctuaries was really a phenomenon which directly reflected the organizational structure of the temples in the Middle Ages.
著者
山﨑 真大 加納 塁 原田 和記 村山 信雄 佐々木 崇 折戸 謙介 近藤 広孝 村井 妙 山岸 建太郎 西藤 公司 永田 雅彦
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.127-134, 2017 (Released:2017-09-28)
参考文献数
20
被引用文献数
2

犬の表在性膿皮症は,皮膚表面に常在するブドウ球菌(Staphylococcus pseudintermedius,S. schleiferiなど)が表皮や毛包に存在,あるいは侵入して発症する。近年では薬剤耐性菌が病変部から分離される症例が増加しており,治療に苦慮することも多い。そこで,日本獣医皮膚科学会では犬の表在性膿皮症の治療ガイドラインの作成を試みた。近年,海外では複数のシステマティックレビューや,ガイドラインが報告されていることから,これらを参考にしつつ日本独自のガイドラインの作成を目指したが,エビデンスとなる論文が十分でなく,現時点では困難であることが明らかになった。この中で,現時点で有効であると考えられるいくつかの知見が得られたので治療指針として提示したい。また,現時点での問題点についても述べる。
著者
木村 文平 城所 達士 橋爪 満 駒形 清則 時光 昭二 山岸 光夫 大石 不二夫 佐藤 信英 大和 剛
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.30, no.7, pp.1021-1027, 1990-12-20
被引用文献数
2

大多数の一般市民が日常診療を受ける場としての地域病院,診療所において肺癌を早期発見治療するための診療の組織化を試み,切除211例となったため,協同診療体制の効果について検討した.7病院16診療所が連携して1個の肺外科を共有し,呼吸器グループに胸部X-pを集中して読影,共同して早期診療に努めた.症例の特徴として,年齢層が高くI期例とくにp-Tl例が多く,腺癌が多く,他疾患診療中の発見例が多く,5年生存率は全体で46%であった.地域医療機関の組織化により,肺癌の早期診療を大幅に充実させうると考えられる.