著者
岸 雅大 石井 康史 孟 林 山崎 勝弘
雑誌
第79回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2017, no.1, pp.285-286, 2017-03-16

本研究では、甲骨文字原画像の各画素から近傍のベクトルを算出し、それらを合成する事により特徴点の抽出を行う。また、それらを用いて文字に含まれる線の本数を検出する。さらに、1000文字分のテンプレート画像と特徴を保存した甲骨文字データベースから、抽出した特徴を用いて類似するテンプレートの検索を行う。本手法では、甲骨文字の原画像を細線化し、ラスタスキャンを行って各画素の周囲のベクトルを合成する。そのベクトルの向きと大きさを用いて特徴点の抽出を行い、それらの特徴点から、文字に含まれる線の本数を算出する。最後に、抽出した特徴を用いて類似するテンプレート画像を甲骨文字データベースから検索する。
著者
古賀 正則 W.F Menski 金子 勝 山本 一美 山本 由美子 浜口 恒夫 佐藤 毅 中村 平次 山崎 利男 松井 透
出版者
一橋大学
雑誌
海外学術研究
巻号頁・発行日
1985

本年度の研究計画の目的は, 昨年度イギリスにおいて実施した調査によりえられたデータ,とりわけ面接調査票のデータを整理し, 一定の解析をおこなうことによって,今後の調査,研究に役立てることにあった. したがって, 本年度の研究成果はあくまでも中間的総括の域を出ないものであることを,まずことわっておきたい.1.研究成果の概要データの整理,解析によってえられた新たな知見,成果の要点は次の通りである.(1)第二次大戦後,イギリス植民地体制の崩壊にともなって,英領植民地各地に展開していたインド人移民社会は大きな変動を豪り,植民地本国イギリスへの大量の移動をひきおこすとともに,インド亜大陸からイギリスへの移住もまた激増した. こうしたインド人移民の大きな二つの流れに応じて,イギリスにおけるインド人社会の間にさまざまな面で大きな差異がみられることが明らかとなった.(2)イギリスにおけるインド人移民社会の形成,発展の歴史,およびインド人移民社会の構造,インド人移民の組織,政治,経済,社会,宗教活動などを,ある程度解明しえた. 殊にインド人移民のカースト,宗教組織の果す役割の重要性が注目される.(3)インド人移民社会の形成,発展は,イギリスの社会に大きなインパクトを与えつつあるが,他方インド人移民社会は,イギリス社会の影響を蒙り,一定の変容を受けながら,移民社会独自のアイデンティティを形成しつつある. そこにみられるのは,移民社会の受入れ国社会に対する一方的な同化の過程ではなく,多文化社会という新らしい社会の形成にむけての,共存的発展の過程であると考えられる.2.今後の研究の展望これまでの研究によってえられた新たな知見の一つは,インド人移民にとって必らずしもイギリスが最終的な移民先ではなく,かなりのインド人移民がイギリスを経由して,さらに他の英連邦諸国,とりわけカナダ,オーストラリア,あるいはアメリカ合衆国へ再移住しているという事実であった. われわれは今後の研究において,こうした再移住の過程を明らかにするとともに,インド人移民社会それ自体の変容と,受入れ国の社会にあたえるインパクトの解明を試みるつもりである. また,移民の主な送り出し地域の一つであるインドのグジャラート地方の調査を実施することによって,移民送出のメカニズム,海外移民の存在によって,この地方の蒙るインパクトを解明したいと考えている.
著者
石井 征亜 山崎 敬亮
出版者
Japanese Society of Agricultural, Biological and Environmental Engineers and Scientists
雑誌
生物環境調節 (ISSN:05824087)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.207-213, 2002-06-30 (Released:2010-06-22)
参考文献数
11
被引用文献数
3 1

Photon flux (PF) in the spectral regions of 300-400 nm (UV), 400-500 nm (B), 500-600 nm (G), 600-700 nm (R) and 700-800 nm (Fr) were observed almost daily with a spectroradiometer (LI-1800) at noon in from Jan. 2000 to Mar. 2001 at Gifu (lat. 35°25' N and long. 136°46' E) . The spectral ratio of B/photosynthetic photon flux (PPF) and R/PPF on clear days changed reversibly during the morning and in the evening; variability was less during the daytime. Whereas G/PPF was almost constant during the whole studies period irrespective of fine or cloudy weather. The B/PPF ratio increased rapidly from 24.6% on the winter solstice to 27.1% on the vernal equinox. After reaching a peak of 27.3% on the first day of autumn, it decreased gradually from the autumnal equinox to the winter solstice. The seasonal changes in R/PPF showed opposite tendencies for B/PPF. This cycle of spectral photon flux probably assists plants in making a distinction between spring and autumn season. We found that the PPF as well as UV, B, G, R and Fr values were nealy equal in vernal equinox and autumnal equinox. The R/PPF ratio for the fine days was high and B/PPF was low in comparison with the cloudy days.
著者
橋本 直之 横川 正美 山崎 俊明 中川 敬夫
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.377-381, 2013 (Released:2013-07-16)
参考文献数
23
被引用文献数
2 2

〔目的〕運動強度の違いが,脳血流と注意力に与える影響を検討すること.〔対象〕20~30歳代の健常男性30名.〔方法〕対象者を最高酸素摂取量に応じ20%群,40%群,60%群の各運動群と運動なしのコントロール群に振り分けた.近赤外分光装置にて,運動中の前頭葉領域の脳血流を測定し,運動前後にPaced Auditory Serial Addition Task(PASAT)とPsychomotor Vigilance Task(PVT)を行った.〔結果〕脳血流の変化量は,左右ともに60%群がコントロール群と20%群よりも有意に大きく,PASATの正解数は運動後に40%群と60%群で有意に増加した.〔結語〕60%群は前頭葉領域の血流を増加させるとともに注意機能を向上することが示唆された.
著者
芝崎 美和 山崎 晃
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.256-267, 2016
被引用文献数
1

本研究の目的は, 児童の謝罪が幼児と同様に罪悪感によって規定されるか否かを明らかにし, 違反発覚の有無という点で異なる約束違反場面と欺き場面での加害児の謝罪についての児童の予測が罪悪感認識の程度と関連するか否かについて明らかにすることであった。調査対象者は小学2年生87名, 4年生86名, 6年生79名であった。分析の結果, 以下の3点が明らかになった。第1に, 所有物の持ち去り場面で加害児の行動として謝罪を推測した者は罪悪感低群よりも高群で多く, 反対に自己中心的方略を推測した者は罪悪感高群よりも低群で多かった。第2に, 約束違反場面では加害児の行動予測に罪悪感認識の高低による違いはみられず, 加害児の罪悪感の程度にかかわらず謝罪が多く予測された。第3に, 欺き場面では, 罪悪感認識の高低によって謝罪を推測する程度には違いがみられなかったが, 罪悪感低群では自己中心的方略を推測した者が多く,他方,罪悪感高群では, 向社会的方略を推測した者が多かった。以上のことから, 児童の謝罪が罪悪感に規定される程度は違反の種類によって異なり, 所有物の持ち去り場面での児童の謝罪は罪悪感と関連するが, 約束違反場面での謝罪は罪悪感と関係しておらず, 違反が発覚しない欺き場面では, 罪悪感は謝罪ではなく向社会的方略を促すことが示された。
著者
緒方 英彦 高田 龍一 鈴木 哲也 山崎 大輔 佐藤 周之
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会誌 (ISSN:18822770)
巻号頁・発行日
vol.78, no.5, pp.405-409,a2, 2010 (Released:2019-01-08)
参考文献数
4

農業水利施設の機能保全では,それぞれの施設で異なる構造形式,供用される環境条件に応じた変状発生パターンに基づいて機能診断が実施され,施設特有の変状に即した対策工法が実施されなければならない。そのためには,表面変状だけでなく内部変状を的確に見極める変状認知力を持つことが必要になる。本報では,寒冷地にあるRC開水路を対象に,凍害による内部変状の発生パターンを採取したコアから考察するとともに,現地踏査(概査)でこの内部変状を推測する手段を述べる。また,RC開水路の凍害ひび割れ発生形態に基づいた対策工法について提言を行う。
著者
山崎 元一
出版者
東洋文庫
雑誌
東洋学報 = The Toyo Gakuho
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.267-311, 1971-03

The aim of the present essay is to clarify the exact position of the low-classed people, especially that of the untouchables, Caṇḍālas, in ancient Indian society. The writer seeked into this problem based on the Buddhist canons, as well as Arthaśāstra, Dharmasūtra and Dharmaśāstra.In the first section the writer assumed that the institution of untouchables had its origin in the pollution concept which is still prevalent among the primitive people. It seems that the institution was developed in its religious and ritualistic aspects by the Brahmans in the process of the establishment of the Aryan agricultural societies and the subsequent formation of the territorial states, and was finally established with the further support of the Kṣatriyas. This institution was also acceptable for the other two classes, Vaiśya and Śūdra, who were the chief producers of the relevant society.In the second section the writer discussed that this institution of the low-classed people developed into a complicated system itself, and there might have been a distinction of higher or lower ranks even among themselves. Among the low-classed people, so-called Caṇḍālas outnumbered the most, and was made the lowest untouchables of the society. In the next third section it was discussed that the Caṇḍālas were mostly forming kinship societies among themselves and settled in a circumference of a Varṇa Society, still keeping their traditional customs and manners and earning their livelihood by serving for the despised professions such as services concerning the death, which was regarded as the most filthy occupation.Finally, in the fourth section, problem of the contact between the members of Varṇa Society and the untouchables was discussed, based on the concrete evidences observed in the Buddhist canons, giving as well various theoretical regulations picked up from Arthaśāstra, Dharmasūtra and Dharmaśāstra. Among the above sources, the latter documents have been used chiefly to clarify the expiation ritual (prāyaścitta) which was developed by the Brahmans aiming at maintaining purity of the Varṇa Society. It was also pointed out that the members of the Varṇa Society could not generally avoid the contact with Caṇḍālas in their everyday life, despite of the strict taboo concerning the above.The institution of untouchables superficially seems to be based on extremely religious and ritualistic demands to maintain the purity of the Varṇa Society but there certainly existed behind it other social, economic and political demands. Namely, exclusion of the low-classed people was to frame the Varṇa Society from outside, and further to consolidate the inter-class relationships within the Varṇa Society making them the ritualistic status order (viz. four varṇas).
著者
下村 道子 小串 美恵子 山崎 清子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.27-31, 1982-01-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
5

カマスサワラの冷凍魚肉を用いて, 魚肉調理における酒類の影響を調べることを目的とし, 魚肉を清酒, 煮切り酒, エチルアルコール溶液, 有機酸・糖液などに浸漬し, その後蒸し加熱を行い, 浸漬液の違いによる魚肉の性状の変化を調べた結果, つぎのようなごとがわかった.1) 清酒, 煮切り酒, 焼酎希釈液, エチルアルコール溶液, 水などの液に食塩を加えて魚肉を30分浸漬した場合, 魚肉は液を7~8%吸収し, 重量が増加した.加熱した場合, 加熱後の重量はどの浸漬においても大差なく, 加熱魚肉の水分・揮発分の魚肉水分に対する割合もほぼ同じであった.2) 生魚肉から浸漬液中へ溶出するたん白質の溶出率は, 煮切り酒が最も少なく, 加熱による魚肉からの溶出たん白質率は, どの浸漬液でもあまり差がみられなかった.3) テクスチュロメーターによる硬さの測定値では, 浸漬液によって差がみられた.清酒と煮切り酒では煮切り酒を用いたほうがやわらかく, 有機酸・糖の影響は, 濃度の高いほうが魚肉はやわらかかった.エチルアルコールの濃度の違いによる影響は, 15%以下の濃度では有意差がみられなかった.
著者
伊藤 満敏 大原 絵里 小林 篤 山崎 彬 梶 亮太 山口 誠之 石崎 和彦 奈良 悦子 大坪 研一
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.12, pp.576-582, 2011-12-15
参考文献数
31
被引用文献数
2 7

有色素米8品種(赤米4種,紫黒米4種)と対照のコシヒカリについて,抗酸化能(活性酸素吸収能(ORAC)およびDPPHラジカル消去能)の測定,ならびにフォーリン-チオカルト法を用いた総ポリフェノール含量の測定を行った.有色素米の抗酸化能は総ORACが58.0-169.4 &mu;mol TE/g-dry weight,DPPHラジカル消去能が10.8-52.2 &mu;mol TE/g-dry weightの範囲であり,いずれも「コシヒカリ」の24.9および2.5 &mu;mol TE/g-dry weightに比べて著しく高かった.総ポリフェノール含量とH-ORACおよびDPPHラジカル消去能には高い正の相関(<I>r</I>=0.984および<I>r</I>=0.948,<I>p</I><0.01)があり,H-ORACとDPPHラジカル消去能との相関性も高かった(<I>r</I>=0.946,<I>p</I><0.01).また赤米からはプロアントシアニジンが,紫黒米からはアントシアニンが検出され,これらポリフェノール成分含量と抗酸化能との相関も高かった.5品種の有色素米において,収穫年の違いにより抗酸化能およびポリフェノール含量は増減したが,品種間の大小関係への影響は少なかった.以上の結果より,有色素米が抗酸化能の供給源として有用であり,その主要な抗酸化成分はポリフェノールであることが示唆された.
著者
山崎 裕功
出版者
社団法人日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテーション医学 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.29-33, 2005-01-18

脊髄損傷者は,受傷後,症状が固定化すると,公的に身体障害者として認定され,障害年金受給者として社会生活することになる.しかし,働くという視点でみると,受傷前の職業に復帰できるものは,軽症か,特別待遇にあるもの,雇用基盤の良好な労災事故被害者など,ごく一部に限られ,自然の流れで就労できる人は,殆どない状態である.また,職場復帰できた場合でも,そこには,職場環境や勤務形態を変えてもらったり,雇用サイドや周囲の人達の理解や善意があって初めて可能となっている.このように,脊髄損傷者の場合,受傷後は大半が失職してお
著者
野田 奈津実 小川 宣子 久慈 るみ子 坂田 隆 山崎 泰央 大竹 美登利 佐々井 啓 中島 明子 宮野 道雄 浜島 京子 加藤 浩文 萬羽 郁子 吉井 美奈子 生田 英輔
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 68回大会(2016)
巻号頁・発行日
pp.288, 2016 (Released:2016-08-04)

目的 東日本大震災では、多くの被災者が仮設住宅への転居を余儀なくされた。本研究は、仮設住宅への転居が住民の食生活に与えた影響を明らかにすることを目的とした。方法 震災後、石巻市市街地の仮設住宅に入居した60代女性(食生活改善推進員、震災前は同市雄勝地区)を対象に、震災前後の食生活(料理の種類、保存食、食事形態)について聞き取り調査を行う(2015年3、9、12月)とともに料理の画像記録を依頼した。結果 震災前に比べ、仮設住宅での料理の種類の減少や食事形態に変化が見られた。その原因として、1.地元で採(獲)れた大豆や米から味噌、柿やハモの乾物等の保存食を作り、これを利用して柿なますや雑煮等の郷土料理が作られていたが、食材の入手・保存場所の確保が困難になり、保存食を作ることが少なくなった。2.台所が狭くなり、保管・使用にスペースが必要な蒸し器やすり鉢を使う料理が減った。3.食卓が狭くなり、食器の種類や数も減ったため料理の盛り付けは銘々盛りから大皿盛りへと変化した。日常的に行われてきた食生活が震災を機に失われつつある。石巻の気候・風土を反映する多くの食材を活用した料理を記録として残し、継承していくことが求められている。本研究はJSHE生活研究プロジェクトの活動として実施し、科学研究費補助金(課題番号:24300243、25350040)、平成26年度(公財)浦上食品・食文化振興財団の助成を受けた。
著者
菊地 雅子 野澤 智 佐藤 知美 西村 謙一 金高 太一 櫻井 のどか 原 良紀 山崎 和子 横田 俊平
出版者
一般社団法人 日本小児リウマチ学会
雑誌
小児リウマチ (ISSN:24351105)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.26-31, 2014 (Released:2020-12-15)
参考文献数
10

当科では,若年性線維筋痛症 juvenile fibromyalgja:JFM)に対して,環境分離を主軸とする入院治療 を行ってきた.入院の適応は,重症例もしくは社会的因子が病状に強く影響している場合である. 入院では,規則正しい生活と院内学級通学,リハビリテーションが治療の中心であり,同時に環境調 整(家族や学校との面談)を進め,必要に応じて薬物療法を併用する. 2001年3月~2012年12月までの期間に,当科で入院加療したJFM患児32例について,その効果と 実際について検討した.結果は,臨床症状と重症度において,退院時のステージが17例(53%)で改 善し増悪は1例のみだった.また,入院中9例(31%)に圧痛点の減少があり,うち6例(19%)は退 院時に圧痛点が消失した.入院時に不登校の患児は25例(78%)で,うち9例(36%)が退院後3か月 の時点で登校可能となった. 入院治療による多面的なアプローチは,JFMの症状改善に有効と考えられた.
著者
猪狩 公宏 藍原 有弘 落合 高徳 熊谷 洋一 山崎 繁
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.71, no.7, pp.1708-1713, 2010 (Released:2011-01-25)
参考文献数
18
被引用文献数
3 1

目的:鼠径部ヘルニア手術に対する局所麻酔法と腰椎麻酔法との比較検討を行った.方法:対象は,当院で2008年5月~2009年11月の1年6カ月間に膨潤局所麻酔法にて局所麻酔下ヘルニア根治術を施行した25例27病変と,同時期に施行した腰椎麻酔下ヘルニア根治術46例50病変とを比較検討した.結果:局所麻酔群は男性22例,女性3例.平均年齢は64.4歳.片側ヘルニアが23例,両側ヘルニアが2例.ヘルニアのタイプは,外鼠径ヘルニアが22病変,内鼠径ヘルニアが5病変.施行術式はMesh-plug法が26病変,Marcy法が1病変.腰椎麻酔群と比較し,患者背景,手術時間,術後の疼痛コントロールにおいて有意差を認めなかったが,手術室在室時間は有意に短く,入院期間の短縮も可能であった.結論:局所麻酔下手術は術後の早期離床,早期退院が可能であり,医療経済も含め腰椎麻酔下手術より優れていることが示唆された.