著者
山田 豊和
出版者
千葉大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2010

今日の情報社会を支えているのは、ナノスケールの微小な磁石である。我々の身の回りのパソコンをはじめ、情報の記憶・書き込み・読み込みは、磁石のN極S極の向きを利用している。磁石の向きを読み取るために、磁気ヘッドを使う。磁気ヘッドは、2つの小さな磁石の間に金属などの無機物は挟んだものである。ひとつの磁石の向きは常に固定であり、他方は検出する磁石の向きにより、その方向を変える。この2つの磁石の間に電流を流しておくと、2つの磁石の向きが平行な場合電流は多く流れ、反平行では減少する。この効果は巨大磁気抵抗(GMR)効果と呼ばれる。これまで、磁気ヘッドは無機物で作られてきた。これに代わる新たな物質として有機物がある。我々は、インクなどの色素分子として広く普及・使用されてきているフタロシアニン分子を2つの小さな磁石の間にいれ、さらに単一分子を使用することで1ナノメートル(十億分の1メートル)の大きさのGMRヘッドを作成した。有機分子と磁石との電子スピン相関の解明を、スピン偏極走査トンネル顕微鏡(STM)を用いて行った。平成22年度は、コバルトナノ磁石の上につけた単一フタロシアニン分子(H2Pc)に、STM磁性探針(Co薄膜をコートしたW探針)を接触させ、この2つのコバルト磁石の向きが平行な場合と、反平行な場合の電子伝導測定を行ったところ、60%のGMR比を得た。有機分子の無い場合に比べて、1ケタ大きい値であった。有機分子を利用することで、無機物には無い新たな特性の発現を確認した。研究と並行して、ドイツ・カールスルー工大学から千葉大学へのSTM装置の移動を完了した。鉄ウィスカ単結晶上のマンガン膜を新たな基板として使用する。これを用いることで、弱い外磁場で容易に磁化方向を反転できる。外磁場印加のためのコイル系の設置、また磁性探針の向きを制御するための回転機構の取り付け・改造を行った。
著者
山田 洋揮
出版者
美術科教育学会
雑誌
美術教育学 : 美術科教育学会誌 (ISSN:0917771X)
巻号頁・発行日
no.29, pp.605-616, 2008-03-27

名古屋市(108校中39校の回答あり)での美術科定期テストの実施率は62%であり,現在の大学生の中学時代に比べると減少している。テストの内容は,昭和30年の高校入試の形式とほとんど変わっていない。アメリカでは既に全米規模で美術教育のテストが実施されている。そこで,全米学力テストの一部を追試した。その結果,日本の生徒は,描写力に優れているが,作品を分析し,解釈,評価する力が不十分であることが分かった。今後の美術科定期テストは,「知識・理解」の判定にとどまらず,「思考・判断」や「表現・技能」など総合的に評価できる形式・内容を整える必要がある。それは,教師による評価のためだけでなく,生徒自身が自分の成果を確認するためである。
著者
成瀬 恵治 毛利 聡 中村 一文 竹居 孝二 山田 浩司 入部 玄太郎 片野坂 友紀
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010

生体内では至るところで、重力・伸展や剪断応力といった物理的な機械刺激が生じている。細胞の機械受容システムを介して伝達されるこのような刺激は、単に生体にとって不利益なストレスではなく、発生過程や臓器機能発現に不可欠な生体情報であることが次第に明らかになってきた。本研究では、独自のメカニカルストレス負荷システムおよび評価系の開発を通して生体での機械受容環境を再現し、生体の巧みなメカニカルストレス応答機構を明らかにする。
著者
佐藤 道生 住吉 朋彦 堀川 貴司 陳 捷 山田 尚子 島田 翔太 山崎 明
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、日本漢籍の中で明治期以降日本国外に所在を移し、現在も国外の公共機関に所蔵されるものについて書誌調査を行なうことを目的とする。2008年度から2011年度にかけて調査を実施した国外の日本漢籍所蔵機関は8箇所で、その内、アメリカ合衆国・カリフォルニア大学バークレー校東アジア図書館所蔵の日本漢籍については目録を編集し、貴重書の解題を作成した。
著者
中村 智裕 山田 悌士
出版者
日本医療機器学会
雑誌
医科器械学 (ISSN:0385440X)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, 2003-04-01

近年,感染性医療廃棄物の処理問題は病院経営の上で重要視されつつある.特に感染性排液の処理については,その量は年々増える傾向であり,各施設によってその処理方法が問題となっている.今回われわれはその中でも泌尿器科の経尿道的手術時に発生する大量の感染性廃液の処理について着目した.これまでこれら手術時に発生する廃液の処理は感染性廃棄物専用のプラスチックバケツに廃液をため消毒剤入り凝固材によって固形化し焼却あるいは埋め立てなどの処理をしていた.しかし,この方法では,手術途中でのバケツ交換による手術の中断や廃棄するバケツの重量が重すぎ移送が困難,環境破壊などの問題を抱えていた.しかし一度の手術に出る廃液の量も多く廃棄コストの問題もあった.そこでわれわれは手術室改築にともない,この廃液処理に歯科用吸引装置を利用し,手術を中断することなく自動で廃液を吸引し,感染性廃水処理槽で非感染性処理水とした後,一般雑排水として排水するバキュームシステムを考案した.この処理システムは泌尿器科の経尿道的手術時に対応できるようバケツに金属メッシュフィルタやレベルセンサを取り付けた.また,4室同時に手術ができるようセントラル配管方式にした.さらに,使用後も容易に片付けができるように消毒や洗浄がしやすい構造に改良をした.これによりスタッフの労力の軽減や処理費用の削減,手術室の効率的運用などが可能となった.しかし,このシステムは地下に感染性汚水を処理するための処理槽を設けたり,各部屋をつなぐ配管工事が必要であったりとイニシャルコストが非常にかかる欠点がある.そこで現在はこれらの大がかりな設備を必要としない,あるいは既存の手術室にも設置が可能なシステムも考案中である.
著者
勝地 弘 山田 均 宮田 利雄 斎藤 智久
出版者
Japan Association for Wind Engineering
雑誌
日本風工学会論文集 (ISSN:13493507)
巻号頁・発行日
no.100, pp.1-17, 2004-07-31
被引用文献数
2 3

Large-scale and/or long-span structures, which must be sustained for long service life, are susceptible to strong winds. Their design wind speeds are mostly decided by typhoons in Japan. Global warming typically causing the increase of the sea-surface temperature would affect, probably intensify typhoons approaching Japan. In order to investigate the effects of the increase of the sea-surface temperature on typhoon frequency and intensity, a new typhoon simulation technique was developed incorporating the sea-surface temperature. The new simulation technique predicted future trends due to the increase of the sea-surface temperature that the number of typhoon approaching Japan increased and depression of the central pressure increased. It was also shown that 100-year recurrence wind speeds in 24 regions in Japan increased by 10 - 15% on the average due to future increase of the sea-surface temperature.
著者
都築 伸二 山田 芳郎
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

従来の電力線通信(PLC)は100ボルトの電力線間に通信用信号を重畳する方式である。一方本研究では100ボルトの線とグランド間にも同時に注入(ファントムモード注入と呼ぶ)する新しい通信方式を検討した。ファントムモードで注入した高周波信号は、空間に微弱ながら信号を放射する。従って、複数の電力線が配線されている閉空間では微弱電磁界で満たされ、無線通信が可能となる。こうした形態で行うPLCを"有線・無線融合型PLC"と呼ぶ。本研究では、室内の移動体の位置を高精度に特定できる、つまり通信と測位を同時に実現できるような有線・無線融合型PLC方式を検討した。主な成果は以下の2点である。(1)微弱無線通信技術:本研究では、ファントムモード信号の注入・抽出器、及び効率良くアンテナとして励振するために必要なアンテナカプラを開発した。また電力線の配線形態によってアンテナ効率が著しく変動する問題に対しては、PLCモデムに使用されるACコードをシールド付きのものにすることによって解決した。これらの成果は特許としても出願した。(2)高精度位置特定技術:ホームロボットのナビゲーションを行うことを想定し、可聴音DS-CDMによる屋内高精度位置推定法およびその精度を検討した。(1)の微弱無線により、マイクとスピーカを同期させ、室内のように障害物の多い環境下でも数cmの精度で測位できる技術を開発した。ただし、(a)障害物に隠れていても回折波で測定できるものの精度が劣化すること、及び(b)移動体の測定においてはドップラー効果の影響が懸念された。(a)については測定精度の検定方法を提案した。(b)に対しては、チップ長1023チップのM系列を用いる場合、許容される移動体速度は1m/sec以下であることを明らかにした。本研究で得られた成果は国際会議で3件発表し、招待論文や解説記事としても出版した。
著者
梅原 頼子 福永 峰子 山田 芳子 田中 治夫
出版者
鈴鹿大学短期大学部
雑誌
鈴鹿短期大学紀要 (ISSN:09158421)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.83-91, 1998

本学の生活学科女子学生(18〜19歳)1,815名を対象に過去6年間にわたる食生活の実態を調査し,次のような結果を得た。1)居住形態では,自宅外通学生が増えてきている。2)対象者の身体的特徴では,平均身長は6年間同一の傾向がみられるが,平均体重は年々増え,肥満傾向となっている。3)健康に対する自己評価は,約半数が元気でないと訴えており,その自覚症状としては疲れやすい,朝から体がだるい.睡眠が十分とれないと答えた者が多い。4)栄養素等摂取量は,食塩を除きその他の栄養素はどの年度も充足されず,特に鉄,カルシウムは最も低い値であった。5)PFCエネルギー比については,脂肪エネルギー比率は年々増加傾向を示している。6)食品群別摂取量は,穀類および肉類以外は目安量に対し大幅に不足している。また,年次推移では油脂類,牛乳・乳製品,野菜類,調理加工食品は増加傾向を示し,一方,穀類,果実類,肉類は減少している。
著者
磯部 彰 真鍋 俊照 新宮 学 金 文京 藤本 幸夫 山田 勝芳
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

東アジア社会の構造及び将来のあり方を考える時、意志疎通、情報の伝達、文化の共有に多大な影響と役割を果たした出版文化は文化・政治・経済・宗教等の基本をなした。本研究は、中国・朝鮮・日本等の近世出版システムと文化形成との関係を解明すべく立案され、文学・歴史学・思想宗教学・書誌文献学・言語学・美術史学等の多方面から成る研究者を研究分担、もしくは研究協力者として結集し、十数回に及ぶ小地区会議、三回の全体会議を開催して検討した。その結果、近い将来、特定領域Aに企画案を申請することとし、今回なお検討を要する問題は継続検討課題とする一方、東アジア諸国における出版文化研究の現況成果を知るため、更に企画案に盛り込むべき外国調査、共同研究を実施することとし、明年の国際学術研究に申請することを計画した。研究の大綱は、次のように決定した。○研究会名称:東アジア出版文化研究機構○総括機構 五大地区・計画研究代表から組織五大地区・計画研究双方を統合して、一般市民も含めた研究シンポジウム・出版展示会・特別講演を指導する。総括機構に直属する情報図書インフォメーション支構を通して、インターネットで資料・情報・文献の提供を図書館・研究所に対して行う。○研究期間は5年間○地区は東北・京浜・京阪・中国・九州の5ブロック○計画研究は(1)出版交流研究、(2)出版形成・機構研究、(3)出版文化論研究、(4)出版環境研究、(5)出版政策研究、(6)出版物の研究の6本を基幹研究のもとに2〜3件づつ設ける。○公募研究は(1)〜(6)基幹研究(計画研究)の下でそれぞれ公募し、約八十の個別研究を計画研究の支柱とする。○外国研究機関との共同研究・調査も実施し、例えば中国では社会科学院文学研究所と共催で北京出版文化研究シンポジウムを開く。○事務局を総括機構に設ける。
著者
吉村 長久 大谷 篤史 山城 健児 山田 亮
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

ARMS2遺伝子A69Sの迅速検出キットを作成した。A69S多型は滲出型加齢黄斑変性に対する光線力学療法後の視力予後に相関し、抗VEGF治療の後の視力予後には相関しなかったことから、このキットを用いることによって、個別化医療が実現できると考えられた。さらに他の候補として、VEGF遺伝子、PEDF遺伝子が治療後反応を予測し、精度の高い個別化医療の実現が可能であることが分かった。
著者
山田 望
出版者
南山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

ペラギウス派の思想史的起源は、アクイレイアのルフィーヌスによるオリゲネス、バシレイオス、エヴァグリオスらのラテン語訳、さらにペラギウス派のキーワードである「キリストの模範と模倣」の概念においては、ルフィーヌスの前任者であったアクイレイアのクロマティウスによる著作からの影響のあることが判明した。これらアクイレイア司教たちの手による翻訳や著作に、オリゲネス主義者として知られるエヴァグリオスやオリゲネスの影響を決定的に受けていたバシレイオスの著作も含まれることから、オリゲネス主義が思想史的起源ではないかとの当初の仮説が証明されたと結論づけることができる。
著者
山田 武
出版者
千葉商科大学
雑誌
CUC view & vision (ISSN:13420542)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.21-25, 2008-03

ニュースや新聞などを見ていると医療保障制度に関わる話題を見たり聞いたりしない日はありません。以前であれば大きく取り上げられることのなかった診療報酬の改定だけでなく、高齢化と医療費の関係、医師の偏在、医療事故、メタボリック症候群対策、混合診療、薬害などさまざまなトピックが取り上げられています。医療保障制度の危機や崩壊として大々的にクローズアップされることもあるようです。医療保障制度は非常に複雑なため全体像をつかむのが難しい側面もあります。以下では国民医療費から医療保障制度について考える糸口を探します。
著者
三上 正男 長田 和雄 石塚 正秀 清水 厚 田中 泰宙 関山 剛 山田 豊 原 由香里 眞木 貴史
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

ダストの気候インパクトの定量的評価を高精度に行うことが出来るダストモデルの開発を、(1)発生過程の観測解析、(2)ダスト輸送途上の解析、(3)ダスト沈着量の観測解析と(4)ダストモデルの高度化のための技術開発により行った。(1)では、粒径別鉛直ダスト輸送量の評価法を確立し、ダスト発生モデルの検証を行い、スキームの最適化を行った。また(2)衛星及び地上ライダーの解析から、アジア域ダストがサハラ等に較べて高高度・長距離にわたって輸送される実態や、輸送中のダストでは粒径分布変化よりも内部混合の進行による形状変化が重要であることを明らかにした。さらに(3)乾性・湿性沈着観測ネットワークによる沈着フラックスの観測データを用いて、全球ダストモデルMASINGARの粒径分布とモデルのダスト発生過程の改良を行うと共に(4)高精度データ同化システムと衛星ライダー観測値を組み合わせ、全球ダスト分布の客観解析値を作成し、東アジアのダスト発生量のモデル誤差推定を行なった。また同同化システムにより、モデルの再現性を大幅に向上することが可能となった。これらにより、発生・輸送・沈着各過程を寄り現実的に再現できるモデルを開発することが出来た。
著者
山田 昌孝
出版者
京都産業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究では消費者の革新性とイノベーション採用行動の間に、「わっ、すごそう」などという採用行動の前に新しく「ポジティブな強い心の揺れ」という概念を導入し、「わくわく度」という尺度で測定する。採用に踏み切るためには、革新性がより高くさらに当該イノベーションにより強く心を動かされた消費者がより早く、高い確率で採用することを生存関数モデルを用いて実証し、理論的にも予測精度としても精緻化に成功している。
著者
山田 仁一郎 山下 勝 若林 直樹
出版者
香川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、現代日本映画産業における全体的な製作提携の構造と業績の関連について、2000年代の製作委員会のネットワーク分析を通じて明らかにすることを目的とする。映像コンテンツの制作に際し、製作委員会と呼ばれる時限ネットワーク組織を分析の対象とする。製作委員会には、多様な企業が自社の事業利用を目的として参画する。これらの企業群は従来の映画産業にない独特な製作手法や著作権ビジネスのスキーム等のノウハウを持ち込み、日本の映画産業の復興に大きく寄与した。近年では、アニメーション映画の製作経験を蓄積してきた出版社の影響力が増しつつある