著者
塚脇 涼太 新入 智哉 平川 真 深田 博己 樋口 匡貴
出版者
広島大学大学院教育学研究科心理学講座
雑誌
広島大学心理学研究 (ISSN:13471619)
巻号頁・発行日
no.10, pp.321-327, 2010

本研究では, メガネの着用が対人印象に及ぼす影響を検討した。実験参加者は大学生24名であった。実験計画は, メガネ要因(黒のセルフレーム, 銀のメタルフレーム, サングラス, メガネ着用なし)を独立変数とする1要因4水準の実験参加者内計画であり, 男子学生の上半身を撮影したカラー写真(3タイプのいずれかのメガネを着用, もしくは着用なし)4枚について, 形容詞対による印象の評定を行った。黒のセルフレームのメガネは, 社会的望ましさを高めるが, サングラスは低めることが示された。また, サングラスは活動性を高め, 穏和性を低めることも示された。これらの結果から, メガネの着用が影響を及ぼす対人印象は, メガネのタイプによって異なる可能性が示唆された。
著者
平川 新
出版者
近世史サマーフォーラム2009実行委員会
雑誌
近世史サマーフォーラムの記録
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.1-29, 2010-03-03

帝国の技法 : 個から迫る歴史世界 (近世史サマーフォーラムの記録 ; 2009)
著者
奥村 弘 市沢 哲 坂江 渉 佐々木 和子 平川 新 矢田 俊文 今津 勝紀 小林 准士 寺内 浩 足立 裕司 内田 俊秀 久留島 浩 伊藤 明弘 松下 正和 添田 仁 三村 昌司 多仁 照廣
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2009-05-11

大規模自然災害と地域社会の急激な構造転換の中で、歴史資料は滅失の危機にある。その保存活用を研究する新たな学として地域歴史資料学の構築をめざした。その成果は、第1に、地域住民もまた保存活用の主体と考え地域歴史資料を次世代につなぐ体系的な研究手法を構築しえたことにある。第2は、それを可能とする具体的な地域歴史資料の保存と修復の方法を組み込んだことである。第3は、科研の中間で起こった東日本大震災での地域歴史資料保存について理念と具体的な方法を提示するとともに、全国的な研究者ネットワークによる支援体制を構築したことである。第4は、地域歴史資料学をグローバルイシューとして国際的に発信したことである。
著者
立川 隆治 平田 したう 福島 典之 平川 勝洋 夜陣 紘治
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.396-408, 1999-08-15 (Released:2011-03-18)
参考文献数
16

広島大学耳鼻咽喉科および関連施設耳鼻咽喉科外来を受診した慢性副鼻腔炎患者106例を対象として, 無作為にE群 (エリスロマイシン単独群) とEC群 (エリスロマイシン, カルボシステイン併用群) の2群に分けて8週間治療を行い, 臨床効果を検討するとともに投与前と投与8週後に後鼻漏を採取し, その成分の変化を検討した。1) エリスロマイシン単独およびカルボシステインとの併用投与により, いずれにおいても自覚症状, 他覚所見およびX線所見の改善が認められた。全般改善度において中等度以上の改善を認めた症例はE群で48.1%, EC群では42.3%であった。軽度改善以上で比較すると, E群の77.8%に対しEC群では92.3%とやや高い改善率であった。2) 慢性副鼻腔炎治療前の後鼻漏成分では, 重症例ほどシアル酸 (S), フコース (F) の濃度は高く, 治療後の改善度の高かった症例では, S/F値の低下, フコースの上昇が認められた。3) エリスロマイシン単独およびカルボシステイン併用投与による慢性副鼻腔炎の治療効果にはS/F値の低下が密接に関与することが示され, 慢性副鼻腔炎の治癒過程においてS/F値がその指標となりうることが示唆された。
著者
平川 秀幸
出版者
科学基礎論学会
雑誌
科学基礎論研究 (ISSN:00227668)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.59-65, 1997-03-31 (Released:2010-05-07)
参考文献数
15

ガストン・バシュラールの科学論 (épistémologie) の重要な特徴の一つは, 「科学的精神の心理学」とも自称しているように, 合理的で客観的と言われる科学的活動を, 探究者たちの個人的・間主観的な心理的内実への分析を通じて説明していることである。ところで客観性を心理的なものに結び付ける仕方は一般に「心理学主義」と呼ばれ, 特に英米系の形式論理学的な科学哲学の伝統では否定的に評価されることが多い。何故ならそれが, 論理学的法則を経験的で偶然的でしかない心理学的法則に還元することによって, 科学の合理性や客観性を揺るがすと考えられるからだ。同様の批判はバシュラールに対してもあり, 例えばCanguilhemは次のように危惧を表明している。「科学の進歩の条件を認識論的障害の精神分析の中に見出そうとすることは, 科学が客観性を要求するという点において, その権威を失墜させないだろうか」1。またGuttingは, 「間主観性の心理学によって知の客観性を保証する」 (RA, 12) というバシュラールのアプローチを「科学的正当化や科学的客観性についての合意説」として解釈しながら, それが「科学的客観性の基盤」の説明として不十分であると批判している2。しかしこの点で興味深いのは, そうした批判を顧慮しながらもバシュラールが, 自らのそれは「心理学主義と非心理学主義の弁証法」(ibid) 乃至「脱心理学化の心理学」(ibid, 27) なのだと言って, それと所謂心理学主義との差異を強調しつつ, 形式論理学的な立場を逆批判していることである。「論理主義が目指す知の論理的基礎の探究は, 合理主義が包摂する知の科学論的研究を汲み尽くせない」(ibid, 18), 「方法を機械的なものにしようとしたのは形式主義の知識論的誤謬である」(ibid, 25) 。では, バシュラールのこのような形式論理学的科学哲学への批判と, 「脱心理学化の心理学」という意味での〈心理学主義〉の擁護は, 一体どのように理解されたらよいのだろうか。一見それは, 客観性の基礎を形式論理学的科学哲学が論理的なものに求めたのに対し, 単に心理的なものを再定立させているようにも見える。換言すれば, 両者は客観性の「保証」や「基礎」という観念について一定の了解を共有しながら,「客観性の基礎とは何か」なる問いへの相異なる答えとして対立しているのだということだ。しかし本稿で提示したい解釈は, これとは別のものである。即ちバシュラールにおいて第一に問われるべきは「彼において『客観性の保証』とはそもそも如何なることか」という問題なのであり, 彼における「論理学対心理学」の対立構図の根底には, 科学やその客観性について, 一般的なそれとは根本的に異なる見方が潜んでいるのではないかということである。本稿の課題は, このような問題観点からバシュラールの客観性概念を検討し, 彼の〈心理学主義〉は, 彼独特の問題機制とそれに伴う客観性概念に基づいて必然的に要求されるものであり, しかも形式論理学的科学哲学からの批判をも退け得る積極的な主張であることを示すことにある。
著者
小出 貢二 間中 信也 指田 純 高木 清 喜多村 孝幸 平川 誠 野間口 聰
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.729-734, 1991-08-10

I.はじめに 血小板減少症を呈するidiopathic thrombocytopenicpurpura(以下ITP),disseminated intravascular co—agulation等の出血性素因や肝疾患が,頭蓋内出血の原因となることは良く知られている.しかしながら血小板減少症の発現は,出血性脳血管障害の急性期ばかりではなく経過中のすべての時期に認められ,血小板減少症が必ずしも出血性脳血管障害の原因として元から存在したものばかりでなく,出血後経過中の様々な原因により.二次的に生じたものも多いと考えられた.そこでわれわれは,出血性脳血管障害の経過中に認められた血小板減少症の原因とその臨床的意義について検討をくわえ興味ある結果を得たので報告する.
著者
平川 毅彦
出版者
富山大学人間発達科学部
雑誌
富山大学人間発達科学部紀要 (ISSN:1881316X)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.43-51, 2006-12

大規模化・複雑化した現代社会において、何らかの理由により生じた生活困難・生活課題を側面から支援し、個人の発達・成長を最大限まで促そうとする現代的試み。それが最も限定された意味での社会福祉である。この社会福祉という支援活動を展開するために、日常生活から引き離された「全制的施設」(“Total Institution”, Goffman,1961)ではなく、「ふつうの生活」が展開される場所としての地域社会はいかにして可能か。そして、特定少数の人々だけではなく、すべての住民にとって暮らしやすい地域社会とはどのようなものか。それが今日の「福祉のまちづくり」に求められている課題である。ところで、日本社会における「福祉のまちづくり」の源流は、高度成長期の仙台市にあるとされている。施設のみで完結する生活に不満を持つ身体障害者と学生ボランティア、そして彼らを支援するソーシャルワーカーによる最初の一滴から始まり、専門家と住民参加を旨とする当時の島野仙台市政(1958年~1984年)と結びつくことで拡がりを持ち、その活動成果はマスコミにより全国に紹介された。また、こうした活動成果が評価され1973 (昭和48)年7月には厚生省(当時)による身体障害者福祉モデル都市指定による整備が行われ、さらに同年9月には「福祉のまちづくり、車いす市民交流集会」が開催、全国から車いす利用者が仙台を訪れ、そこでの経験は日本全国へと広まり定着した。本研究では、この仙台市における「福祉のまちづくり」に関して、残された資料等をもとに、主にその源流部分を再構成する。そして、こうした作業を通じて、「福祉」と人間の成長・発達を巡って解決されなければならない課題がどのようなものであるのか明らかにしていきたい。
著者
後長 孝佳 服部 友紀 安藤 雅規 波柴 尉充 富野 敦稔 宮部 浩道 加納 秀記 津田 雅庸 平川 昭彦 武山 直志
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.546-550, 2015-06-30 (Released:2015-06-30)
参考文献数
10

近年流通している危険ドラッグの主な成分は,合成カンナビノイドと合成カチノン系化合物である。今回,合成カチノン系化合物を含有する「Sex Bomber」を繰り返し飲用し,1カ月間に2度,同様の重篤な症状を呈した急性中毒例を経験した。症例は30歳代男性。3週間前から「Sex Bomber」を飲用していた。興奮・異常行動を認めるようになり,救急搬送された。来院時,興奮・不穏・頻脈・発汗の他,乳酸アシドーシス,横紋筋融解,肝障害,急性腎障害を認め,多臓器障害の状態であった。退院後も「Sex Bomber」の飲用を続けており,1カ月後,再び前回と同様に多臓器障害の状態で搬送された。2回とも経過中にDICに陥ったが集中治療管理により,約1週間で退院となった。合成カチノン系化合物は,組織移行性が高く作用が強力であるため,発症は急速かつ激烈である。急性中毒症例では多臓器不全をきたし死亡する例も散見されており,これら化合物に対する知識に基づいた的確な管理が必要である。
著者
中園 聡 平川 ひろみ
出版者
鹿児島国際大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究課題では遺跡の発掘調査を実施し,調査の細かな過程や遺物の出土状況等について徹底した3D計測するなど,実践を通じてこれまでにないレベルでの高密度記録に挑む。実例をもって,その実現と展開の可能性を広く示し,調査時から始まる情報の陳腐化という難問への対処や再現可能性,データの利用可能性等を追求する。また,取得データを活用した研究上・教育普及上の活用例の一端も示す。
著者
神澤 公男 平川 一臣
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.124-136, 2000-02-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
27
被引用文献数
4 8

南アルプス・仙丈ヶ岳緬の薮沢では,氷河地形と鞭物薩づけば最終糊の三っの異なる氷河前進期ないしは停滞期が認められた.氷河は最も古い薮沢1期に,最前進し,その末端高度はおよそ標高2,250m. であった.薮沢II期の氷河は標高2,550m付近まで再前進した.薮沢皿期の氷河の末端高度は標高2,890mで,カール内に留まった.i薮沢1期は最終氷期の初期~中期を,薮沢II期,i薮沢皿期は後期を不すと考えられる. 泥質の厚い薮沢礫層の堆積は,完新世初頭頃,急激に生じた.その形成は氷河作用とは無関係で,山岳永久凍土の融解に関連した山地崩壊による可能性がある.
著者
平川 晃弘 浅野 淳一 佐藤 宏征 手良向 聡
出版者
日本計量生物学会
雑誌
計量生物学 (ISSN:09184430)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.85-101, 2019-01-31 (Released:2019-05-11)
参考文献数
62
被引用文献数
1 1

In oncology, next generation sequencing and comprehensive genomic profiling have enabled detailed classification of tumors using molecular biology. It, however, may be unrealistic to conduct phase I-III trials according to each subpopulation based on the molecular subtypes. Common protocols that assess the combination of several molecular markers and their targeted therapies by means of multiple sub-trials are required. These protocols are called “master protocols,” and are drawing attention as a next-generation clinical trial design. In this review, we provide an overview of clinical trials based on master protocol including basket, umbrella, and platform trials along with their recent examples. We also discuss the statistical challenges encountered in their application.
著者
平川 亘
出版者
認知症治療研究会
雑誌
認知症治療研究会会誌 (ISSN:21892806)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.2-10, 2022 (Released:2022-03-05)
参考文献数
4

認知症治療30 年の診療経験から現在の認知症治療の問題点を考える.認知症が痴ほう症と 呼ばれていた1990 年代に使える薬剤は脳循環代謝改善薬しかなく,抗精神病薬を使った興奮症状の 調整が主であった.1999 年になりアルツハイマー型認知症の症状進行抑制薬としてドネペジルが登 場したが,期待されたものの治療成績は良くなく,自験例における評価では過去の治療成績に劣った. ドネペジル登場以降,治療開始後に易怒性や妄想が悪化する症例が増え治療が困難となった.入院で は肺炎や骨折などで入院する患者の中に副作用症例を多く経験しドネペジルを止めることで歩けな かった患者が歩けるようになる,また摂取不能の患者が逆に食事が取れるようになる改善例が続いた. これらの副作用症例は全て発売会社に報告したが臨床試験には無い報告であるとされた.発売後の臨 床経験からドネペジルを用いる治療は副作用を回避する必要があることがわかった.そこで2004 年 よりドネペジル半量投与で治療したところ,一年後評価では半量治療の方が,規定量治療よりも有効 率が高く,悪化率が低かった.2011 年には新規薬剤としてガランタミン(レミニール),リバスチグ ミン(イクセロン,リバスタッチ)・パッチ,そしてメマンチン(メマリー)が登場したが,治療薬 が増えたことで治療機会が増え副作用症例が激増した.そのため著者は副作用の啓蒙のために地域で 勉強会を行うようになった.この10 年余の活動により,地域で規定量で処方する医師は減り適量で の使用法が浸透し,治療効果を上げながら副作用症例は激減した.30 年の経験で学んだ結論は,認 知症患者を既存のエビデンスや診療ガイドラインで良くすることはできないということである.薬剤 の副作用を回避しながら,必要な認知症患者にのみ必要な量を使うという治療法が求められる.
著者
渕 祐一 成松 浩志 仲摩 聡 寿 久文 平川 英敏 鳥島 嘉明 野口 玉雄 大友 信也
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.32, no.6, pp.520-524_1, 1991-12-05 (Released:2009-12-11)
参考文献数
8
被引用文献数
8 10

これまで毒性が不明とされてきたホシフグについて, フグ毒試験を行って部位別の毒性を検討した. 大分県沿岸産30個体及び山口県近海産1個体の計31個体 (雄16個体, 雌15個体) 中, 皮膚の有毒個体出現率は雄12.5%, 雌33.3%で雌の方が高く, その毒力レベルは雌雄とも弱毒であった. 卵巣の同出現率は80.0%で, その毒力レベルは強毒を示した. また, 消化管は雌の1個体が弱毒を示した. 他方, 筋肉, 肝臓及び精巣はいずれも無毒であった. 以上の結果から, ホシフグは皮膚, 卵巣, 消化管に毒性が認められる有毒種であることが明らかになった.
著者
平川 力 米良 信昭 佐野 泰三 根岸 信彰 竹内 浩士
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.129, no.1, pp.71-92, 2009-01-01 (Released:2009-01-01)
参考文献数
52
被引用文献数
11 12

Photocatalysis has been widely applied to solar-energy conversion and environmental purification. Photocatalyst, typically titanium dioxide (TiO2), produces active oxygen species under irradiation of ultraviolet light, and can decompose not only conventional pollutants but also different types of hazardous substances at mild conditions. We have recently started the study of photocatalytic decontamination of chemical warfare agents (CWAs) under collaboration with the National Research Institute of Police Science. This article reviews environmental applications of semiconductor photocatalysis, decontamination methods for CWAs, and previous photocatalytic studies applied to CWA degradation, together with some of our results obtained with CWAs and their simulant compounds. The data indicate that photocatalysis, which may not always give a striking power, certainly helps detoxification of such hazardous compounds. Unfortunately, there are not enough data obtained with real CWAs due to the difficulty in handling. We will add more scientific data using CWAs in the near future to develop useful decontamination systems that can reduce the damage caused by possible terrorism.
著者
松田 実 鈴木 則夫 長濱 康弘 翁 朋子 平川 圭子
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.141-155, 2006 (Released:2007-07-25)
参考文献数
31
被引用文献数
5 2

文字の読み書きは後天的な能力であるから,その障害機序を考える際には,文化によって異なる文字の特性をふまえた検討が必要であり,欧米語の認知心理学的研究の成果をそのままの形で日本語に持ち込むことは危険である。欧米語と日本語の違いとして,欧米語では読み書きの単位が単語であるのに対して日本語では文字レベルにあること,欧米語は音声言語が中心であるが日本語は文字中心の文化であり,日本人は漢字だけでなく仮名をも話す (聞く) こと,の 2点が重要である。音韻失読の自験 4例と文献例の検討から,仮名文字列音読の処理過程を考察し,仮名非語音読障害の機序として音韻表象の障害以外に,仮名 1文字レベルにおける文字音韻変換の脆弱性や系列的処理の困難さが存在する可能性を指摘した。また語義聾自験例の観察から,語義聾では低次の音韻表象から高次の音韻表象に到達する段階に障害があり,音韻表象が文字によって安定化するという仮説を述べた。