著者
梶原 幹弘
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.50-55, 1989-02-01
被引用文献数
4

現実の幹曲線が相似であれば完満度は等しいとみなし、現実の幹曲線を直径方向、樹高方向ともに樹高分の1に縮めた一種の相対幹曲線における直径の減少度を完満度と定義することを提案した。この相対幹曲線は正常相対幹曲線とこれに対応する形状比とに分解でき、前者の後者に対する商として与えられる。多くの伐倒木での測定値を用いて、スギ、ヒノキ、アカマツ、カラマツの同齢林における完満度の変化を調べた結果、次のことがわかった。1)幹の上部では完満度の経年変化は比較的小さかったが、一定の樹齢までは幹の下部で完満度が著しく大きくなった。2)高い度管理状態のものほど完満度が大きかった。3)スギにおける密度管理状態による完満度の差は、樹種間におけるそれよりも大きかった。4)完満度の垂直的変化のパターンには樹種間における差異が認められた。これらの結果からすると、ここに提案した完満度の定義と表現は実用的に有効であるといえる。
著者
福嶋 誠宣 米満 洋己 新井 康平 梶原 武久
出版者
日本管理会計学会
雑誌
管理会計学 : 日本管理会計学会誌 : 経営管理のための総合雑誌 (ISSN:09187863)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.3-21, 2013-03-31

本論文の目的は,経営計画の有用性について検討することにある.現在では,経営計画はマネジメント・コントロール・システムの基礎的な構成要素として理解されるようになっている.実際,我々が行ったレビューの結果でも,多くの管理会計の教科書が経営計画に言及していた.しかし,マネジメント・コントロール・システムとしての経営計画の有用性に関する経験的な知見の蓄積は十分とはいえない.そのためか,経営計画に関して,教科書間で異なる説明がなされている点も存在するというのが現状である.そこで本論文では,経営計画の諸要素が,企業業績に与える影響を探索的に検証した.その結果,経営計画の策定目的や更新方法が,適切な資源配分の評価尺度といえる総資産利益率(ROA)に有意な影響を与えていることが明らかとなった.
著者
梶田 真
出版者
経済地理学会
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.1-18, 2008-03-30
被引用文献数
2

わが国において,公共事業が重要な地域間所得再分配機能を果たしている理由の一つは,地場・中小業者に対する様々な保護制度の存在にある.本稿では,国が発注する公共事業において,これらの保護制度を規定している官公需確保法の強化との関係から,制度運用変化の実態について分析を行った.さらに,官公需確保法の強化が地場の土木業者に与えた影響についても考察した.事例研究として取り上げたのは,中国地方建設局および島根県内の土木業者である.中国地方建設局では,官公需確保法の強化による分離・分割発注の増加や分任官契約限度額の引き上げによって,発注の主体が本局から地方事務所にシフトしていった.発注できる金額に上限がある地方事務所の入札では,主として指名競争入札が用いられ,原則的に各地方事務所の管轄域内の業者のみが指名されたため,地場業者の受注機会は拡大した.しかし,指名業者間での受注調整により,受注機会は管轄域内の大手業者を中心にバランスを取って配分された.それゆえに,官公需確保法の強化は,有力な業者の育成に寄与したのではなく,県内大手業者の平均的な底上げをもたらした,と結論づけられる.
著者
今井 佐恵子 福井 道明 小笹 寧子 梶山 静夫
出版者
京都女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究では「食べる順番療法」の長期間の影響を調べるため、栄養指導を実施した介入群と対照後の血糖値、HbA1cおよび動脈硬化の進展をあらわす頚動脈内膜中膜複合体肥厚度(IMT)を比較検討した。平均4.4年後のHbA1cは介入群においてベースラインより有意に低下したが、対照群では変化がみられなかった。Max IMTおよびmean IMTは両群とも介入前後で統計的有意差はなく、群間の差もみられなかった。両群とも長期間のIMTに変化がみられなかったのは、食事療法だけでなく薬物による血圧、血清脂質管理によってIMTの経年変化が抑制されたと考えられる。
著者
春間 賢 隅井 浩治 森川 章彦 上村 直実 忌部 明 木村 学 徳毛 健治 吉原 正治 豊島 仁 井上 和彦 松原 秀樹 梶山 梧朗 松本 隆允
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.86, no.4, pp.851-857, 1989 (Released:2007-12-26)
参考文献数
30
被引用文献数
5 5

胃底腺性過形成性ポリープ (胃底腺ポリープ) の胃酸分泌, 血清ガストリン値および血清ペプシノーゲン1 (PG1) 値について, 健常者と腺窩上皮性過形成性ポリープ (腺窩上皮ポリープ) の値と比較検討した. 胃酸分泌と血清PG1値は健常者と胃底腺ポリープでは差がなく, 腺窩上皮ポリープでは著しい低値を示した. 一方, 血清ガストリン値は, 健常者と比較すると, 胃底腺ポリープではやや低値を, 腺窩上皮ポリープでは著しい高値を示した. さらに, 組織学的な検討とあわせ, 胃底腺ポリープは過形成性ポリープの一つに分類されるが, 胃底腺に高度の萎縮をともなう腺窩上皮ポリープとは異なり, 萎縮のない胃底腺粘膜に発生していることを明らかとした.
著者
鈴木 正嗣 梶 光一 山中 正実 大泰司 紀之
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.505-509, 1996-06-25
参考文献数
29
被引用文献数
13

北海道東部産のエゾシカ胎子87例で胎齢を推定し, 受胎日の変異と外部形態の発達過程とを明らかにした. 胎子の体重(W)と胎齢(T)との間には, T=(√^3<W>+2.730)/0.091関係式が認められた. この式を用いて胎齢を算出し, 捕殺日からの逆算により求められた推定受胎日は, 10月7日から翌1月17日の範囲で変異していた. しかし, その多くは10月中旬から11月上旬にかけて集中していた. また, 11月下旬以降に受胎したと思われる胎子9例のうち, 6例が1歳メスから採取された標本であった. これは, 北海道東部個体群の良好な栄養状態が, 1歳メスの成長と性成熟を冬期間にも可能にすることを示唆している. 胎子の外部形態においては, 感覚毛や一般被毛の発現時期と白斑の発現時期とが重複していなかった. また, いくつかの発達過程上の変化が, 特定の体重で起こることも確認された. これらの特性を利用することにより, 胎子成長は4段階のステージに分割できた. 各ステージにおける胎子の外部形態的特徴は, エゾシカ以外のニホンジカでも簡便な胎齢推定に役立つと考えられる.
著者
梶 功夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SWIM, ソフトウェアインタプライズモデリング (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.85, pp.29-34, 2006-05-23
参考文献数
8

近年技術経営の必要性が叫ばれている。技術系バックグラウンドを持つ人材に対しての経営戦略立案能力の育成が要請されており、経済産業省や文部科学省が助成金などを通じて、その育成及び普及に力を注いでいる。それに伴い、首都圏の国立大学、私立大学を中心として教育手法の確立や、ケース教材の開発などが活発に行なわている。しかしながら同様のことを地方で展開しようとすると、指導できる人材が少ないとか、教材テーマが地域企業とかけ離れ、身近な感覚をもてないなど、環境の不一致が日立つ。そこで、地域版育成プログラム普及のアプローチとして、地域企業をテーマとした教材開発に取り組み、情報系企業のテクノウイング(株)による「ポイントカードを利用したCRM事業展開戦略」とセラミックス製造の(株)日本セラテックによる「最先端加工技術による顧客ニーズ対応型セラミックス事業戦略」について紹介する。
著者
井上 悟 田川 英生 永松 公明 梶川 和武
出版者
日本水産工学会
雑誌
水産工学 (ISSN:09167617)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.39-46, 2004-06-07

前の3報に続いて,海中に設置した電極に微弱電流を流すことにより,海洋生物の付着を防止する試みを行った。水産大学校桟橋下と近くの海面に測定板を沈め,測定板への生物付着状況を調べた。2000年5月30日から10月2日までの4ケ月間(第1期)と,同年10月11日から翌年1月12日までの3ケ月間(第2期)に分けて実験を行った。電極には白金メッキされたチタン細線を使用した。あらかじめ,電極間隔および電極長と電流との関係を調べ,電極間隔50cm・電極長3mmの粂件のもとで,8V・数十mAの電流を常時印加した。海中に設置された電極に流れる電流は,電極間隔にはほとんど依存せず,電極長に大きく依存することが確認できた。8V・数十mAの電流を常時印加することにより,第1期と第2期を通じて,付着性の動物,特にフジツボに対しての周年の付着防止効果が確認された。ただ,第2期では,海藻類に対しての付着防止効果は認められなかった。しかし,海藻以外の付着生物(特に動物)は明らかに対照区に多く,8V・数十mAの電流による付着防止効果が認められた。
著者
井上 吉世 石津 日出子 伊藤 知子 大鹿 淳子 梶本 五郎 竹井 よう子 高村 仁知 中原 満子 西池 珠子 林 淑美 原 知子 深見 良子 福井 広子 的場 輝佳 水野 千恵 村上 恵 夜久 富美子 湯川 夏子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.299-304, 2003-08-20
参考文献数
17
被引用文献数
3

A collaborative study was designed to examine the applicability of a sensory evaluation to determine the life span of frying oil. Soybean oil was heated at 170℃ in an electric fryer. Two types of food, chicken fillet and potato, were deep-fried with or without breaded batter every 15 min. Frying was continued until the flavor score of the oil had dropped to 3. A sensory evaluation of the frying oil and each fried food was then carried out. The life span of the frying oil to reach the flavor score of 3 was slightly longer with breaded batter than without using the batter coating. The color of the frying oil did not exhibit any degradation, especially when potato was fried. It was difficult to judge the degradation by the appearance of each fried food coated with breaded batter. However, the flavor score of the frying oil corresponded to the flavor score of the fried foods coated with breaded batter. The flavor and taste of the foods fried in the oil with a flavor score of 3 were not good. These results suggest that the flavor score of frying oil is useful to determine the life span of frying oil when a breaded batter coating is used.
著者
西脇 巨記 本多 弓[ジ] 岸川 博隆 田中 宏紀 谷脇 聡 成瀬 博昭 伊藤 和子 梶 政洋
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.789-793, 1997-03-01
被引用文献数
19 29

症例1は75歳の男性で, 粘血下痢便を主訴として他院に入院, 潰瘍性大腸炎の診断にて諸検査施行し, 大腸に穿孔を認め緊急手術を施行した. 摘出標本よりアメーバ虫体を認め当院転院となった. 症例2は28歳の男性で, 粘血下痢便を主訴とし他院通院し潰瘍性大腸炎の診断にて投薬を受けていたが改善しなかったため, 当院を紹介され便培養にてアメーバを認め入院となった. 入院後2日目に腹痛増強し, 腹部単純写真にてfree-airを認め緊急手術を施行した. アメーバ赤痢は男性間の同性愛行為により伝播し近年増加傾向にある疾患である. いったん穿孔すると非常に予後の悪い疾患となるため粘血下痢便を主訴として来院する患者に対しては本疾患を念頭にいれる必要があると考え報告した.
著者
濱崎 圭三 岡山 雅信 三瀬 順一 梶井 英治 鶴岡 浩樹 濱崎 圭三
出版者
自治医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

【目的】地域医療および総合診療を担うための医師養成の卒前教育における地域医療現場での臨床実習(地域医療実習)の効果的なプログラムの作成である.【方法】デザインはアンケート調査(横断研究)である。対象は医学部5年生で、調査項目は、実習施設と内容、実習の感想、実習前後の地域医療や将来への思いである。実習施設と内容以外の項目はVisual Analogue Scale (VAS)を用いた.【結果】回答率は97%,96%(H12,H13)であった.実習施設は病院のみが42%,31%,診療所のみが22%,14%,病院と診療所が36%,55%であった。実習内容もすべての学生が外来診療以外の地域医療活動を実習した.「実習は意義がある」のVASスコア(平均±SD)は77.3士24.3,86.8±16.3,また「地域の継続が必要である」は76.7±22.6,86.0士20.4と高く,学生から,実習は肯定的な評価を得た.地域医療への動機付けの点で重要な項目である実習前後で「地域医療は夢がある」のVASスコアは7.4,8.2,「地域医療はやりがいがある」は8.1,5.3と増加した(P<0.05).H12年度の結果から,(1)病院と診療所で実習を行う,(2)多くの地域医療活動を実習させるなどの実習プログラムがHl3年度に推奨された.H13はHl2に比べ「実習は意義がある」「実習の継続は必要である」「地域医療に夢がある」でそれぞれ9.6,9.2,5.7と高かった(P<0.05).また外来診療や病棟実習以外の地域医療活動9項目中5項目以上実施した群は4項目以下の群に比べ,「実習は意義がある」「地域医療を担う自信がある」「行政の人と話すのが苦にならない」がそれぞれ8.1,15.1,11.8と高かった(p<0.05).【まとめ】地域医療実習は学生の評価はよく,また地域医療への動機付けの点で効果があったと思われる.H13に推奨された実習プログラムにより,その教育効果が向上したと考える.
著者
梶川 嘉延 野村 康雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.79, no.11, pp.1808-1816, 1996-11-25
参考文献数
18
被引用文献数
51

本論文では線形ひずみおよび非線形ひずみを同時に除去する非線形逆システムの適応Volterraフィルタを用いた時間領域でのオフライン設計法を提案する.従来の線形フィルタによる線形ひずみの除去法では,線形ひずみの除去は行えるが,それに伴い非線形ひずみが増大するという欠点を有していた.本論文では,まず線形ひずみの除去によって非線形ひずみが増大するメカニズムをVolterra理論を用いて理論的に明らかにする.また,非線形システムの縦列接続によって生じる信号成分をVolterra理論を用いて導出することにより,非線形ひずみを除去する非線形逆システムの設計法を与える.提案法では非線形ひずみを最大70dB低減でき,更に設計時間の短縮化も実現している.
著者
梶 博史
出版者
近畿大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

筋と骨ミネラル代謝の相互関連を解明するために。筋における骨化調節因子および筋から産生され、骨形成促進的に作用する体液性因子の同定を試みた。筋由来の細胞と骨化シグナルを増強させた細胞で網羅的遺伝子解析をおこない、骨形成活性を有する因子を抽出した。そのなかで、Tmem119は筋骨化を局所性に誘導する因子として期待され、オステオグリシンおよびFAM5Cは筋から産生される新規の体液性骨形成因子の候補として、今後の骨粗鬆症治療薬開発の標的としてさらなる研究を進めたい。
著者
梶川 正弘 卜蔵 建治
出版者
日本自然災害学会
雑誌
自然災害科学 (ISSN:02866021)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.46-56, 1989-09-30

A severe disaster was caused by gusts and hailfalls in Aomori and Miyagi Prefectures on September 7,1986. This report outlines meteorological conditions and damages in relation to the hailstorms. The followings are the main results. 1) The gusts accompanied by hailfalls were brought about by a group of cumulonimbi related mainly to the unstable stratification by advection of upper cold air. 2) The damage due to gust in Aomori Prefecture was the drop of apple fruits and the lodging of apple trees by a tornado. 3) Most of the damages in Miyagi Prefecture were the injury of heads of rice plants by hailfalls.
著者
梶谷 康介 中別府 雄作
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究の目的は多機能分子であるレクチンタンパクの一種、ガレクチンの中枢神経における発現・機能に注目し、ガレクチンと精神疾患との関係を明らかにすることである。我々は本研究で以下の4つのことを明らかにした。1.マウス海馬において、ガレクチン-1が海馬の介在神経に発現する(ガレクチン-1陽性細胞の77%が介在神経マーカーであるソマトスタチン陽性)、2.マウス海馬における介在神経数はガレクチン-1欠損マウスと野生型マウスに差を認めない、3.統合失調症患者における血清ガレクチン-3濃度は健常者より優位に上昇している、4. 統合失調症の一部の精神症状とガレクチン-3濃度は正の相関を示す。