著者
高橋 康介 小川 健二 北川 智利 金子 沙永
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2023-04-01

本研究では知覚像が従来考えられているよりも自由に制御できる可能性について実証研究を進める。構造化を抑制して未統合の感覚信号にアクセスし高感度の知覚像を得る脱構造化現象と、心的イメージと知覚像を合成する信念可視化現象という2種類の知覚像制御過程の解明を目指す。前半は熟達者を対象とした知覚心理学・脳科学研究により知覚像制御の現象理解、心的過程と神経基盤の解明、予測符号化の枠組みでの理論化を行う。後半は非熟達者を対象に知覚像制御の熟達過程や個人差・適性を検討する。以上の研究を通して「不自由でままならぬ」という従来の知覚観から脱却し、ある程度まで自由に制御できる知覚像という新しい知覚観を提案する。
著者
齊藤 稔 青木 孝夫 欒 竹民 幣原 映智 長田 年弘 安西 信一 原 正幸 金田 晋
出版者
広島市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

本研究は東西の伝統的学芸の価値概念である西洋の自由学芸、日本の芸道、中国の六芸を対象とし、解釈学的に比較することを意図した比較芸術学的共同研究であり、広島市立大学をはじめ広島大学その他の大学の専門家の協力をえて推進した。ヨーロッパにおいては古代から中世を経て近世・近代に至るまで7自由学芸(septem artes liberales)、文法、修辞学、弁証術、数学、幾何学、天文学、音楽はアルス(ars)として、技術・芸術と学問の不可分の領域と見なされ、哲学とともに人間性を探究するための、また教育と教養を培うための学芸であった。古代ローマ時代のキケロはそのような教育と教養が人間存在にとって必要不可欠な徳としての気品(dignitas)を生み出すことを強調し、ルネッサンスにおいてペトラルカは人間社会のためにそのような倫理の必要を説いた。これはまた造形芸術の美質であり目的でもあった。他方レオナルド・ダ・ヴィンチは絵画を自由学芸と同列に置き、絵画は学問であるとして「絵画学」(scienza della pittura)を主張した。というのは絵画は遠近法や解剖学や光学などを本質的に必要とするからである。日本の芸道は民族的な美的意識であり、芸術の思念と実践を統合する価値概念であった。これはあらゆる美的な生活芸術を貫く芸と術の道としての芸術的営為であり、教化されるべき様式として把握された。また高い徳と美的に教育された人間存在の教養を形成するために求められた。そこでは制作や表現においても、享受や理解においても、つねに帰一すべき根源的自然、あるいは神的超越者を自覚して精進する。芸道は真・善・美を求める人にとって高徳の人間形成のための、また美的形成、美的教養として望まれる必須のアルス(学芸)であった。中国ではさらに古くから六芸として、礼、楽、射、御、書、数の教養思想があり、基本的には人間として修得すべき教養や道徳であり、技芸や学芸であった。その修得は文学や哲学から詩や書・絵画の技術的習練にも結びついた。それは絵画では書画同体、十八画法などの奥義の技法をも含んでいる。本共同研究はこれら3つの概念を比較学的に研究し、それらの類似と相違を明確にするように試みた。それによって3つの美的システムが学芸の領域に属するだけではなく、真・善・美の価値意識の普遍的理念を伴う人間生活全般に深く関わることを理解することができた。そしてこの総合研究の成果は学際的研究への貢献として、それら伝統的学芸とその解釈が美的真実への感性的理性的認識に到達するものであることを示しえたと考えている。
著者
金 史信
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.646-651, 2018-09-15 (Released:2018-11-08)

換気・気管挿管のいずれも不可能な状況(CVCI)かつ患者が心停止に至るという極めてまれな事態に陥った場合にどのように対応すればよいだろうか? 残念ながらCVCIかつ心停止となった時点で患者を救命することはほぼ不可能である.日本蘇生協議会が発行した心停止アルゴリズムでは胸骨圧迫による循環の維持が最優先事項であるが,外科的気道確保が必要となる状況は想定されていない.現時点で有効な対応策はなく居合わせたスタッフは混乱する.その結果,患者は死に至る.CVCI対応中に心停止となった場合は患者の命を失うことを覚悟しておくべきである.
著者
津田 良夫 金 京純
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.74, no.3, pp.113-118, 2023-09-25 (Released:2023-10-18)
参考文献数
36
被引用文献数
1

Mosquito collections using dry-ice traps were conducted at Izumo, Shimane, Japan, from May to October 2008. Trap sites with different surrounding environments (reservoir, riverside vegetation, a shrine in rice fields) and a breeding colony of heron were selected. A total of 4,890 mosquitoes of 16 species in 6 genera were collected by dry-ice traps. Among them Culex tritaeniorhynchus, Cx. pipiens pallens, Aedes albopictus, and Cx. bitaeniorhynchus were the dominant species. The species composition of Cx. tritaeniorhynchus was the highest in riverside vegetation, and Cx. pipiens pallens showed a high species composition at the shrine surrounded by rice fields. The species diversity was compared using the Shannon–Weaner Index. The species diversity was the highest at the breeding colony of heron and lowest in riverside vegetation. A total of 312 females were collected by a sweep net at the breeding colony of heron and 21.5% of them had fed on a blood meal. The proportion of fed females was the highest in Cx. pipiens pallens (80.8%) and next was Uranotaenia novobscura (61.5%) and then Cx. bitaeniorhynchus (30.0%). The breeding colony of heron was found to be an excellent entomological study site to investigate ecological interactions between vector mosquitoes and wild birds.
著者
福田 桂子 杉山 広 熊沢 秀雄 多々良 成紀 金崎 依津子
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.21-24, 2017-03-31 (Released:2017-06-08)
参考文献数
15

高知県立のいち動物公園で飼育されていたマンドリル(Mandrillus sphinx)1頭が死亡し,肺に形成された虫嚢に吸虫の寄生を認めた。成虫と糞便内虫卵の形態および成虫DNAの塩基配列から,虫体は宮崎肺吸虫(Paragonimus miyazakii)と同定された。マンドリルは,飼育施設に侵入したサワガニ(Geothephusa dehaani)を摂食して感染したと考えられた。本事例は,日本においてヒト以外の霊長目が宮崎肺吸虫に自然感染した初めての報告である。
著者
定金 香里
出版者
大分県立看護科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

医療現場や家庭、商業施設で使用されている手指消毒薬の有効成分10種について、アトピー性皮膚炎を増悪するかモデルマウスを用いて検討した。炎症を増悪したのは、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、トリクロサンであった。統計的に有意では無かったが、ポビドンヨード、エタノールも増悪傾向を示した。増悪を認めなかったのはグルコン酸クロルヘキシジン、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、アクリノール、クロロキシレノール、イソプロピルメチルフェノールであった。増悪には、炎症細胞の活性化や炎症に関わるタンパク産生の亢進が関与していた。
著者
平野 滋 杉山 庸一郎 椋代 茂之 金子 真美
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.122, no.8, pp.1113-1117, 2019-08-20 (Released:2019-09-05)
参考文献数
30
被引用文献数
1

喉頭・咽頭逆流症 (LPR) は, 慢性的な咽喉頭炎から音声障害を来し得る. 胃酸による逆流性炎症が後部声門の肉芽腫や潰瘍の原因となることは広く知られているが, 近年, LPR では胸焼けや吃逆などの胃食道逆流症 (GERD) 症状は10~20%程度であるのに対し, 音声障害は約70%にまで起こるとされる. 音声障害の病因は, 慢性的な酸暴露による上皮, 粘膜固有層の損傷が主体で, 上皮の肥厚・角化, 潰瘍, 肉芽, 溝の形成, 粘膜固有層の炎症と乾燥などが指摘されている. 動物モデルにおいては, 喉頭に酸やペプシンを暴露すると, 肉芽腫の発生や粘膜上皮内の炎症, 扁平上皮の過形成や潰瘍, 線維化を来すことが確認され, また, LPR 患者の咽喉頭の生検組織において, 声帯上皮, 喉頭前庭, 後部声門の上皮内のペプシンの存在, 細胞間間隙の増大, 粘膜保護作用のある炭酸脱水素酵素やカドヘリンの減少などが報告されてきた. これらの炎症が音声障害を引き起こすと同時に, LPR 患者の発声はしばしば過緊張となり, 筋緊張発声障害を招くことが多い. 最長発声持続時間 (MPT), jitter, shimmer, 雑音成分などの異常を来す. 歌手は LPR の高リスク群とされている. 歌唱に腹圧のサポートが必須で, 高い腹圧によって胃酸の逆流が生じやすいこと, パフォーマンスの前は常に強いストレスにさらされること, 食事や飲酒に無頓着であることなどが原因で, 嗄声のほか音声疲労や歌唱中の声の途切れ, 痰の引っ掛かりなどを訴えることが多い. LPR による音声障害の治療は, 食事様式の適正化, ライフスタイルの改善, 胃酸逆流の抑制で, 胃酸分泌を強力に抑えるプロトンポンプ阻害薬 (PPI) は多くの場合奏効する. これらの治療により, jitter, shimmer, HNR, VHI, GRBAS, RSI, RFS などの改善が多数報告されている. 音声障害患者において, 酸逆流の関与の有無について的確に診断し治療することが重要である.
著者
岡田 俊樹 前田 安彦 金内 誠 角田 潔和 鈴木 昌治 小泉 武夫
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.94, no.10, pp.849-852, 1999-10-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

青ヶ島の芋焼酎製造に用いられる粉状麹の諸性質を調べた。(1) 粉状麹の製麹過程中の水分含量の変化は, 引込み時に45.0%であったものが, 7日目の出麹時は, 32.0%まで減少した。これは, 一般的な散麹の値より10%程度高かった。(2) 粉状麹の製麹中の酸度は, 出麹まで増加し続け, 4.0meに達した。これは, 一般的な焼酎用麹の酸度よりわずかに低いものであった。(3) 粉状麹の出麹時の各種酵素力価は, AAは1, 100U/g・麹, GAは260U/g・麹であり, 白麹菌を用いて製麹した焼酎用麦麹と比べて, AAで約12倍, GAで約1.4倍高かった。APは11,900U/g・麹で, 焼酎用麦麹と同等であり, ACPは9, 800U/g・麹で, 約3倍高い値を示した。また, 耐酸性α-アミラーゼは530U/g・麹だった。(4) 粉状麹の製麹過程中の細菌酸度は, 製麹開始後, 4日目に3.1meに達したが, その後減少し, 出麹時は2.4meだった。これは, 一般的な散麹の値より高い値だった。以上の結果より, 青ヶ島の芋焼酎製造に用いられている粉状麹は, 酸度が高いことや各種の酵素力価より, 焼酎用麹として十分な品質を有していることが明らかとなった。
著者
金子 和広 冨士田 裕子 横地 穣 加藤 ゆき恵 井上 京
出版者
植生学会
雑誌
植生学会誌 (ISSN:13422448)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.31-41, 2022 (Released:2022-06-28)
参考文献数
38

1. 北海道新篠津村の石狩泥炭地内に残存する小規模な湿地では,1960年代以前に掘削された排水路の影響で乾燥化が進行しており,保全のために2006年から毎年,5月から8月の期間に湿地への灌漑用水の導水が行われている.導水が与えた影響を評価するため,導水以前,導水初年,導水開始13年後の地下水位と植生を比較検討した.2. 導水期間中の地下水位は,導水初年・13年後においていずれの地点でも導水以前から平均で30 cm程度上昇した.地下水位の変動パターンは地形によって異なり,窪地では導水期間中に水位が湛水状態を保った一方,窪地以外の地下水位は最高でも地表面から20 cm以下だった.3. 導水開始13年後の植生について,窪地では草本層でヨシを主とする湿生在来種が優占し,導水以前に出現した非湿生外来種のオオアワダチソウが消滅した.窪地以外では,高木層で優占したシラカンバの大半が枯死した場所があったものの,草本層に占める湿生種の割合は50%未満で窪地よりも低く,湿地の乾燥化後に侵入したと考えられるワラビやオオアワダチソウが多くの場所で増加した.4. これらの結果から,地形・地下水位・植生は密接に関連することが示された.窪地では導水がもたらす湛水状態が湿生植物の優占する群落の維持や復元に十分効果的であったが,窪地以外での地下水位上昇は,湿地保全の観点からは十分な水準に達していないと結論付けられた.
著者
上田 繁 西村 国俊 金谷 保彦
出版者
公益社団法人 精密工学会
雑誌
精密機械 (ISSN:03743543)
巻号頁・発行日
vol.44, no.523, pp.874-879, 1978-07-05 (Released:2009-06-30)

上記各部の検討結果をもとに, 総合評価試験の結果, 表2に示すごとく世界最高水準の性能を確認した.さらに作図能率評価のため, 図形パターンを定めて, 一般市販機と作図時間の比較を行い図16の結果を得た.装置性能の中で作図速度 (X, Y軸速度) は直線図形の作図時間短縮に, また加速度は曲線, 文字, 破線等の短い線分から成る図形の作図時間短縮に, ペン応答時間は文字, 破線の作図時間短縮に寄与するため, 円, 文字, 直線パターンを選んで比較を行ったものである.この結果は, 市販のフラット形, ドラム形等いずれの機種よりも作図時間が短いことが確認でき作図能率向上が達成された.今後の課題としては, 高速化に十分追従する筆記具の開発, 、作図データの処理時間の一層の短縮および高加速時の2軸相対運動の同期制御の向上等があげられる.
著者
金菱 清
出版者
関西社会学会
雑誌
フォーラム現代社会学 (ISSN:13474057)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.137-148, 2018 (Released:2019-05-11)
参考文献数
9

ライティング・ヒストリーは、調査者の介在を必要としながらもその関与を無効にし、当事者のなかで抑圧されていた無意識に対して、当事者が自らの手で意味のある「歴史」として刻むことができる新たな実践です。現場の当事者は、こんなことを話すべきではない、書くべきではないという形で感情を抑圧している場合があります。いわゆる沈黙状態です。それを二人称で亡き人に対して「手紙」という形で書き記してもらいます。予め書かれたものがあってそれを分析するといった書かれた(written)文章資料主義ではなく、書こうとする(writing)意思に重点を置きます。ライティング・ヒストリーは、自分でわけのわからないぐちゃぐちゃしていた感情を自分のなかで咀嚼しながらなんとかそれを理解可能なものへと導いてくれます。そのことで、これまで歴史のなかで沈黙を強いられてきた問題が何であるのかを明らかにする試みです。
著者
金 順玉 木下 幸 鈴木 美成 古田 直紀
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.58, no.7, pp.617-622, 2009 (Released:2009-09-03)
参考文献数
18
被引用文献数
3 3

本研究では,大気粉塵(airborne particulate matter : APM)試料中の全硫黄(S)の定量法として,誘導結合プラズマ発光分析法(ICP-AES)を用い,水抽出されるSと残査を酸分解して得られるSの和を求める手法を開発した.開発した手法により,大気粉塵標準物質(NIST SRM-1648)中Sを精確に定量できた.本手法を実際のAPM試料で応用した結果,APM試料中Sは,粒径が小さくなるにつれ濃度は増加し,水溶性のSの割合も多くなった.イオンクロマトグラフィー(IC)による解析の結果,2 μm以下のAPM試料中のSは99% が水溶性で,その化学形態は硫酸アンモニウム (NH4)2SO4であることが明らかになった.
著者
田岡 正宏 山本 千恵子 金 成泰 高杉 昌幸
出版者
The Japanese Society for Dialysis Therapy
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.34, no.13, pp.1543-1548, 2001-12-28 (Released:2010-03-16)
参考文献数
12

血液透析濾過 (HDF) は慢性腎不全患者体内に蓄積する大分子物質の除去を目的とするが, 液置換が大量になるほど血清アルブミンの漏出が過大となる傾向がある.今回, 定圧濾過におけるアルブミン漏出の動態を調べる目的で, 5名の安定維持血液透析患者にポリスルフォン膜を使用し, 血流250ml/分で血液透析およびon-line HDFを施行した. 濾過条件は前希釈法および後希釈法それぞれにおいて膜間圧力差 (TMP) を50, 150, 250, 350mmHgに設定し, 5時間の治療時間中, 経時的に透析排液を採取しアルブミン濃度を測定した. いずれの濾過圧においてもアルブミン漏出は濾過開始時に最大となり, 60分の経過で急峻に低下し, その後は終了まで漸減傾向を示した. 同じ濾過圧であれば後希釈の方が, 前希釈よりもアルブミン漏出量が大きかった. また, 濾過圧が大きいほどアルブミン漏出量は有意に増大した. ただし, 後希釈HDFにおいてTMPを350mmHgに設定した場合は高度の膜劣化による細孔狭小化により, アルブミン損失は150および250mmHgに設定した場合や前希釈法で同じ350mmHgに設定した場合よりも有意に低下した. アルブミン損失を制御する観点から, 漏出が過大となる治療開始後5分間は濾過を行わず, その後60分かけて濾過速度ないしTMPを漸増させ, 以後終了時まで最高の濾過量を確保できる条件に設定すれば, 大量液置換を行いつつ, 1回治療あたりのアルブミン損失量を4g以下に抑えることができる.
著者
金 多賢 北島 宗雄 李 昇姫
出版者
Japan Society of Kansei Engineering
雑誌
日本感性工学会論文誌 (ISSN:18845258)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.181-189, 2014 (Released:2014-02-25)
参考文献数
23
被引用文献数
1 1

In the research on emotion, films have been used widely as a means for eliciting emotions in a laboratory because they affect psychological states of human beings. The studies by Philippot (1993), Gross & Levenson (1995) and Noguchi (2005) showed that specific emotion states, i.e., amusement, anger, contentment, disgust, fear, happiness, neutral, sadness and surprise, should be reliably elicited by films. In the media society we are living, the use of films as an effective representation for communicating information among ourselves has been increasing. As the previous studies showed, films should elicit emotions, and therefore the films used in the media society should affect the emotional nature of the media society. In order to establish a sound media society, it is required for those who produce films to understand appropriately the psychological states of the people who watch them. The purpose of this study was to develop producers' media literacy by the knowledge how specific films used in the media society should elicit specific emotional states of the viewers. We investigated psychological states of viewers in terms of their Kansei reaction, which is, in this experiment, the ability to induce the preference evaluation, i.e., like or dislike, when watching the films. We used four films associated with different types of information having the same playback time. Forty-nine participants carried out preference evaluations after watching the four films. We measured the Kansei reactions of the participants using 16 emotions proposed by Gross & Levenson (1995) and impression evaluations for 14 adjective pairs proposed by Gwasaki (2002). The result showed the way how the emotions and the impressions affected “like” and “dislike”. In particular, it was found that the emotion of “tension” is the key of the preference evaluation.
著者
片桐 一敏 斉藤 俊文 伊藤 隆史 金子 慶太
出版者
公益社団法人 北海道作業療法士会
雑誌
作業療法の実践と科学 (ISSN:24345806)
巻号頁・発行日
vol.1, no.3, pp.49-56, 2019 (Released:2019-08-30)
参考文献数
12
被引用文献数
1

当院回復期リハビリテーション病棟に入院した重度弛緩性片麻痺を呈した1症例対し,日常生活活動への介入と併用しながら,脳卒中ガイドラインで推奨されているMirror療法と随意運動介助型電気刺激装置(IVES)を用いて麻痺側上肢機能の改善と自己管理を目的とした作業療法を行った.その結果,肩関節の亜脱臼や上肢・手指の筋緊張の改善が認められた.日常生活では三角巾を用いることなく麻痺側の自己管理が可能となり,自宅復帰が実現した.また,退院後訪問リハビリテーションを実施したのでその経過も含めて報告する.
著者
青木 芳将 金盛 直茂 土居 潤子
出版者
北海道大学大学院経済学研究院
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.77-90, 2020-01-17

天然資源の発見は,国内の所得格差にどのような影響を及ぼすのであろうか。本稿では,天然資源の発見が,民族間の資源獲得競争(レントシーキング活動)を引き起こすことにより,短期的には,民族間の所得格差を縮小させるが,長期的にはそれを拡大させることを示した。これは,民族が大きく2つに大別される国において天然資源が多いほど所得格差が広がるという Fum and Hodler (2010) の実証結果によって支持されるものである。
著者
日野林 俊彦 赤井 誠生 金澤 忠博 大西 賢治 清水 真由子
出版者
藍野大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

初潮年齢は、個人の発達指標であるとともに、生活史理論から見ると進化発達的指標でもあり、発達の加速は進化における異時性の視点からも興味深い。近年、日本における平均初潮年齢は、低年齢化したままで変化は少ない。しかし、進化的傾向に逆行する、低年齢化の影響は、女性の発達に大きな影響を与えている。初潮年齢は、朝食や、睡眠時間のような健康習慣が悪化すると低い傾向が見られた。一方、性別受容は、既潮群の肯定率が低い。また、思春期前後では「保育士」ような、乳幼児に関わる職業が選択される傾向がみられるが、時代的に選択率が低下する傾向もみられ、思春期に子供への関心を高める効果が低下していることも考えられる。