著者
坂本 治也 富永 京子 金澤 悠介
出版者
日本NPO学会
雑誌
ノンプロフィット・レビュー (ISSN:13464116)
巻号頁・発行日
pp.NPR-D-22-00013, (Released:2024-02-16)
参考文献数
41

なぜ日本人の政治参加は他国と比べて低水準なのだろうか.なぜこの30年あまりの間に低下し続けているのだろうか.これらの問いに答える新たな理論的説明として,本稿では過去の大規模な社会運動に対する否定的評価が政治参加水準に与える影響に着目する.つまり,日本人の政治参加が他国の人々に比べて低調であり時系列的にも低下しているのは,過去の社会運動に対する悪いイメージが投票参加を除いた政治参加全般に投影されて,政治参加への強い忌避感を生じさせているためではないか,との仮説を立て,その仮説の妥当性を検証した.分析の結果,1960年安保闘争や2015年安保法制抗議行動への否定的評価は,投票参加以外の政治参加(ボランティアや寄付を含む)に対して有意な負の影響を与える関係にあることが明らかとなった.日本人の政治参加水準を向上させるためには,過去の大規模社会運動に対する悪いイメージが政治参加全般に安易に投影されている現状を改めて行く必要がある.
著者
金水 敏
出版者
一般社団法人 言語処理学会
雑誌
自然言語処理 (ISSN:13407619)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.67-91, 1999-07-10 (Released:2011-03-01)
参考文献数
34
被引用文献数
8 4

日本語の指示詞の3系列(コソア)は, いずれも直示用法とともに非直示用法を持つ. 本稿では「直示」の本質を「談話に先立って話し手がその存在を認識している対象を, 話し手が直接指し示すこと」ととらえ, ア系列およびコ系列では直示・非直示用法にわたってこの直示の本質が認められるのに対し, ソ系列はそうではないことを示す. 本稿では, ア系列の非直示用法は「記憶指示」, すなわち話し手の出来事記憶内の要素を指し示すものであり, コ系列の非直示用法は「談話主題指示」, すなわち先行文脈の内容を中心的に代表する要素または概念を指し示すものと考える.「記憶指示」も「談話主題指示」も上記の直示の本質を備えている上に, ア系列およびコ系列の狭義直示用法において特徴的な話し手からの遠近の対立も備えているという点は, ア系列およびコ系列の非直示用法がともに直示用法の拡張であることを示唆している. さらにさまざまなソ系列の非直示用法を検討した上で, ソはコ・アとは異なって, 本質的に直示の性格が認められないことを論じる. 非直示用法のソ系列は話し手が談話に先立って存在を認めている要素を直接指すためには用いられず, 主に言語的な表現によって談話に導入された要素を指し示すためた用いられる.またソが, 「直示」によっては表現できない, 分配的解釈や, いわゆる代行用法等の用法を持つことも, ソがアやコと違って非「直示」的であるという主張と合致する.
著者
澤田 華世 香月 富士日 金子 典代 塩野 徳史
出版者
日本精神保健看護学会
雑誌
日本精神保健看護学会誌 (ISSN:09180621)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.10-18, 2023-06-30 (Released:2023-06-30)
参考文献数
30

ゲイ・バイセクシュアル男性は,自殺未遂のリスクが高いと指摘されている.メンタルヘルス改善に向けた支援方法の確立が急務であり,本研究では,「人生の満足度」に着目し,人生の満足度に影響を与える心理的要因を明らかにすることを目的とした.20歳以上のゲイ・バイセクシュアル男性を対象に,インターネット調査を実施した.質問項目は,基本属性,対人関係,日本版気分・不安障害調査票(K6),改訂版UCLA孤独感尺度,人生満足度尺度,状態自尊感情尺度,日本語版SOCスケールで(SOC-13),Brief COPEとした.質問紙へのアクセスは1,877名で,分析対象者は499名であった.人生の満足度を従属変数とし,重回帰分析を行った結果,自尊感情(β = 0.586),孤独感(β = –0.170),肯定的再解釈(β = 0.101),受容(β = 0.063)の4要因が抽出された.本結果をもとに,今後ゲイ・バイセクシュアル男性のメンタルヘルス改善に向けたプログラムの開発など検討していく必要がある.
著者
若杉 純一 金 正文 簾田 康一郎 杉山 貢
出版者
The Japan Society of Coloproctology
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.480-484, 1992 (Released:2009-06-05)
参考文献数
24
被引用文献数
4 2

症例は53歳の男性で,陰嚢の発赤腫張を主訴に来院した.腹部単純X線検査で陰嚢および骨盤内に散在する小ガス像を,CT検査で陰嚢から仙骨前面,膵後面まで広がる異常ガス像を認めた.直腸診で肛門管後壁に痔瘻の1次口を認め,注腸造影検査で1次口から仙骨前面に造影剤が逸脱し,痔瘻より発生した壊疽性筋膜炎と診断,ドレナージ術および人工肛門造設術を施行した.細菌培養検査の結果,好気性菌のE. coli,pseudomonas aeruginosaと嫌気性菌のbacteroides fragilisによる混合感染であった.肛門疾患から発生したガス壊疽の本邦報告例は自験例も含め29例で,糖尿病を合併しているものが多かった.抗生物質の発達した近年,壊疽性筋膜炎は比較的まれ疾な患であるが,痔瘻や肛門周囲膿瘍などの肛門疾患で,糖尿病などの基礎疾患がある場合は,広範な壊疽性筋膜炎に進展することもあるので,十分な経過観察が必要であると考えられた.
著者
定金 計次
出版者
美学会
雑誌
美学 (ISSN:05200962)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.1-11, 1995-12-31 (Released:2017-05-22)

There is the general misconception that all Indian art is religious. In India, however, secular painting achieved development equal to that of religious sculpture. If we survey the history of Indian painting from the Ajanta murals through pre-modern miniatures, it becomes evident that a consistent pattern permeates the tradition. While down-playing natural surroundings, Indian painting invariably focuses around human figures, especially those with the procreative powers of youth. The mithuna, or generative young couple, appears repeatedly as primary subject matter and is often expressed as the young Radha and Krsna in pre-modern paintings. An auspicious symbol of procreation, the mithuna dates back to primitive religions, thus linking Indian secular art and religion. The idealization of youth is also evident in Indian sculpture. Throughout history, most Indian divinities have been represented in the forms of young people-the Indian people regarded age sixteen as their ideal. This tendency influenced not only the growth of Tantrism in Indian religious thought but also the propagation of cults of boy-gods in Indian religions. Adoration of youth thus popularized Krsna and Karttikeya in Hinduism and Manjusri in Buddhism.
著者
金田 亮 高橋 俊広 滝口 正康 土方 元治 伊藤 浩志
出版者
公益社団法人 精密工学会
雑誌
精密工学会学術講演会講演論文集 2017年度精密工学会春季大会
巻号頁・発行日
pp.35-36, 2017-03-01 (Released:2017-09-01)

高密度ポリエチレン(HDPE)は,汎用の半結晶性プラスチックであるが,赤外線システムの集光レンズ用の材料としても使用されている。射出成形によって生産されているが,赤外線透過率が低いため一部のシステムに使用が限定されている。本研究では,流動性の異なるHDPEを用いた薄肉射出成形を行い,白色状態を維持して高い赤外線透過率を得ることが可能な成形条件の実験的検討を行った。
著者
酒井 忍 保富 大輔 史 金星 浦上 晃 溝口 正人
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 (ISSN:21879761)
巻号頁・発行日
vol.85, no.877, pp.19-00118, 2019 (Released:2019-09-25)
参考文献数
19

In rubber baseball games, when the rubber ball is hit by a baseball bat, the rubber ball is deformed greatly comparing to an official baseball ball, and the batted ball speed decreases due to the energy loss during the deformation. Since the new rubber ball has been applied in games from 2018, the material properties and the restitution characteristics of the new rubber ball attract plenty of attention among scholars. In this study, the difference of the material properties and the restitution characteristics between the new and old rubber balls is investigated deeply by the static compression and collision tests. According to the static compression test, we find that the new rubber ball is harder and more difficult to generate deformation than the old one. In the collision test, the rebound ball speeds of both of the new and the old balls become faster when using a smaller diameter of steel cylinder instead of baseball bat, and the rebound ball speed of the new ball is slower than that of the old one under the same experimental conditions. Furthermore, to develop high performance baseball bats adapting to the new rubber baseball, the diameter of the baseball bat is studied by the impact simulation based on the finite element analysis. In the simulation, the batted ball speed under the analytical conditions of different offset heights and different barrel diameters of the bat are evaluated considering the initial spin. As a result, the batted ball speed generated by the bat with diameter φ55 mm is faster than generated by the bat with diameter φ70 mm when the offset height range is smaller than 14.6 mm, so that the bat diameter φ55 mm is recommended according to the present work.
著者
金田 弘挙
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.109, no.6, pp.417-425, 2014 (Released:2018-03-14)
参考文献数
37
被引用文献数
3 3

ビールの香味は,従来,官能評価により行っており,その美味しさを表現する言葉として,「こく」「きれ」「のどごし」などあるが,これらを定量的に分析値として示すことは困難であった。筆者らは,「味覚センサー」や「脳波」「筋肉の動き」などを測定することで,ビールの美味しさとの相関を発見し,さらにはお客様の気分との関係を明らかにしてきた。これらビールの美味しさを解明する一連の取組みについて解説いただいた。
著者
眞田 雅人 俵積田 裕紀 佐久間 大輔 本木下 亮 高橋 健吾 松山 金寛 前田 昌隆 東郷 泰久 小倉 雅 藤井 康成 永野 聡 小宮 節郎
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.661-663, 2017-09-25 (Released:2017-12-14)
参考文献数
3

今回我々は,巨大な痛風結節を生じ,手術加療を要した症例を経験したので報告する.症例は37歳男性.20歳の時に痛風と診断された.度々痛風発作があったが放置.今回全身の関節に腫脹疼痛があり,手指の把握困難,起立歩行困難のため入院となった.四肢関節,特に両肘,両膝,左母趾には巨大な皮下腫瘤を認めた.両膝の関節液より尿酸Na結晶が検出され痛風関節炎と診断した.約2週間保存的に加療し全身痛は改善したが,左肘・手指・膝・母趾の疼痛が持続するため,痛風結節の掻爬術を行った.術後症状の改善がみられた.痛風の治療は,薬物療法が確立されており,痛風結節を生じる症例は稀である.痛風結節に対しては薬物療法が基本であるが,抵抗性の場合は手術が必要となる.本症例は,薬物療法に抵抗し,疼痛・機能障害が改善しないため手術を行った.尿酸値は徐々に改善しており,手術が尿酸代謝の改善に好影響を与えたものと考える.
著者
糖尿病性腎症合同委員会・糖尿病性腎症病期分類改訂ワーキンググループ 馬場園 哲也 金崎 啓造 宇都宮 一典 古家 大祐 綿田 裕孝 繪本 正憲 川浪 大治 深水 圭 久米 真司 鈴木 芳樹 和田 淳 和田 隆志 岡田 浩一 成田 一衛 小岩 文彦 阿部 雅紀 土谷 健 加藤 明彦 市川 和子 北谷 直美
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.11, pp.797-805, 2023-11-30 (Released:2023-11-30)
参考文献数
20

わが国では2014年に改訂された糖尿病性腎症病期分類が広く用いられてきた.最近では,高齢化や肥満者の増加,糖尿病や高血圧症に対する新規治療薬の開発などを背景に,糖尿病患者に合併した腎臓病が多様化していることが指摘されている.そこで糖尿病性腎症合同委員会では,腎症病期分類を再度改訂する必要性を検討した.現時点では,アルブミン尿や推算糸球体濾過量に基づく2014年分類を変更する必要性を示唆する新たなエビデンスが発出されていないことから,今回の改訂では2014年分類の基本的な枠組みは変更しないこととした.ただし,日本腎臓学会のCKD重症度分類や国際的な表記との整合性を重視し,病期名を「正常アルブミン尿期(第1期)」,「微量アルブミン尿期(第2期)」,「顕性アルブミン尿期(第3期)」,「GFR高度低下・末期腎不全期(第4期)」,「腎代替療法期(第5期)」へ変更した.
著者
戸部 賢 須藤 貴史 三枝 里江 金本 匡史 荻野 祐一 麻生 知寿 高澤 知規 齋藤 繁
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.72, no.3, pp.253-261, 2022-08-01 (Released:2022-09-28)
参考文献数
24

背 景:弘法大師空海は疫病対策や治水に活躍したと伝えられているが,史実として確立しているものと民間伝承の間に大きな乖離がある.目 的:弘法大師空海の医療や水に関する活動を文献から抽出し,史実として同定されうる文献記述と民間伝承との関係を考察する.方 法:高野山大学密教文化研究所による『定本 弘法大師全集』から医学・医療に関係すると考えられる記述を抽出し,内容別に分類した.また,群馬県の弘法大師伝説のある地点を実際に訪問し,弘法大師伝説の背景を確認した.結 果:空海よる医学,医療に関する記述は,「薬」「施術」「飲食物」「呼吸」「祈祷」など合計41ヶ所あった.群馬県内には国土地理院地図,観光・史跡案内ウェブサイト,現地解説板などに空海縁の地と指摘された地点が合計12ヶ所存在した.結 語:空海自身が全国を回って疫病治療や湧水・温泉発掘をしたという史実はないが,空海の思想を後継した高野聖や山岳修験者の活動が数々の救世主空海の神話を生み出したと考えられる.時代を超えて感染症と水の確保は人間社会を悩ませる課題である.
著者
金児 曉嗣
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.159-169, 1993-03-31 (Released:2016-12-01)

The form of families has changed in the stages of civilization, and the view on the families has also varied a lot. Therefore, various cases of family pathology occur. So it can be said that modern families are now on the edge of crisis. The present study was intended to clarify the psychological problems within modern families, asking 208 male university students, 82 female university students, their 193 fathers, and 202 mothers to complete the questionnaire. From the answers to the question about "When do you feel peace on mind?" and "What is the condition in order to become happy?", Samples were divided into four types on the point of collectivism (to family and/or friends) and individualism (to himself). And the relations were examined among those types, feeling of loneliness, having a purpose in life, and death perspectives. As a result, the following were found. Both male and female university students strongly intend to be individualistic, as compared with their parents. Fathers, who have supported high growth of Japanese economy, have notably strong feeling of loneliness. Individualism is closely related to feeling of loneliness, lack of purose in life, and negative view of life-and-death. And also this study showed that the desolation of heart can be eased only where religious rites are practiced in a family. With this result, it became evident that in order to release a family from the burden of individualism, family members need to hold the common point of view which goes beyond the daily living.
著者
田路 秀樹 末井 健作 金子 公宥
出版者
The Japanese Society of Physical Fitness and Sports Medicine
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.439-446, 1995-08-01 (Released:2010-09-30)
参考文献数
33
被引用文献数
2 1

肘屈筋群の力-速度関係とパワーに及ぼす複合トレーニングの効果を知るため, 一般男子大学生18名を次の3群に分け, 週3日, 11週間のトレーニングを行った.すなわちトレーニング群は, 1) 最大筋力の30%負荷 (30%P0) で最大パワーを発揮する単一トレーニング群 (G30群) , 2) 最大パワーの発揮に加え, 無負荷 (0%P0) で最大速度を発揮する複合トレーニング群 (G30+0群) , 3) 最大パワーの発揮に加え, 最大筋力 (100%P0) を発揮する複合トレーニング群 (G30+100群) の3群とし, 次の結果を得た.1.最大パワーの増加はG30+100群で最も著しく, 次いでG30+0群, G30群の順となり, それらすべてが統計的に有意な増加であった.また, G30+100群とG30+0群の増加量間に有意差が認められた.2.最大筋力の増加はG30+100群で最も著しく, 次いでG30群, G30+0群の順で, 上位2群の増加に有意性が見られた.またG30+100群とG30群の増加量間に有意差が認められた.3.最大速度はすべての群で有意に増加したが, 各群の増加量間には有意差が認められなかった.以上の結果から, パワー・トレーニングにおいて, 筋力強化を加えた複合トレーニングは, 単一負荷のトレーニングと同様に優れた効果を発揮するとともに, スピードを重視した複合トレーニングよりも効果的であることが示唆された.
著者
金森 紘代 藤井 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.11, pp.22-00205, 2023 (Released:2023-11-20)
参考文献数
5

開始から70年以上が経過している地籍調査事業だが,その進捗率は52%にとどまり,残り138,361km2とされる地籍調査の全域完了に要する事業費や期間は明らかになっていない.本研究は,地籍調査の全域完了を見据えた事業計画策定の一助とするため,残る調査対象地域における事業費の試算を行うものである.試算手法としては,公開されているGISと固定資産に関するデータをもとに「地籍調査事業費積算基準書2022年版」に則り全国の残事業費を積算する.その結果,調査完了に必要な費用は約6.43兆円であり,現行の年間事業費ベースでは今後243年を要することが示された.そのうえで事業完了を現実のものとするための具体的な改善策について検討する.
著者
西山 知佳 佐藤 隆平 島本 大也 黒木 裕士 江川 達郎 金丸 敏幸 谷間 桃子 大鶴 繁 田中 真介 石見 拓
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.25, no.5, pp.852-859, 2022-10-31 (Released:2022-10-31)
参考文献数
8

目的:COVID-19流行期において,新入生(以下:学生)を対象に救命処置を理解することを目標に行ったオンライン講習の実施内容を報告する。方法:2,942人の学生を12グループに分け各々Zoomを立ち上げた。教員がDVDを用いて胸骨圧迫と自動体外式除細動器の使い方について指導を行っている様子をビデオカメラで撮影しZoom配信した。クッション,体重計を学生に準備させ30kgを目標に胸骨圧迫の練習を行った。ブレイクアウトルーム機能を使い新入生10名に対して教員1名のグループに分け,学生が行っている胸骨圧迫に対して教員がフィードバックを行った。結果:3日間で2,623人が講習に参加し,2,393人(91.2%)が講習後の無記名調査に回答した。98.1%が救命行動を理解でき,84.4%がオンライン講習を有意義と回答した。結語:身近なものを教材とし学生へのフォロー体制を整えることで,短期間に多人数に対して,大多数の学生が意義を感じる講習ができた。
著者
大谷 昂 金本 雅行 尾崎 公美 谷内田 拓也 松田 祐貴 木戸屋 栄次
出版者
公益社団法人 日本放射線技術学会
雑誌
日本放射線技術学会雑誌 (ISSN:03694305)
巻号頁・発行日
pp.2023-1380, (Released:2023-06-19)
参考文献数
23

【目的】肝臓のmagnetic resonance imaging(MRI)検査において,全肝の呼吸同期併用拡散強調画像(respiratory-triggered-diffusion-weighted imaging: R-DWI)は磁場不均一の影響により肝臓頭側の横隔膜ドーム下の画質低下が問題となる.そこでドーム下に範囲を絞った呼吸停止下DWI(breath-hold-DWI: B-DWI)の追加撮像の有用性を検討した.【方法】3.0 TのMR装置を使用し,2022年7月から8月に当院でethoxybenzyl(EOB)-MRI検査を受けた22例(男性14名,女性8名,平均年齢69.0±11.7歳)を対象とした.R-DWIとB-DWIのドーム下の視認性について放射線科医1名と放射線技師3名で4段階(1~4点)での視覚評価を行った.また,各DWIのapparent diffusion coefficient(ADC)値を比較した.【結果】R-DWIと比較してB-DWIではドーム下の視認性が向上した(2.67±0.71 vs. 3.25±0.43, p<0.05).各DWIのADC値に有意差はみられなかった(p>0.05).【結語】B-DWIはドーム下の視認性に優れ,R-DWIを補完する役割が期待できるため,EOB-MRI検査において追加撮像する有用性は高い.
著者
金子 仁 Cecchini Nicole M. 清水 敬樹 光銭 大裕 堀越 佑一 松吉 健夫 鈴木 大聡 佐藤 裕一 三宅 康史
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.25, no.5, pp.844-851, 2022-10-31 (Released:2022-10-31)
参考文献数
20

アメリカ合衆国パラメディックは,病院前救護で多彩な医療行為を実践する。このパラメディックを養成する1施設の調査を行った。全米標準カリキュラムに基づいた教育プログラムと学生64名の臨床経験を調査した。課程期間44週間で学生は516時間の講義とシミュレーション手法を含む実習,病院実習234時間(以下,中央値),救急車同乗実習329時間,救急車でのインターンシップ80時間を経験した。この間,学生は成人患者136人,高齢者82人,小児43人の傷病者・患者,それに伴う病態を多数経験した。指導および監督下で,学生は実際の傷病者・患者に対して経口気管挿管5回,静脈路確保86回,薬剤投与106回を含む侵襲的処置を実施した。救急車同乗実習では学生が主体でチーム指揮,傷病者対応を行う実践的実習が実施されていた。米国の標準的パラメディック養成教育は長時間の病院と救急車での臨床的経験を提供し,侵襲的処置を自ら判断,実施するon-the-job教育が行われている。
著者
高橋 良輔 金子 文成 柴田 恵理子 松田 直樹
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム (ISSN:13487116)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.59-67, 2018 (Released:2019-09-01)
参考文献数
28

本研究の目的は, 肩関節外旋運動反復トレーニングが肩関節外転運動中の棘下筋を支配する皮質脊髄路興奮性を増大させるのか明らかにすることである. 外旋反復運動をトレーニング課題として, その前後に外転運動中の皮質脊髄路興奮性を経頭蓋磁気刺激による運動誘発電位で評価した. 外旋反復運動は15分毎に100回を3セット実施した. 運動誘発電位は外旋運動反復トレーニング前に2回, 各トレーニング直後, そして3回目のトレーニング直後から30分後と60分後に測定した. 棘下筋の運動誘発電位振幅は3回目のトレーニング直後から60分後まで有意に増大した. 本研究結果から, 肩関節外旋運動反復トレーニングによって, トレーニングと異なる運動である肩関節外転運動中に棘下筋を支配する皮質脊髄路興奮性が持続的に増大することが示された.