著者
藤原 充 長谷川 優子 鈴木 啓介 内山 恵典
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.Eb1268, 2012 (Released:2012-08-10)

【はじめに、目的】 院内における入院患者の転倒事故は、排泄への移動を契機に発生することが多いと報告されている。しかし、一般的に理学療法士が、患者に対して行う転倒リスク評価は、いわゆる“尿意がない”状態での運動機能評価に留まっている。先行研究では強い尿意は認知機能を低下させるとの報告もあることから、より現実に近い状況での転倒リスク評価を行うためには、“尿意がある”状態での運動、注意機能評価が必要なのではないかと考えた。本研究では健常成人男性を対象に、“尿意がない”状態と“尿意がある”状態での運動機能、注意機能を評価し、その違いの有無を明らかにすることを目的とする。【方法】 健常成人男性7人(平均年齢27歳)を対象に、尿意を感じない時点“尿意なし”と、強い尿意を感じる時点“尿意あり”における、運動機能と注意機能の違いについて検討した。評価項目としては、尿意に関するものとして、NRSとVASの評価、膀胱容量の測定を行った。運動機能については、10m歩行速度と歩数、左右の最大一歩幅、左右の握力を測定した。また、注意に関する課題としてTMTを施行した。プロトコールは、排尿後に尿意を感じない時点でのNRSとVASを評価し、TMT、10m歩行速度と歩数、最大一歩幅、握力を順次評価した。1Lの飲水後、尿意がNRS“8”となった時点で再度、同一評価を行った。なお、10m歩行テスト、左右の最大一歩幅、左右の握力は各々3回ずつ測定して平均値を算出した。尿意のNRS、VASは“0”を「尿意なし」とし、“10”を「最大に我慢した状態」とした。また、膀胱容量はブラッダースキャンを用いて評価した。評価結果について、尿意ありと尿意なしをSPSSver.19を用いて統計学的に検討した。統計学的手法は、対応のあるt検定を用い、有意水準は危険率5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究の実施の先立ち、被験者に対して研究の意義、目的について十分説明し、口頭および文書による同意を得た。【結果】 最大一歩幅は“尿意なし・右”平均120.1±6.1cm、“尿意なし・左”117.8±7.9cm、“尿意あり・右”109.7±9.3cm、“尿意あり・左”108.9±9.6cmとなり、“尿意あり”で有意に低下した(p<0.05)。その他、TMT、10m歩行速度と歩数、握力については有意差を認めなかった。なお、“尿意あり”の状態でのVAS平均は、8.11±0.81cm、膀胱容量は平均367±100.2mlであり、自覚的、他覚的にも尿意を確認できた。【考察】 “尿意なし”と“尿意あり”の時点における運動機能、注意機能の比較では、“尿意あり”の状態で、最大一歩幅のみが有意に低下した。このことから、日常臨床で行っている転倒リスク評価の結果は患者能力の一側面であり、“尿意あり”の状態での評価では違う結果が生じることが示された。一般に最大膀胱容量は成人300~500mlで、尿意は膀胱容量が150~200mlで感じるとされている。しかし、通常排尿は前頭葉からの橋排尿中枢の抑制、自律神経による蓄尿反射と体性神経による外尿道括約筋収縮により抑制されている。尿意がNRS“8”の時点では、膀胱内圧が急激に上昇した状態と言えるため、随意的に外尿道括約筋の収縮を強め、腹圧を高められない状態での運動を強いられることになったと推測される。これにより体幹が安定せず、運動機能が低下したと考えた。今後の課題は、転倒リスク評価における適切な評価項目の選定と“尿意なし”と“尿意あり”で生じた違いに対する原因追究のための指標を用意することである。【理学療法学研究としての意義】 “尿意なし”と“尿意あり”の状態での運動機能、注意機能の違いを捉えることで、転倒リスクを評価する上での視点が増える。また、今回のように“尿意あり”の状態で、パフォーマンス低下が認められた場合、トイレ誘導に関して、失敗や転倒のない適切なタイミングを示すことができる。これらを通し、排泄を契機に発生している転倒事故を減らすことができるものと考えられる。
著者
新妻 宏文 石井 元康 小島 敏明 菊池 公美子 鈴木 千晶 小林 智夫 五十嵐 勇彦 真野 浩 上野 義之 小林 光樹 豊田 隆謙
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.96, no.4, pp.423-426, 1999-04-05 (Released:2008-02-26)
参考文献数
8
被引用文献数
2 2

慢性B型肝炎患者を配偶者にもつ女性が,初診時すでに妊娠していたためにワクチンを施行せず妊娠を継続したところ,妊娠中にHBVに感染した.本例はHBV感染前からウイルス学的に経過を観察され,急性B型肝炎の発症前後の臨床データの経過が明らかになった.さらに,妊婦に対するワクチン使用の問題や周産期の急性肝炎の取り扱いの問題をかかえており,Gianotti-Crosti症候群を合併した点など示唆に富む症例であった.
著者
山川 烈 鈴木 倫保 山川 俊貴 粟生 修司 石塚 智 堀尾 恵一 藤井 正美 野村 貞宏 大和田 祐二 グレゴリエビッチ ジミン・レフ 常盤 達司 井上 貴雄 丸田 雄一 藤岡 裕士
出版者
九州工業大学
雑誌
特別推進研究
巻号頁・発行日
2008

抗てんかん薬が全く効かず,いつ発現するかわからない発作の恐怖におびえているてんかん患者が国内外に全人口の約0. 2%いる.これらの患者を救う道は,外科手術である.現在の外科手術では,「てんかん原性域」と呼ばれる発作の震源地の位置を脳波から推定し,それを切除しているが,後遺障害のリスクが大きい.本研究では,その「てんかん原性域」を精度よく推定し,頭蓋骨にあけた小さな穴から凍結プローブやレーザー焼灼プローブを刺入し,「てんかん原性域」を限定して破壊する後遺障害リスクの少ない外科手術法を考案した.
著者
松多 信尚 杉戸 信彦 後藤 秀昭 石黒 聡士 中田 高 渡辺 満久 宇根 寛 田村 賢哉 熊原 康博 堀 和明 廣内 大助 海津 正倫 碓井 照子 鈴木 康弘
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.214-224, 2012-12-31 (Released:2013-01-31)
参考文献数
26
被引用文献数
2 4

広域災害のマッピングは災害直後の日本地理学会の貢献のあり方のひとつとして重要である.日本地理学会災害対応本部は2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震直後に空中写真の詳細な実体視判読を行い,救援活動や復興計画の策定に資する津波被災マップを迅速に作成・公開した.このマップは実体視判読による津波の空間的挙動を考慮した精査,浸水範囲だけでなく激甚被災地域を特記,シームレスなweb公開を早期に実現した点に特徴があり,産学官民のさまざまな分野で利用された.作成を通じ得られた教訓は,(1)津波被災確認においては,地面が乾く前の被災直後の空中写真撮影の重要性と (2)クロスチェック可能な写真判読体制のほか,データ管理者・GIS数値情報化担当者・web掲載作業者間の役割分担の体制構築,地図情報の法的利用等,保証できる精度の範囲を超えた誤った情報利用が行われないようにするための対応体制の重要性である.
著者
川名 真理子 小堀 裕果 中崎 允人 鈴木 正論 永井 淳子 佐々木 忠徳
出版者
一般社団法人日本医薬品情報学会
雑誌
医薬品情報学 (ISSN:13451464)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.105-110, 2013 (Released:2013-12-27)
参考文献数
7

Objective: There are only a few studies evaluating the effects of drug information services on pharmacotherapy.  We, therefore, studied the effects of providing drug information such as the effectiveness and safety of aliskiren on its pharmacotherapeutic efficacy by comparing before versus after drug information provision.Methods: Pharmacists provided drug information such as the effectiveness and safety of aliskiren coadministered with either ACE-I (angiotensin converting enzyme inhibitor) or ARB (angiotensin receptor blocker) to physicians and other healthcare professionals.  We compared the number of patients for whom aliskiren was prescribed, the proportion of diabetic patients taking both aliskiren and ACE-I (or ARB), the proportion of patients with low eGFR (estimated glomerular filtration rate), and the proportion of patients with hyperkalemia and related conditions, before versus after providing the drug information to the healthcare professionals.Results: The number of patients for whom aliskiren was prescribed decreased.  The proportion of patients taking both aliskiren and ACE-I (or ARB) decreased significantly after providing the drug information (p=0.007).  The proportion of diabetic patients taking both aliskiren and ACE-I (or ARB), the proportion of patients with low eGFR, and the proportion of patients with hyperkalemia also decreased, after providing the drug information.Conclusion: This study showed the drug information service to be clinically beneficial, achieving better pharmacotherapy.  Pharmacists should evaluate and provide information on the effectiveness and safety of drugs announced by authorities in a timely manner to achieve optimal patient care.
著者
鈴木 淳
出版者
日本食品微生物学会
雑誌
日本食品微生物学会雑誌 (ISSN:13408267)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.64-67, 2010-07-31 (Released:2010-12-13)
参考文献数
11
著者
鈴木 正紀
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.146-153, 2011-04-01
被引用文献数
1

大学図書館員の持続的成長に必要な要件について検討を行った。以下の3点に言及した。(1)どういった知識や技能が必要か,(2)それらをどういった方法で学んでいくか,(3)成長を可能とするための基本的態度。(1)については,LIPERの大学図書館班による知見とその構造的把握に資するCILIPによるBody of Professional Knowledgeおよび国立大学図書館協会人材委員会による「コンピテンシー・モデル」をとりあげた。(2)については,(i)外部の情報を積極的に取り込むこと,(ii)仕事に関連した資格取得,(iii)大学院での研究,(iv)そして身近なところでできる日常的努力の方法等について触れた。(3)については,仕事に対するビジョンを持つことと,人とのゆるいつながりを維持することの重要性を指摘した。
著者
大橋 一男 宮本 昌幸 黒 浩晃 鈴木 真樹
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
交通・物流部門大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2002, no.11, pp.347-350, 2002-12-10

In this paper, the relation between the longitudinal acceleration and the changes in attitude were studied. to define the criteria of riding quality of standing passengers on railway vehicle. In the front report, we reported that longitudinal acceleration, pressure distribution on the sole and move distance of body were measured in the field running tests. In this report, analyzed data about the field running test are shown. And, it is cleared that the center of gravity of the load which depends on the sole are good criteria for changes in attitude of the standing passengers by the data obtained by the stationary ramp equipment.
著者
鈴木 毅彦
出版者
特定非営利活動法人 日本火山学会
雑誌
火山 (ISSN:04534360)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.167-176, 1995
参考文献数
26
被引用文献数
4

So-called kazanbaido which means volcanic-ash-soil in a literal translation overlies surfaces and hill slopes in most area of the Japanese island. In 1960's, the kazanbaido with massive structure and brown color was recognized as residual soil (not transported soil) which was originated from pyroclastic deposits. Recently, most studies regard the kazanbaido as soil formed through the accumulation of dispersal tephra, eolian dusts from the Asian continent and local eolian dusts. In this study, the author discusses the source of the material constructing kazanbaido on the basis of the pattern of change in its thickness (Fig. 1). The kazanbaido treated here has accumulated during the last 50,000 years in central Japan. Thickness of the kazanbaido distributed along the Japan Sea coast and in the south part of the Shizuoka Prefecture is less than 1 m. Source of the kazanbaido seems to be a lot of fine distal air-fall deposits which derived from distant volcanoes, a long-range transported eolian dust from the Asian continent, and local eolian dust from the adjacent non-vegetated area. Kazanbaido thicker than 2 m distributes in the South Kanto and North Kanto areas. Increase in the thickness of the kazanbaido in these areas is most likely caused by depositions of tephras derived from near volcanoes. Two main depositional processes of accumulation of the thick kazanbaido are as follows. One is frequent accumulation of a minor air-fall deposit associated with a small-scale eruption, which does not form stratification because of the small volume of each deposit. The other is accumulation of secondary tephras, which are derived from the slope of a volcano through wind transportation. Change in thickness in the Kanto area suggests that the former is more significant than the latter.
著者
根本 淳子 鈴木 克明
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.309-318, 2006
被引用文献数
8

本研究では,近年eラーニングなどの自己学習教材において,その必要度が増しているシナリオ型教材の開発に有効とされる,インストラクショナルデザイン理論の一つゴールベースシナリオ理論(GBS)が日本で活用されることを目的に分析し,紹介する.GBSの論理的根拠であるCBR (Case-Based Reasoning)学習理論を併せて紹介する.この理論がより簡単に活用できるようにGBSチェックリストを開発した.チェックリスト開発には,教材開発の手法を応用し,形成的評価および改善を行った.GBSチェックリストには既存教材の強みと弱みを明確にさせ,リ・デザインへのヒントを整理できる機能も含んでいることが確認された.
著者
川上 一貴 岡部 晋典 鈴木 誠一郎
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.245-250, 2010-05-28 (Released:2011-06-25)
被引用文献数
1 3

本報では地域情報をWeb上にアーカイブし公開する「地域映像アーカイブ」を対象に,2008年にアンケート調査を行い,加えて,2011年にアンケート対象アーカイブの存続度合いを調査した.結果,アクセス解析の有無には自アーカイブに対する更新の姿勢が異なることが関係すること,2004年の先行研究で行われた自アーカイブへの問題点の指摘は2008年の時点では別の問題として変質したこと,自治体が設置母体のデジタルアーカイブは推進団体によるそれよりむしろ消滅しやすいこと等の知見を得た.