著者
藤岡 穣 古谷 優子 森實 久美子 鈴木 雅子 三田 覚之 山口 隆介
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

日本の仏教美術に関する研究は、従来、絵画や彫刻といったジャンル別の研究が主流であった。本研究は、それに対して、異なるジャンル間の相互の影響関係、ジャンルによる表現の異同の様相などを明らかにしながら、ジャンルの枠を超えた総合的な研究を目指すものである。こうした研究は、短期間のうちに容易に達成されるものではなく、本研究ではまさにその端緒に着いたばかりであるが、今後も引き続きジャンルごとの研究成果の共有化をはかり、より総合的な研究を目指していきたい。
著者
井上 哲夫 森 篤史 柳谷 伸一郎 鈴木 良尚
出版者
徳島大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

平成18年度はPbS(赤外線検出素子)、ZnS(発光材料)、CuCl(シンチレーター)、タンパク質をゲル成長させ、磁場の影響について研究した。ゲル成長を行う場合、そのプロセスは大きく二つに分けられる。一つは成長の場となるゲルの作成段階(プロセス1)、もう一つはゲルの中で実際に結晶を育成する段階(プロセス2)である。そこで磁場の印加時期も、プロセス1においてのみ(Case 1)とプロセス2のみ(Case 2)、およびプロセス1と2の全プロセスに亘って印加する場合(Case 3)の3種類を試みた。また磁場下でゲルを作成したとき磁場がゲル構造に及ぼす効果を計算機シミュレーションにより研究した。得られた結果は以下のようである。1.PbS:無磁場下では正8面体であったのが、磁場印加(Case 1)すると、八方に角の生えた形状(骸晶)になった。またCase2の場合には球晶となった。2.ZnS:磁場の有無にかかわらず、球晶が成長した。しかし球晶のサイズは磁場印加(Case 3)により大きくなった。透過電子顕微鏡(TEM)によると、球晶は5nm位のナノ球晶から構成されていることがわかった。これらの球晶の光吸収スペクトルの短波長端はバルク結晶よりも短波長側へシフトしており、サイズ効果が観察された、3.CuCl:無磁場下では正四面体であったのが、磁場印加(Case3)すると、長い針状結晶へと変化した。4.タンパク質(リゾチーム):リゾチームの配行に磁場が影響することがわかった。無磁場下ではランダムに配向するが、磁場下ではc軸が磁場に平行に配行する傾向があった。しかし、この傾向はリゾチームの濃度が高くなるにつれ弱くなった。また磁場効果として核精製頻度や成長速度を抑制することが分かった。5.計算機シミュレーション:磁場が強くなるにつれ、ゲルネットワークは平行方向に長く伸びる(セルの形状が細長くなる)傾向があった。
著者
渡部 幹夫 酒井 シヅ 杉山 章子 鈴木 晃仁 永島 剛
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

第二次世界大戦後占領下の日本において行なわれた、行政制度の法的な改正は多岐にわたる。GHQ公衆衛生福祉局サムス准将の主導により行なわれた保健医療制度の変革は、占領国の法律を超える積極的な予防医学的な法の精神で作られたようである。しかし今回の研究により、その法を実際に施行した日本の混乱と新たな問題の発生が明らかとなった。
著者
宇田川 拓雄 辰己 佳寿子 浜本 篤史 鈴木 紀 佐藤 寛 佐野 麻由子 黒川 清登 RAMPISELA Dorothea Agnes 鯉沼 葉子 島田 めぐみ 片山 浩樹 斎藤 文彦 佐藤 裕 KIM Tae Eun KIM So-young 多田 知幸 MULYO Sumedi Andorono 中嶋 浩介 RUSNADI Padjung YULASWATI Vivi
出版者
北海道教育大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

開発援助では様々な社会調査が実施され評価に利用されている。参加型調査、民族誌作成、フォーカスグループディスカッションなど標準的な調査法以外の手法も使われている。JICAの評価システムは構造上、広汎な長期的インパクトの把握が難しい。また、質の高い調査データが必ずしも得られていないため、評価団がポジティブな現状追認型評価を行なった例も見られた。調査の倫理をしっかりと踏まえた評価調査法の開発と普及が望まれる。
著者
夏目 敦至 若林 俊彦 鈴木 正昭 古山 浩子 近藤 豊 竹内 一郎
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

我々はDNAのメチル化などのエピジェネティクスが癌精巣抗原(Cancer-testis antigens, CTAs)の発現調節にも関与していることを見出し、5-aza-deoxycytidineをグリオーマに作用させるとCTAsの発現が活性化することを認めた。そしてCTA特異的細胞傷害性T細胞によってHLA拘束性に傷害される。以上にDNAメチル化阻害剤と癌ワクチン療法の組み合わせで強力な免疫療法の開発の展望を示した。一方、HDAC阻害剤のうち、SAHA, MS-275, FK-288は米国において白血病における臨床試験が行われている。また、脳神経外科領域でなじみのある抗てんかん薬のバルプロ酸がHDAC阻害活性を有しているのも興味深い。DNAメチル化酵素やHDACとともにEZH2も分子標的となりうる。現在、エピジェネティクス異常を標的とする治療薬の開発が急速に進んできており、グリオーマにおいて適応になるのも近い将来可能になると期待される。
著者
北本 朝史 服部 俊幸 鈴木 正昭 赤塚 洋
出版者
東京工業大学
雑誌
一般研究(A)
巻号頁・発行日
1991

本研究は《固相分子法による高選択レーザー分離法》(『固相レーザー分子法』)を確立するために、分子衝突が無視できる反応場で量子反応を選択的に制御し、レーザーによる高選択性、高収率をもたらす《新分離方法論》を構築する。固相マトリックスの創成条件を測定するためクライオスタットを製作した。クライオスタットを含むマトリックス創成装置を用いて、光学的に透明で凝縮相の成長速度が大きい条件に関して、基板温度一定の条件で測定した。またその結果を理論解析によって推定し、成長のメカニズムを検討した。液体窒素温度(-195.8℃)で固相マトリックスの創成実験を行ない、凝縮可能なキセノンガスを凝縮させた。またキセノンの透明な凝縮相を多層化する機能条件を確立した。キセノンガスの固相マトリックスは不活性分子の凝縮体であるため、光学的な吸収帯は認められず、光学特性は良好であった。またSF_6分子の単分子相をマトリックス中に層状に吸着させ、キセノンガスでコートする多層化法を検討する。レーザーにより反応性分子(SF_6)を励起、解離させる方法を実験的に検討する。次に反応分子の励起エネルギーがキセノン分子によって緩和されるので、解離分子の寿命を光学的に測定し、解離分子の平均寿命を延長するための方法論を研究する。数値解析によると、結晶表面の適応係数αおよび結晶の熱伝導度(結晶密度)がこれらの環境にとって重要な因子であることが分かった。『ラジカルライフタイム測定システム』を用いて透明結晶層の光透過度を測定し、波長依存性を測定した。その結果、結晶の透明度は表面温度と密接に関係していた。また結晶の成長速度は結晶の透明度を決定する要因ではなかった。
著者
佐伯 聰夫 仲澤 眞 矢島 ますみ 鈴木 守 間宮 聰夫
出版者
筑波大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1996

競技スポーツ大会の開催には、地域経済への波及効果を含め、地域住民のアイデンティティやロイヤリティ醸成等の地域活性化に対する効果が期待されている。しかし、一次的な競技大会の開催では、その効果も一過的なものに過ぎない。そこで本研究は、継続的・定期的な開催によって地域社会における社会制度にまで発展した競技スポーツ大会が、当該地域のコミュニティ形成にどのような意味を持ち、どのような機能を果たしているかを競技大会と地域社会の関連分析から調査した。具体的には、それぞれの競技大会開催地域に赴き、大会運営機構、関連組織、地域行政、地域住民組織、一般市民、学識経験者等にインタビユー調査を、また、合わせて関連資料の収集と分析を行うことによって明らかにしようとした。平成8年度調査は、単一種目の競技大会では至高の権威を有するウインブルドン・ローンテニスチャンピオンシップスとオーガスタ・マスターズトーナメントを事例に調査した。平成9年度調査では、伝統や歴史を担う民族文化的性格を持つ競技大会として、中世サッカーを再興させているフィレンツェ・カルチョストリコとバスク・ルーラルスポーツを事例として調査した。平成10年度調査は、グローナリゼーションの中にある地域形成の問題を焦点にして、英国スカイ島のハイランドゲームズとドイツ・バイヤー04レーバークーゼンのブンデスリーガ・ホームゲームを事例に調査した。こうした調査で得られたデータ分析の結果、競技大会が地域社会における社会制度として発展し、豊かなコミュニティ形成の機能を発揮するためには、競技大会が当該地域住民のコミュニティ・アイデンティティやローカル・ロイヤリティのシンボルとなることが重要であり、そのシンボル化作用は、長い開催の歴史に支えられた競技大会の権威、伝統文化やエスニシティと関わる文化的固有性、そして住民の生活と密着しながら社会変化に対応する柔軟な運営システムが必要なことが分析された。
著者
鈴木 章夫 小野田 武 北村 幸久
出版者
筑波大学大学研究センター
雑誌
大学研究 (ISSN:09160264)
巻号頁・発行日
no.23, pp.63-94, 2002-03

[司会]どうもありがとうございました。それでは、総括討論に先立って、第1発言者の鈴木先生から質問なり感想なり追加なりございましたら、おっしゃっていただけませんか。[鈴木]今の黒羽先生のコメントに私は尽きると思うんですが、私が初めに申し上げましたけれども、要するに大学改革という ...
著者
貝塚 隆史 作田 祥司 鈴木 雅人 坂本 俊彦 鈴木 栄 荻原 勲
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.269-275, 2008-04-15
参考文献数
19
被引用文献数
1

フィルム包装して給水処理を行ったコマツナを低温・弱光下に保存したときの新鮮重,葉色などの品質および葉内の硝酸態窒素濃度の変化を検討した.フィルム包装して給水処理をおこなったコマツナは,フィルム包装による蒸散の抑制と,主根からの継続的な吸水が行われるため萎れが観察されず,保存後に新鮮重が増加した.弱光照射によって葉緑体の形成などが行われたため葉の緑色は退色しなかった.光合成,呼吸,葉緑体形成などで窒素が代謝されるので,各葉位および各部位(葉身と葉柄)ともに硝酸態窒素濃度が低下し,特に,14℃の条件で保存4日後に約36%の減少が認められた.以上のことから,コマツナを収穫後にフィルム包装,給水処理,弱光照射および低温条件を組み合わせて保存すると,品質の低下が少なく,硝酸態窒素濃度の低い植物体の生産ができることがわかった.
著者
鈴木 雅一 執印 康裕 堀田 紀文 田中 延亮
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

1. 幼令スギ・ヒノキ林を対象に、斜面上部下部の蒸発散量、土壌水分、土壌呼吸量を計測するとともに、流域内の微気象の空間分布計測を行ない、斜面がもたらす不均一さを明らかにするための計測を進めた。1) 植栽された樹木の成長が斜面部位で異なることについて、谷を横断する側線約50mについて、樹高、幹直径、葉窒素含有量、土壌水分、地下水位、土壌溶液水質、土壌窒素量などが調べた。5年生のスギの成長が谷で旺盛であり、尾根部が劣る理由は、尾根部における水ストレスがもたらすものではなく、湿潤な谷部の土壌有機物の分解による窒素の供給が谷部の活発な成長に関わっているという結果をえた。2)レーザプロファイラのデータを用いて植栽された樹木位置と樹高を小流域単位で評価する手法について検討を進め、小流域の全域について樹高の分布が図化された。2. タイ国チェンマイ近郊のドイプイ山に位置するKog-Ma試験地(樹高約30mの常緑林)にある50mタワーにおいて取得された微気象データを解析し、斜面風の形成と樹冠上から林内の気温形成過程、風速鉛直分布の形成過程について、解析した。1)樹冠上から林内の気温形成過程に与える夜間斜面下降風の影響は、夜間に生ずる斜面下降風発生の発生、非発生は大気安定度の指標であるバルクリチャードソン数に関係している。夜間の放射冷却が弱いとき、気温鉛直分布における最低気温は林床近くで生ずる。放射冷却が強くなると、樹冠上部で最低気温が生ずる。そして、更に放射冷却が強くなると樹冠上を吹く斜面下降風が強くなり、再び林床付近で最低気温が生ずるという、3段階の気温鉛直分布形成機構があることが、明らかにされた。2)昼間の風速鉛直分布の形成過程は、夜間に比べて解析が困難であった昼間の風速鉛直分布について、大気安定度と鉛直分布の関係を解析した。
著者
小林 俊光 川瀬 哲明 吉田 尚弘 大島 猛史 和田 仁 鈴木 陽一
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

耳管開放症の疫学研究を行った。とくに慢性腎不全に伴う腎透析患者における耳管開放症の発症の実態を調査した。その結果、腎透析を行った147人中13人(8.8%)が透析後に耳管開放症を発症したことが透析病院での検診結果で判明した(Kawase T, et al.:参考文献)。腎透析と耳管開放症の関係を示した世界で初めての報告である。耳管開放症の画像診断を検討した。その結果、座位で行うCTが有用で臨床応用可能であることを示した。また、バルサルバ法の負荷によって、診断精度が向上することを示し、臨床的な重症度ともよく相関することを示した(Kikuchi T, et al.:参考文献)。耳管開放症・耳管閉鎖障害に影響する因子としての聴力の影響を検討した。その結果、耳管開放症の症状は難聴があると、軽減つることが判明した。例えば、鼓膜穿孔、耳硬化症、真珠腫などのために伝音難聴があると、経耳管的に中耳に伝達され知覚される自声が低く知覚されるために、耳管開放症の症状が軽減する。しかし、一度、手術などの治療によって、聴力が改善すると、知覚される自声が大きくなり、不快な症状が自覚されることとなる。このような病態を潜在性(隠蔽性)耳管開放症と新しく提唱した。中耳真珠腫においても、以上のメカニズムが働いているかどうかを、真珠腫新鮮例171例において検証した。真珠腫の中には約30%の鼻すすり型耳管開放症が含まれているが、鼻すすり(+)群と鼻すすり(-)群の聴力の比較を行ったところ、鼻すすり(+)群が有意に聴力は良好であった。また、術後に鼻すすりを継続した群は鼻すすりを停止した群よりも有意に聴力が良好であった。つまり、鼻すすり癖の停止、継続には、聴力が影響すること、そしてそれは自声強聴を知覚する度合いの違いによるものと解釈された(Hasegawa J, et al.:参考文献)。