著者
真木 彩花 東阪 和馬 青山 道彦 西川 雄樹 石坂 拓也 笠原 淳平 長野 一也 吉岡 靖雄 堤 康央
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第43回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.O-35, 2016 (Released:2016-08-08)

ナノマテリアル(NM)は、粒子の微小化に伴い、化学反応性や組織浸透性などが向上することから、近年多くの分野で普及し、我々の生活において身近なものとなっている。一方で、NMの有用機能が、予期せぬ生体影響をおよぼす可能性が指摘されているものの、そのハザード解析、およびハザード発現機序の解明に向けた検討は殆ど進展していない。本観点から我々は、化学物質による毒性発現において重要な役割を果たすことが示されつつあるエピジェネティック修飾に焦点を当て、NMの安全性評価を進めている。本研究では、最も身近なNMである銀ナノ粒子(nAg)曝露によるエピジェネティック変異、特にDNAメチル化への影響を解析した。まずDNA全体のメチル化率への影響について検討を行った。粒子径10 nmのnAg(nAg10)をヒト肺胞上皮腺癌細胞に添加し、24時間後ゲノムDNAを抽出しメチル化率の変化を評価した。その結果、nAg10曝露によりメチル化率が減少する傾向が認められ、nAg10がDNAメチル化に影響をおよぼす可能性が示された。そこで、代表的なDNAメチル化酵素であるDnmt1への影響について検討した。細胞から核内タンパク質とmRNAを抽出し、ウェスタンブロット法とリアルタイムPCR法によりDnmt1のタンパク質とmRNAの発現量を評価した。その結果、nAg10曝露によってタンパク質発現量が減少する一方で、mRNA発現量には対照群との有意な差は認められなかった。従って、Dnmt1の発現減少は、nAg10曝露によるDnmt1の翻訳阻害または、タンパク質の分解に起因する可能性が見出された。また、nAg10曝露によるDNAメチル化への影響には、Dnmt1発現量の減少が関与する可能性が示された。今後は、他のDNAメチル化酵素への影響などを解析し、nAg10曝露によるDNA低メチル化の誘導機序について解析を進め、NMに係るエピジェネティクス研究推進への貢献を目指す。
著者
村山 忍三 那須 民江 青山 俊文
出版者
信州大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1991

1.遺伝子工学的に合成されたヒトP450による有機溶剤の代謝を検討した。これらのP450のトルエン,エチルベンゼン,スチレンの代謝への寄与は類似しており,最も代謝活性が高いのはCYP2B6で,CYP2F1,CYP2E1,CYP1A2,CYP2C8,CYD4B1がこれに次いでいた。CYP3A3,CYP3A4,CYP3A5も活性を示したが,その程度は僅かであった。CYP2A6,CYP2C9,CYP2D6の有機溶剤の代謝活性は殆ど認められなかった。一方ベンゼンとフェノールの代謝活性が最も高いのはCYD2E1であった。CYP1A2,CYP2B6,CYP2C8,CYP2F1のこれらの代謝への寄与は非常に低かった。しかしCYP1A2/1は骨髄で発現されているが、CYP2E1は発現していないので、ベンゼンの骨髄毒性という観点からはCYP1A2の方が重要である。2.トルエンの代謝をモデルとして、CYP2B1-次構造とトルエンの代謝物生成との関連性を検討した。58番目のLenをPheに置換するとベンジルアルコール(BA)の生成は60%以上保持されるが、O-とP-クレゾールの生成は消失していた。114番目のlleをPheに置換するとすべての代謝物が50%以下に低下したが、トルエン環の水酸化は確実に保持されていた。282番目の置換(Glu→Val)はトルエンの代謝に大きな影響を与えなかった。CYP2B1によるトルエン環の水酸化には58番目のLeuが重要な役割を果しているといえよう。3.ヒトの肝のみならず肺ミクロソームにおいて多くの有機溶剤が代謝された。しかし肺における代謝速度は肝の数パーセントであった。喫煙は肝においてトルエンからO-クレゾールの生成を促進させ、肺におけるスチレンの代謝を亢進させた。飲酒の有機溶剤の代謝に与える影響は認められなかった。ヒトの肺におけるトルエンの代謝のパターンは肝におけるパターンと異っていた。すなわち、肝ではO-とP-クレゾールの生成比率は10%以下であったが、肺においてはそれぞれ20%と30%であった。
著者
森田 恵美子 青山 宏樹 梶本 浩之
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.FcOF1111-FcOF1111, 2011

【目的】<BR>重症筋無力症(以下、MG)患者にとって、気候や入浴等による外気温の変化は、筋出力低下を引き起こす一要因であるものの、このような症状は一般的には知られていない。MGの簡易的な診断方法としてアイステストがある。これは閉眼した眼瞼の上に、袋に入れた氷を2分間置き、眼瞼下垂が2mm以上改善すれば陽性と判別する方法である。今回はこのアイステストをヒントに、寒冷刺激によってMG患者の疲労度が軽減するという仮説を立て、反復誘発筋電図テスト(Harvey-Masland test)を用いて漸減(waning)現象に着目し検証したので報告する。<BR>【方法】<BR>対象者は12年前にMGを発症し胸腺全摘出を施行した女性(年齢42歳)1名である。Osseman分類II-A、抗AchR抗体2200nmol/L、症状として日内変動による眼瞼下垂、複視、全身脱力感はあるが、就労を含む日常生活に支障はない状態である。今回の実験はHarvey-Masland testのプロトコールに従って実施した。はじめに、尺側手根屈筋に対して筋疲労を生じさせるため、誘発電位・筋電図検査装置(Nicolet社製Viking Quest S403)を用いて、尺骨神経に最大上刺激(10.2mV)にて周波数50Hzの頻度で電気刺激を5秒間与えた。2分間の休息を入れた後、3Hzおよび1Hzにて尺骨神経を肘関節部内側上顆の直下から刺激し、尺側手根屈筋の表面筋電図を導出した。実験条件は、反復神経刺激を与える前に氷嚢で尺側手根屈筋筋腹を20分間冷却した寒冷刺激および介入なしの2条件とした。また尺側手根屈筋筋腹部の表在温度も測定した。各条件において計測は7回実施し、導出された筋電図の初発に対する5発目の振幅の割合を算出し、平均漸減率を求めた。一元配置分散分析および多重比較にて統計学的検討を行った。<BR>【説明と同意】<BR>対象者に対して、ヘルシンキ宣言に従い事前に本研究の主旨を説明し、実験に参加する同意を得た。<BR>【結果】<BR>電気刺激によって誘発された筋電図の漸減率を比較したところ、介入なしの1Hzでは漸減率が92.8%、3Hzでは76.8%であった。寒冷刺激の漸減率は1Hzで99.2%、3Hzでは102.8%であった。介入なしでは1Hzに比べ3Hzの電気刺激の方が有意(P<0.01)に漸減率が高かった。3Hzの反復刺激においては、介入なしに比べ寒冷刺激の方が漸減率が有意(P<0.01)に低かった。また、介入なしの1Hzに比べ寒冷刺激の3Hzの方が漸減率が有意(P<0.01)に低かった。尺側手根屈筋筋腹部の表在温度は介入なしで31.2±0.4度、寒冷刺激で23.6±0.8度であり、両者で有意差が認められた(P<0.05)。<BR>【考察】<BR>今回の実験では、介入なしの条件下での1Hzの刺激では活動電位の漸減は見られなかったものの、3Hzの刺激では76.8%の漸減が認められwaning現象が確認された。Waning 現象とは、5Hz以下の刺激下で5発目の活動電位の振幅が初発の振幅の90%以下になる現象を示すが、Harvey-Maslandによると、健常者およびMGでは1Hzの刺激を与えても筋活動電位の振幅には減衰は起こりにくく、3Hzの刺激では健常者では減衰は全く起こらないか、せいぜい7%以下である一方、MG患者では顕著に出現するとしている。今回は、このHarvey-Maslandのテストのプロトコールに沿って実施したことで、介入なしでの3Hzの刺激のみにwaning現象が出現したと考えられ、今回の対象者がMG特有の波形を示すことが確認された。この対象者に寒冷刺激の条件下で3Hzの反復電気刺激を与えたところ、漸減率は102.8%でありwaning現象は認められなかった。この結果は寒冷刺激によって表在温度が23.6度まで下がったことで、アセチルコリン分解酵素であるコリンエステラーゼの作用が介入なしよりも抑制されたことが一要因ではないかと考える。以上のことより今回の実験では、MG患者に対しての寒冷刺激が神経筋接合部での疲労および筋出力低下を軽減させる一助となることが示唆された。<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR>現在MG患者の運動療法においては、疲労回避のための低負荷・高頻度の運動が推奨されている。しかし、MG患者が外気温もしくは自身の表在温度を配慮し運動を行った報告はほとんど見当たらない。寒冷刺激が実際のパフォーマンス後の筋出力低下、疲労度を軽減することが可能であれば、運動実施前の寒冷療法が有効な手段となりうるのではないかと考える。<BR>
著者
鶴我 佳代子 関野 善広 神田 穣太 林 敏史 萩田 隆一 會川 鉄太郎 保坂 拓志 菅原 博 馬塲 久紀 末広 潔 青山 千春 鶴 哲郎 中東 和夫 大西 聡 稲盛 隆穂 井上 則之 大西 正純 黒田 徹 飯塚 敏夫 村田 徳生 菅原 大樹 上田 至高 藤田 和彦
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2017
巻号頁・発行日
2017-03-10

【はじめに】 東京海洋大学では、平成29年度に新設される海洋資源環境学部において、海底および海底下構造を対象とした海底科学に関する実習・教育・研究を行い、我が国の海洋の将来を担う海洋観測人材の育成を目指している。その機能強化の一環として、可搬型海域2次元地震探査システムを新たに導入した。この地震探査システムは、小規模ながら海底下の浅層構造調査に有用な性能を有しており、学生に対する最先端技術の実習・教育の実施と同時に、駿河湾など日本周辺の重要な海域の浅層構造精密調査に有効利用されることを目標としている。2016年11月、我々はこのシステムを東京海洋大学練習船「神鷹丸」に搭載し、初の海域探査試験として静岡県駿河湾での試験航海に臨んだ。本発表は、本学の地震探査システムの概要を紹介し、試験航海とその成果の第一報を報告するものである。【観測システムの概要】 我々は、2016年11月13~19日の期間中、静岡県駿河湾内において、エアガン震源を用いた2次元反射法地震探査および海底地震計を用いた屈折法地震探査の試験を実施した。この地震探査システムは、10ftコンテナ規格の格納庫に入った震源部・コンプレッサー・受振アレイ部、およびPC等の制御・収録システムにより構成される。震源はBolt社製エアガン1900LL(260cu.in) 2基からなるTwin-Gunを 2対擁し、発震時は左右両舷から1対ずつ曳航する。海上受振アレイは、Hydroscience社製デジタルストリーマーケーブル(長さ600m、センサー間隔6.25 m、96チャンネル)と最後尾の測位用テールブイで構成される。システムは全て可搬型になっており、本学練習船「神鷹丸」(総トン数 986トン、全長65 m、幅12.10 m)の後部甲板および室内観測室に設置する。屈折法地震探査では、Geospace社製海底地震計OBXを21台海底に設置した。OBXは近年石油探査などの浅海調査の際に非常に多くの数を海中ロープで接続し、海底に設置し、観測後回収するタイプの海底地震計である。OMNIジオフォン3成分とハイドロフォン1成分の4成分観測ができる。【駿河湾における試験航海】 駿河湾は陸/海のプレート境界に位置し、深部地震活動を正しく理解するためには、精確な海底下構造の情報が必要不可欠である。この地域は東海地震の震源想定域として地震や地殻変動などの観測網整備が重点的に行われているが、海域における詳細な地下構造調査は陸域のそれと比べると多くはない(例えば村上ほか(2016)など)。そこで我々は、本学の地震探査システムの稼働試験およびその調査性能の検証にあたり、駿河湾海域を調査地域とし、2次元反射法および屈折法地震探査による浅部地下構造の精密調査を試みた。調査は、2016年11月13~19日の期間中、駿河湾内の東部・北部・西部の海域に設定した4つの測線(A~D:総測線長約74km)において、3.5ノット程度の船速で曳航し、50m間隔の発震を行った。東部B測線では、Geospace社製海底地震計OBX21台を投入し同時観測した。日本国内において本タイプの海底地震計による海底アレイ観測は、これが初である。また西部D測線では東海大学による海底地震計4台によって同時観測がおこなった。一次解析の結果からは、駿河湾東部A測線(24km)では、ほぼ平坦な海底下に厚さ~200m程度の堆積層があり、その下には陸上延長部の地形と相関を有する地層境界の明瞭な起伏が見られた。駿河トラフ軸を東西に横断する北部C測線(17.5 km)や、東海地震の震源想定域に含まれる駿河湾西部D測線(石花海南部~清水港沖; 32.5km)では起伏の多い海底地形と一部食い違いとみられる構造が見られている。本システムに関わる技術検討および詳細な構造解析については本発表にて報告する。【謝辞】 本調査は、静岡県漁業協同組合連合会、駿河湾の漁業協同組合・漁業者の皆様の多大なるご協力のもと実施することができました。共同研究により東海大学には実習船「北斗」による海上支援を頂き、本学練習船の安全な航行と調査航海にご協力いただきました。また産学共同研究により㈱地球科学総合研究所、ジオシス株式会社の皆様には多岐にわたるご協力をいただきました。心より御礼申し上げます。最後に初めての地震探査試験航海にも関わらず強力なサポートをしてくださった本学の「神鷹丸」乗組員、陸上支援をいただいた海洋観測システム研究センター、船舶運航センターのスタッフに感謝いたします。
著者
長峯 健太郎 矢島 秀伸 清水 一紘 青山 尚平 平下 博之 Hou Kuan-Chou Chen Li-Hsin Zhu Qirong Sadegh Khochfar Claudio Dalla Vecchia
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2014-06-27

宇宙論的銀河形成流体コードGADGET-3を用いて、早期宇宙から現在に至るまでの銀河形成と進化の統一的理解を推進した。具体的には、新たな超新星爆発モデルとダストの破壊・成長モデルをシミュレーションコードに組み込み、ダストとメタルを空間的・時間的に追うことに成功した。銀河の光度関数や質量関数、及びダストによるextinctionの空間分布も計算した。また、宇宙論的ズーム計算においては、矮小銀河の質量獲得史および星形成史を調べた。その結果、フィードバックが強いモデルにおいては、ガスが吹き飛ばされて銀河円盤が破壊され、より乱れたガス分布の初代銀河が形成されることがわかった。
著者
青山 ゆき 東野 純一
出版者
情報処理学会
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.49, pp.309-310, 1994-09-20
被引用文献数
1

ワープロ等の上で、旧文書より新文書を編集する際に、新旧文書の差分文字列を機械的に把握することは、編集作業の効率化につながる。しかし、一般にワープロソフトの文書比較機能は、文書の段落、行等のある程度の文字列のまとまりで比較しており、頻繁に使用される単語を置換した場合などでは差分箇所を把握し難い。そこで、単語を単位とした差分を抽出することが適切であるが、日本語文書の単語分割処理の計算量は大きく、単語単位の差分を迅速に抽出することは困難であった。本稿では旧文書のみ単語分割し、分割されていない新文書との差分を抽出する〔単語一文字列〕間差分抽出方式を提案する。これにより、差分抽出時に単語分割することなく、迅速に単語単位の差分を抽出できる。また、従来の2種類の差分抽出手法を〔単語一文字列〕間に拡張した方式を組み合わせて、高速に差分抽出する手法ついて述ベる。
著者
青山 玄
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 (ISSN:09150900)
巻号頁・発行日
no.2, pp.p69-78, 1990-03

諸国遍歴の修験者円空(一六三二―九五)は、日本古来の修験道や密教的仏教の伝統の上に立って大量の作品を残しており、そのうち「円空仏」四、三二〇体、和歌一、六〇〇余首、他に絵一八四枚が現存しているが、円空の出自に不明な点が多いことから、一九七三年以来、円空を十分の根拠なしに私生児と考え、洪水で非業の死を遂げた母の鎮魂供養のために仏像を彫り、諸国勧進に努めたかのように説く谷口順三氏の説が広まった。この説に基づいて、一九七四年にはラジオ・ドラマ「木っ端聖・円空」が放送され、一九八八年にはテレビ・ドラマ「円空」が放映された。――筆者は、谷口氏のこのような円空観がいかに根拠薄弱であるかを明らかにすると共に、同氏が軽視した『浄海雑記』『近世畸人伝』に読まれる円空略伝やその他の断片的史料、ならびに円空の和歌などから、彼が単に天才的芸術家であっただけではなく、かなりの教養の持ち主で、その家柄も悪くなかったと思われることを明示した。そして彼が生まれた頃や少年だった頃に、その故郷の村々では無数のキリシタンが処刑されたこと、また彼が仏像を作り始めた一六六三年は、その二年前から木曽川を挟んだ対岸の尾張国中島郡やその隣の扶桑群の数十ヶ村で、無数の農民がキリシタンとして検挙されていた時であったこと、ならびに彼が造仏に精を出していた頃の美濃尾張の農民が処刑されたキリシタンの鎮魂を一大関心事にしていたこと、その他から、円空造仏の一つの動機が、信仰のために殺された無数のキリシタンたちの鎮魂供養にあることを立証した。
著者
福田 朋子 松本 高利 田辺 和俊 長嶋 雲兵 青山 智夫
出版者
日本コンピュータ化学会
雑誌
Journal of Computer Chemistry, Japan (ISSN:13471767)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.1-8, 2002 (Released:2003-04-08)
参考文献数
13
被引用文献数
2 1

新規フロン代替物質探査のために、フロン類に特有なC-Fの強い吸収が観測される1500-500cm-1付近の含フッ素化合物44分子の赤外吸収強度とそれらの分子の8種類(C=C, C-C, C=O, C-O, C-H, C-F, C-Cl, O-H)分子内結合数との相関を3層のパーセプトロンタイプニューラルネットワークに学習させ、8種類の分子内結合数の赤外吸収強度への影響を3層パーセプトロン型ニューラルネットワークの入力パラメータの感度解析(パラメータスキャン)[2]と偏微分係数解析[3, 4]を用いて解析した。ニューラルネットワークは、Leave-one-outテストで誤差が10%以下の予測を行うよう学習を行った。感度解析の結果、C=C, C-C, C=O, C-O, C-H, C-F, C-Cl, O-Hの8種類の分子内結合のうち C=O, O-Hが多いと赤外吸収強度が大きくなることが判った。C-Fもその結合数が多い場合は赤外吸収強度が大きくなるが、相対的に少ない場合はむしろ吸収強度を小さくする。C-Oは全く吸収強度に影響を与えない。偏微分係数解析では、C-C, C=O, C-Cl, O-Hの数が大きな吸収強度に寄与することが判った。C-OとC-Fの影響は小さいことが示唆された。両者の結果は不飽和炭素アルコール系より飽和炭素エーテル系のフロンの方が赤外吸収強度の小さな代替フロンができる可能性の大きいことを示唆している。
著者
熊本 雄一郎 青山 道夫 濱島 靖典 岡 英太郎 村田 昌彦
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2017
巻号頁・発行日
2017-03-10

2011年3月11日に発生した巨大地震とそれに引き続く大津波は、福島第一原子力発電所(FNPP1)の核燃料露出と炉心損傷を引き起こした。その結果、多くの放射性セシウム(134Csと137Cs)がFNPP1より漏えいし北太平洋に放出された。これまでの観測研究によって、日本近海の北太平洋に大気沈着および直接流出した放射性セシウムは北太平洋海流に沿って中緯度表層を東に移行しつつあることが明らかにされた(Kumamoto et al., 2016)。また、黒潮・黒潮続流の南側に大気沈着した放射性セシウムは亜熱帯モード水の亜表層への沈み込みによって、2014年末までに西部亜熱帯域のほぼ南端に相当する北緯15度まで南下したことが確認されている(Kumamoto et al., 2017)。一方、2011年から2015年の約4年余の間、北海道西部、新潟、石川、福井、島根、佐賀、鹿児島、愛媛、静岡県の各原子力発電所の沿岸域では、海水中放射性セシウムの継続な濃度上昇が確認されている(規制庁, 2016)。また、Aoyama et al.(2017)も2015/2016年に同沿岸海域における表面水中濃度の上昇を報告している。放射性セシウム濃度の上昇が観測された海域は黒潮系水の影響が比較的大きい沿岸海域であり、これらの結果はFNPP1事故で西部亜熱帯域全体に拡がった放射性セシウムが、時計回りの亜熱帯循環流によって日本沿岸に回帰していることを暗示している。しかしながら、西部亜熱帯循環域におけるFNPP1事故起源放射性セシウムの時空間変動は明らかではない。我々は2015年および2016年に黒潮・黒潮続流南側の西部亜熱帯域において、表面から深度約800mまでの海水中溶存放射性セシウムの濃度を測定したのでその結果を報告する。海水試料は、新青丸KS15-14(2015年10月)、白鳳丸KH16-03(2016年6月)、および「かいめい」KM16-08(2016年9月)の各観測航海において、バケツ及びニスキン採水器を用いて各10~20リットルを採取された。陸上の実験室(海洋研究開発機構むつ研究所)において硝酸酸性にした後、海水中の放射性セシウムをリンモリブデン酸アンモニウム共沈法によって濃縮し、ゲルマニウム半導体検出器を用いて放射性セシウムの濃度を測定した。濃縮前処理と測定を通じて得られた分析の不確かさは、約8%であった。北緯30-32度/東経144-147度で得られた134Cs濃度(FNPP1事故時に放射壊変補正済)の鉛直分布を、同海域において2014年に得られたそれ(Kumamoto et al., 2017)と比較した。その結果、深度100m程度までの表面混合層においては、2014年には約1 Bq/m3であった134Cs濃度が、2015/2016年には1.5-2.5 Bq/m3に増加したことが分かった。一方、深度300-400mの亜表層極大層におけるその濃度は、2014年から2016年の3回の観測を通じてほとんど変化していなかった(約3-4 Bq/m3)。この134Cs濃度の亜表層極大層は、亜熱帯モード水の密度層とよく一致していた。一方、同じく黒潮続流南側の北緯34度/東経147-150度における放射壊変補正済134Cs濃度は、2012年から2014年の約3年間に、表面混合層では検出下限値以下(約0.1 Bq/m3)から約1 Bq/m3に増加し、亜表層の300-400mでは約16 Bq/m3から約3-4 Bq/m3に低下したことが報告されている(Kumamoto et al., 2017)。これらの観測結果は、FNPP1事故から5年以上が経過した2016年までに、亜熱帯モード水によって南方に輸送されたFNPP1事故起源の放射性セシウムが同モード水の時計回りの循環によって、日本南方の西部亜熱帯域北部に回帰してきたことを強く示唆している。その他の起源(例えば陸水)の影響が小さいと仮定できるならば、表面混合層における2012年から2016年の間の134Cs濃度上昇(0.1 Bq/m3以下から1.5-2.5 Bq/m3)は、亜表層極大の高濃度水がentrainmentによって表面水に取り込まれたためと推測される。講演では、日本沿岸域の2015/2016年の観測結果速報も報告する予定である。この本研究はJSPS科研費24110004の助成を受けた。
著者
青山 弘之 末近 浩太 錦田 愛子 山尾 大 髙岡 豊 浜中 新吾 高橋 理枝 溝渕 正季
出版者
東京外国語大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究は「アラブの春」が中東地域にもたらした混乱に着目し、そのなかで台頭を遂げた非国家主体と、「弱い国家」となった各国の主要な政治主体が織りなす政治構造の実態を解明することを目的とした。具体的には、東アラブ地域諸国の政治の動静に焦点を当て、既存の国家枠組みのなかで政治を主導してきた軍、治安機関、政党・政治組織、NGOなどと非国家主体の関係、そしてその関係が政治や社会の安定性に及ぼす影響を明らかにした。
著者
五十嵐 康人 大河内 博 北 和之 石塚 正秀 吉田 尚弘 三上 正男 里村 雄彦 川島 洋人 田中 泰宙 関山 剛 眞木 貴史 山田 桂太 財前 祐二 足立 光司 中井 泉 山田 豊 宇谷 啓介 西口 講平 阿部 善也 三上 正男 羽田野 祐子 緒方 裕子 吉川 知里 青山 智夫 豊田 栄 服部 祥平 村上 茂樹 梶野 瑞王 新村 信雄 渡邊 明 長田 直之 谷田貝 亜紀代 牧 輝弥 佐藤 志彦
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2012-06-28

初期の放射性Cs放出には従来想定されていた水溶性サブミクロン粒子に加え,直径数μmの不溶性粗大球状粒子が存在することを初めて明らかにした。典型的な里山では再飛散由来のCs濃度は,都市部での結果と異なり,夏季に上昇し,冬季には低かった。夏季のCs担体は大部分が生物由来であることを初めて見出した。放射性Csの再飛散簡略スキームを開発し,領域エアロゾル輸送モデルを用いて森林生態系からの生物学的粒子による再飛散,ならびに事故サイトから継続する一次漏えいも含め,フラックス定量化-収支解析を行った。その結果、他のプロセス同様、再飛散は、地表に沈着したCsの減少や移動にほとんど寄与しないことがわかった。
著者
八木 徹 神部 順子 長嶋 雲兵 青山 智夫
出版者
日本コンピュータ化学会
雑誌
Journal of Computer Chemistry, Japan (ISSN:13471767)
巻号頁・発行日
vol.15, no.6, pp.227-228, 2017 (Released:2017-02-04)
参考文献数
6

A smartphone application for observating atmospheric state and visualizing suspended particle matter (SPM) was developed. By using the ratio of B/R, G/R and B/G, it was confirmed that the nonlinearity in the developed image can be canceled and the distribution of scattered light in the atmosphere can be observed.
著者
大平 昌彦 青山 英康
出版者
日本衛生学会
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.27, no.6, pp.500-531, 1972-02-28 (Released:2009-02-17)
参考文献数
66
被引用文献数
14 19

In 1955, many babies who had drunk arsenic-tainted milk produced at the Tokushima Plant of the Morinaga Milk-Industry Company Ltd., suffered from serious poisoning. The number of victims ascertained in February, 1956 covering 27 prefectures in the western part of Japan was 12, 159, of whom 131 died.The disaster was caused by the process of manufacturing the powdered milk. Disodium phosphate was added as a stabilizer to make the milk easily soluble. This disodium phosphate was poorly purified, intended for non-food industrial use, and contained a toxic dose of arsenic, sodium arsenite and vanadium compounds etc.Shortly after the disaster, numerous medical reports were published. A committee organized by the Society for Child Health (the chairman was Prof. Nishizawa of Osaka University; so it was called the Nishizawa Committee), determined criteria for the diagnosis of the poisoning; but these criteria were inadequate and erroneous from several points of view. Strange to say, debates and publications about the disaster disappeared quickly after the report was published by the Health Department of Okayama Prefecture stating that the victims had recovered completely according to the criteria established by the Nishizawa Committee only one year after the disaster.Until 1969, when Prof. Maruyama et al., of Osaka University reported on victims whom they had visited, no study had been made to ascertain whether or not there were any after-effects of the poisoning. Much fault must be found with the Ministry of Health and Welfare, with the attitude of the Morinaga Company, and with the doctors concerned, for this neglect to follow-up such an unprecedented and large-scale disaster.In 1969, the authors managed to organize an epidemiological study group with several departments of Hiroshima University and the Department of Hygiene of Okayama University cooperating and have developed joint research on this disaster as follows:1. A follow-up survey was made among victims in Okayama Prefecture between December 1969 and April 1970. 214 people answered the questionnaire and 74 were given a medical examination.2. A prospective study was made on the basis of a questionnaire on clnical complaints collected at the time of the disaster in 1955.3. A comparative study was performed between the victims and their brothers and sisters.4. A comparative study was performed among handicapped children in institutions in Okayama Prefecture, who were born between January 1st, 1953 and December 31st, 1955. The children were divided into three groups, namely those who had consumed the arsenic-tainted milk, those who were brought up on different brands of powdered milk from different companies, and those fed only maternal milk.5. A comparative study was performed among all children born between January 1st, 1954 and December 31st, 1955 and brought up in Seno district in Hiroshima Prefecture which has a relatively stationary population and where good records had been kept of the physical growth and mental development of the children in the nursery, primary and junior high schools. The children were divided into the same three groups as mentioned above. This study was performed as a joint research project by the Departments of Public Health (Director: Prof. M. Tanaka), Orthopedics (Director: Prof. K. Tsuge), Ophthalmology (Director: Prof. T. Dodo) and Psychiatry and Neurology (Director: Prof. K. Sarai) of Hiroshima University Medical School and Deparment of Conservative Dentistry (Director: Prof. T. Inoue) of Hiroshima University Dental School, and Department of Hygiene (Director: Prof. M. Ohira) of Okayama University Medical School. All clinical examinations were conducted separately under the double blind method.6. The 124 cases of the children examined in the district of Senogawa town were discussed individually by the six medical doctors and five dentists who did the examinations.
著者
有馬 貴之 青山 朋史 山口 珠美
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.125, no.6, pp.871-891, 2016-12-25 (Released:2017-01-25)
参考文献数
25
被引用文献数
2 3

Geoparks in Japan conduct several educational programs mostly for elementary and junior high school students, teaching geology and geography. Staff in geoparks teach local geology and geography; however, there are no programs for tourism education. Besides, most are for elementary and junior high students. Hakone geopark has assisted several schools in their educational programs through museums and delivery classes. Two tourism education programs in Teikyo University are presented and their effects on university students collaborating with the geopark are examined to set a benchmark for tourism education programs in geoparks in Japan. Students have participated in the programs with the goals of providing suggestions or operations for geotours at Hakone geopark. Educational effects on students, such as interest in the locality, are observed. Students also learn how to work in groups and about their commitments, how to improve the quality of presentations, how to make suggestions for tour planning, how to adjust and negotiate with local suppliers on creating tours, and how to operate tours on site. In particular, students discover the potential of local icons and resources as tourism resources that reflect the characteristics of the area. These educational effects are supported by human and organizational networks in the geopark. Local suppliers and other stakeholders also understand the concept and support activities besides tourism. These networks and an understanding of the geopark and tourism in the locality are the main factors supporting the programs.
著者
松中 亮治 青山 吉 柄谷 友香 佐藤 寛之
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集D (ISSN:18806058)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.190-202, 2007

本研究では,事業の社会的便益,ならびに,その長期的最大化,関連主体間の合意形成の得やすさなどの観点から,バリアフリー施設の整備優先順位を評価するための複数の評価基準を設定し,それぞれの基準に従う整備優先順位を探索した.その際,経年的な優先順序の比較においては極めて多数の組み合わせが考えられるため,遺伝アルゴリズムを用いて,各基準に従う整備優先順位を探索した.対象地域として京都市をとりあげ,交通バリアフリー法の法制度や自治体・公共交通事業者の予算制約を考慮し,多数の重点整備地区において複数の事業者が関連している状況下における整備優先順序について分析した.さらに,各評価基準に基づく整備優先順位を,実際に京都市が策定しているバリアフリー全体構想に基づく優先順位とも比較し,その特徴を明確化した.
著者
青山 賢治
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.679-694, 2013 (Released:2015-03-31)
参考文献数
58

本稿は, 消費社会化が起こるための必要条件にかんする分析である. 消費社会化は, 余剰生産力と需要の関係において問題とされるが, それは十分条件ではない. アメリカの場合, 生産力の余剰に先行して, 空間の余剰があったことが記号論的空間の成立をもたらしたと考えられる. 本稿は, アメリカの西部フロンティアにかかわる空間編成を系譜学的に分析し, そこから記号論化された消費社会の成立を問題にする.19世紀初頭, 未踏で表象不可能な空間であった西部は, 博物誌, 地誌学の調査によって表象の空間へ移される. 1830年代, 表象 (不) 可能性の境界上で, 歪んだイメージを介したフロンティアが語られる. 19世紀半ば, 移住者向けガイドブックに, 博物誌, 新聞, 広告, 誇張話などが並置された記号論的領域が登場する.大陸横断鉄道以後, フロンティアは空間的外縁ではなく, 双極的時間の運動として現れる. レール沿線における未開と近代技術の接触から, フロンティアの不確定な前進=消滅が起こる. この不確定性が消滅したところでは, 都市と農村の形成が同時代的に実現される. 他方, 古いイメージと新しいメディア技術という双極性から, オールド・ウェストという「西部的なもの」の舞台や映画が成立する. カタログという商品=広告は, 都市と農村という空間的隔たりを, 最新モードのうちに結びつけ, 欲望を記号論的空間のなかで分節することで, 消費社会化をもたらす.