- 著者
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馬場 昌範
- 出版者
- 鹿児島大学
- 雑誌
- 基盤研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2003
研究代表者が1999年に武田薬品工業との共同で,世界で最初に報告したCCR5を標的とする抗エイズ薬TAK-779(Baba et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96:5698)は経口吸収性がなく,毒性の問題から臨床開発を断念した。その後,経口吸収性を有し,臨床試験が可能な薬剤の探索を続けた結果,新規化学構造を有するCCR5拮抗薬TAK-220およびTAK-652の同定に成功した。TAK-220とTAK-652とは基本化学構造が全く異なる化合物で,TAK-220はCCR5に対するリガンドであるケモカインの結合を数nMの濃度において阻害する能力を有していた。しかしながら,TAK-220はCCR5以外のケモカインレセプターに対するそれぞれのリガンド結合を抑制しなかった。一方,TAK-652の場合は,CCR2bに対するリガンドの結合もかなり低い濃度で抑制することが分かった。また,TAK-220およびTAK-652は,CCR5をコレセプターとする(R5)種々の臨床分離株の増殖を非常に低い濃度(数nM)で抑制したが,CXCR4をコレセプターとして用いる(X4)HIV-1に対しては抗ウイルス効果を全く示さなかった。さらに,異なるサブタイプのエンベロープ蛋白を有するR5 HIV-1は,これらの薬剤に対して等しく感受性を有することも分かった。さらに,TAK-652に関しては,健常人に対する単回経口投与を行ったところ,100mgの投与量まで,安全で望ましい体内動態を示した。25mgの投与24時間後の血中濃度は,薬剤が抗HIV-1効果を示す濃度をはるかに上回ることから,TAK-652は1日1回経口投与可能な新規抗HIV-1薬として,臨床試験においてその有効性を証明する価値があると思われた。